歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2008年02月29日(金) 親父の引退

これまで何回も書いてきたことですが、僕は歯医者の2代目です。初代は親父で今年喜寿になったのですが、歯医者として患者さんの治療に当たっています。昨年、大病をして以来、仕事のペースはかなり落としているのですが、それでも体に無理のかからない程度で仕事をしています。

そんな親父が、昨日、なじみの患者さんに対し何気なく言ったことが耳に残りました。

「80歳になったら歯医者を引退しようと思うんですわ。」

僕自身、親父が自らの引き際、仕事を引退することを口にしたことを耳にしたのはこれが初めてでした。これまで家で親父と話をしていても、自らの引退については何も言いませんでした。お袋に尋ねても、“好きなようにやらせているよ”とのこと。

病院や大学に勤務している歯医者は定年がありますが、開業歯科医には定年はありません。全国に10万人近くいる歯医者の大半は開業歯科医ですから、歯医者の大半は自らの引き際を自らが判断すると言っても過言ではないでしょう。それではいつ引退するか?歯医者によって様々ですが、概ね引退せずに体力が続く限り診療をしている歯医者が大半ではないかと思います。周囲を見渡してみると、70歳を越えても診療をしている先輩の先生は数多くいます。むしろ、余力を残して歯医者稼業からすっかりと足を洗う歯医者の方が少ないように思います。
この理由は定かではありませんが、愚考するに、長年歯医者稼業をしていると、明日から歯医者をしない生活というのが想像できない。診療を全くしないことに対して一種の不安、恐怖感があり、歯医者稼業を捨てることができない歯医者が多いのではないか?と思うのです。しかも、歯医者の大半は開業歯科医ですから、一種の自営業者です。自らの引退を自らが決めざるをえないこともあり、年齢を重ねても惰性で歯医者を続けている人が多いのではないかと思います。

実際のところ、歯医者という仕事は恵まれているところがあります。歯医者は自らの診療所から動くことはありません。これは診療する体制の都合ではあるのですが、結果として患者さん自らが診療所へ足を運ぶこととなります。自ら動かず患者さんが来院するのを待っているのです。
また、歯医者は年中、一定の環境の中で仕事をしています。外が寒ければ暖房の効いた室内で、外が暑ければ冷房の効いた室内で仕事をします。恵まれた環境で仕事をし続けることができるのです。体力面から考えれば、歯医者は体力を消耗することなく仕事をし続けることができるのです。
歯医者は絶えず手を動かす仕事です。患者さんの口の中を見て瞬時に診断し、治療方針を立て、仕事をする。頭を動かし、手を動かすことは、適度な刺激を脳に与え続けることにもなる。脳に絶えず刺激がいけば、フィードバック効果でいつまでも手が動くのではないかと思うのです。このことも歯医者がなかなか引退しない理由にあるのではないかと思います。

話をもとに戻して親父ですが、80歳定年を自ら宣言したようですが、個人的には親父の考えを尊重しようとは思います。しかしながら、これといった趣味も無く、歯医者をしていないと暇を持て余しているような親父を端から見ていると、患者さんに迷惑がかからない限り、体力が続けば歯医者をしていてもいいのではないかと思います。
勝手な想像ですが、親父は歯医者を引退すると直ぐにボケそうな気がしてなりません。それも人生ではありますが、同じ一生であれば少しでも生き生きとした人生を過ごして欲しい。そのためには、人生の大半を過ごしてきた歯医者という仕事を出来る限り長くしても罰は当たらないのではないか?息子である僕はそのように感じるのですが、これは息子の勝手、わがままなのでしょうか?



2008年02月28日(木) 学校保健委員会ってご存知ですか?

昨日、僕は地元小学校で開催された学校保健委員会に出席してきました。
学校保健委員会はあまり聞き慣れない委員会ではあると思いますが、一体どのような委員会なのでしょう?

学校では、年齢や地域的な特性に応じて生徒たちの健康を維持、管理する義務があります。学校で生徒たちは様々なことを学び、体を鍛え、将来大人として自立していくための基礎を学ぶわけですが、自分の体の健康を如何に管理し、維持していくかということも学ばなければなりません。学校では通常の授業の合間にこうした健康に対する保健教育を行っているわけですが、保健教育は学校の教員だけではカバーしきれない所があります。保護者の理解協力が不可欠ですし、公立学校では教育委員会の支援が欠かせません。そして、医学の専門知識を持つ専門家の関与も不可欠です。

各学校では、学校保健法により学校医を、大学以外の学校には学校歯科医、学校薬剤師を置かなければならなことになっているのですが、医学の専門家による生徒たちの健康管理への関与が学校保健法によって決められているのです。
こうした児童、生徒たちの保健教育、活動に携わる人たちを一同に介し、情報交換を行う場が学校教育委員会なのです。学校長が開催を要請し、生徒会の代表、教職員の代表、PTAの代表、地域保健機関の代表、そして、学校医、学校歯科医、学校薬剤師が集まり開催されるのです。昨日、僕は地元小学校で僕が学校歯科医を行っている小学校での学校保健委員会に参加してきたわけです。

昨日の学校保健委員会では昨年行われた様々な検診結果をもとに、意見交換が行われました。僕も歯科の立場から検診結果に対する考えと今後の課題について意見を述べました。具体的には、むし歯の数は少なくなっており好ましい傾向であるが、その反面歯肉に炎症がある歯肉炎の生徒が目立ってきたことを指摘し、歯磨きの重要性を訴えるとともに、生活習慣を見直す重要性を伝えました。最近は夜型の生活をしている児童、生徒が多くなってきており、その際、どうしても口の中が寂しくなり間食をしてしまう人が多い。そのことが歯を悪くする一因になっていることを伝え、単に子供だけを注意するだけでなく、保護者自身が手本となって間食をしないようにすることが大切ではないかという意見を言いました。

歯の健康を考えると、むし歯や歯周病といえば単に歯や歯肉の病気だと思いがちですが、これらが起こる背景には食事習慣をはじめとした生活習慣が大きく影響しているのは間違いありません。歯の健康を考えることは、単に歯や歯肉の病気を治すだけではなく、生活習慣を見直すきっかけにもなる。児童、生徒時代に正しい健康の知識、生活習慣が身につけば、大人になってから健康を維持する一助になるのではないか?と感じました。

学校保健委員会の中では興味深い話も聞きました。給食担当の先生からの報告だったのですが、最近の児童、生徒たちは食べ残しが少なくなったのだそうです。このこと自体は非常に好ましいことではあるそうですが、その一方で別の悩みも出てきたのだとか。それは、給食が足りないと訴える児童、生徒の割合が増えてきているのだそうです。実際の給食は各学年、クラスの状況を考えながら献立を考え、量も調整しているそうですが、以前であれば食べ残しが多かったのが、食べ残しが少ないどころか、おかわりを要求する児童、生徒が増えてきたそうなのです。児童、生徒たちの栄養状態は極めて良好だそうで、自宅でひもじい思いをしているようには見えないとのこと。児童、生徒たちの食事量が増えてきたと結論付けるには時期尚早ではあるが、注意深く観察していく必要がある。朝食を抜いて学校に来るといった生活習慣が影響している可能性があるかもしれないということを言われていたのが印象的でした。

今回の学校保健委員会に参加して学校教育、学校保健の大切さを改めて感じた、歯医者そうさんでした。



2008年02月27日(水) 歯の異常増殖

人間の体の中には50兆とも60兆とも言われる数の細胞があると言われていますが、これら細胞の多くは常に新陳代謝があります。すなわち、生まれてくる細胞があれば死んでいく細胞もあるもの。各細胞は常に周囲の環境に適応しながら協調しあい、過不足なく一定の秩序を保っているものなのです。人間は同じ姿、形をしていても、人間を形作っている細胞は常に生まれ変わっているということです。

ところが、突如としてこの均衡を打ち破る細胞が出現することがあります。周囲の細胞とは無関係に増殖し続け、塊となるのです。こうした塊のことを腫瘍、すなわち、ガンと言います。

ガンの中には発育が緩慢であったり、一定の大きさに達するとそれ以上大きくならないものと活発に増殖し続け、周囲組織に浸潤し、遠隔転移するものがあります。前者を良性腫瘍、後者を悪性腫瘍と呼ぶのです。同じガンでも人間にとって厄介なのは悪性腫瘍で、命の危険にさらされる病気の一つです。現在、日本人の死亡原因の第一位が悪性新生物、すなわち、悪性腫瘍です。

人間の体にはどんな場所でもガンになる可能性があるわけですが、歯の組織由来のガンというものも存在します。専門的には歯原性腫瘍と呼ばれます。歯原性腫瘍はいくつかあるのですが、歯の形がいびつであったり、歯が多く集まったような歯原性腫瘍というものがあります。









(出典:学建書院 小歯科カラーアトラス 口腔外科学(下)より)

これらは歯牙種と呼ばれる腫瘍です。上の写真のように下の奥歯や上の前歯に発生します。何だか歯の出来損ないのような形をしたり、細かい小さな歯の塊が多数集まっているようなものがわかるかと思います。歯の異常増殖である腫瘍が歯牙種であると言えるでしょう。

原因は歯の発生異常によるものだとされていますが、患者は比較的若い人が多く、歯が生えてこないためにレントゲン写真を撮影した際に見つかるようなことが多いようです。

この歯牙種は良性腫瘍ですので、転移の心配はありません。ですから処置としては、外科的に全て摘出する方法が取られます。一種の抜歯のようなことを行うことにより治癒します。



2008年02月26日(火) 歯医者はいつも上から目線

世の中には、普段の何気ない生活習慣により、自分自身が勝手に偉いと勘違いしてしまうようなことがあるように思います。

以前僕の日記にも書いたことですが、“先生”と呼ばれている職業の場合、自分でも意識していないうちにいつの間にか先生面してしまい、周囲の人に対して傲慢になってしまうことがあります。恥ずかしい話、僕自身がそうで、四六時中周囲から“先生”と呼ばれていると、いつの間にか自分が他の人とは違っていると勘違いしてしまう危険性をいつも感じます。専門家として患者さんの口や歯の治療をしていますが、あくまでも専門家として仕事をしているのであって、偉くはない。そのことを常に意識をしているつもりではいるのですが、自分が気がつかないうちに言動に驕り、思い上がりがあるような時があるかもしれません。

以前、ある運送関係の会社に勤務している知人から言われたことがあります。

「ダンプトラックを運転しているといつの間にか人を見下ろすような言動をするようなことがあるんだよ。」

この知人曰く、
“ダンプトラックの運転席は普通の自動車とは異なり、車の構造上高い位置にある。そのため、いつも上から下を見下ろすような形で周囲を確認しながら運転しているのだが、運転手本人も気がつかないうちにいつの間にか周囲を見下ろすような言動をするようなことが多いとのこと。運転手自身はそのような自覚はないのだが、長期間高い位置の運転台で運転をするような仕事をしていると、その環境に感化され、いつの間にか自分が偉くなったような、他の人とは次元が違うような気持ちになってしまい、そのことが周囲を見下すような言動につながっていくのではないか?”
という意見でした。

知人の意見を思い浮かべていた僕は、あることに気づきました。実は歯医者も同じような環境にあるのではないかと。すなわち、患者さんに対して上から目線で話をするという危険性です。
患者さんの口の中を治療する際、ほとんどの場合、患者さんは診療台の上に寝てもらい、口を開けます。その口の中を歯医者は上から覗き込んで治療をするわけですが、歯医者の視線は自ずと上から目線にならざるをえません。これは治療上仕方のないことではあるのですが、長年こうした習慣を続けていると自分では意識していなくても上から目線が患者さんに対する言動に微妙に影響するのではないか?そのようなことを感じたのです。

このことを他の歯医者に話せば、それは考えすぎだと指摘されるかもしれませんが、僕はあながちうそではないと思うのです。それこそダンプトラックの運転手と同じではないかと。常に上から患者さんを覗き込むような視線を続けていると、その姿勢は単に肉体的な影響だけでなく、考え方、精神的にも影響が及ぶのではないか?
歯医者は自分の診療姿勢を今一度見直し、自分の言動に傲慢さ、横柄さがないか常に確認する必要があるのではないかと思うのです。

多くの歯医者は個人開業医です。個人開業医の長として、スタッフの上に立ち診療所を切り盛りし、患者さんに接するわけですが、その反面他の世界を知らない井の中の蛙になりやすいですし、お山の大将になってしまうリスクもあります。患者さんに対する視線が常に上からだという意識を持ち、注意しておくことも歯医者自身が自分を冷静に振り返る際には必要なことではないか?

自問自答する、歯医者そうさんでした。



2008年02月25日(月) 間近に迫った歯医者の危機とは?

先週末、地元歯科医師会主催の講演会がありました。講師には歯科界で著名な先生を招いたのですが、僕は地元歯科医師会のホスト役として著名な先生と長時間にわたり話をする機会に恵まれました。日頃の地元歯科医師会の仕事は地味で診療の合間に仕事をすることはそれなりにストレスがあるものですが、今回に限っては一種の役得のようなもので、日頃聞けない話や示唆に富む話をすることができ、非常に有意義な時間を過ごすことができました。

この著名な先生との話の中で印象的だった話がいくつかあったのですが、その一つが目の先に迫った歯科業界の危機についてでした。その危機とは歯科技工士の不足でした。

「東京方面では歯科技工士の6割近くが団塊の世代なのですよ。すなわち、50歳後半から60歳代なのですね。これは大きな問題なのですよ。あと10年もすれば、これら世代の歯科技工士は多くが一線を退くことになります。ところが、歯科技工士は若い人が少ない。歯科技工士の高齢化が叫ばれていたのですが、これに対し歯科医師会も厚生労働省も何ら方策を出していない。その結果、今後10年の間に歯科界、歯科医師の間では歯科技工士が一気に減少します。ところが、歯科医師はとなると一時ほどではありませんが、まだまだ歯科医師が増え、10万人を越えるのは確実。今や歯科医院の数はコンビニの数の1.4倍とも1.5倍とも言われています。歯科医師が増えているにも関わらず、歯科技工士数が足りない。これは今後、歯科業界において一種のパニック状態になる可能性があります。これまでは歯科医師が歯科技工士を選んできた時代でしたが、これからは歯科技工士が歯科医師を選ぶ時代がやってきます。」

この話、決して誇張した話ではありません。こちらにそのことを示したデータがあります。
厚生労働省がまとめた平成18年度保健・衛生行政業務報告によれば、就業歯科技工士数は35147人です。年齢別では50歳以上が全体に30%であり、45歳〜49歳が全体の16.6%です。この二つだけでほぼ全体の50%を占めているのです。それに比べ若い世代はといいますと、25歳未満が6.9%、25歳〜29歳までが9.4%となっています。如何に歯科技工士の高齢化が進んでいるということがわかると思います。

どうしてこのようなことが起こっているのか?理由はいくつかあると思いますが、最も考えられるのは歯科技工士という仕事に就こうとしている若い世代の人が少ないこと。若い世代の人たちにとって歯科技工士の仕事が魅力あるものとはなっていないことです。
全国各地では歯科技工士学校の廃校が相次いでいます。僕が仕事をしている県においてもとうとう歯科技工士学校はたった1校になってしまいました。この1校も募集しても学生を集めるのに一苦労で、学校経営は大幅な赤字になっているのだとか。
単に歯科医師の仕事の下請けだけではなく、もっと歯科技工士に治療に参加できる機会を作るべきなのです。かつて歯科技工に関して歯科技工士に活躍を与えるような話がいろいろとあったようなのですが、この話に消極的だったのは歯科医師だったと聞きます。

今の歯科技工というものは非常に歯医者が一朝一夕で行えるような代物ではありません。歯医者はいろいろと指示を出すことはできますが、実際に患者さんの歯にせっとする被せ歯、差し歯、入れ歯を作ろうとしても、歯科技工士が持つ高度な技術力に頼らなければいけないようになっているくらい、繊細なものになっているのです。この実態を歯医者はわかっているようで、実際はわかっていない人が多いのは悲しいことです。どうしても上から目線で命令するかのごとく歯科技工士に相対している歯医者がいるのは如何なものでしょうか。こうした仕事の環境が悪影響を与え続け、若い世代の歯科技工士を中心に途中でドロップアウトしてしまう歯科技工士が増え、結果として歯科技工士の高齢化が進んでしまったところがあります。

今、看護業界では看護師不足を外国人労働者で補おうとする動きが活発になっているようですが、今後歯科業界においても歯科技工士不足を技術力を持った外国人や海外に委託するようなことが起こってくる可能性は高いと思います。それは仕方がないことなのかもしれませんが、日本に住んでいる人の健康を日本で住んでいる人たちが救えなくてどうするのか?自分の国の人たちの健康は自分の国の人たちで守る。これができなくなっている今の現状を僕は憂います。



2008年02月23日(土) 医療費還付金等詐欺にご注意!

昨日、何気なく僕の携帯メールを見ていると、地元市の安心メールサービスから下のようなメールが届いていました。


市役所職員を名乗り「医療費を還付する」と電話をかけて、ATM機を操作させ、現金を振り込ませる還付金詐欺事案が発生しております。 近隣市で、同様の事件が多発しておりますので、十分に注意してください。

【還付金等詐欺の手口】
(1)市職員や社会保険庁、NTT職員等を名乗る犯人から電話がかかってきます。
(2)電話の内容は、「医療費(税金、電話料金などの場合もある)を払い過ぎています。○○円還付するので、ATM機まで行ってフリーダイヤルに電話してください。」というものです。
(3)ATM機から言われた番号に電話をすると、言葉巧みにATM機を操作させられ、還付金を受け取るはずが、逆に自分の口座から犯人の口座に送金され、現金をだまし取られてしまいます。

【防犯ポイント】 被害に遭わないために次のことに注意しましょう。
●市役所や社会保険事務所、NTT等の職員が還付金受取のためにATM機の操作を求めることはありません。
●特にATM機の操作に慣れていない高齢者等には注意してあげましょう。
●不審な電話があれば、最寄の警察署等に相談してください。
●このページをご覧になられた方は是非とも、ご家族だけではなく、学校や職場でも話題にしていただき、被害防止にご協力お願いいたします。


確定申告の時期でもありますから、還付金という言葉を聞くとどうしても敏感になってしまい、ついつい・・・という心理を巧みに突いた詐欺ですね。
この手の詐欺、常にATMに誘導して振り込ませることが共通点です。詐欺をするには何とかしてお金を振り込ませたいわけですから。この点を注意すれば、どんな言葉巧みな詐欺でも“おかしい?”と思うはずですが、高齢者の中でATMに疎い人の場合は騙されてしまうのかもしれません。

皆さん、注意しましょう!



2008年02月22日(金) 有名人口元チェック 黒谷友香

日本歯科医師会が一般の人を対象に発行しているPR紙にある女優のインタビュー記事が掲載されていました。ある女優とは黒谷友香でした。

黒谷友香(“くろたにともか”と言うのですね、今回初めて知りました)は、1975年生まれの32歳。1995年に映画“BOXER JOE”で女優デビュー。テレビドラマやバラエティ番組、CMなどで活躍し、2006年には“TANKA 短歌”に主演。つかこうへい作品の舞台でも注目を集めているそうで、今年公開予定の“三本木農業高校、馬術部”に出演予定なのそうです。

今回のインタビュー記事によれば、彼女はもともと歯医者嫌いだったそうですが、10年前に信頼できる歯医者の先生に出会い、“早く治療すれば痛みも無く、予防すればむし歯にならない”ということを実感し、以降、日頃のケアを大切にするようになったとのこと。
また、友達に歯科衛生士が多かったこともプラスに働いたとのこと。歯科衛生士の友達のからの情報を得て、より口や歯に関する関心が高くなり、時には好奇心から歯科衛生士仲間が集まる勉強会に参加しているうちに、新しい歯科情報に触れることが楽しみになってきたそうなのです。彼女曰く

「女性は美容情報には目がないけども、そんな感覚なんですよ。見た目の問題だけではなく、歯は全身の健康と関わっているし、知らないと損をすることも多い。知れば知るほどしっかりケアしようと思いますね。」

最近では、歯磨きは一日三回といわず、何か口に入れた後には必ず歯を磨くようになったとのこと。状況に応じて軽くブラッシングだけだったり、舌歯磨きをしたり、歯と歯の間をフロスを使って歯を磨くこともある。自分が気持ちいいと思えるように磨くそうです。

これは非常に示唆に富むことだと思います。毎日の歯磨きですが、誰もが歯磨きの大切さはわかっていても毎日となるとどうしても億劫になったり、時にはサボったりしたくなるもの。毎日続けようとすると何らかの工夫が必要ですが、何事でも楽しく、気持ちよく思える時には継続することができるもの。
歯磨きというのは、適切に磨けば気持ちよいもののはずです。口の中がさっぱりとし、清潔になり、爽やかになる。このことは周囲の人に対するエチケットにもなり、自信を持って他の人とコミュニケーションがとれるきっかけともなります。

一人でも多くの人が黒谷友香のように歯磨きを楽しんで行える習慣として身に付けて欲しいものです。

そうそう、日記タイトルに“有名人口元チェック 黒谷友香”と書いておきながら、肝心の黒谷友香の口元のことを書くのを忘れていました。今回の記事に掲載されていた彼女の写真を見ていると、彼女の上の前歯は全てメタルボンド冠と呼ばれる白いセラミックで前装された冠が装着されていました。自分の天然の歯ではないのは少し残念ではありますが、女優さんにはよくあることで、前歯を被せ歯に変えているというのは仕方がないことかもしれません。



2008年02月21日(木) 麻酔科医に3500万円支払うことについて

昨日目にしたこのニュース、正直言って驚きました。

関西空港の対岸にある大阪府泉佐野市の市立泉佐野病院で、激務などを理由に麻酔科の常勤医が一斉退職する見通しとなり、後任の医師を確保するため、病院側が最高で年3500万円の報酬を雇用条件に提示していることがわかったとのこと。麻酔科医が不在になれば、救急対応を含む大半の手術ができなくなることから、拠点病院としての機能低下を防ぐ窮余の一策としているそうです。

同病院の麻酔科には現在、4人の常勤医師がいるが、いずれも3月末で辞職する可能性が高い。一部の医師が昨年末に辞職を願い出たのを機に、残る医師も「補充なしで手術室を支えられない」と退職を決めたという。

年収3500万円は病院事業管理者(特別職)の約2倍。厚生労働省の調査(昨年6月時点)では、自治体病院勤務医の平均年収は1427万円で、これと比べても突出している。同病院は所属先のない「フリー」の麻酔科医に1日約12万円の報酬を支払っているといい、この水準をもとに年収をはじき出した。今月1日から大学などに要請する形で募集を始めたところ、これまでに数件の引き合いがあるという。

 同病院は全国に3カ所しかない「特定感染症指定医療機関」の一つ。今夏をめどに、産科医療の中核施設「地域周産期母子医療センター」となる予定で、緊急手術に即応できる常勤麻酔科医の確保が急務だった。市幹部は「ほかの医師の給与に比べて高すぎる、との指摘が内部にあったが、手術ができない事態は避けねばならない」と話す。

この記事を読んで僕は複雑な気持ちがしました。
僕自身、総合病院に勤務したことがあるのですが、その時の経験でも、手術の際、常勤の麻酔科医の存在は手術には欠かせない存在です。手術を安心して行うためには、専門の知識とトレーニングを積んだ専任の麻酔科医がいないと安心して手術ができません。手術において執刀医のような表舞台には立ちませんが、患者さんの術中管理は麻酔科医によって行われるのです。いわば影の主役とも言っていい存在です。脳神経外科、胸部外科、消化器外科、泌尿器科、整形外科、整形外科、形成外科、産婦人科、そして口腔外科にいたるまで全身麻酔、場合によっては局所麻酔でも関係しますが、は麻酔科医によってすべて取り仕切られるものです。
常勤の麻酔科医がいなくなるということは、病院で手術ができなくなることを意味し、病院の機能が外来だけになってしまうのです。

現在、全国的に医師不足が言われていますが、中でも麻酔科医の不足は顕著で、どの病院も如何に麻酔科医を確保することが大きな課題になっていることは確かです。
今回の市立泉佐野病院でも全ての麻酔科医が退職するということで、市の方では年額3500万円という給与を用意してでも何とか麻酔科医を確保しようと苦肉の策を打ち出しています。おそらく市や市立病院では相当の議論があったはずです。その上での結論だとは思うのですが、僕は果たしてこの選択が正しい選択なのだろうかと疑問に感じざるをえません。

その一つは、麻酔科医は1人では何もできないのです。今回の市立泉佐野病院では4人の麻酔科医がいたそうですが、市立の総合病院としてはこの体制でもかなりきつかったのではないかと思います。精一杯働いて何とか手術が行われてきたというのが現状だと思うのです。1人でも麻酔科医が欠ければそれは他の麻酔科医への負担が増し、耐え切れない。それ故、全員退職ということになったのでしょう。
1人年額3500万円の給与を用意するそうですが、募集は3人とのこと。ということは、泉佐野市は、年額1億5百万円を用意しなければいけないということになります。麻酔科医という特別職ではあるものの、たった3人を雇うために1億円以上の人件費を掛ける。しかも、病院は泉佐野市立という公立病院です。市民の税金が投入されている病院です。1人年額3500万円の給与が一般市民に理解されるでしょうか?

他のマスコミ報道によると、今回の麻酔科医の募集は3人だけの募集ということですが、これまでの4人体制でも仕事はかなりきつかったはずです。病院の規模から考えれば、最低数人の麻酔科医は確保する必要だったと思います。今回、麻酔医が大挙して辞めることになった理由の一つは、残された麻酔科医だけでは耐え切れないと判断したとのこと。本来なら、4人以上を募集するべきなのにそれが3人とうのも腑に落ちません。麻酔科医が少ない、市の予算が限られているという理由はあるでしょうが、いくら高額の給与を支払うことを条件にしても、3人の麻酔科医だけで病院の機能が維持できるかと言われれば、非常に疑問です。

また、病院内の他科の医師の士気にも大きく影響するでしょう。どうして麻酔科医だけに多額の給与を支払うのだ。という声が上がっても不思議ではありません。病院は麻酔科医が無くては機能しないとは書きましたが、しかしながら、他科の医師もいなくては機能しません。元来、市立総合病院の医師は、特別職としてそれぞれのキャリアに合せて給与が支払われているのです。同じようなキャリアであれば、給与は同等のはず。それが、麻酔科医だけが特別の給与を支払われ、雇われるとなると、いくら医師とは言っても感情的に良いことはありません。むしろ、ねたみ、嫉妬が生じ、そのことが病院の機能に影響し、場合によっては取り返しのつかないトラブル、事故になる可能性さえあるのです。
果たしてそれで良いのでしょうか?それであれば、退職しようとしている麻酔科医に更なる追加給与を支払っている方がまだ院内の医師からは同情が得られるというものです。

それでは何か良い解決方法はあるのかと問われれば、僕の悪い頭では良い案が浮かびません。医師不足、特に麻酔科医不足というのは昨日、今日の問題ではなくここ10年来、いやそれ以上の長期にわたる問題であったからです。問題を先送りしてきた結果が今あるのです。



2008年02月20日(水) 歯周病は万病の元

昨夜、診療が終わり自宅に戻ると一足先に診療を終えていた親父がこの番組を見ておりました。
これまで何回も見ていた番組ではありましたが、今回は歯茎からの出血が思わぬ病気のサインであることを取り上げたものでした。

一つは、50歳代後半の男性のケース。この男性は水道修理会社に勤務し、丁寧な仕事ぶりが評判の男性ではあったが、自分の体のことは無頓着。お腹は出ており、医者から注意されているにも関わらず禁煙できないまま。10年前から歯磨き時に歯茎から出血していたにも関わらず放置いたのです。
ある日、自分の娘から口臭を指摘され、やっと歯磨きを毎食後行うようになっていたが、仕事中、突然、激しい胸痛に襲われ、そのまま病院に救急搬送されるも時遅く、帰らぬ人となった。そんな内容でした。

死因は心筋梗塞だったのですが、心筋梗塞に侵された心臓を検査してみると、詰まった心臓血管からは歯周病菌が検出されたのです。
最近、重度の歯周病を患っている人は心筋梗塞になる確率が高くなるという専門家による報告が行われたとのこと。番組では、血液の中にある血小板という細胞の中に歯周病菌が入り込み、動脈硬化をおこしていた心臓の冠状動脈に付着し、心筋梗塞を起した可能性が高いことが言われていました。


もう一つが、同じく50歳代後半の女性のケース。友人とのランチが趣味という専業主婦の女性が気になっていたことは、お腹周りと歯磨き時の歯肉からの出血でした。何とか体に良いことをしないといけないと思い、一念発起してフラダンスを習い始めたのですが、それから間も無くして頻繁に頻尿、咽喉の渇きを覚えるようになり、階段を登る際にはこむら返りも起きるようになった。そして、フラダンスのレッスン中、この女性は全身の倦怠感を覚え、倒れ、病院に搬送。そこでこの女性は糖尿病が進行していたことを医師から告げられ、驚いたというものでした。

この女性は、食べ歩きが好きな一方、運動不足から軽度の糖尿病だったのですが、これが体に良いとされているフラダンスをすることにより急速に悪化、緊急入院をしなければいけないはめになってしまった。その理由は、歯周病だったというのです。

最近の研究では、歯周病が進行してできた歯茎の腫れ、すなわち歯周ポケットにある種の歯周病菌が発生するとこの歯周病菌が出す毒素に血液中の白血球がある種の酵素を出すのですが、この酵素が血糖を下げるインスリンの働きを妨げ、結果として血糖を上げてしまうことがわかってきたのです。その結果、重度の歯周病によって糖尿病が悪化し、糖尿病が悪化することで更に歯周病も悪化するという、歯周病と糖尿病の悪化スパイラルが起こる可能性が高いことが指摘されていたのです。

この番組の中でも歯周病の専門家が言っていましたし、僕もこの日記で何度も取り上げてきたことですが、今や国民の8割以上が歯周病であることが厚生労働省が全国的に行う歯科疾患実態調査によって明らかにされています。国民の8割以上の罹患率ですから、大問題のはずなのですが、国民の8割が歯周病であるという事実を考えると、ほとんどの人が歯周病であることを自覚せず、歯周病を治そうとしていない現実が浮かび上がります。

歯周病は歯肉炎と呼ばれる軽度のものであれば、丁寧な歯磨きにより容易に治癒するものですが、ある程度進行してしまうと歯磨きだけでは完治せず、歯周病が進行し、歯を失ったり、上記のように全身の病気の悪化に一役も二役もかったりするようになるのです。

このようなことにならないためには、普段からかかりつけ歯科医を決めておき、歯周病の進行程度に応じて定期的に歯磨きチェックや歯磨き指導を受け、さらに専門家による歯周ポケットの清掃、歯石除去などを行わないといけません。国民の8割が歯周病である状況が改善しない背景には、まだまだ歯周病の本当の恐ろしさが知られていないこともあるでしょうが、それ以上に国民に定期的に歯医者に通う習慣が無いことが関係していると思います。

この番組で取り上げられていることに過度に反応する必要はないとは思いますが、決してうそではありません。一般の人からすればかなりショッキングなことではあるでしょうが、歯周病が死に至る病の進行を助長する事実が次々明らかになっていることは確かです。
一人でも多くの人がかかりつけ歯科医をみつけ、定期的に歯医者に通い、専門家によるケアを受け、歯周病の治療を受けて欲しいと思います。



2008年02月19日(火) ど根性ふきのとう

皆さんのお住まいの所では寒い日が続いているでしょうか?
僕が住んでいる場所ではほとんど毎日のように雪がぱらつき、朝起きてみると雪が積もっているような状態です。北国の方であれば“そんなこと当たり前じゃないか?”とお叱りを受けそうですが、当地ではここ数年、いやここ十年以上になるかもしれませんが、の中では最も寒い冬のシーズンを過ごしているように思えてなりません。

寒い冬のシーズンで嫌なのは、診療を始める前の診療所の準備です。うちの歯科医院は自宅の隣にあります。そのような環境から診療所の準備は朝起きて直ぐに準備するのが習慣となっています。ただ、朝一番に診療所に足を踏み入れた時の底冷え感はいつまで経っても慣れません。寒くて身が震えてしまう寒さ。そのような寒さの中、暖房のスイッチを入れ、診療所の外回りの掃除をするのが日課となっています。

さて、先日、一日の診療の準備を終え診療所の隣にある駐車場の側を何気なく見ていると、下の写真のようなものを発見しました。







ふきのとうです。


まだ、春は遠く、寒い日が続いているのですが、ふきのとうは季節の動きを感じているのでしょうか?アスファルトの隙間から力強く芽を出しているのです。
かつて、アスファルトの隙間から出てきた“ど根性大根”がブームになったことがありますが、さながら診療所の駐車場の片隅に見られたふきのとうは、うちの歯科医院の“ど根性ふきのとう”と言っていいのかもしれません。
寒い冬に耐えながら辛抱強く、懸命に生きているような“ど根性ふきのとう”の力強さを少しでももらいたい。“ど根性ふきのとう”を見ながらそのようなことを感じた、寒さに毎日震えている歯医者そうさんでした。



2008年02月18日(月) 42回目の誕生日でした

おかげさまで僕は昨日をもって42歳となりました。
かつて自分の誕生日だといえば段々と大人になっていくワクワクドキドキ感があったものですが、今となっては誕生日を迎えたからといって大きな感激があるわけでもなく、静かに誕生日を迎えたというのが正直なところです。

昨日はささやかながらも家族が僕のために誕生日を祝ってくれました。以前ほど誕生日には感慨はないと書いておきながらも、実際に祝ってもらうとそれなりにうれしいものです。今更ながら家族の有難さを感じざるをえません。

僕は独り身ではなく、家族がある。嫁さんを筆頭に9歳と6歳のチビという家族です。昨日、誕生日を祝ってもらっている間、改めて一家を支える大黒柱として家族を守っていかないといけないなあと感じた次第です。

家族の中で最近つくづく思うに、子供にはいろいろな親や親族の遺伝が伝わっているなあと感じます。
例えば、最近9歳のチビが何気なく立っている姿は横からみれば父親と非常に良く似てきました。ポケットを手に入れて立っている姿は父親を少し小さくしたかのように思えるくらいに似ています。隔世遺伝という言葉がありますが、9歳のチビの立ち姿は隔世遺伝の典型ではないかと思うくらいです。
6歳のチビに関しては、ふと見せる姿が僕の義理の兄、すなわち嫁さんの実兄にそっくりな所があるのです。かつて、義理の兄にこのことを伝えたところ、義理の兄もそのことを感じていたようで、自分の幼少期に非常に似ている面があると目を細めていたのが印象的です。

子供たちは僕と嫁さんの子供ですから、当然のことながら僕の血、僕の親族の遺伝と嫁さんの血、嫁さんの親族の遺伝とハイブリッドです。当たり前のことといえばそこまでですが、同じように僕と嫁さんから生まれたチビ二人を見ても、お互いは全く違う風貌、気質なのは不思議に思います。僕と嫁さんから受け継いだ全ての遺伝がチビたちに発現するわけではありませんが、それにしても、二人のチビの個性がこれだけ違うものかと日々感じるくらい、二人のチビの成長は異なっています。親として同じような愛情を持って、同じ環境で育てていても、同じはずの遺伝を受け継いでいても二人の個性がまるっきり違う。僕には弟がおり、弟と僕とは全く異なる個性であることは身を持ってわかっていたつもりでしたが、自分の子供に至るまで個性が違う現実を見ると、遺伝の奥深さを感じずにはいられません。

さて、二人の口元ですが、上のチビは完全に僕の遺伝です。すなわち、口全体が大きく、歯の大きさも大きい。
一方、下のチビは完全に嫁さんの遺伝です。僕は嫁さんだけでなく、嫁さんのお母さんと義理の兄さんの歯の治療をしたことがありますが、三人とも同じような口元をしておりました。すなわち、おちょぼ口、小さな口をしているのです。
このことは毎日チビたちの歯磨きをしていて感じることです。上のチビの場合、口が大きいですから歯ブラシを口の中に入れる際には余裕を持って入れることができるのですが、下のチビの場合は口が小さいため、時には口角を裂けるような時もあり、下のチビからは文句を言われることもあるくらいです。それ故、今後永久歯へ代わっていく際、歯並びがどうなるか心配するくらいです。その点、上のチビの歯並びは今の所順調で、きれいな歯並びバランスの整った噛み合わせを維持しながら永久歯と生え変わっています。

二人のチビの遺伝の違いは、口や歯の違いにも影響を与えているわけですが、二人とも僕の大切な子供です。少なくとも彼らを独り立ちさせるまではしっかりと働いていかないといけない。
42回目の誕生日を祝ってくれているチビたちの姿を見ながら、子供にいろいろなことを学ぶことがあることを改めて感じた、歯医者そうさんでした。



2008年02月15日(金) 敢えて治療回数を言わない場合とは?

患者さんに治療について説明をしている際、質問を受けることに

「治療回数はどれくらいかかりますか?」
というものがあります。

歯科治療について情報を持たない患者さんにとって、治療に要する回数は是非とも知っておきたいことの一つではあるでしょう。
僕は多くの患者さんには正確ではないと断りながらも、大体の治療回数を言うことにしています。その際、治療には予想もしないことが起こる可能性があるので、治療回数の通り治療が終わるわけではないことを十二分に説明します。

ただし、特定の患者さんには敢えて治療に要する回数を説明しないことがあります。どんな患者さんが対象かといいますと、あまりにも治療場所が多い患者さんです。
多くの歯が悪いにも関わらず、我慢をしたり放置したりしてきたものの、我慢の限界を越え来院した患者さんが少なからずいます。歯医者から見て、一体どこから手をつけたらいいのだろうか?思いたくなるほどの悲惨な口の中、歯を多数持っている患者さんがいるのです。
僕の経験では、口の中に問題箇所が多い患者さんの方が治療に要する回数を確認する場合が多いように思います。これに対し、治療を要する歯が少ない患者さんの方が治療に要する回数を尋ねない人が少ないように思います。
どうしてこのような違いがあるのでしょう?僕ははっきりと理由はわかりませんが、治療箇所が多い人の方が治療費用のことが気になったり、治療のために予定が立てられない、仕事に影響することを心配してしまうのだろうと推測しますが、僕は治療回数に対しては、曖昧に答えざるをえないのです。

その理由は、治療場所が多ければ多いほど不確定要素も多くなり、正確な治療回数を決めることができないことです。
一つ例を挙げます。20本の歯にむし歯があり、しかもそのむし歯がどれも深く進行しているような場合、むし歯を除去して詰めるだけでは済まされない、神経の処置を行わないといけないケースが考えられます。むし歯を詰めるだけの処置なら1回で済んでも、神経の処置となると数回以上増えます。しかも、神経を処置すると詰めるだけではなく、詰め物や被せ歯をしなければならない場合もあります。そうなれば、更に数回以上治療回数が必要となります。一本のむし歯の治療を終えるのに7〜8回近くかかることもあるのです。同様の処置を20本の歯全て行うとすれば、治療回数は単純に掛け算をしても140回〜160回近くになります。1週間に1度の治療であれば、140週〜160週。1年は53週ぐらいですから2.6年から3年近くかかることになります。途方も無い数字となります。

このような場合、患者さんにこの事実を伝えていいものか?僕は疑問に感じるのです。

人間は普段接している数字の大きさとあまりにも掛け離れた数字を見てしまうと、かえって実感と乖離してしまうものです。治療回数もそうで、あまりにも回数がかかることが予想される場合、いくら予想治療回数とはいえ、伝えると患者さん自身の治療に対するやる気、モチベーションが萎えてしまうことが多いのではないか?その結果、治療が続かず、中断してしまう可能性が高いように思うのです。

上記のような例は極端な例かもしれませんが、実際の所、多数の歯が悪い患者さんの場合の治療回数は上記のようなことが決して大げさではないのです。

読者の皆さんにおかれまして、歯に何らかの異常を感じた際には、なるべく早くかかりつけや近所の歯医者さんで治療を受けて欲しいと思います。我慢をし、放置していてもプラスになることは何もありません。かえって健康を悪くし、懐も悪くするだけですから。



2008年02月14日(木) バレンタインデーに間に合いますか?

「一晩寝たら大丈夫だろうと思っていたら頬が腫れてきたんですよ。」

今から1週間ぐらい前、そう言って来院した急患の患者さんがいました。
話を聞いてみると、数日前から右下の奥歯の歯ぐきに違和感があったとのこと。この患者さん、連日朝早くから夜遅くまで仕事をしていたそうで、歯ぐきの違和感は疲労の蓄積によるものではないかと思い、充分に睡眠をとることができれば回復するだろうと思っていたそうです。ところが、歯ぐきの違和感は一向に収まらず、かえって悪化。起床して鏡を見た時、自分の右頬がお多福のように変わっている姿に驚き、急遽うちの歯科医院に来院したそうなのです。

実際にこの患者さんの口の中を診たところ、右下大臼歯部に大きな腫れがあり、その腫れが原因となり、頬に波及していました。これは歯槽膿瘍というもので、歯の周囲に何らかのばい菌が感染し、膿が溜まった状態だったのです。

口全体を診たり、レントゲン写真から判断した限りでは、本当の原因は歯周病でした。もともと、この患者さんには歯周病があったのですが、健康な時には自らの免疫で何とか悪化を防いでいた。ところが、連日の仕事による疲労の蓄積により免疫が弱くなり、そのため、歯周病に侵されていた右下大臼歯部の一部が急速に悪化し、膿が溜まるような事態になったものと思われました。

このような場合、最初にしなければならないことは、言うまでも無く少しでも早く膿を出すことです。そうしなければ、膿はどんどん溜まり頬の腫れは大きくなる一方だからです。

僕は直ちに原因となっている歯の歯肉周囲に麻酔をして、直ちに切開、すると、白黄色の膿が大量に出てきました。量にすれば10ccぐらいだったと思いますが、頬が腫れてお多福のようになるには充分過ぎる膿の量です。

その後、切開した歯肉の中を何度も生理食塩水で洗浄し、残っている膿や汚れを洗い流し、切開した場所へ一枚の薄いナイロン製の短冊を入れておきました。これはドレーンと呼ばれるもので、深部に溜まった膿を出すために敢えてメスで切開した部位に入れておくものです。
人間の体はどんな傷ができても直ちに修復しようとする仕組みがあります。今回のようなメスで意図的に切開した場合もそうで、切開すればその部位を閉じようとするものなのです。今回のような腫れの場合、このような傷が閉じることは都合が悪かったのです。なぜなら、膿が深部に残っている可能性がありました。これら膿を出し切らないと完全に腫れは治りません。そのため、膿を完全に出し切るまで切開した傷が閉じないようにしなければならなかったのです。そのために傷口に敢えて挿入したのがドレーンだったわけです。

患者さんにはそのことを充分に説明し、決して大きな口を開けないようにしてもらいながら、なるべく養生するように伝えました。その患者さん、診療室を出る直前、唐突にあることを尋ねてきました。

「先生、バレンタインデーに間に合いますか?」
「微妙なところですね。一日も早く間に合うようにするために、処方した薬はきちんと飲んで、僕が言った注意事項をきちんと守って下さいね。」
「バレンタインデーに貰うチョコレートには目が無いものですから。」

さて、この患者さんバレンタインデーに間に合ったのでしょうか?間に合ったことを祈るのみです。



2008年02月13日(水) 医療費領収書の再発行について

先日、うちの歯科医院に電話がかかってきました。

「医療費の領収書の再発行はできますか?」

来週始めである2月18日から確定申告の受付が始まります。確定申告をするにあたり、様々な添付書類を準備しないといけないわけです。僕は長年懇意にしている税理士と契約しており、確定申告に関してはその税理士さんに手続きを一任していますが、それでも、様々な書類の点検は欠かせません。

皆さんご存知のことと思いますが、前年に支払った医療費は保険金などを差し引いた額が、10万円以上、または所得金額の5%のいずれか少ない金額に対し、還付申告ができます。ただし、医療費控除には医療費を証明する領収書の添付が求められています。

毎年、確定申告が近づくと、医療費の領収書を求める患者さんが数多くいるのが常でした。
毎年今頃には何人もの患者さんが前年の治療費を月ごとにまとめた領収書の発行するように言われたものです。うちの歯科医院でもそのような患者さんの求めに応じて領収書を発行していたものです。

医療機関では2年前から医療内容の明細が書かれた医療費の領収書の発行が義務付けされました。これは医療費の不正請求を防ぐために設けられたもので、毎回の治療終了時に患者さんに手渡さないといけないのです。うちの歯科医院でも全ての患者さんに毎回の治療終了時に領収書を手渡しています。患者さんに対しては大切に保管するようにお願いしています。

ところが、毎年確定申告の時期になると必ずといっていいほど医療費の領収書について問い合わせがきます。中でも多いのが医療費の領収書の再発行です。患者さんの中には毎回の治療終了後に発行された領収書を何らかの理由で紛失してしまったため、再発行を求めるような方がいます。冒頭にかかってきた電話もそうした領収書の再発行についての問い合わせだったのです。

うちの歯科医院では、領収書の再発行は断っています。

そもそも、領収書については民法に規定があるようで、領収書の発行は1度だけでよく、再発行をする義務はないとされています。再発行する際には、その領収書が再発行であることを明記したものを発行すればいいとされているようです。法律上は再発行可能なようです。

以下、僕の独断ですが、そもそも領収書というのは、領収書に書かれた金額の受け取ったことを示す書類です。いくら再発行だとはいっても再発行ということは領収書を2枚発行することになります。こちらがお金を受け取っていないのに領収書を発行することが果たしていいのかどうか?僕は非常に疑問に感じるのです。

また、患者さんを信頼していないというわけではないのですが、再発行した領収書を二重控除として悪用される可能性もないことはありません。再発行であることを明記していれば問題がないとはいっても、領収書を再度発行することは、歯医者である僕にとって非常に抵抗感があるのです。

厳しいことを書くようですが、そもそも領収書を紛失することは全く同情の余地はないと僕は考えます。特に、医療控除を考えれば、治療費を記した領収書の保管はいい加減なことではいけないはずで、これを紛失してしまうということは、医療費控除を受けるつもりはないことを自ら示しているように感じられてならないのです。
医療機関が出す領収書の発行経費は、医療費の中に含まれるものとして、実質医療機関の持ち出しとなっています。このことをご存知ない方が多いかもしれませんが、毎日何枚もの領収書を発行する経費は決して馬鹿にはならないものです。多くの医療機関で、領収書の再発行は認めていない背景にはこうした現実があるのです。もし、認めるとしても発行に発生する経費を請求することがあるくらいです。

かつて、毎回治療終了後の領収書の発行が義務付けられていなかった時は、うちの歯科医院では確定申告の際の領収書の発行は無料で行っていました。一種の好意として行っていたのですが、毎回領収書を発行するような態勢になってからは、行っておりません。

皆さんにおかれましては、医療機関で発行された領収書は、紛失することがないように大切に保管して欲しいと思います。



2008年02月12日(火) 地域医療を潰そうとする厚生労働省の愚策

昨日、ニュースを見ているとこのような記事が載っていました。以下はこの記事の引用です。

宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波誠医師(67)らによる「病気腎」移植をめぐり、厚生労働省は10日、万波氏が25件の病気腎移植を手がけた前勤務先の同市立宇和島病院に対し、保険医療機関の指定を取り消す方針を固めた。不正な保険請求やカルテの一部破棄が監査で確認され、悪質と判断した。取り消し期間は原則5年だが、地域住民への影響を考慮して1カ月に短縮するほか、患者の医療費負担が増えない方向で最終調整している。
 万波氏は宇和島徳洲会病院でも病気腎移植を11件実施しており、同病院についても同様の行政処分が検討されている。
 病気腎移植問題が表面化した06年秋以降、厚労省や愛媛社会保険事務局などは1年以上にわたって両病院を監査し、診療記録などを調べた。その結果、市立宇和島病院では、同省の規則に違反して、特殊または新しい療法とされる病気腎移植の診療報酬を保険請求していたほか、ほかの診療でも不正請求が相当数見つかったという。同省は、これら不正請求分の返還も病院側に求める。
 さらに、病気腎移植を受けた患者のカルテの一部が、治療終了後5年間の保管義務に反して破棄されていたことが判明。同省は腎臓摘出患者や移植患者への説明も不十分だったとみている。
 指定取り消し期間について、同省は大型連休で患者への影響が最も少ないとみられる今年5月の1カ月間とする方向で検討。期間中、健康保険証が使えない病院となり、患者は医療費の全額負担(通常は3割)を強いられるが、「療養費委任払い制度」を適用し、病院側が医療費の7割分を各健保組合などに請求することで混乱が避けられるとしている。
 同病院は県南部唯一の救命救急センターが併設された中核病院。指定取り消しが地域医療に与える影響が大きいとして、加戸守行知事らが国に指定継続を要望していた。
 保険医療機関の行政処分をめぐっては、診療報酬の不正請求が明るみに出た藤枝市立総合病院(静岡県)が昨年10月、1カ月間の指定取り消しとなり、療養費委任払いが適用されている。


以前、僕は病気腎移植に是非については書いたことがあります。今回は敢えてこのことについては触れません。それよりも僕が気になったことは、一人の医師の行ったことが病院全体まで影響が波及し、罰則の対象になっていることです。すなわち、地域の中核病院ともいえる総合病院全体での保険医療機関取消処分が果たして良いものかということです。

宇和島病院にしても藤枝市立病院にしても問題になったのは一部の診療科、一部の医師であるはずです。本来であればこれら一部の診療科、一部の医師に対して何らかの罰則が行われなければならないはずなのに、何か連帯責任のように病院全体に罰則を適用するというのは如何なものかと思うのです。
伝え聞くところによると、総合病院は病院として保険医療機関の登録をしている関係上、保険医療期間の取消は、問題を起した診療科単位で行えない事情があるそうですが、僕はこれは非常に頭の固い、柔軟性のことだと思うのです。

現在、地域医療の崩壊が全国のあちこちで叫ばれています。全国の病院では医師不足によりいくつもの病院の診療科や病院そのものが閉鎖される事態となっています。都市部においても救急医療態勢が組めず、多くの救急処置を必要とする患者さんがあちこちの病院をたらい回しにされ、救急搬送されない事態が社会問題化しています。地域の中核病院は、地域医療にとって非常に貴重な医療機関であるのです。ただでさえ危機的状況にあるにも関わらず、厚生労働省は一罰百戒であるが如く、病院の保険医療機関取消を行い、地域医療を麻痺させ、地域住民を混乱させようとしてます。これはどう考えても愚策であるとしか思えません。

保険診療の不正請求に携わった担当医、診療科は問題であるとは思いますが、問題を病院全体に押し付け、病院としての機能を停止させ、地域医療に混乱を与えることが果たして良いことなのでしょうか?
愛媛県知事は桝添厚生労働大臣に対して、宇和島市立病院の保険医療機関取消処分に対し嘆願をしていますが、これは宇和島地域の人たちの切実な訴えだと思うのです。もし、厚生労働省が、例え1ヶ月にせよ宇和島市立病院の保険医療機関取消処分を行うならば、宇和島地域の人たちは大変な迷惑を被ることは確実です。宇和島地域医療が崩壊してしまう可能性さえあるのです。

厚生労働省は影響の少ない5月に処分を検討しているそうですが、本当に影響が少ないのでしょうか?僕はむしろ逆だと思います。総合病院の通常の診療日数は確かに少ないですが、総合病院には祝祭日には救急病院としても任務、使命があるのです。多くの一次医療機関が休診している時には総合病院が受け皿として救急医療を担わないといけないのです。そんな病院で保険証が使えず、かかった医療費を全額自己負担しなければならない。
医療費委任払い制度を適用するという話ですが、これにしても諸手続きが必要であり、窓口で保険証を提示すればかかった医療費の3割(一部の人は2割や1割)負担するだけで良い状況とは根本的に異なります。医療費の支払いについてはたとえ1ヶ月の期間であったとしても、病院側にも患者側にも相当な混乱があるはずです。
ただでさえ、地域医療の困窮が伝えられる中、更なる混乱を意図的に作るような状況を厚生労働省は行おうとしているのです。これを愚策と言わずして何と言いましょう。

どうも、厚生労働省の関係者は地域医療の現状をご存じない、現場を知らない人が多いようです。どうかもっと柔軟に医療政策を行って欲しいと願わずにはいられません。



2008年02月11日(月) 便器の外に小便を飛ばす患者

うちの歯科医院では午前の診療終了時と午後の診療終了時にトイレを掃除するようにしています。よく言われていることですが、トイレの管理というのは歯科医院にとって非常に大切なことです。普段、患者さんの歯の健康の大切さを訴え、歯磨き指導や歯の治療を行っている歯医者ですが、歯や口の中の清潔さの重要性を説いていても、自らの歯科医院のトイレを清潔に保ち、管理できていなければ歯医者の言うことは説得力が無いと言われても仕方がありません。歯科医院のトイレ管理は口の中の管理にも通ずるものがある。これが僕のモットーです。

トイレを常に清潔にするように心がけてはいるのですが、それでも閉口するのが患者さんのトイレの利用方法です。手洗い場で水道水を撒き散らしてしまう患者さん、手拭用ペーパータオルを大量に使用してしまう患者さんなどはまだ良い方です。最も困ってしまうのが、小便を便器の外に大量に飛ばししまう患者さんです。
かつて、うちの歯科医院ではトイレ掃除は一日の診療が終わった時の一度だけでしたが、ある時、午前の診療が終わってから何気なくトイレを確認した時に僕は唖然としたのです。それは、洪水のような小便が便器の外に溜まっていたからです。これでは、次にトイレを利用する人が目を背けてしまうし、トイレを利用するのも憚れる。うちの歯科医院でトイレを管理できていないことがまるわかりになってしまう。そんな危機感を感じた僕はトイレ掃除を一日二回に増やすようにしたのです。

幸い、今のところトイレに関して苦情は出ていませんが、それでも、便器の外に小便を飛ばす患者さんは後を絶ちません。うちの歯科医院のトイレは洋式便器ですから、便器の外に大量に小便を飛ばすのは男性患者さんの可能性が高いでしょう。僕自身、洋式便器で小便をする際、なるべく小便を便器外へ飛ばさないようにしているつもりですが、それでも便器外へ飛ばす時があります。便器外に小便を飛ばした時は、最低限トイレットペーパーで飛ばした小便を拭き取り、便器の中へ入れるようにしていますが、これは最低限のマナーだと思うのです。自分専用のトイレならいざしらず、ほとんどのトイレは自分以外の人が利用します。次に利用する人が気持ちよくトイレを利用しやすいようにしておくことは、最低限の礼儀、マナーだと思うのですが、世の中にはこのことに気がつかない、無関心な人たちが確実にいるようです。

公衆トイレを利用すると、”トイレを清潔に使うようにしよう”という掲示があるものですが、男性が使用する立小便用の便器の外にも小便が溜まっていることを目にすることが多いのが常です。自分が便器や便器の外を汚しても知ったものじゃない。自分の小便さえよければそれで良いと考えている人がいる世の中。たかが小便かもしれませんが、一事が万事。小便を平気で便器外へ飛ばしてしまう人の日常生活を想像するのが怖く感じるのは僕だけでしょうか?



2008年02月08日(金) 皆勤賞を目指す子供

昨年、僕は下のチビが通っていた幼稚園のPTA会長をしていたのですが、任期最後の仕事が卒園式への出席でした。卒園する園児や保護者に挨拶をしたのですが、僕が出席した卒園式の中で印象に残ったことがありました。それは、3年間の幼稚園生活で一日も休まず出席しつづけた、皆勤賞の園児がいたことです。皆勤賞に該当する園児は一人だけで、名前が披露され、園長から直接表彰状が本人に手渡されました。いくら幼稚園児とはいえ、3年間で一度も欠席しなかったことは大したものだと感じたものです。
僕の幼稚園時代を振り返るに、肉体的にも精神的にも軟弱でしたから何回も幼稚園を休んだものです。むしろ、自分では大したことを感じなくても親が休ませるということであれば、幼心ながらに“ラッキー”と思い、喜んでいたものです。

先日、嫁さんから聞いた話では、嫁さんの友人の子供にも皆勤を目指している子供がいるのだとか。子供の皆勤と聞くと、保護者である親の意向が影響しているように思いがちですが、その子供の親は全く皆勤に対して執着心はなく、無理をしてでも幼稚園には行かせないと考えている人なのだとか。皆勤に対して執着心があるのは子供の方だというのですから驚きです。たとえ、風邪をひいてお腹の調子が悪くても、怪我をしていても幼稚園には絶対に行くと言って聞かないのだとか。親が幼稚園を休ませようとでもするようなら、泣き叫び、“今日も幼稚園だけは絶対に行くからね”と言いまくるのだそうです。

思い出せば、僕の高校時代にも皆勤を目指していた友人がいました。誰か好きな彼女がいるとか、勉強が楽しいとかクラブ生活に邁進するとかいったことは全く無かった友人でした。特に成績が良いとかスポーツが得意であるというわけでもありませんでした。けれども、学校を出席し続けるということに関しては非常なこだわりがあったようで、体調がわるくても這ってでも学校へ通い続けておりました。結果的に、彼は皆勤賞を取り、卒業式の際、皆の前で表彰されました。彼の顔は自分の目標を達成した満足げな顔をし、目には涙を浮かべていたのが今にも僕の脳裏に焼きついています。

僕自身、幼稚園時代だけでなく、その後の小学校、中学校、高校、大学生活を通じて皆勤は全く無かった身だけに、皆勤はなかなかできるものではない、立派なことであることはわかるのですが、どうして皆勤にこだわるのかまではよくわかりません。ただ、人にはそれぞれの価値観があります。皆勤というものに生きがいを感じる価値観を持つ人が世の中には確実に存在する。そのことはどうも確かなようですね。



2008年02月07日(木) 日記を書く時間が取れなかった・・・

昨日は日記を休ませてもらいました。

僕自身のこだわりの一つですが、“忙しい”という言葉を言いたくない、できることなら使いたくないと考えています。その訳は、“忙しい”という言葉には何らかの言い逃れ、言い訳のニュアンスが含まれているように思えてならないからです。

自分を振り返ってみると、“忙しい”感じている時は何かの仕事が重なり、精神的に追い込まれ、気持ちの余裕が無くなっている時が多いように思います。冷静に考えれば大したことはないのに、ついつい気持ちのゆとりがなくなり、結果として”忙しい”と感じてしまう。そして、ついつい“忙しい”と言ってしまいたくなるのです。

”忙しい”と感じた時ほど、僕はなるべく時間を作ろうと努力してきました。”忙しい”と考えている暇があれば、限られた時間の中に少しでも有効に利用できる時間をみつけ、その時間内にできることをみつけよう。そんな風に考えながら一日を過ごしてきたつもりです。

“歯医者さんの一服”日記も毎日の限られた時間内で少しでも日記を書く時間をみつけ、書いてきたつもりでしたが、一昨日から昨日にかけては落ち着いて日記を書く時間を見つけることができませんでした。
診療の合間に仕上げなければならない雑務や作業が数多くあり、全くそれらを終わらせる見通しがたたなかったのです。しかも、年明けから続いている風邪の影響で体力的にもつらいものがありました。そのため、どうしても睡眠を削ってまで日記を書く時間を確保することができませんでした。

もっと時間を有効に活用できる人であれば、まだまだ時間活用が甘いという指摘をうけそうですが、そのような指摘は甘んじて受けようと思います。ただ、今の僕の能力ではどうしても日記を書く時間を確保することができず、仕方なく昨日は日記を休んでしまいました。

何だか今日の日記は言い訳に終始していますね。自分で書いていて情けないです、ハイ。



2008年02月05日(火) 口の中から見つける虐待

昨日、インターネット上でニュースを見ているとこのようなニュースがありました。

三重県歯科医師会と同県がネグレクト(育児放棄)などの虐待を受けている児童に虫歯が多いことなどを歯科医たちに伝え、検診時の対応マニュアルなどを配布したところ、歯科医の関心が高まって実際に通報するケースが増えてきたとのこと。同会と県がこのほど津市で開いた「日本子ども虐待防止学会」で報告したそうです。
同会と県が05年度に行った調査によると、虐待を受け保護が必要な児童の虫歯経験率は通常の1.5倍に上る一方、処置率は約4分の1と極めて低く、06年3月に同会の会員(約860人)に実施したアンケートでは、歯科医師の約4割が「検診でネグレクトの疑いを持ったことがある」としながら、市町や児童相談所に連絡した例はなかったとのこと。
このためこうした場合の対応マニュアルなどを記したパンフレットを作製し配布。その結果、07年5月の2回目のアンケートでは「ネグレクトという言葉を知っている」と回答した歯科医が87.9%(前回63.3%)に上り「虐待を発見した時にどこに通報すればよいか知っている」と答えた歯科医も57.3%(前回45.9%)に上昇。実際に通報した例も3件出てきたそうなのです。
 これと別に同県内の学校歯科医と養護教諭を対象にした07年10月の調査では「検診で虐待を疑い、学校に指摘した」と答えた学校歯科医は28件に上ったそうで、同会は07年度から、県内の児童相談所のうち2カ所で年1回、要保護児童の無料検診もしているそうで、同会幹部の一人は「児童虐待の抑止力を高め、子育てを支援したい」と話しているとのこと。


僕も地元小学校の学校歯科医として、そして、他の小学校への学校検診を手伝いに行くようになってから10年以上経過していますが、年々児童、生徒のむし歯の数は減少しています。この結果は様々な調査ではっきりと現れており、僕が検診をしていてもそのことを感じます。それ故、むし歯がある児童、生徒、特に、むし歯がたくさんあり、放置されたままの児童、生徒は検診をする歯医者の目から見れば、非常に目立つのです。

学校検診は学校保健法の規定により毎年6月30日までに必ず行わないといけない検診ですから、1年に1度は必ず定期的に児童、生徒たちの口の中を診ることになります。地元小学校の学校歯科医として毎年児童、生徒たちの口の中を見ていれば、彼ら彼女らの口の中の変化を定期的に見ることにもなるわけですが、その際、多くのむし歯がありながら放置されたままの状態であれば、直ぐにわかってしまいます。
児童、生徒たちの口の中の管理は、親の子供たちへの関心度と比例します。児童、生徒の口の中の状態が悪いということは、家庭の中に何らかの問題があるとみて間違いはありません。これまでも僕は歯が悪いまま放置されている児童、生徒は個別に検診票にチェックをしたり、担任の先生や養護の先生に名前を挙げて対処するようにお願いをしていたわけですが、担任の先生や養護の先生も歯の悪い児童、生徒には関心が高いようで、何とか歯の治療に歯医者へ通院してもらうよう説得を試みているようです。
残念ながら、このような児童、生徒の保護者たる親は何回も説得して歯医者へ通わせることをしないことが多いようで、中には児童、生徒たちに虐待をしているようなケースがあったようです。

外部の者が子供の親からの虐待を防止するというのは、親権の問題があり非常に難しいところがあります。虐待を繰り返している親は子供に虐待をしていることを周囲に言いませんし、その意識も無いことが多い。一方、虐待を受けている子供は親が全てであるわけですから、一方的に虐待を受け続け、精神的にも肉体的にも傷を負うばかり。
明らかに虐待を受けているとわかるようなケースでは公権力を持って親権を抑える必要があると思うのですが、そのためにも虐待を受けている証拠、兆候が周囲で把握できないと対処できないのも事実。

幸い、歯の検診というのは保育園や幼稚園に入園すれば、必ず受けるもの。虐待の兆候が歯に現れることが多いのであれば、検診医の果たす役割は極めて重要だと言えます。最近では、虐待の兆候が見られる子供を診た歯科医が通報をする義務があります。例え、誤報であったとしても罪には問われない。それくらい、歯科医が子供の虐待に果たす役割が大切だということなのです。

歯医者として、歯の検診が子供虐待の防止につながる意味をこれまで以上に肝に銘じておこうと思います。



2008年02月04日(月) 付け届けの中身は大量の・・・

「先生、つまらないものですけども召し上がって下さい。」

先日、ある患者さんから下の写真のようなものを頂きました。





付け届けです。これまでも何回か付け届けを頂いたことがあります。患者さんからは治療にかかる治療費は頂きますが、付け届けに対しては全くこちらから強制することはありません。ところが、実際の患者さんの中には付け届けを持参する方がいます。この付け届けを受け取るべきか?うちの歯科医院では、付け届けは基本的に受け取ることにしています。個人開業の歯科医院ですし、患者さんに何かの意図があるというわけでなく、高額のものではない限り、患者さんからの純粋な気持ちとして受け取ることにしています。
今回の患者さんの付け届けも有難く受け取ることにしたのですが、上の写真のようなものでしたから僕は何かの生ものケーキのように思いました。

「知り合いから貰ったものですけども、私だけで食べきれませんから。」

“そんなにたくさんのケーキをもらったのか?”と少々驚きながらも、僕はスタッフに診療所の冷蔵庫に保管するようにお願いしました。





一日の診療終了後、冷蔵庫に保管していた付け届けを確認しようとしました。ケーキですから長期間置いておくのはもったいない。早いうちに食べてしまわないといけない。僕はケーキの箱を開けたのですが、開けた箱の中身を見て僕は面食らいました。








箱の中にはこのような三種類のチョコレートが




大量に入っていました。






実際に数えてみました。全部で295個。ほぼ300個のチョコレートが入っていたのです。僕がケーキとばかり思っていたのは、単に箱を見た先入観からで、実際の箱はチョコレートを入れるための容器に過ぎなかったのです。
思わず失笑してしまった歯医者そうさん。これまで何年も歯医者をしてきましたが、このような大量のチョコレートを頂いたのはこれが初めてです。

結局のところ、スタッフには大量のチョコレートを持って帰ってもらいましたが、スタッフに持って帰ってもらってもまだ大量に余っていたチョコレート。スタッフの休憩中の間食用と我が家のおやつとして頂くことにしました。

歯医者に対して大量のチョコレートの付け届けというのもユニークな発想だとは思いますが、それにしても世間にはいろいろな考え、発想の人がいるものだと感心した、歯医者そうさんでした。



2008年02月02日(土) 患者と共に年を重ねる

先日、僕の出身歯科大学関係の先輩、後輩と話をする機会がありました。いろいろと話をしたのですが、ある後輩の歯医者が興味深いことを言っていました。

「僕は自分の歯科医院を開業して3年になるのですけど、義歯を作るケースが少ないですよ。一ヶ月に一回あればいいくらいです。開業する前はもっと多いものかと思っていたのですが、意外でしたよ。」

この手の話はよく耳にします。都市部で患者さんが比較的若い人が多い地区で開業している歯科医院では、歯周病やむし歯で多数の歯を失った人が少ないのです。その結果、多数の歯を失った患者さんに対して行う義歯を作るケースがないのです。
その一方、農村部で高齢者の多い地区で開業している歯科医院では、大半の患者さんが義歯を使用していることが多いものです。義歯の調整や修理、そして、新しく義歯を作るようなケースが毎日あります。
今の若い世代の歯医者は、都市部で歯科医院を開業する傾向が強いところがあります。今でも歯科医院が過剰な地区であったとしても都市部に対する憧れ、生活のしやすさ、利便性などの理由があるとは思いますが、若い世代の人が多く、口の中に関心を持っている人が多いところでは、自ずと多数の歯を失い、義歯を求める患者さんは限られてくるのでしょう。都市部で開業した歯医者は、義歯を作るケースが限られてくるのではないか?
そのような話をしていると、同席していた先輩のY先生が興味深いことを言いました。

「確かに都市部では義歯を作るケースは限られるところがあるけど、それだけではないと思うよ。なぜなら、若い世代の歯医者の下にやってくる患者さんは若い世代の人が多いという側面があるのじゃないかな?かつての私もそうだったよ。開業した時は高齢の人は少なかった。ところが、開業して何十年も経過するとね、何人もの患者さんがかかりつけ歯医者として通ってきてくれる。ということは、患者さん自身も年齢を重ねてくるということなんだよ。年を重ねるということは、歯を失う機会も増えてくる。本当はどんなに年を重ねても歯を失って欲しくないんだけど、不幸にして多数の歯を失う患者さんもいるものなんだよ。そうなれば、義歯を作ることになるだろう?歯医者もね、患者さんとともに年を重ねるんだよ。年を重ねれば義歯のケースが自ずと増える。義歯を作ったことが少ないと言うことは、まだ歯医者自身も若いのではないか?そう私は考えるね。」

ベテランの歯医者Y先生の言うことは説得力があります。患者さんが年を重ねるとともに自分も年を重ねる。何人もの患者さんに長年慕われ、信頼されているY先生ならではの意見だと感じました。僕自身、今から何十年も後に今の患者さんが来院し続け、義歯を作るような境遇になるかどうかは定かではありませんが、一つの目標としたい。そのような気持ちを強くした、歯医者そうさんでした。



2008年02月01日(金) 2月月始めに悩むこと

今日は2月1日です。歯医者である僕がいつも月始めにしなければならないことは、前月に来院した患者さんの診療報酬明細書(レセプト)の作成です。レセプトを作成する作業は、歯科医院のみならず全ての保険医療機関で行われている作業ですが、うちの歯科医院でも今日から1月分のレセプトを作成しなければなりません。

かつて、医療機関にとって月始めレセプト作成作業は一大重労働でした。手書きカルテを見ながらカルテに書かれた治療と治療に対する保険点数を確認し、そのとおりにレセプト用紙に書き写し、一月単位の合計点を計算し、記入する。全てのレセプト用紙の合計を更に合算し、総計を出す作業を行っていました。1枚や2枚程度のレセプトであれば苦にはなりませんが、これが百枚単位での作成となると相当大変な作業となります。しかも、レセプト提出期限は基本的に毎月10日ですから、月が始まってから10日間は、先生のみならず、スタッフや家族さえ総出でレセプト作りにいそしんでいたものです。
パソコンが普及した今では、一日の診療のデータを専用ソフトにインプットしていけば、月初めにはボタン一つで全ての患者さんのレセプトを作ることができ、総計も簡単に集計することが可能です。全て手書きでレセプトを作っていた頃を思えば、随分と作業が効率化し、仕事量が減少したものです。

昨日の診療が終わってから、僕はレセプトを作成する前段階としてパソコンのソフトで1月の総計を出してみました。結果は・・・非常に頭の痛い結果となりました。
考えてみれば、昨年の年の瀬、12月に何人もの患者さんが治療を終えておりました。年を越すために年末までに全ての治療を駆け込みで行っていた患者さんが多くいたわけです。その結果、年を越して治療を受ける患者さんの数が限られていたのです。
また、正月休みがあったことから、一月あたりの診療日数は少ないものでした。しかも、今年は年初めから寒波がいくつも襲来し、寒い日が続いています。寒いだけならいいのですが、あまり雪の多くない当地でも何度か朝から雪が積もりました。雪の多い北国の人であれば、雪のある暮らしというのは冬場の日常でしょうが、雪が少ない当地においては、雪が降れば非日常です。多くの患者さんが車で来院するうちの歯科医院では、雪が降った日の朝は車で来院するにはプレッシャーである、事故を起こしたくないということから当日キャンセルが多くありました。実際に診療所を開いていても、予約していた患者さんが来院せず、開店休業状態だった日が何日かありました。
以上のようなことから、うちの歯科医院での1月の経営状態は芳しくないものとなりました。
レセプトに書かれた診療報酬分は2ヵ月後に各健保組合から支払われるのですが、1月の診療分は3月に支払われます。ということは、1月の経営状態は3月に書く健保組合から支払われる診療報酬に影響してきます。1月に実入りが少なければ、その影響は3月に出るということです。

今から3月のことを戦々恐々としている、歯医者そうさんでした。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加