歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年12月31日(日) 良いお年をお迎え下さい

今日は大晦日。平成18年(2006年)も今日で最後となります。

一年の最後を締めくくるにあたり、読者の皆さんに感謝の言葉を捧げたいと思います。
僕は毎日“歯医者さんの一服”の解析ログを見ているのですが、数多くの方が僕のサイトを訪問して下さっていることに驚かされます。中には、何年もにわたり僕のサイトを訪問して下さっている方も少なくありません。おそらく、訪問して下さっている方のほとんどの方のお顔を拝見したことはないはずです。それでも僕のサイトに興味を持って頂き、継続的に訪問して下さっている方がいらっしゃるということは、僕が日記を続けていく励みになっております。この場を借りて御礼申し上げます。

来年はどんな年になるか予想もつきません。今年よりも少しは楽になるところもあれば、逆のこともあるでしょう。先のことを考えても仕方がありません。一日一日しっかりと生きていくことをモットーに、仕事、家庭生活、そして、“歯医者さんの一服”日記の更新をしていきたいと思います。

皆さんにとりまして、来年が実りある、素晴らしい年でありますことを心より祈念しております。



2006年12月30日(土) 0歳の子供の歯の救急治療

数年前のちょうど今頃、うちの歯科医院は正月休みに入ったのですが、応急処置をして欲しいという連絡が入りました。電話で話を聞き、直ちにうちの歯科医院へ来るように指示を出した歯医者そうさん。

電話からほぼ20分後、患者はお母さんに抱かれてやって来ました。実は、今回の患者はまだ0歳10ヶ月の赤ん坊だったのです。お母さんに抱いてもらいながら診療台に座ってもらい、早速患者の歯をみたところ、下の前歯2本の周囲歯肉から出血があり、歯そのものが唇側にほぼ水平に傾いていました。これは亜脱臼と呼ばれるもので、完全に歯が抜け落ちていないものの、歯肉や歯を支えている線維によって何とか繋がっているだけで、顎の骨から抜けている状態だったのです。

話を聞いていると、赤ん坊の患者はアルミ製の箱のようなものを噛んでいたようで、箱の隅に下の歯がひっかかり取れなかったとのこと。そこで、お母さんが強引に取ろうとしたところ、歯が前に傾き、亜脱臼を起したようだったのでした。
このような場合、一刻も早く亜脱臼した歯を元の位置に戻してやらないといけません。僕は、時間勝負と判断し、麻酔無しに強引に歯を元の位置に戻してやりました。幸い、歯は何とか元に戻ったのですが、仕方がなかったこととはいえ、赤ん坊の患者は大泣き。

「さぞ痛かっただろうなあ、ごめんな、でも、こうしないと治らないからなあ!」
そのようなことを言いながら、更に止血を行った歯医者そうさん。

何とか亜脱臼した歯は元に戻ったものの、術後が心配でした。本来なら、亜脱臼した歯は元の位置に戻せば他の歯を利用して固定してやらないといけないのですが、患者は0歳10ヶ月の赤ん坊。まだ、他に歯が生えてきていないため、隣の歯と固定ができません。しかも、患者は哺乳瓶で飲んでいるような状態。僕は当日は哺乳瓶を避けてもらい、翌日からは様子を見ながらなるべく亜脱臼した歯の位置を避けながら哺乳瓶を使うように伝えました。そして、何回か経過を見ていく必要があることも伝えたのです。

幸い、患者は直ぐに泣き止み、歯の状態も落ち着いているようだったので、帰宅してもらいました。その後、何度か経過を見ていったのですが、亜脱臼した歯は若干唇側に傾いているような状態でしたが、上の乳歯とのかみ合わせも何とか問題なく、落ち着きました。ほっと胸をなでおろした歯医者そうさん。

それにしても、赤ん坊というのは何をしでかすかわかりません。赤ん坊をお持ちのお母さん、日頃から何かと子育ては大変かと思いますが、もし歯のことで何かトラブルが生じたようなら、迷わず歯医者を訪問するようにして下さいね。時間が勝負ですから。



2006年12月29日(金) お年玉で思ったこと

昨日が仕事納めだったうちの歯科医院。今日からのんびりとしたいといきたいところですが、部屋の整理や診療所の掃除などなどしなければいけないことが目白押しです。そのような中で早々にしなければいけないことはお年玉の準備です。いつもお年玉は新札を準備しているのですが、この時期、銀行で新札に換えようとするとかなり早くに行かないと交換してくれないのですよね。皆考えることは同じみたいで、年末に銀行で新札に換えようする人は多いようです。おそらくその大半はお年玉用の新札交換ではないかと勝手に考えております。

さて、お年玉についていつも考えるのはその額です。一体どれくらいの額を与えたらいいのだろうという悩みです。インターネットでいろいろと検索をしていると、相場は概ねこのようですね。

幼稚園以下           1000円
小学生低学年         3000円
小学校高学年〜中高校生  5000円
大学生             10000円

うちの場合、子供たちは小学2年生と幼稚園年中生ですので、3000円と1000円ということになるでしょうが、この差というのが微妙なところで、弟の方は兄貴よりも少ない額に結構反応します。どうして兄貴の方が多いのだろうと文句を言うのです。
うちでは、弟が赤ん坊の頃、お年玉は与えませんでしたが、3歳ごろ与え始め、今では兄と同額、すなわち、3000円を与えるようにしています。兄弟同額というわけです。これがいいかどうかというのは判断が難しいところではありますが、うちの現在の兄弟の年齢と兄弟関係を考えると、差をつけないほうがいいのではないかと思い、同額にしています。

うちにはその他に若干の親戚の子供がいますので、その子供には上記の相場を参考にお年玉をあげるようにしています。いずれにせよ、子供の頃、楽しみにしていたお年玉ですが、今となっては与える立場。出費しなければいけない立場です。せっかくのお正月とはいえ、物入りな正月になってしまうのは仕方がないことですね。

さあ、これから銀行に行って、お年玉用のお札を新札に交換しに行かなければ・・・。



2006年12月28日(木) 今年注目された女性有名人口元チェック

テレビやラジオの番組を見聞きしていると、今年一年間を回顧するような番組が報じられています。そりゃそうでしょうね、平成18年(2006年)は今日を含めてあと4日しかないわけですから。
“歯医者さんの一服”日記は31日まで毎日更新するつもりですが、今日は久しぶりに、そして、今年を回顧するという意味も含め、今年目だった有名人の口元について書いてみたいと思います。ただし、僕は自他共に認めるスケベ野郎ですので、女性有名人の口元で印象に残った人を書いていきます。

一人目はえびちゃんこと蛯原友里。CanCamモデルであった彼女が今年大ブレークし、彼女が身に付けるファッションが20歳代の女性を中心に与えて影響は計り知れないものがあります。今年はモデルだけでなく、テレビドラマやタレント業にも進出し、活躍の場を広げたことは記憶に新しいところです。
そんなえびちゃんですが、彼女の上の前歯はメタルボンド冠と呼ばれる陶材で前面を被った被せ歯です。彼女の天然の歯の色調からみれば若干白すぎるように思うのですが、彼女のメークやヘアスタイル、ファッションのバランスからすれば、若干白すぎる被せ歯もそれなりに魅力的に見えるのではないかと思います。

そうそう、今年目だったというよりも既に有名になっているのですが、同じCanCamモデルで最近は女優や歌手として活躍している山田 優ですが、彼女の上の前歯も天然歯ではありません。えびちゃんと同じようなメタルボンド冠、もしくは、ラミネートベニアを装着しているように思います。
ちなみに、ラミネートベニアとは、歯全体を削らず、歯の前面を削り、削った部分に陶材でできた殻のような詰め物のことです。歯を削るといっても歯の表面にあるエナメル質だけを削ることから歯を必要以上に傷めることなく、審美を得ることができる方法です。このラミネートベニアは僕が某歯科大学の学生時代からあったもので、既に20年以上の歴史がありますが、世間的にはまだまだ知られていないようです。その理由は、ラミネートベニアには適用できる人が限られていることと、技術的に若干難しいこと、そして、耐久性に問題があることがあるようです。

山田 優が出ましたので同じ優つながりというわけでもありませんが、映画フラガールで一躍脚光を浴びた蒼井 優。一説に寄れば、主役の松雪泰子を食ったとも言われる彼女ですが、僕は彼女の存在を某テレビ局のドキュメンタリーで初めて知ったのですが、同世代の女優の中では飛びぬけた才能の持ち主であり、役者バカのように思いました。妥協を知らない完ぺき主義者です。現在、彼女のような20歳代前半世代の女優は何人も注目を浴びていますが、間違いなく彼女はこれからも存在感のある女優として生き残っていくであろう存在のように思いました。
そんな彼女の写真を某店でたまたま見る事があったのですが、そこで僕が気になったのは右上の第一小臼歯(犬歯の後ろの歯のことです)にレジン前装冠と呼ばれる被せ歯があったことでした。
犬歯の後ろの歯である第一小臼歯は結構目立つ歯です。ニヤッと笑った口元を見ると、ほとんどの人は上の第一小臼歯が口角付近に見えるものです。保険診療では、第一小臼歯より後ろの歯は全て銀歯しか認められていません。犬歯までは前をレジンと呼ばれるプラスチック材料で被った被せ歯(レジン前装冠)が認められているのですが、第一小臼歯より後ろの歯は認められていません。上の第一小臼歯は目立つ歯でありながら、いざ保険診療で被せ歯ということになると銀歯にせざるをえないのです。僕は患者さん、特に女性の患者さんには、上の第一小臼歯を被せ歯にする場合、保険診療を勧めない理由がここにあります。奥歯であればまだしも人から目立つ場所にある上の第一小臼歯であれば、少なくともレジン前装冠、できればメタルボンド冠を装着することを勧めます。
話をもとに戻しまして、蒼井 優の右上第一小臼歯はレジン前装冠が装着されているのですが、顔が商売の女優であれば、ここはもっと審美が良いメタルボンド冠に代えた方がいいのではないかと感じました。

レジン前装冠で思い出したのが、安倍総理大臣夫人である昭恵夫人。安倍総理誕生前後からマスコミに露出する機会が多くなった昭恵夫人。安倍総理との結婚にまつわるエピソードや一時期ラジオのDJもしていたという経歴、はたまた韓流ドラマの熱烈なファンであるというエピソードなどからマスコミに取り上げられることが多かった昭恵夫人。おそらく、小泉前総理が離婚して以来再婚せず、独身を通していたことから、対照的に取り上げられる機会が多かったということもあるのではないかと思います。
彼女の口元なのですが、上の前歯の色が褐色に近い白い色をしています。これは彼女がレジン前装冠を装着しているためです。レジン前装冠は保険診療で認められた白い被せ歯なのですが、欠点として時間が経過するにつれて白色が変色するのです。これはレジンと呼ばれるプラスチックの特性で、長年口の中で入れておくと唾液や食べ物に含まれる水分がレジンに吸収され、そのことによりレジンの白さ、光沢がなくなってくるのです。そのため、装着した当初は真っ白で光り輝いていたレジン前装冠も時間経過とともに輝きを失い白さを失うのです。昭恵夫人の上の前歯は全てがレジン前装冠です。おそらく10年以上前に被せてそのままにしていたことでしょう。
安倍総理夫人ということで一国のファーストレディという立場でもある昭恵夫人。ファッションにも関心が高く、安倍総理のファッションも全て昭恵夫人のお眼鏡にかなったものなのだとか。それだけファッションに関心があるなら、ご自身の口元にももう少し関心を持って欲しいものです。少なくとも忙しい日常生活の合間をぬい、前歯をレジン前装冠をメタルボンド冠に交換してもいいのではないでしょうか。さわやかさを売りにしている安倍総理ですが、最近はどうも支持率が下降気味です。そんなご主人を支え、イメージアップを図るために、昭恵夫人には是非とも口元を改善された方が得策ではないかと思うのですが、如何なものでしょう。何とも歯医者的なアドバイスではありますが・・・。



2006年12月27日(水) 年末年始 体に不調を感じたら

昨日の日記の続きになりますが、年末年始に歯や口の中に何らかのトラブルが生じた場合どうしたらいいでしょう?よく考えてみれば、この年末年始の医療機関へ受診する問題は、何も歯や口の中に限ったことだけでなく、体の不調を感じたり、体調を崩したりした時にも当てはまることですよね。なぜなら、年末年始という時期は歯科医院だけでなく全ての医療機関は休診だからです。

まずは、昨日も触れたことですが、今、自分が通院したり、普段世話になっている近所の病院、診療所、歯科医院の年末年始の態勢を確認しておくことが大切です。休日の応急対応をしてくれるのかどうかを電話で問い合わせしておくことです。何もこんな時期にそうしなくてもと思われる方もいるかもしれませんが、何か体に変調をきたした時、最も頼りになるのは、普段あなたが世話になっているかかりつけの先生です。その先生が年末年始にどういった対応をとられているのかどうかを確認しておく必要があります。
これは毎年必要なことだと思います。というのは、いつもの年末年始は応急処置を行っていても、ある年だけ年末年始留守にしているということもありうるからです。いつも頼りにしている先生が今年に限って不在なんてことがありうるのです。
このことを確認することはかかりつけの先生にうっとおしがられるだけではないかと危惧するむきもあるかもしれませんが、それは心配無用です。患者さんを大切にしている先生であれば、そうした問い合わせに対しては丁寧に対応してくれるもの。むしろ、自分を信頼してくれていると感じることでしょう。いざという時の対応は、かかりつけの医者、歯医者の良し悪しを決める基準になるものです。

もし、年末年始に応急態勢を取っていない場合はどうでしょうか。全国各地区の医師会、歯科医師会では12月30日から翌年の1月3日まで休日応急診療所や輪番制で医師会、歯科医師会の会員の先生が自らの診療所や病院で応急治療をしてくれています。このことは、各地区の地元行政のホームページや広報紙、新聞の地方版に告知されています。こういったものを参考にし、対応して欲しいと思います。
その際注意して欲しいのが診療時間です。24時間態勢のところもあれば、午前中のみといったところもあります。自分が診療して欲しい時間帯に応急診療所が開いていないということもありえます。この診療時間、意外と盲点になりますので、注意が必要です。

旅先などで医療情報を得にくい時は、迷わず119番に問い合わせして下さい。119番というと消防や救急車の出動要請というイメージが強いものですが、実際には応急診療の情報も多々集められている情報センターとしての役割もあります。どうしても動けなかったり命にかかわるような場合は救急車の出動を要請しなければなりませんが、自分や周囲の誰かが動けるような場合、近くで応急対応してくれる医療機関の情報提供をお願いするのです。119番では丁寧に教えてくれます。
僕自身、かつて子供がインフルエンザに罹った際、応急診療所がわからず、119番に問い合わせしたことがありますが、最初はうっとおしそうに対応していた119番のオペレーターが急に丁寧に答えてくれたことがあります。自分たちが情報提供するだけのサービスの場合、実質的な救急車の手配をすることがない、仕事をしないでよい分、対応が丁寧になったのかなあと今から思ったりします。

もう一つ大切なことは、自分の健康状態を何かメモに書いておくことです。自分の過去の病歴やアレルギーの有無、服用している薬などがあれば、いつでも医者に提出できるようにメモを財布などに入れておくべきです。ここまでしなくてもと思われる方もいるかもしれませんが、救急対応をする医者にとって、応急治療に訪れる患者はほとんどが初診の患者さんです。すなわち、自分が普段から診ている患者さんではなく全く見ず知らずの患者さんです。そうした患者さんを治療することは、医者にとって大変です。その患者さんの医療情報が全くないわけですから、問診を行いながら対処していかないといけません。そんな時に、普段から自分の健康状態や病歴、アレルギー、服用している薬などをメモした紙があれば、対応する医者にとっては非常に有難い患者情報になります。これは何も年末年始だけでなく、普段の日常生活においても大切なことです。

以上、年末年始の医療機関のかかり方を思いつくまま書いてきました。年末年始に何もないにこしたことはありませんが、備えあれば憂い無し。いざ体が不調になった時のための準備は怠らないようにしておくことが、楽しい年末年始を過ごすことにもつながるのではないでしょうか。



2006年12月26日(火) 年越し準備 歯の治療編

クリスマスも終わり今年も残るところあとわずかとなってきました。世間では28日あたりに仕事納めとなり、正月を迎える準備に取り掛かる方が多くなってくるのではないでしょうか?

歯医者ではどうかといいますと、年の瀬の時期、歯の治療を終える患者さんが多いように思います。正月を迎えるにあたり、歯に問題がないように年を迎えたい。そのような希望をもった患者さんが12月になってから来院するケースが少なからずあるのです。実際にそのような患者さんの口の中を診てみると、何とか年内に治療が終わることができる患者さんもいれば、如何に急いで治療をしても年を越してしまうような患者さんもいます。

前者のような場合、今の時期は詰め物や被せ歯、指し歯などを歯にセットする治療が集中します。その背景には、詰め物や被せ歯を作ってもらう歯科技工所の方にかなり無理をお願いしているケースが多く、歯医者としては申し訳なく思うところです。けれども、このような無理をお願いするのも、患者さんには何とか年を越す前に歯の治療を終え、気持ち新たに新年を迎えて欲しいという願いがあるからです。
その一方、年内に治療を終えることができないような場合はどうでしょう。ほとんどの歯科医院は年の瀬、正月あたりに一週間程度正月休みを取るのが普通です。ということは、一週間程度治療を中断せざるをえないのです。前もって年内に治療を終えることができない患者さんの場合、このことを考慮しないといけません。一週間程度治療を中断しても、患者さんに迷惑がかからず、治療が後戻りしないような配慮が必要なのです。
例えば、神経の処置を施しているような歯の場合、通常は歯には仮のセメントやゴムで封をしていることが多いのですが、治療中断中、これらの封が取れないような配慮が必要です。僕であれば、いつもよりも封が取れにくいようなセメント用いて年を越してもらうようにします。
抜歯をしなければいけないような歯の場合、特に症状がないような歯の場合は年を越してから抜歯をするようなこともします。入れ歯の治療の場合には、入れ歯を作ってくれる歯科技工所との関係から、治療を進めず、予約を敢えて年を越してから取るようなことをします。

というような感じで歯医者では患者さんに対して年を越す配慮をするわけですが、突然の歯痛、歯肉の腫れ、入れ歯の破折といったようなケースは別です。うちの場合は、診療所が自宅の隣にあるものですから、うちに来院したことのある患者さんには自宅の電話番号を事前にお教えしています。正月休み中に何らかの歯や口のトラブルがあった場合は、自宅に電話をしてもらい、応急処置をするようにしています。これまでの僕の経験では、正月休み中、何件か連絡があり、応急処置をすることがありました。

うちのように自宅と診療所が隣にあるような場合はいいのですが、そうでないような歯科医院の場合はどうでしょう?患者さんとしては、事前にかかりつけの歯科歯科医院に連絡を取り、正月休みの対応を確認しておく必要があると思います。きちんと対応できるのかできないのかを見極めることが重要です。

もし、対応してくれない歯科医院の場合はどうすればいいのか?そのことに関しては明日の日記で触れたいと思います。実はこのことは毎年書いていることなのですが、何回書いても問題はないように思えます。



2006年12月25日(月) 歯医者は夫婦仲をみる試金石

ある日のこと。男性の患者Mさんの治療を終え、Mさんが診療室を出て行った時のことです。受付さんが次の患者さんの名前を呼びました。

「Mさん、Mさんの奥様、どうぞお入り下さい。」

最近のうちの歯科医院の傾向ですが、一人だけでなく夫婦で来院される患者さんが目立つようになりました。うちの歯科医院は周囲を山や田畑で囲まれた田園地帯にあります。すなわち、田舎なわけですね。田舎であるせいかわかりませんが、患者層は決して若くはありません。どちらかというと高齢者の患者さんが多い地区でもあります。高齢者ということですから、既に退職されたり、農業をされている方が多い地区です。昼間からご夫婦一緒に暮らしている家庭が多いのです。このあたり会社や役所勤めの方が多い都会ではなじみの薄い光景かもしれません。
こういった地域特性があってでしょうか、うちの歯科医院では元々ご夫婦で診療の予約を取られる方が多かったのですが、最近、その傾向が強くなってきているように思います。

ご夫婦で治療を受けられている場合、僕は気を遣うことがあります。それは、なるべく同じようなペースで治療を行い、可能な限り同じ時期に治療を終了することができるよう段取りを組むことです。せっかく夫婦で時間を作って歯科医院に来られているわけです。しかも、歯科医院という場所は誰もがなるべく関わりあいたくない場所の一つでもあります。夫婦共に歯科医院へ来院することにより、歯科医院を受診する緊張感も少しは緩和されるはず。そんな思いをもって夫婦で歯科医院を受診されている方は決して少なくないと思うのです。
実際のところは夫婦ともに同じような診療ペースで終わるとは限りません。夫婦が同じような症状、治療内容であればいいのですが、どちらかの口の中の状態が悪く、夫婦のうちどちらかが診療を早く終わってしまうようなケースもあります。また、夫婦で来院するとそれだけ一家で負担する治療費用も増えることになります。なるべく治療費用を分散させ、毎月の経費を節約するために敢えて夫婦別に来院される方もいらっしゃいます。

僕は夫婦そろって歯科医院を来院することができる夫婦というのはうらやましいと思います。お互いに時間をやりくりして嫌な歯医者を受診する。そんなことができるには、夫婦ともに時間を調整することができる余裕があり、夫婦仲が睦ましくないとできないものだと思うからです。少なくとも、夫婦の絆がある程度強くないと、夫婦ともに歯科医院のような特殊な場所を訪れることはできないのではないでしょうか。

歯医者として思うには、夫婦で歯科医院を受診されるような夫婦が一組で多く増えればなあということです。これは単に夫婦で歯の健康を維持するというだけでなく、歯医者という緊張する場所へ夫婦ともに受診することにより、より夫婦の絆を再確認するきっかけにならないかと思うからです。
夫婦仲をみるには、歯科医院を共に受診できるかどうかが試金石になるかもしれない。
極めて歯医者的な発想ですが、このことは意外に当たっているのではないかと感じる歯医者そうさんです。



2006年12月24日(日) 日記再開を待っていますよ!

先日、ある日記が諸事情によりしばらく休止するというアナウンスがありました。僕自身、愛読していた日記で、僕が目標としていた日記でもありました。その日記の管理人であるSさんとは付き合いが長かっただけに余計に僕はショックでした。


日記を書き続けることは思いのほか大変なことです。まずはネタさがしが一苦労です。ある程度ネタが思い浮かぶ場合はいいのですが、日記を書き続けているといつの間にか思いついたネタは枯渇してくるもの。結局、日常生活のいたるところにアンテナを張り巡らせ、ネタを探すという生活になってしまいます。

ネタがあったとしてもそれが日記にできるかどうかというのも問題です。あまりにも政治的、社会的、宗教的に微妙な問題である場合、日記の表現には大変気を使わざるをえませんし、場合によっては書き上げた日記を公開しないこともあります。

日記を書き続けていてつくづく思うのは、日記を書く時間を確保することの難しさです。僕も仕事や日常生活の合間をぬって書いているのですが、場合によっては睡眠時間を削って書いていることもあります。これがいいのかどうか悩みながらも書いているのが実情です。

愚考するに、最も大事なことは日記を書くことができる精神状態ではないでしょうか。僕がこれまで4年5ヶ月書いてきた経験では、日記を書き続けるには日常生活の安定が欠かせないと思うのです。何かに追い込まれていたり、精神的に不安定な場合、書き上げた日記は読むに耐えるものではないように思うのです。ネタも思い浮かびませんし、文章にまとめることもできない。日記を書き上げたとしてもその出来は満足のいくものではない。ある程度読者ができてくると、読者の方に不快な思いをさせたくないという気持ちも強くなります。そのためには、自分が不快な思いをしていないことが大前提だと思うのです。まして僕はプロの物書きではありません。あくまでもアマチュアですから、精神的余裕がなければ日記を書き続ける自信がありません。

日記書きの中には自分の精神安定の維持のために日記を書いている人もいます。

”日記は所詮自己満足なんだから、読みたくない人は読まなくていい。読む人だけを対象にすればいい。”

かつて日記書き仲間と呑み会をしているとこのような意見を言う人がいました。一理あると思います。けれども、僕ならできるかどうか?小心者の僕ならば、おそらく日記を止めてしまうかもしれません。


日記を休止する日記書きSさんには人に言えない事情があったようです。ただ、Sさんは日記を休止するとは書いていても自らのサイトを閉鎖するとは書いていません。Sさんを取り巻く諸事情が解決し、解決とまではいかなくても少しでも状況が改善し、一日も早く日記を再開することを僕は祈っています。

Sさん。Sさんは繊細な人だからきっと今はパソコンの電源も付けずネットからも離れていることでしょう。そんなSさんにここに書いた僕の思いを伝えることは難しいかもしれませんが、一読者として、大切な友人として、日記再開を待っていますよ!



2006年12月22日(金) ボーナスが怖い!

今週末は天皇誕生日、クリスマスイブ、クリスマスと続きます。皆さんの週末の予定は如何でしょうか?

お勤めの方々は既に冬のボーナスが入り、ある程度懐が豊かな方が多いことと思います。
僕もそうです・・・と言いたいところですが、そうではありません。むしろ逆です。

保険診療を中心に行っている歯科医院では毎月後半、20日過ぎぐらいから、窓口負担を指し引いた診療報酬を得られます。各都道府県の社会保険支払基金と国民健康保険連合会から各歯科医院が金融機関に持っている口座に診療報酬が振り込まれるのです。
診療報酬といっても2ヶ月前のものです。今月の場合、10月の診療報酬から窓口負担を差し引いた額が支払われます。すなわち、保険診療を行っている医療機関は、原則として患者さんが窓口で支払う一部負担金、そして、2ヶ月前の診療報酬から患者さんの窓口負担を差し引いた報酬が月あたりの保険診療収入となるのです。

どうしてこのような差が出るのかということになりますが、これは各医療機関が毎月10日までに提出する診療報酬明細書(レセプト)の審査と診療報酬確定が2ヶ月かかるためにおこる現象なのです。うちの歯科医院でも昨日、口座に10月分の診療報酬の一部が振り込まれているのを確認しました。
そこでです。診療報酬は今月分の様々な経費の処理に振り分けるわけですが、今月の経費は通常月よりも多くなります。なぜなら、ボーナス月でもあるからです。従業員に通常の給料に加え、ボーナスを追加しなければなりません。

歯医者としてこのようなことを語るのは不謹慎かもしれませんが、経営者としての本音を書かせてもらえば、ボーナスを支払わなければいけない12月はつらいです。うちのような零細歯科医院ですと、余計にそうです。とは言っても日頃よく仕事をこなしてもらっている従業員にはそれなりの給与を渡さなければならない義務があるのも事実。

世間では12月となるとボーナス月で顔がほころぶ人も多い中、歯科医院経営者である僕は戦々恐々です。

ボーナスが怖い!



2006年12月21日(木) あなたの手のぬくもりを感じていたい

昨日ネットサーフィンをしているとこのような記事を目にしました。
アメリカの研究者によれば、幸せな結婚をしている女性が、ストレスを感じた際に夫の手を握ると、ストレスが即座に解消されることが、脳のスキャンではっきりと示されるとのこと。研究者の一人で神経科学を専門とするバージニア大のジェームズ・コーン博士らによると、夫の手を握るという行為が女性のストレスの程度に与える影響の大きさに驚いたとのこと。
この記事ですが、僕も大いに思い当たることがあります。

我が家では、深夜チビたちが寝静まった束の間の時間帯が夫婦の時間となります。お互いにテレビを見たり、新聞や雑誌を読み、時折会話をしながら過ごすのですが、そのうちどちらともなく手を触るのが常です。

「そうさん、ハイ。」
と言いながら手を差し出す嫁さん。

「仕方がないなあ」と言いながら嫁さんの手の指をさするのです。手を指をさするだけでなく、指を回したり、手のひらや甲を揉んだり握ったりしているうちにいつの間にか嫁さんも僕もうつつ状態に陥る。
これが気持ちいいんです。
我々夫婦の間でこの習慣がいつから始まったのかは定かではありませんが、おそらく僕の方から始めたではないかと勝手に思っています。

これまで何度も書いたことですが、幼少の頃、僕の家族は大家族でした。同じ屋根の下に祖祖母、祖父、祖母、父、母、叔父、僕と弟と8人家族だったのです。そんな大家族の中で僕はおばあちゃん子でした。
二つ下の弟が生まれ、母が弟の子育てに追われている時、僕は祖母になつき、祖母と祖父の部屋に一緒に寝ていたのです。
幼少の僕が布団に入り、眠ろうとした時、祖母が必ずしてくれていたことがありました。それが足と手の指の指回しでした。東洋医学をかじっていた祖母は、自分のみならず孫の僕に毎晩のように足と手の指を回してくれていたのです。眠る前に興奮していても、祖母が足と手の指を回してくれていると、いつの間にか気分が落ち着き、気が付かないうちに眠りに入る。当時のことは今でも鮮明に覚えています。何か気持ちよい気分に満たされたような状態になり、いつの間にか瞼が重たくなるような感覚といったらいいでしょうか。今から思えば、祖母は毎晩僕の足と手の指を回し続けてくれていたものです。

時は経過して今。僕はこのことをチビにしてすることがあります。いつもは嫁さんと一緒に眠るチビたちですが、どうしても眠ることができない時、嫁さんと僕が交代し、チビの手や足の指を回すのです。回すだけでなく、手を摩ったり、軽く握ったり、揉んだりします。チビたちの体温を感じながら。最初、何だか恥ずかしそうにしていたチビの表情が段々と緊張が取れ、微笑むようにして寝息を立てていきます。僕もこのような感じで寝息を立てていたのかもしれない。僕が幼少の頃の祖母は気持ちよく寝息を立てる僕を見ていとおしく感じていたのかもしれません。

幼少の頃の僕の手と足の指を回してくれていた祖母は、現在痴呆が進み寝たきりで在宅介護を受けている状態です。叔父の家の一室のベットの上で寝たきりになっているのですが、僕も時折祖母のもとを訪れます。
小春日和だった先日、僕が祖母を訪ねると、祖母は起きているようでした。僕は、

「おばあちゃん、元気か?」
と言いながら、手と足の指を回したり摩りました。ちょうど僕が幼少の頃祖母にしてもらったことを僕が祖母にしているのです。痴呆が進んだ祖母ですが、僕が手や足の指を回したり、手の平、手の甲を摩っているうちに段々と目がうつろになり寝息を立てていきます。いつもは寝息を立てるのを確認してから部屋を後にするのですが、先日はなぜか目頭が熱くなり、涙が止まりませんでした。
誰でも年を取ると涙腺が緩くなるといいます。40歳になった僕も年を取ったかなあと思いながら、持っていたハンカチで涙を拭き、部屋を後にした歯医者そうさんでした。



2006年12月20日(水) アート引越しセンターと歯科医院の名づけ方

最近、うちの歯科医院のホームページを作ろうと他の歯科医院のホームページを見ているのですが、いくつもの歯科医院のホームページの中に歯科医院の名前がユニークなものが少なからず見られました。

歯科医院の名前といえば、歯科医院の開設者である先生の名字を冠した歯科医院であることを想像される方が多いのではないでしょうか?
歯科医院の院長の名字が○○ならば、“○○歯科医院”とか“○○歯科”、“○○歯科クリニック”というような感じです。ところが、どう考えても歯科医院の院長の名字とは思えない名前を冠した歯科医院が少なからず存在するのです。動物や何かのマスコット、アニメのキャラクターのような名前を冠した歯科医院や一見すると歯科医院とは思えないような外国語風の歯科医院名などがあるのです。

実は、歯科医院の開設に関しては各地区の健康福祉事務所へ開設届書と呼ばれる書類を提出し、審査を受け許可をえなければなりません。開設届書の中には開設場所、住所、開設年月日、診療曜日、診療時間、開設者の名前と共に歯科医院の名称も記載する必要があるのです。これらは医療法に基づいて定められているのですが、歯科医院の名称に関して医療法では特別な規定はありません。基本的に自由に歯科医院の名称をつけることができるのです。
おもしろいことに、各都道府県によって歯科医院の名称の付け方には若干の違いがあるようです。比較的自由に歯科医院の名前をつけてもよい都道府県もあれば、なるべく歯科医院の開設者の名字を関した歯科医院名をつけるような指導をする都道府県もあるようです。僕の診療所のある県では、地元の地区名を冠した歯科医院名は避けるように指導があります。例えば、東京という地区で歯科医院を開業するような場合、東京歯科医院という名の歯科医院名称には許可しないというような感じです。

地域によって若干の差はあるものの、歯科医院の名称に法的な縛りがないのは確かなことです。おそらく、これから歯科医院の名称は益々ユニークな名前を冠した歯科医院名が次々と出てくることでしょう。現在、日本全国に68000以上の歯科医院があります。もはやコンビニの数をはるかに凌駕する数の歯科医院が乱立し、しかも今後着実に増えます。新規に開業する歯科医院に少しでも多くの患者を惹きつける方策の一つとして、ユニークな名前の歯科医院名が次々と生まれてくるのは間違いないことだと思います。

閑話休題、アート引越しセンターという引越し運送会社がありますが、このアート引越しセンターの名称由来はユニークなもののようです。何でも職業別電話帳のトップに記されるように敢えてア行で始まる名称を考えたのだとか。何せ“アート(ああと)”ですから。かつて、引越しを予定している人が引越し運送会社を選ぶ際、職業別電話帳を調べて選ぶ時代があったのですが、そんな人々に少しでも目に触れやすいように会社の名称を“アート”に変えたのだとか。
歯科医院の名称にもアート引越しセンターのように敢えてア行の名称をつけた歯科医院もあります。敢えて名前は挙げませんが、“ア○○歯科医院”なんて名前は職業別電話帳の記載順番を意識して名づけられたのだそうです。

ちなみに、うちの歯科医院も僕の本名の名字を冠した歯科医院ではありません。ちょっと変わった名前の歯科医院名なのです。今から30年以上前、親父が歯科医院を開業する際、ある特殊な事情があったため本名の名字を関した歯科医院名をつけることができなかったのです。そのため、風変わりな名前の歯科医院名にしたのですが、当時は今ほどユニークな名称の歯科医院名が多くなかったため、なかなか許可が得られず苦労をしたのだとか。何度も事情を説明して何とか開設届書を受理してもらったのだそうです。
うちの歯科医院は昨今のユニークな歯科医院名のさきがけ的な存在かもしれません。



2006年12月19日(火) 写真入り年賀状考

今日は12月19日。早いもので今年も残すところわずかになってきました。12月15日には年賀状の受付も始まったようで、ますます年の瀬を感じるようになった今日この頃です。

毎年、数え切れない年賀状の行き来する中で、誰もが受け取る年賀状の一つが写真入り年賀状ではないでしょうか?皆さんの周りでも夫婦の写真、子供を含めた家族一同の写真、子供の写真を載せた年賀状を送ってくる方は必ずいると思います。
このような写真入り年賀状写真ですが、受け取った人が感じることは様々でしょう。

“○○君の奥さんってこんなに美人だったんだあ”
“△△さん夫婦の子供はやんちゃそうだなあ”
なんてことを思いながら、微笑ましく見ている人がいることでしょう。
その一方、写真入り年賀状に好意を持たない人もいるようで、
“△△さんの年賀状、子供の写真のアップだけど、子供の自慢ばかりで面白くないねえ”
“××さんのどこかの写真館で写真撮っているよ、たかが年賀状なのに金かけているなあ”
なんてことを言いながら、好意的に受け取らない人もいるのは事実です。
先日も、ある友人と写真入り年賀状の話をしていたのですが、その友人は写真入り年賀状に対してあまり良い印象を持っていませんでした。
“写真入り年賀状なんて差出人の自己満足に過ぎないのじゃない?そんなものを受け取ったところで受取人はちっともおもしろくも何ともないよ!”

我が家では上のチビが生まれて以来、近親者が亡くなった場合を除き年賀状用に家族全員で撮影した写真を取り、年賀状にしています。かれこれ8年間、家族の写真入の年賀状を作っていることになります。
正直言って、毎年、家族写真を撮るのは大変です。何せチビたちが落ち着かず、ポーズを取ることができないからです。一度撮影したものの、出来に満足できなかった時には再撮影をしたこともあるくらいです。その甲斐あってか、家族写真入の年賀状は単に年賀状用というだけでなく、家族の記録写真として貴重な写真となっています。特に、チビたちが赤ん坊の頃から写っているわけですから、チビたちの成長と我々夫婦の変化が刻銘に記録されているのです。写真はうそをつきません。そのことをしみじみ感じます。

苦労して撮影した家族の写真入り年賀状ですが、送り先は基本的に友人や親しい先輩、後輩、知人が中心です。友人に対しては自分たち家族の近況報告の意味をこめているからです。
ただし、例外もあります。独身者や何らかの不幸が原因で子供を亡くした友人、離婚経験者には送りません。家族が写っている写真が送り先の友人に不快な思いをさせてはいけないのではないかという配慮からです。本当なら、僕の近況を知らせるために友人には家族が写った写真入り年賀状を送りたいのですが、他人からすればその思いがそのまま伝わるとは限りません。ましてや独身者、子供を亡くした友人、離婚経験者に対してはこちらの意図がなくても、嫌味のように思われるのは翻意ではありませんから。

歯科医師会関係者をはじめとした仕事上の付き合いのある人たちに対しては、干支の絵入りの年賀状を印刷し、送るようにしています。仕事上の関係で年賀状を送る送り先の人たちに僕ら家族の写真を送る意味はありません。年賀状はあくまでも年始の挨拶の意味合いしかありません。

いつまで家族の写真入り年賀状を送ることができるかは正直言ってわかりません。おそらく子供たちが成長してくれば、家族写真の年賀状自体、恥ずかしくて嫌がる可能性が高いのではないでしょう。少なくとも僕はそうでした。その反動なのかもしれませんが、僕は家族の写真入り年賀状を送ることができる時期には送っておきたいと考えてしまいます。

友人が言うように、写真入り年賀状というものは単なる自己満足なのかもしれませんが、自分と親しい間柄の人ぐらいは家族写真入り年賀状を送って自己満足していても罰は当たらないのではないかと思うのですが、如何なものでしょうね?



2006年12月18日(月) あなたがそばにいるだけで・・・

先日、ある介護関係者から往診依頼を受け出かけたのはFさんのお宅でした。Fさんは10年以上前に脳梗塞で倒れられてから寝たきりの生活。今はFさんの奥さんがずっと付き添って介護をしておられています。今回はそんなFさんの口の中の口腔ケアのために往診したのです。

Fさんのお宅は閑静な住宅地の中にありました。玄関先で出迎えてくれたのはFさんの奥さん。

「急にお呼びたてして申し訳ありません」
と言いながら、往診に出向いた僕と付き添いの歯科衛生士を奥の部屋に招き入れてくれました。
奥の部屋にはベットが置かれ、その上にFさんが寝ておられました。正直言って、Fさんは元気に回復するような見込みは無い状態でした。呼びかけには反応はあるものの、自分で体を動かすことはできず、奥さんが体位を変換されておられました。自分で飲み込むことができないため、胃ろうという胃へ栄養剤や食事を入れ込むことができるチューブのようなものを装着されていました。

胃ろうを設置されている患者さんは通常は口から食事をすることはありません。それならば、歯磨きや歯の手入れは必要ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際そうではありません。口は呼吸するために常に使われています。口の中が汚れていたり、歯に何らかの問題があれば口から気管を通じ肺へ汚れが移り、悪影響が及びます。寝たきりの患者さんの中で口の中の手入れが行き届いていない方は肺炎になる確率が高いことが様々な臨床報告されています。
寝たきりの患者さんは健康な人に比べ体力がありません。そのため、ちょっとしたことで病気になりやすいのです。健康な人であれば少々口の中が汚れていても大丈夫な場合であっても、寝たきりの方の場合はそれがもとで気管支炎や肺炎となり、命を落とすようなケースが多いのです。そのため、介護の世界では口腔ケアといって、口の中をきれいに保つことで少しでも寝たきりの患者さんが快適に余生を過ごすことができるような配慮がなされているのです。
今回僕がFさんの自宅を訪問したのも、このような口腔ケアのことがあってのことだったからです。

僕が診たところ、Fさんの口の中は非常によく管理されていました。問題がないというわけではなかったのですが、専門家である歯医者や歯科衛生士がアドバイスを与えれば直ぐにでも改善できる程度のものだったのです。これはFさんの奥さんの日頃の努力の賜物です。
僕はFさんの奥さんにいくつかのアドバイスを伝えた後、Fさんにこう言いました。

「これまで長期間にわたってご主人の身の回りの世話を一日も欠かさずされてこられたことは大変だったと思います。さぞご苦労もあったことでしょうね。」

Fさんの奥さん曰く
「確かにいろいろとありました。主人が寝たきりになった当初はこの先どうやっていいのかと不安で一杯だったのです。幸い、主治医の先生や介護関係者の方がバックアップして下さるのでここまでやってこられたのかと思います。」

「正直言いまして、主人が倒れた時は主人を責めたこともありました。『どうして私に苦労ばかりさせるのよ!』と言いたかったこともしばしばありました。けれども、最近になって、主人が生きてくれればそれでいいと思うようになりました。主人はこのように動くことができず、寝たきりなのですけれども、私にとってはかけがえのない人なのです。主人がこうやって存在してくれていることが私の心の支えになっています。今は毎日主人に向かって言うのですよ。
『あなたがそばにいるだけで・・・』」
と言葉に詰まったFさんの奥さん。

Fさんの奥さんはご主人の介護という過酷な生活を強いられています。Fさんの身の回りの世話はFさんの奥さんなしでは考えられません。
一方、Fさんの奥さんがFさんから何かをされることはありません。Fさんが寝たきりであるからです。単に損得ということを考えれば、Fさんは奥さんに一方的に世話になっており、Fさんの奥さんがFさんから得られるものはありません。けれども、Fさんの奥さんその現実を受け入れ、昇華し、今やFさんの存在そのものを心の糧にしているのです。
介護を続けていると、何のために介護をしているか悩み、苦しむ人が多い中、Fさんの奥さんはFさんが生きていることが心の拠り所となっているのです。

僕にも人生の伴侶がいます。お互い健康ではあるのですが、時には言い争ったり、けんかをする時もあります。そんな人生の伴侶が寝たきりになった時、果たして僕が献身的に嫁さんの身の回りの世話ができるかどうか?正直言って、僕は自信をもって答えることができません。

Fさんの奥さんにはひたすら頭が下がる思いです。
まだまだ僕には人生勉強が足りない。
そんな思いを強く持ちながら、Fさんの自宅を引き上げた歯医者そうさんでした。



2006年12月15日(金) クリーニングタッグははずしましょう!

昨日、午前中の診療を終えて自宅に戻ると、嫁さんが着替えておりました。午後から上のチビの小学校個人懇談があるらしく、普段着から着替えていたのです。嫁さんの後姿を見た僕は、思わず今話題のザ・たっち風に声を掛けました。

「チョット、チョットチョット。」
「急いでいる時に一体何よ、そうさん。」
「ちこう寄れ!」
「だから一体何なのよ、こっちは急いでいるのよ。」
「文句を言わずこっちに来なさい。そうでないと恥をかくよ。」
「もう」
と言いながら僕の方に寄って来た嫁さんのパンツのベルト通しに手をやりました。
そして、引きちぎったものを嫁さんに見せながら
「こんなものを付けながら街中を歩いていると恥をかきますわよ、奥様
ハッハッハ・・・・。」

僕が引きちぎったのはクリーニングタッグでした。
嫁さんはクリーニングに出していたパンツを今シーズン初めて着用していたようなのですが、クリーニングの際に付けているタッグを取り忘れていたのです。

この手の話は何も嫁さんだけの話ではありません。僕もかつてクリーニングタグをつけた喪服を気ながら葬式に参列し、参列者から指摘されるまでわからず恥をかいたことがあります。これって結構恥ずかしいものですが、指摘してくれた方には非常に有難く感じたものです。
また、逆の話もあります。かつて職場に電車通勤をしていた僕は、同乗車両のOLさんの上着にクリーニングタッグが付いたままであることを気が付きました。OLさんだし、変に指摘して痴漢に間違われても困るしと思いながらも、思い切って他の人にわからない程度の声で声掛けてみました。

「すみません、今お召しになっているコートにクリーニングタッグが付いていますよ。」
そのOLさんはクリーニングタッグを発見するや否や直ちに引きちぎると同時に真っ赤な顔をされ、黙って一礼されました。

クリーニングタッグの話で恥をかいたという意味では、僕の大学生時代の先輩Yさんがかなりの恥をかいていたといえるでしょう。
Yさんは僕の大学にあった合唱団の指揮者でした。ひょんなことからYさんと懇意にして頂いていた僕は、Yさんに合唱団のコンサートの誘って頂いたのです。

コンサート当日、舞台Yさんは舞台上手から颯爽と出て、挨拶をされました。
そしてくるっと振り返り、指揮を始めた瞬間でした。僕の目にはあるものが飛び込んできたのです。それは言わずとしれたクリーニングタッグ。Yさんが着ていたブレザーの裾に真っ赤なクリーニングタッグが付いたままだったのです。誰か指摘したかったのはやまやまだったのですが、合唱団のすばらしい演奏の中で指摘することもできず、とうとう終演を迎えるまでそのままでした。

演奏会終了後、僕は合唱団の一員だった友人にYさんのクリーニングタッグのことを言うと

「うん、合唱団の全員知っていたよ。最初は指摘してあげようかと言っていたんだけど、たまにはクリーニングタッグをつけた間抜けな指揮者というのもいいんじゃないかということになってね。そのまま放置してあげたんだよ。」

何という温かい?合唱団員たちでしょう!
後日、演奏会の写真を見たYさんは激怒したのだとか。

「おい、俺はクリーニングタッグをつけたままずっと指揮をしていたんじゃないか!誰か教えてくれよ。こんな恥かいちゃ、死ぬに死ねないよ!」



2006年12月14日(木) 先は永くないから

「Hさんもこの先永くありませんからなあ、ハッハッハ・・・・。」

うちの診療所で親父が発した言葉です。親父はまさに治療をしているHさんに向かって言ったのです。
そばで診療をしていた僕は親父の発言にドキッとしました。そりゃそうでしょう。患者さんに対して“この先永くありませんからなあ”なんてことを言えるわけがありません。たとえ僕がHさんの診療をしていたとしても、人生の先輩であり、高齢であるHさんに“先が永くありませんからなあ”とは口が裂けても言えません。
ところが、Hさんの反応は実ににこやかなものでした。

「いつお迎えが来てもおかしくありませんから、ハッハッハ・・・・」
と笑みさえ浮かべておられたのです。

親父は今年75歳の現役歯医者です。さすがにかつてと同じように歯医者の仕事ができるわけではありませんが、それでも、週4日は通常の歯科診療を行っています。親父の仕事に問題があるならば、僕は親父に診療をしないよう言うつもりですが、今のところ技術的にも問題なく診療しています。変に引退させてしまって自宅でボケられても仕方がありませんから、仕事をしてもらっています。
そんな親父に長年診てもらった患者さんは、今でも親父を指名し、治療を受けています。そのような患者さんは、親父にとっても自分と共に年月を重ねてきたという意識があるように思います。また、患者さんにとっても長年自分の口を診てもらってきたという安心感があるようで、何を言われようとも気楽に話ができる雰囲気があります。
親父が言った“この先永くありませんからなあ“の中には患者さんに対する温かみ、愛情さえ感じられます。
“あまり無理をせず、気楽に、ぼちぼちと余生を楽しみましょう。”
そんな言外の意味がこめられているようにも思います。

親父だからというわけではありませんが、かかりつけ歯医者として長年患者さんがついてくる歯医者というのは僕の理想でもあります。僕は歯医者になってまだ15年しか経過していませんが、親父のように何人もの患者さんに慕われる存在になっているとは到底思えません。じっくりと腰を落ち着け、地道に治療をしていくうちに信頼というものは得られていくもの。お互いの信頼関係が得られればどんな冗談であったとしても気軽に流して聞くことができるものなのでしょう。

「Hさんもこの先永くありませんからなあ。」
このようなことを言える患者さんとの信頼関係をいつかは作っていけたらと思う、歯医者そうさんです。



2006年12月13日(水) 当たり前に感謝

何かを無くして初めてそのものの価値を知ることは世の中に山ほどあります。一見すると当たり前に、平凡なことのように見え意識していないものほど、失ってしまうことで初めてその存在価値を意識することが多いもの。悲しいかな、多くの人はその存在が無くなるまでは気がつかないものです。

健康の問題などはその最たる例です。歯の問題のみならず、心臓、肝臓、腎臓、脳といった臓器も健康な時には意識しないものですが、何らかの病気に罹り、治療をすることでその臓器の大切さを痛感するものです。
人間関係もそうでしょう。普段何気なく周囲にいる友人、職場の同僚や上司、後輩、取引先といった人間関係も何か事故やトラブルが生じ、突如いなくなった時、改めてその存在の大切さに改めて気がつかされるものです。
何気なく過ごしている家族関係もそうでしょう。昨日まで元気でいた家族が予想もせぬ事故や事件に巻き込まれ、命を落とし時など、残された家族の落胆振りは想像に絶えません。長らく闘病生活をおくってきた家族の一人が鬼籍に入った場合でも、いざ亡くなってみると家族の存在が自分に与えていたものの大きさに衝撃をうけるはずです。

ところで、先日、僕は仲良くしているウェブ日記書きの友達と話をする機会がありました。その際、ウェブ日記を書き続けられる生活が如何に恵まれているかということを再確認しあいました。
ウェブ日記やブログを書いている人ならわかると思いますが、ウェブ日記やブログを書き続けることは労力がいるものです。日常生活にある程度の時間的余裕、金銭的余裕、健康的余裕、精神的余裕がない人はなかなか継続して書き続けることができないものなのです。お互いに日記を書き続けることができたということは、実に有難いことだということをしんみりと語りあいました。
この友人と話をして改めて感じたことは、失ってからその存在価値に気がつくよりは、日頃から当たり前と思っていることを意識を持つ必要があるのではないかということでした。

実は、仕事柄僕は患者さんに対していつも感じることがあります。
うちの歯科医院は田舎にあるというせいもあり、口の中の衛生状態が芳しくない患者さんが少なからず来院されます。こうした患者さんは時間が経過するとともにむし歯や歯周病が進行し、歯を失っていくケースが多いもの。無くなった歯の数が多くなれば入れ歯を装着せざるをえなくなります。歯を無くし、入れ歯を装着した患者さんの口からは
「入れ歯は噛みにくい、歯が無くなって歯の有難みを知った」と言われる方が多いのです。
患者さんには、失った歯は戻ってこないから今の現状を維持するために入れ歯をはめ、残っている歯を大切にするようにして欲しいと伝えるのですが、僕の本音としては歯が無くなる前に歯の大切さに気がついてほしいのです。
親からもらった大切な臓器の一つである歯をいつまでも大切に扱ってほしいものですが、普段何かと忙しい人たちはなかなかその大切さを認識しないままでいます。一人でも多くの人たちに歯の大切さを知ってほしい。そんな思いで歯医者をはじめとした歯科関係者は努力しているはずなのですが、“歯医者は怖い”というイメージが世の中に浸透しているせいか、歯を失わないために歯医者を訪れる患者さんは限られているのが現状です。
失って後悔するならば、後悔しないように失わない気配り、手立てが必要。歯においては何といっても予防です。日頃からのセルフチェックだけでなく、歯医者による定期的な専門チェックを受け続けることにより歯は長持ちする確率が高くなるものです。このことを歯医者をはじめとした歯科関係者はこれまで以上に訴えていかないといけないと思います。

失って後悔するよりも後悔しないような気配り、手立て。これは歯に限らず何事においても必要なのではないかと思う今日この頃。日頃から自分の周囲にいる人たち、時間、健康に感謝し、そうしたものに報いるように心がけること。これって当然のことのように思うのですが、いざ実践するのは難しいですね。



2006年12月12日(火) 偶然の中の必然

昨日、ウェッブメールを立ち上げ、ある日記書きさんにメールを書き、送信しようとした時でした。受診箱に1通のメールが届いている表示がありました。
受診箱を開けてみたところ、メール差出人は、何と僕が送ろうとしていた日記書きさんその人からだったのです。偶然といえば偶然なのですが、何の意図もなく、全く同じ時刻にパソコンの画面越しに相対し、同じ相手とやりとりしている光景。天国から神様が見ているならば、
”あの二人、同じ時刻に相手とメールのやりとりしているのにもかかわらず気がついていない、フッフッフ・・・”
と笑っていたかもしれません。

同様の体験は、インターネットユーザーであるならば体験したことが多いのではないでしょうか。何気なくメールや掲示板の書き込みをしていたところ、たまたま同時に書き込んでいたり、メールを送受信している確率は、本来はかなり低い確率であるはずですが、そんな低い確率の場面に自分が遭遇すれば、何となく得したような、お互いに親近感を抱いてしまうようなことさえ感じられるのではないでしょうか。

このような体験ですが、僕は実生活でも体験したことがあります。
今から10数年前のことでした。ある友人に電話をしようとして受話器を取り上げたところ、受話器から声が聞こえてきたのです。普通なら、受話器を上げたら“プー”という発信音が聞こえるはずなのにいきなり人の声が聞こえてきたのです。こんなことはめったにないことなのですが、僕はそんな場面に遭遇したのです。しかも、聞こえてきた声は、何と僕が電話を掛けようとしていた友人その人だったのでびっくり仰天したものです。

また、僕の人生の節目ともいう時期にこの手の体験をしたことがあります。
僕が某大学の大学院の修了を控えていた時のことでした。大学院を修了後、家庭の事情から研究現場から臨床現場に戻ろうと決心した僕は、自宅で親父と大学院終了後の研修先のことを相談していました。その時、親父が勧めたのはS病院でした。ある会合でS病院の歯科口腔外科の副部長の先生と出会った親父は、副部長先生の人格にほれ込み、自分の息子が臨床を行うなら、S病院の副部長先生の下で研修を受けるのが一番だと思ったのです。親父が熱心に副部長先生のことを説いていたその時でした。一本の電話が鳴りました。僕が電話の受話器を取ったところ、電話は大学時代の先輩N先生からでした。

“一体今頃何用だろう?”
と思いながら、N先生が話すことを聞いた僕は、大いなるショックを受けました。
N先生曰く

「そうさん、大学院を修了したらどうするんだい?もし、臨床に戻るならいい病院があるんだけどなあ。S病院なんだよ。S病院にいい先生がいるんだけどなあ。」
何ということでしょう!僕の将来を左右する話をしている時に、全く同時に親父とN先生の二人から全く同じS病院のことを勧められたのです。僕は末恐ろしく感じました。これは偶然と言えるのだろうか?いや、むしろ、必然ではないだろうか?S病院と何らかの縁があることを神様が知らせているのではないか?この知らせを無下に断れば、天罰が下るかもしれない・・・。
その後、多少の紆余曲折はありました。周囲に未曾有の災害があったため、回り道をせざるをえませんでしたが、最終的に僕はS病院の歯科研修医になり研修生活を過ごすことになり、今に至っています。

全く同じ時間帯に同じ人から知らせを受けることは単なる偶然かもしれません。けれども、少なくとも、僕の限られた経験では、偶然とは考えられない必然があるように思えてなりません。
偶然の中にも何らかの縁が含まれるケースがある場合もあるのではないか?
それ故、僕は同時間帯に居合わせるタイミングは偶然とは考えず、何らかの必然性があるからではないかと勝手に思っているのですが、如何なものでしょうね?



2006年12月11日(月) 「痛かったら手を挙げて」も歯の治療を続ける理由

歯医者といえば、“痛い”というイメージが世間では浸透しています。これまで歯医者以外の方と話をしていた際、歯医者のイメージで真っ先に言われることの一つに“痛い”と答える人が多かったように思います。
この痛いに関してですが、歯の治療をする際、歯医者が
「痛かったら手を挙げて下さい」
と言ったにも関わらず、実際に治療をしていて痛みを感じて手を挙げても無視されてしまうという経験をお持ちの方はかなりの数になっているのではないでしょうか?
先日、テレビを見ていると、ある漫才コンビのコントで上記のような歯医者の治療シーンがあり、患者役の漫才師が手を挙げていてもずっと治療をし続け、相手役から突っ込みを受け、場内から笑いを取っていました。
患者さん側からすればとんだ迷惑なことだと思います。歯医者が
「痛かったら手を挙げて下さい」
と断っていても、実際に手を挙げても治療し続けるということは約束違反であり、歯医者不信になるといってもいいかもしれません。

ある田舎歯医者である僕も患者さんの治療に際し、痛みが予想される場合には
「痛かったら手を挙げて下さい」
と言うことがあります。
痛みが予想される処置とは、神経が生きている歯のむし歯の処置、神経の処置、抜歯、膿瘍切開などがあります。このような処置の場合、痛くないように事前に麻酔の注射をすることが普通です。麻酔を十分に行い、麻痺させせれば痛くない処置ができるのです。
ですから、歯医者で処置中に痛みを感じたくない人は事前に麻酔の注射を申し出た方がよいと思います。
それでは麻酔の注射は痛くないのかと問われる方がいることでしょう。確かに麻酔の注射は痛いです。ただし、いくつかの工夫によって痛みを感じさせないか、ほとんど感じないくらいできるような手立てあります。
“あれっ、もう麻酔の注射が終わったのですか?”と言われる患者さんもいるくらいです。

“それでは全ての患者さんにそのような麻酔の注射をすればいいのじゃないか?”
と思われる方もいるかもしれません。それは理想ですが、実際の患者さんの治療は時間との勝負のようなところがあります。限られた診療時間で何人もの患者さんの治療を行わないといけない制約があります。
保険診療においては今年の診療報酬改定で軒並み処置報酬が下げられました。処置報酬が下げられた結果、歯医者は多くの患者さんの治療行うことで診療報酬の下げを取り戻さないといけないジレンマがあります。
また、多くの歯科医院では予約診療制です。診療時間を予約してその時間に治療を行うことが前提なわけですが、患者さんによっては治療に時間を要したり、思わぬトラブルが生じて診療時間が延びることもしばしばです。また、急患の患者さんが来院すれば、予約患者さんの合間に診なければならない。となるとますます予約時間に間に合わなくなり患者さんを待たせることになります。
そのような状況から歯医者ではなるべく患者さん一人あたりの診療時間を短くしたい、診療の効率性を図りたいというのが本音なのです。
そうなると、一人一人の患者さんに時間をかけて麻酔注射をする時間的余裕がなかなか得られないのが実情なのです。

明らかに深いむし歯の処置や神経の処置、抜歯などを行う場合、麻酔の注射をしますが、比較的浅いむし歯の処置の場合、麻酔の注射をせず処置を行うことがあります。麻酔の注射をしなくても歯を削りむし歯をとっても痛くないだろうということからです。
実際はどうかといいますと、浅いむし歯の処置であればあるほど痛みを感じる患者さんがいるものなのです。歯を削る際、表面のエナメル質を削っている時は痛くはありません。神経に近くなればなるほど痛みを感じるものなのですが、エナメル質を削って象牙質に達した場合、痛みを感じやすいのです。浅いむし歯の処置で痛みを感じるのはこれが原因であることが多いのです。

愚考するに
「痛かったら手を挙げて下さい」
と言っているにも関わらず歯医者が手を止めない場合というのはこうしたケースが多いのではないでしょうか。患者さんからすれば痛みを感じている。一方、歯医者からすればさほど深いむし歯ではないし、診療時間の制約もある。そうであれば、少々患者さんには苦痛を与えるが我慢して治療を早く済ませてしまいたい。そのため、患者さんの手を挙げている合図を敢えて無視することがあり、患者さんの不評を買ってしまうのではないかと想像するのです。


閑話休題。麻酔が効かないということを言われる方が時々いますが、これは基本的には間違いです。
麻酔が効きにくい状況というのは確かにあります。典型的な例が歯痛や腫れが一番ひどい状況にある場合です。炎症している組織に麻酔を注射しても麻酔薬の生化学的特性のため、麻酔が効きにくい状況が生まれることがあります。けれども、麻酔の注射量を増やしたり、麻酔をしてからの時間を長めに取ったりすれば麻酔は効いてきます。
それ以外は麻酔の注射が効かないということはありえません。麻酔が効かないというのは、歯の周囲の骨が緻密で注射液が患部に浸透しなかったり、麻酔の効果を十分に待たずに治療を施したり、はたまた注射液が患部から漏れたりしたりするような要因があるからではないかと思います。

いずれにせよ、「痛かったら手を挙げて下さい」と患者さんが意思表示しているにも関わらず治療を止めないのは歯医者に問題があると思います。同じ歯医者として猛省しなければならないと思う今日この頃です。



2006年12月08日(金) 歯でみる格差社会

昨日、インターネットを見ているとこのようなニュースが流れていました。
治療費の未払い問題はほとんど全ての医療機関で頭を悩ませている問題です。日本は国民皆保険制度であり、全ての人が何らかの医療保険に加入したり、生活保護を受けているはずなのですが、何らかの理由で保険料を支払うことができず、健康保険証を持たない人が後を絶えません。いざ体に不調を訴えても保険証がないために医療機関を受診することができない。そのまま放置してしまった挙句、手遅れのような状態で病院に担ぎ込まれるケースが各地で多発しています。
僕が所属する歯科医師会の先生方の歯科医院においても多かれ少なかれ治療費が未払いになっていたり、有効期限が過ぎていた健康保険証のまま受診し、後日、健康保険組合からの通知で健康保険証が有効でないことを知らせるという話を耳にします。
幸いなことに、うちの歯科医院ではこのような治療費の支払いが滞っているような患者さんはいませんが、治療途中で来院しなくなる患者さんは後を絶ちません。

医療機関では、月初めは前月の保険診療を行った患者さんの診療報酬明細書(レセプト)を作成し、各都道府県単位で社会保険支払基金と国民健康保険連合会宛にレセプトを提出します。締切りが各月の10日ですので、今まさに全国各地の医療機関ではレセプトの整理と提出に追われている頃でしょう。
僕も昨日レセプトの作成を終え、提出したのですが、このレセプトを作成していると、結果的に前月診療した患者さんを全て点検することができます。どんな患者さんにどのような処置を施したのか一目瞭然なのです。レセプト点検をしていると、診療途中で来院しなくなった患者さんも直ぐにわかるのですが、最近の傾向として治療途中で来院しなくなる患者さんの数が徐々に増えてきているように思います。
治療費そのものは受付窓口で一時負担金を支払ってもらっていますし、レセプトでも問題はありません。けれども、治療が完全に終わっていない段階で中断してしまうと、往々にしてその後の口の中の状態は悪化の一途を辿り、再度来院した時には以前よりも症状が悪化してしまうことが多いのです。
どうしてそのような治療途中の中断が多いのか?これまでは患者さんの根気が続かなかったケースが多かったようなのですが、最近は治療を続けたくても治療費の負担が経済的に重くなり、治療を続けられないケースが増えてきているように思います。
うちの歯科医院では、治療中断患者さんには電話連絡をして来院を促すようなことをするのですが、それに応じてくれる患者さんは年々少なくなっています。中には、電話そのものが通じないようなケースもあります。電話が止められているのです。

先日、ある歯科業界雑誌を見ていると、アメリカの某州で歯科医師として歯医者として働いている日本人の記事が掲載されていました。
アメリカは日本のような国民皆保険制度ではなく、国民が民間の医療保険に加入するようなシステムになっています。そのため、治療を受けたくても医療保険に加入できない人は治療を受けられない人が非常に多いのです。特に、経済的に苦しい貧民層と呼ばれる人になればなるほどその割合が増えているそうです。
そうはいっても歯痛は誰もが我慢できない症状。これは万国共通のことでアメリカ人でもそうなのです。医療保険に加入していない人も、歯痛を止めて欲しいためにやむをえず歯科医院に駆け込むのですが、こうした患者さんは担当医に
「歯痛の原因の歯を抜歯してくれ」
と頼むのだとか。
日本であれば、神経の処置をし、最終的に詰め物や被せ歯をして歯を残す治療をするのですが、治療回数が増えれば増えるほど治療費がかかるのが実情。医療保険に加入していない患者さんは少しでも早く、治療費の負担を少なくするために歯そのものを抜歯することを選択するそうなのです。
その結果、富裕層でない人であればあるほど歯がない、歯抜けの状態になってしまうという事態が起こります。別の見方をすれば、歯抜けの人であれば富裕層ではないということが見分けられる事態になってきているというのです。

3年前、北朝鮮から拉致被害者5名が帰国されましたが、その際、帰国して喜ぶ拉致被害者の笑顔の口元を見て、僕は思わず涙してしまいました。拉致被害者の口元が皆大変ひどい状況であったからです。拉致被害者の北朝鮮での暮らしが如何に過酷であったということを物語っているように思えてなりませんでした。

永久歯は親知らずを含め32本あります。歯が数本くらい無くても命に別状はないかもしれませんが、歯が無くなることにより、食べられる物が変わってきますし、歯並びもかみ合わせも変わってきます。結果的に顔の形も変わることになり、その影響が生活のレベルというところにまで反映されざるをえないのが現状ではないでしょうか。歯というのは生活を写す鏡のようなところがあると言えます。

格差社会という言葉が流行語の一つに挙げられる今日この頃ですが、口元を見れば誰がどの社会に属しているかわかるような時代になりつつあるかもしれません。
歯を見れば格差社会がわかるような時代。歯医者にとって、実に悲しいことです。



2006年12月07日(木) 便宜抜歯とは?

先日、矯正治療を受けている患者さんSさんが来院しました。Sさんはうちの歯科医院から矯正治療のために矯正専門医へ紹介した患者さんでした。

うちの歯科医院では歯の矯正治療をいっていません。理由は簡単です。僕自身、矯正治療の経験が全くないからです。僕は某歯科大学時代に歯科矯正学を学び、実習も受けてはきたのですが、本格的に矯正治療を行うには更なる研修、研鑽が必要です。僕は、今まで歯科矯正学のトレーニングを受けてきていません。歯科矯正学の基本的知識はもっていても、治療となると全く別物です。そのため、僕は歯の矯正治療を希望する患者さんは懇意にしている矯正専門医へ紹介し、治療を受けるようにしているのです。Sさんもそんな患者さんの一人だったのですが、Sさんは矯正専門医からの手紙を携えて来院しました。
その手紙の封を開けると、僕宛に下のようなことが書かれていました。

“上下左右の第一小臼歯の便宜抜歯を宜しくお願い致します。”

僕が懇意にしている矯正専門医は歯並びを治す矯正治療と矯正治療中の予防処置しか行っていません。むし歯や抜歯が必要なケースは、紹介を受けた歯科医や口腔外科専門医へ治療を依頼します。Sさんの場合、歯の矯正治療を行うにあたり、矯正専門医は様々な角度から治療方針を決定した結果、上下左右の第一小臼歯の抜歯が必要と判断されたようです。そこで、抜歯をうちの診療所で行うようにSさんに伝えたわけです。

ところで、便宜抜歯という単語、抜歯なのにどうして“便宜”単語がついているのでしょう?
本来、抜歯行為は口の中にある歯を抜いてしまうことを指します。抜歯するということは、歯が無くなってしまうわけですからそれ相当の理由がない限り抜歯できません。それ相当の理由とは、歯を残しておくことが口の中に悪影響を起すような場合、他の歯や歯肉に害を与えるだけのような場合です。
例えば、

・むし歯を放置した結果、歯が崩壊し、歯を囲っている歯の周囲歯肉が腫れ、隣の歯にまで悪影響を及ぼしているような場合

・親知らずがまっすぐ生えず、一部だけが歯肉から露出。その結果、歯肉の周囲が炎症起こし、痛みが生じるような場合

・永久歯が生えてきているにも関わらず乳歯が残ったままのような場合
などが該当します。

さて、矯正治療において抜歯が必要であるということは一体どういうことなのでしょう?端的にいえば、乱れた歯並びを治療するに当たり、土台にあたる骨の大きさに対し、生えている全ての歯の大きさの方が大きく、歯を並べ治すスペースが確保できない場合です。このような場合、特定の歯を抜歯して、歯並び治せるスペースを作る必要がでてきます。ところで、このような歯の抜歯は本来の抜歯目的ではありません。歯の抜歯とは先ほども書いたように歯を残しておくことが悪影響しか及ぼさない場合に限るからです。歯の矯正治療はあくまでも歯並びを治すわけです。敢えて言えば、歯並びを治さなくても口の中に悪影響が及ぶとは限らないのです。(正確には若干違うのですが、あくまでも原則の話という前提にしておきます。)
矯正治療時に歯並びを治すためにやむを得ず抜歯を行う場合を便宜抜歯と呼ぶ理由がここにあります。あくまでも便宜抜歯は歯の矯正治療を行うにあたっての“便宜“上の治療行為なのです。本来の抜歯目的、絶対的理由ではない。そういった意味合いが便宜抜歯には含まれているのです。

この便宜抜歯ですが、歯の矯正治療を目的とした便宜抜歯は保険治療の対象ではありません。なぜなら、審美を目的とした歯の矯正治療は、保険治療ではなく自費治療だからです。歯の矯正治療の一環としての便宜抜歯は、保険治療には当たらない。そういった解釈なのです。矯正専門医から歯の便宜抜歯が必要と説明された場合、矯正専門医からは便宜抜歯が保険治療には当たらないとの説明があるはずです。
抜歯であれば保険治療行為だろうと思われる方もいるかもしれませんが、矯正治療における抜歯行為は自費扱いであることをわかって欲しいと思います。



2006年12月06日(水) 歯の変色、着色について その3 治療法

むし歯による歯の着色の場合、当然のことながらむし歯の治療を行います。むし歯で侵された歯質を取り除き、歯の色に近いレジン充填材で充填することにより着色を取り除くことが必要です。
ただし、レジン充填材は時間が経過すると共に変色したり、着色しやすくなります。そのような場合、詰め物を詰め直したり、表面を専用の研磨材で研磨することにより変色や着色を取り除くことになります。

歯の神経を取った歯の場合はどうでしょう?いくつか方法があるのですが、歯そのものをできるだけ残すといった点で考えると漂白という方法があります。これはある種の漂白材料を歯の内部や歯の表面に作用させ、変色した歯質を白くするという方法で、現在ではホワイトニングと呼ばれることが多いです。歯科医院で行う漂白と、家庭で行う漂白の二種類を併用して漂白を行うことが多いようです。
最近では、歯のマニキュアのような充填材も存在します。これは変色した歯の表面にレジン充填材を塗布するもので、さながら爪に塗るマニキュアのように行います。この処置は歯医者が行いますが、漂白するには時間がないけれども何とか歯の色を白くしたいといった場合、有効な処置です。欠点としては、長持ちしないということです。数ヶ月程度しか持たないと言われていますが、結婚式を直前に控え歯の色を白くしたいといったような患者さんの場合、有効です。僕自身、そのような患者さんに何回か歯のマニキュアのような充填材を塗布してきましたが、いずれも好評でした。
ちなみに歯のマニキュアのような充填材はあくまでも歯科医院専用の充填材です。通販カタログで掲載されるような代物ではないことを断っておきます。
これら漂白処置によって効果がない場合には、歯の表面を削ってレジンと呼ばれる修復材料を詰めたり、ラミネートベニアという殻状のセラミック材料を貼り付ける方法、歯全体を削り被せ歯をしてしまう方法などがあります。それぞれの処置は向き、不向きがあります。患者さんの歯質、かみ合わせ、歯並びなどによってできる処置、出来ない処置があることを理解してほしいと思います。

テトラサイクリンと呼ばれる抗生物質による副作用による変色や歯牙フッ素症による歯の変色の場合はどうでしょう?これらの歯の場合は漂白は効果が期待できない場合が多いのです。こうした歯の場合、歯を白くするには、歯全体を削って被せ歯にしたり、先ほども書いたように歯の表面を削り、ラミネートベニアによる修復方法により歯を白くすることや歯全体を削り被せ歯にするようなことにより歯を白くすることになるでしょう。

歯の着色がステインによるものの場合はどうでしょう?
最近、歯の着色を取ることを謳い文句にいくつかの歯磨き粉会社から歯のステイン、着色除去を目的とした歯磨き粉が販売されています。このような歯磨き粉の効果ですが、歯の汚れがひどくないような場合は効果があるとは思いますが、こびりついているような場合には効果がありません。むしろ、こだわって使い続けていると歯の着色というよりも、歯そのものを削ってしまうリスクさえあります。
そのような場合、歯科専用の研磨材を使用して着色を取ることが一番です。
最近、歯科医院ではPMTCと呼ばれることが行われています。PMTCとはProfessional Mechanical Tooth Cleaningの略で、専門家による歯の清掃とでも言うべき処置です。歯に優しい何種類かの研磨材を使用し、専用の器具を用いて歯の汚れを取っていくのです。粒子の粗い研磨材から粒子の細かい研磨材を使用していくことにより歯の汚れをとるばかりか、歯の表面の傷をならすことができ、再度の歯の着色をしにくくなるようにしているのです。多くの歯科医院では歯磨き指導や歯石を除去した後などにこのPMTCが行われています。単に歯の着色を取るだけでなく、なるべく歯の汚れが付かないようにすることも目的と言えるでしょう。
そうそう、先日某歯科材料展示会ではステインを取り除く消しゴムみたいなものも販売されていました。これなどはなかなかのアイデア商品ではあると思いますが、歯磨き粉と同様、歯医者の管理の下に使わないと歯そのものを傷つけることになりますから注意が必要でしょう。

歯の変色、着色が飲食物による影響が強い場合、これら飲食物の摂取量を控える必要があります。以前、僕が担当した患者さんの中には一日にコーヒーを10杯以上飲む人がいましたが、その人の歯の表面は常に着色していました。このような場合、コーヒーの飲用を少し控えてもらうことも歯の着色を防ぐには必要です。

口呼吸や唇が閉じにくいような人の場合は、意識して口を閉鎖し、鼻で息をするような意識づけが必要となります。すなわち、唇を閉じて口の中が常に唾液によって乾燥しないような意識づけが必要だということです。場合によっては、口呼吸や唇が閉じやすくなるような処置が必要となることもあります。

以上、歯の着色について長々と書いてきましたが、注意して欲しいことがあります。それは、歯の変色、着色を取り除く処置は保険治療が効かないものが大半であるということです。保険治療はむし歯や歯周病の治療や特定の材料による処置、PMTCについては認められていますが、漂白や歯のマニキュアのような充填材、ラミネートベニアやメタルボンド冠と呼ばれるセラミックの前装されている被せ歯などの処置は自費となります。治療を行うにあたり、どの程度の治療費がかかるものか、患者さん側もあらかじめ歯医者側に質問をしておくことも大切だと思います。治療を行ったけれども、治療後に請求された金額に驚いたなんてことがないようにしたいものです。

歯の色は元々全く白いというものではありません。どんな人も歯もやや黄色かかっているものなのです。元北海道日本ハムファイターズの新庄選手の歯のような、便器のような白さの歯というのは天然の歯においてはありえないということを知っておいて欲しいと思います。
歯の色は顔の色や歯を支えている歯肉の色によっても影響をうけます。歯肉が歯周病でないピンク色を呈している場合、歯の色もより白く見えるものです。女性の場合であればメークによっても影響を受けます。
個人的には、むし歯や歯周病でない限り、多少の歯の変色、着色は気にしなくてもいいのではないかと考えていますが、こればかりは個人の価値観の違いですね。

いずれにせよ、歯の着色、変色で悩んでいる方は、歯の専門家である歯医者のもとを訪ねて欲しいと思います。専門家の目で歯の着色、変色の原因が何であるかを見極め、適切な処置、観察をしていくことが肝要だと思います。



2006年12月05日(火) 歯の変色、着色について その2

歯の表面はエナメル質と呼ばれる硬い組織で覆われています。このエナメル質の硬さはダイヤモンド並みなのですが、実際に顕微鏡で観察してみると無数の凹凸があります。特に、生えたばかりの乳歯や永久歯の場合、歯が未熟であるがゆえに凹凸の度合いが高いと言えるでしょう。特に、乳歯の場合はそのような傾向が強く、乳歯に着色が見られるケースが意外と多かったりします。
また、不適切な歯磨きの仕方をしていると歯の表面に微小な傷が生じます。一生懸命磨いているがあまり、力強く、同じ場所を強引に磨きつけると、歯の表面には無数の傷が生じます。また、歯ブラシの毛先が広がったような歯ブラシの場合、特定の歯磨き粉を使用して歯磨きをし続けていたような場合も同様のことが起こります。
某社の歯磨き粉などは歯のヤニをとることを謳い文句にしているのですが、この歯磨き粉を使用して歯磨きをし続けていた歯は、ヤニどころか歯そのものも派手に削れているような場合があります。
このような状況の下で歯に凹凸や傷があると、着色しやすくなるのです。

着色しやすい飲食物、医薬品というものも存在します。
例えば、お茶やワインなどをよく飲む人は歯が着色しやすい人がいます。これはお茶やワインに含まれるポリフェノールと呼ばれる成分が歯に付着しやすい物性を持っているために起こる現象です。
他にもイオウ成分が多く含まれるネギやにんにく、特定のビタミンの摂取により歯が着色することがあるのです。
それから、タバコのヤニです。タバコの中に含まれるタールが歯に付着し歯が汚れることは広く知られていますね。
クロルヘキシジンやフッ化第一スズと呼ばれる消毒薬も歯に着色することがあります。これら薬物は口の中の消毒薬として歯周病やむし歯予防のために使用されるわけですが、その一方で歯の着色という副作用のような現象が起こることがあります。それ以外にも特定の漢方薬の服用によって歯に着色が起こることもあります。

意外に見落としやすいことの中に、歯に着色しやすい口の中の環境があげられます。
例をあげると、歯並びの乱れている人。歯並びが乱れている方の場合、どうしても歯磨きが不十分な部分が生じ、汚れの取り残しが出ます。結果として、歯の汚れから起因する着色が出てくることになります。
また、口の中が常に乾燥しやすい人も歯に着色が出やすい人といえるでしょう。鼻で呼吸をしない、できない口呼吸の習慣がある人、唇が閉じにくい状態にある人、あるいは、ドライマウスと呼ばれる口腔乾燥症の人などがこれに当たります。口の中が絶えず乾燥していると、歯についた汚れが唾液によって流れず、歯に留まってしまい、汚れ付着し、着色する原因となりえます。
直ぐに吐き気を催すような嘔吐反射の強い人も、口の中に汚れが溜まりやすかったり、微量の胃酸などの影響により歯に着色が生じやすいのです。

歯に治療痕がある場合、使用している材料によって着色しやすいものがあります。その材料とはレジンと呼ばれるプラスチック材料です。
レジンは保険診療で用いられる非常にポピュラーで使用頻度の高い材料ではあるのですが、その反面、長期に使用しているとレジンの表面が荒れ、着色しやすくなります。保険治療における前歯や入れ歯の人工歯などがそうです。最近よく行われているハイブリッドセラミック冠があります。これはハイブリッドと称しているとおり、レジンとセラミックのハイブリッドな成分からなる冠であるわけですが、中にレジン系材料が含まれるため着色しやすい。それに対し、セラミックの前装がある被せ歯やセラミック冠の場合は、着色しにくいです。
それでは、これら様々な要因によって生じる歯の着色ですが、どうすれば歯の着色を取り除くことが出来るでしょうか。
明日へ続く。



2006年12月04日(月) 歯の変色、着色について その1

歯科医院には様々な患者さんが来院しますが、最近の傾向としては“白い歯にしたい”“歯の汚れを取りたい”と希望される患者さんが多くなってきたように思います。見た目、審美に関心をもった患者さんが増えてきたということがいえるでしょう。歯の審美に関心を持つ人が増えてきたということは、それだけ歯の健康に関心を持っている人が増えていることでもありますから、我々歯科業界人にとっては非常に好ましい傾向だと言えます。

今回はそんな歯の変色、着色について取り上げたいと思いますが、一言に歯の変色、着色といっても原因によっていくつかの種類があります。

一つはむし歯によるものです。
むし歯は歯の表面から徐々に内部に進行します。歯の色は歯の内部の色に影響されます。といいますのも、歯冠の表面を覆っているエナメル質は半透明色だからです。より内部の象牙質の色に影響を受けるのです。もし、むし歯が内部に進行し、象牙質が侵食されると象牙質の色は茶褐色になることが多いもの。また、エナメル質も白く濁った色になることがあります。

二つ目は、神経を取った影響によるものです。
むし歯が深く進行した場合、むし歯で侵された歯質を取り除くと、神経(専門的には歯髄といいます)が露出する場合があります。このような場合、むし歯の原因であるむし歯菌が神経にまで達していることがほとんどです。神経に炎症が起き、そのため痛みを伴うことが多いのです。冷たい水や熱い食べ物でしみたり、夜間突然歯痛が生じるような場合、むし歯が神経にまで達し、神経が炎症を起していることがほとんどです。一度炎症を起した神経は炎症が治りません。歯科医院では歯の痛みと神経に侵入したむし歯菌を取り除くため、神経を取り除く治療を行います。神経を取り除いた後、通常は神経の代わりになるゴム製の充填材が詰められます。
ところで、神経には多数の血管があり、歯に栄養を送り、歯の新陳代謝に役立っています。歯というと非常に硬い組織だというイメージがあると思いますが、そんな歯でも常に血液循環が歯に行き渡ることにより新陳代謝が行われるのです。
むし歯の治療によりその神経が取り除かれると、当然のことながら歯に栄養を送られなくなり、歯の新陳代謝、活性が落ちます。そうするとどうなるか?極端な例えかもしれませんが、歯は枯葉のような状態になると言ってもいいでしょう。歯の白い色も歯に血液循環が行き渡ることにより持続しています。神経が取り除かれた歯は次第に歯の白さも失うことになり、徐々に黄色っぽくなってくるのです。

三つ目は、全身に影響する因子によるものがあります。例えば、歯が形成される際にテトラサイクリンと呼ばれる抗生物質を服用すると、歯肉から出てきた歯の色が暗い灰色になることがあるのです。また、同じように歯の形成時期にフッ素を多量に含んだ水を服用したような場合、歯の色は白濁したり、茶褐色になるような場合があります。これは歯牙フッ素症と呼ばれるものです。

四つ目がステインと呼ばれる色素によるものです。これはタバコによるヤニやお茶の茶渋などの色が歯の表面に点状に付着したり、歯の裏側前面に付着したようなものです。


更に解説は続くのですが、今回はかなり長くなりますので続きは明日へ。



2006年12月01日(金) 今日からURL変わります・忘年会シーズン突入

早いもので今日から師走です。平成18年も後1ヶ月となりました。毎日それなりに必死に生活しているうちに1年が通り過ぎていく、そんな感じがする今日この頃。

さて、昨日予告していたことですが、今日から“歯医者さんの一服”のURLが変わります。
新しいURLは

http://www.enpitu.ne.jp/usr10/106262/diary.html
です。

これまで“歯医者さんの一服”はホームページ作成ソフトで日記を書いていたのですが、何度か過去ログを消してしまうというドジなことをしでかしていました。また、過去ログは月ごとにまとめて保管してきたのですが、段々と面倒くさくなってきていました。
また、以前から“歯医者さんの一服”サイト全体をより身軽なものにしたいとも考えていました。“歯医者さんの一服”は日記を中心にしたサイトでしたが、これを特化して日記のみのサイトにしたいと思うようになってきたのです。
昨今、インターネットではブログが全盛時代です。当初、ブログにしようかなとも考えていたのですが、あれこれと考えた末たどり着いた結論は、エンピツを利用することでした。
エンピツにユーザー登録をし、試行錯誤しながらカスタマイズし、ようやくこのような形で日記をアップすることになりました。
実は、エンピツには4月ぐらいからぼちぼち“歯医者さんの一服”を日記をアップしていたのですが、師走を迎えるにあたり、“歯医者さんの一服”を完全にエンピツに移行することにしました。

ブックマークやお気に入りから“歯医者さんの一服”にアクセスして頂いている方はどうかURLの変更をお願い致します。


さて、師走といえば忘年会の月。巷では数多くの人たちがいろんな場所で呑み会が行われていることでしょう。僕も今年はいくつかの忘年会に参加します。
昨年、僕はごく限られた忘年会しか参加しませんでした。その訳は、年明け、すなわち今年1月に僕が参加している某アマチュアオケがベートーベンの第九交響曲を演奏することになっており、その練習が週末あったからです。
僕にとって初めての第九演奏。アマチュア演奏家にとってベートーベンの第九交響曲は憧れの曲。そんな曲を演奏する機会はめったにありません。この機会を逃したら死んでもしに切れない。それくらい僕はベートーベンの第九の演奏に参加したかったのです。そのため、練習には何が何でも参加しようと決めていました。一方、忘年会は週末、それも土曜日に行われることが多く、僕は誘いがあった忘年会をほとんどキャンセルしていたのです。忘年会によっては、不義理をしてしまったものもあり申し訳なく思うこともしばしばでした。

そういったこともあり、今年はお誘いのある忘年会はできるだけ参加しようと心に決めたわけですが、スケジュール表を見る限り、後悔しております。果たして、お金と体力が続くかどうか?神のみぞ知るというところでしょうか?先が思いやられます・・・。


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