日々の泡

2011年04月16日(土) エクソダス

 地震の後、自宅待機となったわたしはPCでひたすら震災や原発の情報を追っていた。
日本のメディアの情報より海外メディアの情報のほうがストレートでクールに事態を伝えていた。
BBC CNN ル・モンド…
原発に関してはIAEAのホームページがごく簡潔でありながら正確に日々の原発での作業内容とそれが成功したか失敗したかをありのままに伝えていた。
NHKのライブラリーから被爆国である核アレルギーの日本がいかに原発建設にいたって行くのか、どの組織や放送局がどのように国民感覚を原発受け容れに誘導していったのかレポートしたドキュメンタリーを。
 海外向けに造られたショートフィルムで一昔前の原発でいかに労働者が人権を無視された労働を強いられていたか…
http://bit.ly/eW8y5G http://bit.ly/eW8y5G
そんなことを読んだり聞いたりしていくうちに、今の状況がだれか固有の個人や団体の責任ではなく
すべての日本の人々の責任だと認識するべきなのだなと深く実感した。
知らなかった…ではすまされない重い事実がそこにある。
だれかや何かに責任を押しつけるのでは多くの犠牲を強いて得られた学びの時を無駄にしてしまう。
 けれど、気が付いてみるとわたしはなんだかひどく焦っているのだった。
どこかに何か救いがないのか、だれの情報が信じられるのか…
求めても求めてもそれは得られる物ではなくて、
ひたすらに焦燥感が増すだけだった。
だがある時を境に何かを脱皮するように焦燥感から脱却した。
それはだれもが焦っていてだれもが結論を持ち得ないということがわかったから。
わたしたちは今、かつてない状況の中にいて、それに向かい合っている。
どんな行動を取るべきであったか、どんな決断をするべきだったか、それがわかるのはかなりの時間を必要とし、今の段階では全くわからないのだと。

 
*エクソダス
多くの海外ブランドが早々に日本から撤退し、アジアの拠点を香港などの東京以外の都市に移したという。
原発の事故以降、関東エリアからの脱出の決断に日本人すら苦悩していたのだからそれは仕方のないことだしもちろん責めることでは全くない。
しかしながら、この状況において、そのブランドの価値観がどういうものなのかうすら見えてくることも確か。
そんな中、ポール・スミスが来日し、日本の社員を励ましたという記事はうれしい。
シンディ・ローパーの心の温かさや
突然のライブを決行すべく来日してくれたジェーン・バーキンの日だまりのような優しさをわたしは決して忘れない。




2011年04月12日(火) 道の上

昨夕は職場でセクションのドアを施錠しようとした瞬間
今朝は職場 エレベーターを4階で降りた瞬間
強い揺れに襲われた。
終わらない。
続いていく何かの途中にいる。
こんなことを言うのは変かもしれないけれど
毎日 悔いのないように。
夫と朝別れるときには精一杯機嫌良く別れ
迷惑をかけたときには心から謝り
どんなことも感謝して暮らす。
職場の同僚を慈しみ
仕事に集中する。
地球と原発に感謝と鎮魂の祈り。



2011年04月10日(日) 旅立ち

友人が仕事を辞めて広島へ旅立っていった。
いつ戻るかわからない。
どう暮らして行くのかまだ目処がつかない。
わたしとひとつ違い もう若くはない。
けれど旅立ちは始まり。
電話で旅立ちの日を告げる彼女の声はちょっと暗かったのに
さよならを言う頃にはちょっと明るくなって
旅の前のわくわくが血管の中を巡り始めていた。
最後に、
約束して。
と、彼女は言った。

笑ってて。何があっても笑うの。下向いちゃだめ。
前向くの。

わかった。と、わたしは約束して、
でもずるいよ。Sはそもそもの顔のデザインが笑顔なんだもん。
と言った。
Sは笑って、
そうなんだよね。丸顔でねえ…
ふたりで笑った。
遠くなってもさびしくはない。
つながっているという実感がある。
この人とはつながっているという実感がある。



2011年04月07日(木) ダンボールに入っていたもの

荷物からどどどどっと重いが溢れて来た。
キャベツとトマトと大根とパンと海苔と梅干しと…
野菜はそれぞれ洗って新聞にきれいに包んであった。
地震の後、自宅待機となったわたしにMが送ってくれた荷物。
停電で電車も止まりスーパーなどの店舗も閉じて
食料が手に入りにくかった時に
Mが食料を送ってくれた。
食料が送られてきたことは勿論嬉しい。
けれど荷物の中にはMの
「飢えさせてなるものか」
という気持ちが詰まっていた。
春めいた陽射しの中、ダンボールを開けると光の粒子が飛び出すようにその気持ちはわたしにぶつかってきた。
Mに何かでお礼はできない。
物では返せない。
言葉でも返しきれない。
ありがとうありがとう…
あなたの気持ちを、今度はだれかにわたしが届けて行きます。


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茉莉夏 [MAIL]