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| ★★☆☆☆/星の降る刻 ----- 【 2006年03月22日(水) 】 |
| 発売元:アイディアファクトリー 開発元:アイディアファクトリー 機種:プレイステーション2 【現在発売中】 ゲーム:PS2 星の降る刻(通常版)・・・・・購入済 ゲーム:PS2 星の降る刻(限定版)・・・・・持ってません 本 公式ビジュアルファンブック B's-LOG COLLECTION・・・・・購入済 幼い頃に美しい女性から宝石をもらった主人公が、7年後にその宝石を巡る争いに巻き込まれる話です。 立ち絵やスチルがかなり綺麗です。その出来具合は、遙かシリーズや水の旋律よりも上であると断言します。遙かシリーズも水の旋律も、キャラクターデザインのスチルとそうでない人のスチルの差が大きいですからね。 主人公の名前は『支倉茜(はせくらあかね)』に固定されています。 水の旋律のレビューでも書きましたが、デフォルトがあった方がいいと思う私には、やはり固定の方が嬉しいです。遙かシリーズは名前を呼んでくれませんしねえ・・・せめてデフォルト名でプレイしたら名前を呼んでくれるようにしてくれたら良いのに。 個性的なキャラクター達も大変魅力的です。 朝倉祐介:7年前から一緒にいる幼馴染。 松浦隆史:よく行く喫茶店のウェイター。 真壁龍之介:商店街で出会った銀職人。 大道寺隼人:引きこもりだった後輩。 金森匡:金森葵の兄で学園の保険医。 金森葵:現役高校生モデルの先輩。 有馬俊:生徒会の顧問で世界史の先生。 しかし、7人のうち1人だけキャラクター設定に不満があります。大道寺隼人についてです。 他キャラとの性格の違いがよく現れていて、上手く個性が分けられていますが、正直年下キャラの隼人は幼すぎる気がします。可愛がられる設定のようなので仕方ないかもしれませんが、他のキャラは女性プレイヤーの好みを上手く反映しているのに対し、彼については多くの女性プレイヤーが食いつくとは思えないんですよね。恋愛ゲームには年下キャラもいなければ!という事で、ついでのように付け加えられたようにしか見えません。隼人関連の話も『おばあさんが隼人に執着して学校にさえなかなか行かしてくれないので引きこもりがちになってしまったが、学校に行ったら行ったで決まった時間に戻ってこないとおばあさんが大騒ぎする』とかいうアホくさい設定になってますし。何をしてもペット扱いされるだけで、自分の努力が認められなくて自信が持てなくなったというのも馬鹿馬鹿しいです。隼人がその悩みを打ち明けて茜も一緒になって深刻になるのもアホらしい。遙か1の詩紋なんて、ハーフという事でいじめられたり、異世界に行っても鬼扱いされて、それでも頑張ってるっていうのに。誰にでも好かれて可愛がられる、そんな恵まれた環境にあるくせに甘ったれんなと思います。 あと、茜以外の女性キャラも3人出てきますが、個人的に朝比奈恵というキャラが結構好きです。次第に学園中に異常が発生してくるのですが、それにも関わらずケロッとしている恵の印象はかなり強烈です。ただの嫌味キャラではなく、番外ストーリーでは彼女の意外な正体が明らかになり、ますます強烈さが増します。多分最強キャラじゃないかな。 他の2人は、茜の親友である頼子と、担任である里佳子です。 頼子は祐介ルートと隆史ルートで茜を殺そうとしてきます。それは闇に囚われて負の感情にのみ支配された為、祐介に片想いする頼子は嫉妬心に支配されて祐介の幼馴染である茜を殺そうとするんですが、『あんたさえいなければって何度思ったか』『ずっと大嫌いだった』という闇に囚われたからこその『本音』を聞き、散々友達ヅラしてたくせにコイツに友情の二文字はなかったのだと知って、それからはもう頼子というキャラに興味が無くなりました。 また、里佳子はあまりに教師らしくない教師だったので一気に興味が失せました。有馬先生に惚れてるらしいんですけど、ただ有馬先生を訪ねて職員室に行った茜に対して、自分に相談があるんだと思いこんで無理矢理話を進めていくような『しつこい親切の押し売り』をするかと思えば、有馬先生を訪ねたんだと知ったら『最初からそう言えばいいじゃない!有馬先生ならいないわよ!ふん!』と一人勝手に怒ったりと、設定どおりいい加減な先生です。ぶっちゃけ、とりあえずもう一人くらい女性キャラがいないとなーっていう風に付け加えられただけのキャラクターのような印象を感じます。 ストーリー面においては、遙かシリーズや水の旋律と比べて大きく劣ります。 物語全体の流れとしては、インターネットで見かけるマルチ小説のようなものです。 物語の基本的な流れはどのルートでも同じで、物語の途中で『どこへ行こうかな?』とか『何しようかな?』とかいった選択肢によって相手の好感度が上がります。 しかし、恋愛要素は大変薄いです。 遙かのような濃厚な恋愛イベントなど全くといっていいほど無く、水の旋律のような日常的イベントを繰り返す事で絆を深めていく事もほとんどありません。要するに、相手キャラとの接触が少なすぎるのです。 茜と相手キャラの絡み合いがあまりに無さ過ぎるので、恋愛面でもストーリー面でも、遙かシリーズや水の旋律とは比べ物になりません。むしろ、インターネットで見かけるマルチ小説の方がよっぽど物語の作り方が上手いんじゃないかと。 恋愛ゲームとして、『好感度を一定以上に上げたら決まった時期にそのキャラ専用ルートに進む』という点ではどのゲームとも同じですが、このゲームは好感度の上げ方がかなりおかしいです。 茜がある相手を思い浮かべただけで相手キャラの好感度がアップしたり、不意に脳裏に浮かんだ相手キャラが微笑んだような気がしたと想像しただけで、相手キャラの好感度がアップしたりと、とにかく相手キャラの知らないうちに好感度アップしている点はおかしすぎです。 また、『どこへ行こうかな?』とか『何しようかな?』という選択肢で選んだ物によって相手キャラが勝手に決められてしまう点についても不満です。選んでから出てきた相手が狙ったキャラでないと知った時、巻き戻し機能で選択肢画面へ戻る必要があります。 また、『ある人の事が気になった』とかいう独白の後に出てくる選択肢で『中庭』『保健室』『屋上』というのがあったんですが、その場所を選ぶ事によって出てくる相手キャラは選択肢通り3人だけです。恋愛対象キャラは全部で7人いるにも関わらず、3人のキャラを対象にして『ある人の事が気になった』と勝手に決め付けられるのも不満です。また、茜=プレイヤーのはずなのに選択肢を選ぶまで『ある人』が分からないのもおかしいです。 ところでゲームの説明書には、『好感度を上げれば素敵なエンディングを迎えられる』と書かれているのですが、7人の恋愛対象キャラのうち、葵先輩と有馬先生はどう考えてもバッドエンドな結末しか用意されていません。葵先輩は死に、有馬先生は闇に完全に囚われて悪魔(?)と化して去ってしまうんです。 パッケージにはあんなにデカデカと恋愛対象キャラを描いておきながら、実際プレイしてみたら救いの無い結末しか用意していないなんてあんまりです。一体どこが素敵なエンディングだというのか。公式ファンブックで『バッドエンド』とか書いたって意味無いんだっつーの。 ちなみに私が最も気に入ったキャラは、救いの無い結末を迎える2人のうち1人、葵先輩です。 葵先輩は初対面の印象は険悪、その後の会話の雰囲気も険悪、中盤では茜の命を狙っていた男が葵先輩だったと明らかになる等、素晴らしいほど茜と相成れない存在です。それでも一応好感度は上がったりしているので、最後まで分かり合えないまま葵先輩のルートに行ったら彼がどう変わるのか期待していたのに、彼が死んでそのまま終わりです・・・。しかし、葵先輩が死ぬ直前の『泣くなよ・・・茜』とか『もっと早く・・お前に逢えていたら』とかいう台詞に、胸が締め付けられます。それまで険悪だった葵先輩と分かり合える未来を築けそうだったのに・・・とかいう茜の独白にも切なくなります。 と同時に、かなりの不満も。 ちなみに葵先輩は昔は捻くれてはいなかったらしく、それは兄弟のすれ違いが原因だったりします。兄の金森先生のイベントでは、すれ違いの原因が明らかになります。その時の茜の選択肢では『葵先輩の気持ちがわかります・・・』という台詞があるんです。このイベントと葵先輩のイベント上手く組み合わせる事が出来たなら、険悪だった葵先輩と茜の関係に変化を起こす事が出来たんじゃないかと。 茜の命を狙っていたのが葵先輩だと判明するイベントでは、直前に葵先輩とのイベントを起こしていると微妙に会話が変化するんですが、物語の流れは全く変わらないんですよ。もっとね、葵先輩が躊躇いを見せるシーンが欲しかったです。 それなのに結局は茜と葵先輩が分かり合う事が出来ないまま最後まで茜は命を狙われ、途中で茜を守る隼人が間に入り、2人の戦いを見守る茜が悲痛に叫んだ時、そこで初めて葵先輩が動きを止めるんですよ。そして、その隙を狙った隼人の攻撃に倒れてしまいます。そのまま『もっと早くお前に逢えていたら』という感じの台詞を残して死んでしまい、嘆く茜は闇に囚われ、そのままエンディングを迎えます。 その茜の叫びで葵先輩が動きを止めるシーンですが。葵先輩ルート以外では、隼人が動きを止める事になっています。つまり茜の叫びで誰かが動きを止めるまでの展開は、葵先輩ルートであろうとなかろうと全く変わらないわけです。茜の命を狙っているからこそ、葵先輩ルートではもっと違う展開になるような工夫が欲しかったです。 金森先生とのイベントを組み合わせて、葵先輩専用のストーリーを作り上げて救いのある展開にする。こんな事は遙かシリーズなら簡単に出来たでしょう。そう思うからこそ、製作者のストーリー作りが下手くそであるという印象を感じてしまいます。 また、主人公の茜というキャラにもちょっとなあ・・・と思う部分があります。 葵先輩曰く図々しい女という事なのですが、確かに図々しすぎる所が多々あったんです。ほぼ全てのルートにおいて、そこは口出しちゃマズイだろうと思うシーンで口を出す所があったので、ちょっと突っ走りすぎじゃない?と思うキャラでした。葵先輩イベントの『私だったら金森先生を悲しませるような事はしないって思います』とか、有馬先生ルートの『あなたはジュリア姫を忘れたかったんでしょう?』とかね。製作陣の工夫次第で、もっと違う会話が出来たはずです。その工夫が足り無すぎるせいで、茜に限らず全キャラの魅力が生かされていません。 番外ストーリー(ゲーム中では『ダブルストーリー』と称されています)は面白かったです。 本編無視した展開で、Web小説でいう『主人公総受』のストーリーです。葵先輩も有馬先生も生きているので、ある意味これが一番ハッピーエンドといえます。番外ストーリーなので、本編無視していても全く構いません。むしろ、これくらいのおまけはあった方が嬉しいです。 もっとも、葵先輩と有馬先生のエンディングに不満を持った人の機嫌取りとして用意したんじゃないかと思ってしまいますが・・・。 全キャラクリア後のおまけスチルにも笑えます。 しかし、今は更に高度な恋愛ゲームが出ているので、もっと色々と工夫してもらいたいものです。対象キャラの死亡エンドしか用意しないような終わり方など言語道断です。まずは対象キャラ全員のマトモな恋愛エンディングを描けるようにならないと・・・。 結論としては、立ち絵とスチルは良かった。キャラクターの魅力はあるがあまりそれを生かされていないのが難点。物語においては、製作陣はもっとキャラ別のストーリー作りに腕を上げるべき。死亡エンドを作るなら救済のあるエンドも用意すべき。 公式ファンブックのインタビューでは、記者さんが『2も希望する声が上がってる』などという余計な事を言いやがりましたが、2なんか全く希望しないし期待もしない。むしろ救済のあるエンドを作ったリメイク版を出して欲しい。一番腹が立ったのは、インタビューでは『時間が無くてやりたかった事が完全に出来なかった』という感じの話をしていた事です。これって製作者として一番言っちゃいけない事ではないでしょうか。手抜きで製作されたゲームをやったという事ですよね、私。 製作者のいい加減な姿勢にムカついたので星2つです。 単にキャラクターの魅力を感じたい方にはオススメですが、総合的に優れている恋愛ゲームを求めている方にはオススメしません。 |
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