My life as a cat
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2020年05月31日(日) 先進国の当たり前

まだどうなっちゃうのかわからないし、ぬか喜びさせたくなくて親には言ってない妊娠のこと。どうなっちゃうのかわからないと言えども、順調にいってくれればたった7ヶ月後には子育てがはじまるのだ。準備はしておくに越したことはない。と、あれこれ子育てに関する記事を読んでる。とりわけ子供の食事とか予防接種のことはあれこれ考えてしまう。先進国で当たり前とされてる子育てのしかたには共感できないでいる。生まれたての子供に何十種類ものワクチン。打つことを拒めば子供虐待と言われる。隣国イタリアでは子供を栄養失調にさせたとヴィーガンの親が逮捕されてる。オーストラリアでも同じようなことがあった。一方、子供の健康管理をせずジャンクフードばかり与えて肥満にさせてしまう親は逮捕されることはない。イタリアもオーストラリアも肥満による健康被害のほうがよほど多いというのに。ヴィーガンだから栄養失調になったんじゃなくて、ちゃんとした管理をしてなかったからという子供を肥満児にする親と根本は同じなんじゃないか。誰も正しい知識なんてもってなくたって、世の中で当たり前とされてることに意義を唱えると必ず強い批判に合う。わたしも幾度となく"肉を食べなくてプロテインはどうするんだね?"と批判的ニュアンスで言われたことはある。そういうことを言ってくるのは大抵頭の凝り固まった年配の人々で、タバコ吸って、酒飲んで、すぐ風邪ひいてしょっちゅう病院にかかってて、常に食事と一緒になんらかの薬を飲んでたりする人々なので、適当に受け流してるが。でもそういう人が逆に世間から批判されることはないのだ。"みんながやってることをやってる"だけだから。

予防接種を子供に打たず子供を生命の危機にさらす親は批判され、予防接種を打たせ子供の体を麻痺させてしまったりする親は批判されることはない。

まぁ、世間の批判はどうでもいいか。何を言われようとも、もう20年以上菜食ベースで薬や病気とも無縁で健康に暮らせてきた自分がいちばんこれでよかったと知ってるからそれでいいのだ。ただ子供の体は自分の体ではない。その小さな声を聞くことは難しい。今からあれこれ思いわずらったりせずにそのときそのとき様子を見ながら進めていけばいいのかな。


2020年05月29日(金) 妊婦とティラミス

美味しそうなマスカルポーネチーズを見かけてひらめいた。あっ、今日は金曜日。一週間よく働いたリュカに労いのデザートを作る日。これは彼のいちばん好きなデザート、ティラミスに決まりでしょ。と、マスカルポーネを手に取って、ふと気付いた。あっ、ティラミスは生卵入ってる。っていうかそもそもチーズ加熱しないで作るティラミスはもう絶対アウト。あぁ、先日婦人科医にかかった時、お腹の中でよく呼吸してる子犬ちゃんみたいなエコー写真を初めて見て、リュカとよしお祝いだ!とシャンパンは駄目だからってジェラート買って乾杯したんだった。今思えばジェラートだって生卵入じゃないか。イタリア人も妊娠中はこういうのお預けなの???エスプレッソ、ジェラート、生のモッツァレラ、ティラミスってイタリア人がちゃんと守れるの?疑問に思ってイタリアのサイトで調べてみた。どうせすごい緩いんじゃないの?と予想してたが、意外にもイタリアの医者はこういうのはそもそも脂肪分過剰になるから摂取しないようにと書いてた。ジェラートは加熱殺菌したものを売ってる店が多いので確認してからなら少量食べてもいいんだそうだ。日本ではあらゆる食品が殺菌されてるから、さほど神経質にならずに済むらしいのだが、ここではそうはいかない(だが、その分自然風味豊かな美味しいチーズなんかが味わえるという恩恵はあるのだが)。つわりも少し落ち着いてきて、食欲も少しでてきて、大きなスプーンでティラミスを掬って口いっぱいに頬張る自分の姿がすでに脳裏に焼き付いてて、がっかりしながら帰宅した。

「辛いけど、一緒に乗り越えよう」

とリュカ。

「一緒にってどういう意味?」

「僕もティラミス断つから」

「え?そんなのいいよ。あのね"金持ちを貧乏にしたって、貧乏人が金持ちになるわけじゃない"ってサッチャーが言ってたでしょ。それと同じよ。あなたがティラミス断ったってわたしがティラミス食べられるようになるわけじゃないからね。好きなだけ食べてちょーだい」

とこんなやりとりをしたが、結局リュカはあと7ヶ月わたしと同じように暮らすらしい。健康な友人が高血圧の旦那さんの塩抜きの食事を作ってて、可哀想だからと自分も塩抜きの食事をとってて具合が悪くなったのを思い出して、辛うじて、リュカの食事には最後にぱらぱらと塩をふってる。


2020年05月24日(日) フランス個人主義を垣間見る

クリスティーヌからメールがきた。

「ハインリヒの連絡先教えて」

ハインリヒ?この二人に大した繋がりもないと思うけど、なんでだろう。

「なんでって、彼らの共通点はただひとつ。家族が病院にステイしてるってこと。患者の家族団として病院に苦情を入れようっていう相談に決まってるよ」

とリュカ。あっ、確かに、それかぁ。この病院では3月の初旬には既にヴィジターを一切受け入れてなくて、現時点では一日に三人までということになってる。それでローテーションすると家族は三週間に一度くらいしか訪ねていけない。

先日道でクリスティーヌに会った時、酷く憤慨してた。

「囚人じゃあるまいし、そんなに長く閉じ込められて、母はウィルスで死ななくても気が滅入って死んでしまうわ」

と。家族が病院勤務の立場からしたら、この意見は受け入れ難い。だって病院の職員だって囚人じゃないのだ。なのに外出禁止の中リスクを犯して出勤して、患者達の面倒を見てた。患者は早くに隔離されてる。この病院にウイルスをもたらすのは職員かヴィジターなのだ。だけど職員を出入り禁止にするわけにはいかない。せめてヴィジターはという決定なのだろう。わたしは朝、出勤するリュカの背中を毎日少し不安な気持ちで見守る以外にないのだ。

「病院の職員の家族の立場から言えば、ヴィジターを制限してくれるのは安心だけどね」

と一応別の立場からの意見を伝えた。彼女は別の立場からこの一連の事情を見たことがなかったのではないか。顔面を強張らせたままおとなしく去っていった。

数日後、また彼女にばったり会った。案の定病院のダイレクターに宛ててハインリヒと共同で大きな苦情のレターを書いたのだと話していた。法律違反だとか、そんなことも書いたとのことだった。そうやってヴィジターが自由に出入りできるようになったことによって、もし自分の家族の命が失われたら彼女は同じことを言い続けるだろうかと思った。でも、患者や患者の家族の気持ちも理解できるから、黙って聞いた。

「せっかく庭があるんだから、あの庭の一角にテーブルでもセッティングして、ビル内には通さないようにしてヴィジターを許可したらいいのにね」

と言ったら、彼女の顔はみるみる明るくなった。

仕事から戻ったリュカに話すと、ただひとつ大きなため息をついた。彼は自分と家族を守るため日々細心の注意を払って働いて、精神的にも疲れてることだろう。フランス人は自分の立場からの意見を主張する時、別の立場に立ったらなんてことは考慮しない。考慮できないこともないのだろうけど、いつも"自分が""自分が"という自分主体で生きる風習で育ってる。相手の立場に立って物事を考えなさい、とか、社会に迷惑をかけないように、なんていうのはすごく日本風なのだと思う。頭の痛い問題だけど、病院側だってフランスの精神なのだ。どう対応するのか少し興味がある。

今週ついにこの病院でも感染者が出た。患者とは接点のない職員だった。明日患者も職員も全員検査を受けるんだそうだ。

甘いプチトマトが手に入ったので、トマトとポテトのソースのニョッキを作った。そしてまたグリッシーニを焼いた。今日はイタリアのレシピで。砂糖も塩も控えめでおやつにもいい。こうやって置いといたら、なんとクロちゃんが先っぽを舐めてた!猫にも人気のグリッシーニだった。それにしても猫って不思議。わたしがこうやって具合が悪くなって以来、わたしから一歩も離れないのだ。どこでも着いてきて隣に寝てる。夜もずっと枕元で朝まで寝てる。何か感じてるのかな。心強い相棒だ。


2020年05月23日(土) お芋ちゃん

昨日の午後から増した気持ち悪さが今朝起きたら嘘のように消えてた。相変わらず起きがけのカフェはその香りを想像しただけで吐きそうなのでやめたが、粉を練って、グリッシーニを焼き、その隅っこに色んな芋を突っ込み焼き芋、ついでに小豆まで煮た。ランチはゆっくりサラダと焼き芋。じゃがいもは1個だけいつか食べてみたい本場ロシアのファストフード店のクローシュカ カルトーシュカ(Kroshka Kartoshka・・・お芋ちゃんっていう意味なんだそうだ)を真似て、アルミホイルを開いて半分に割って、チーズを乗せてまた2、3分オーブンに戻したのにして、もう1個はバターと胡椒、欧米のオレンジ色の水分の多いさつまいもと黄色い日本のみたいなほっくりしたさつまいもはそのまま食べた。オーブンに突っ込むだけの焼き芋だが、こんな美味しいものってあるだろうか。リュカとは食の好みが合わない。イタリアンレストランへ行けば彼はピッツァかニョッキ、わたしはトマト系のパスタ、デザートのチョイスも彼はティラミスかチョコレート系、わたしはフルーツ系だ。こんなんだが、芋の時だけは意気投合する。食後にアイスラテと餡バターを挟んだクロワッサン。冷たいアイスラテはカフェがきつく香らないから大丈夫みたい(冷たいのとかカフェインは妊婦には良くないんだけどな)。あんことバターの組み合わせは最高に好きだけど、クロワッサンよりもやっぱり銀座の木村屋に売ってるあんぱん風のが断然いいな。

久々に食べ物が美味しいと思うような調子の良さで、食後の眠気もなくて体が軽い。ホルモンの分泌が少ない日はこんなんらしい。子育てのことより、産後体型のことばかり気にしてググってるわたしにはまだ母性が芽生えていないのだろう。でも、なんとなく、おなかに溜まった水みたいに感じるこのちょっと重い存在に愛着が沸いてきて、塩っ辛いといけないなって塩控えたり、生野菜や果物はちゃんと酢水で洗ったりしてる。少しずつ気持ちも変化していくのかな。


2020年05月21日(木) 幸せの土台

からりと晴れてる日は気圧のせいか、少しだけ体の調子がいい。体調万全だった時と比べれば動作緩慢で7割くらいだけど、昨日、今日とけっこうあれこれ家事ができた。ブランケットも冬のは干して、夏のに変えて、掃除して、髪を切り、ひじき煮とかおからの炊いたんとか豆乳そうめんとかオクラとトマトとナッツのアフリカ風の煮込みとか、韓国冷麺とか、天津飯とか自分の食べたいものに尽きたけど、料理もした。リュカは幸い大人しい人間なので、

「君の食べたいものでいい。僕も妊婦の食事でいい」

とわたしと一緒に甘酢っぱいものを食べている。夜の散歩は空気がちょっとひんやりしてるせいで、疲れるよりも呼吸が楽になってむしろ気分がよくなるので、ゆっくりゆっくり30分程歩く。散歩の途中、小学校の近くでキツネに出くわした。クリスティーヌの家はすぐそこで、先日鶏がキツネにやられちゃったと言ってたっけ。きっとこのキツネだろうな、犯人は。しかし、キツネってなんて優美な生き物なんだろう。するりと細い野生の体躯、金色の毛皮、機敏でしなやかな動き。それに比べて今のわたしときたら体中がパンパンに浮腫んでて、足取りは象さんのごとく重い。こんな状態になってたった数週間、体が思ったように動かなくて、気持ちが沈みがちだ。わたしは元々とてもアクティブで、山を何時間も歩きまわったり、海で一日中泳いでたりしてた。よく働き、よく遊び、よく食べ、よく眠る、これこそが生きるってことだと思ってた。健康を害したわけじゃないにせよ、それがままならなくなった今、改めて健康でいることの尊さを思う。幸せの土台に健康ありきなんだ。キツネはしばらくわたしと目が合ったまま静止してたが、ゆっくり後ずさりしながら夜の闇にするりと消えていった。


2020年05月19日(火) フィフティ・フィフティ

「コロナの外出禁止で、家に閉じ込められて離婚が増えてるけど、もうひとつ増えると思うのは赤ちゃんじゃないかな。仲の良いカップルが閉じ込められてやることっていったら子作りだもん。来年の初旬はベイビーブームとわたしは予想してるわ」

4月にリュカにこんなことを言ってた。

4月の終わり。体温が上ってから2週間経っても生理がこない。体温が上がる時期が遅れてなかなか生理がこないことは多々あったが、体温が上ってしまえば必ず2週間後、遅れてもその3日後までには生理があった。体温、体重、体調など全て記してる過去のモレスキンを引っ張り出して眺める。そして気付く。4月になると必ず生理がものすごく遅れてるのだ。最高で35日生理がない。調べてみると、春になると気圧の変動で、生理不順になる人は少なくないらしい。そうか、気圧の変動ね。もう数日待ってみよう。

過去最高の35日を超えても来る気配なし。お腹も胸も張ってて、体温は4週間高いまま。そしてそのうち味覚がなんだかおかしくなってくる。まず4歳から愛飲し続けてる朝のカフェが気持ち悪い。食べたいものは甘酸っぱいもの、ヨーグルト、果物、梅干しなんかで、ただ甘いものは気持ちが悪くなる。油と塩っぽいジャンクフードもいい。常にちょっと乗り物酔いみたいな気持ち悪さがつきまとってて、食欲旺盛というわけではないが、空腹だと気持ち悪さが増すからお腹に何か詰める。

やっぱり何かがおかしい。症状はどちらかといえば妊娠っぽいけど、年齢が年齢だけに、閉経とか更年期障害という可能性も考える。しかし、これが妊娠じゃなかったら、おおごとだ。こんな常に乗り物酔いみたいな状態で人生続けていくのはきつい。それとも大掛かりな手術が必要になるような婦人科系の大病でも患ってるんではないか? 心配になってくる。

昨日はリュカが仕事を休んで、久々に一緒にニースへ行った。ファラフェルサンドイッチを買って広場に座って食べた。やわらかな春の日差しが気持ちよかった。食後にふと目の前にジェラート屋さんがあるのが目に入って、"見てくる!"と、走っていって、どんなジェラートがあるのか見てまた戻るとリュカがこんなことを言った。

「走っていく君のスカートの裾がふわふわ揺れて、春の蝶々が飛んでるみたいですごい綺麗だった」

彼はいつも突然うっとりした目でこんな面白いことを言う。ジェラートを買って食べた。自家製で本物の材料を使ったものだけにちょっと高いけど、価格なりの美味しさだった。なんだか幸せで、家族がひとり増えてもいいかなと思った。

新作の水着を見て、これいいなと思うのがあったけど、今年の夏はおなかがぽっこり出てるということもあり得る、とそのまま背を向けて帰ってきた。

検査をしてみると陽性。ひとまず婦人科系の大病ではなくてよかった。40代の妊娠では半分の人が流産してしまうというので、まだどうなるのかわからない。親には当分言わないことにしよう。しかし、逆に言えば40代で妊娠した人の半分は子供の産むのだよな。結婚したことでは大して人生は変わらなかった。住む環境が変わって何でもシェアできる相手がいるけど、わたしはわたしのままだ。しかし子供がいるのと居ないのでは人生は大きく変わるように感じる。今わたしは人生の大きな岐路に立たされているのだろうか。

婦人科医とのつい先日の会話。

「子供は?」

「いません」

「欲しくないの?」

「いやぁ、わたしは特に希望はないけど、夫は欲しいそうです」

産婦人科医リュカを見る。

「あっ、いやっ、居たらいいなって思うけど、絶対子供がいなきゃというわけではなくて・・・」

「まぁ、あなたの年齢で自然に妊娠するのはかなり難しいから、本当に欲しいとなったら急いで手を打たないといけないからすぐ来なさい」

その後すぐ、妊娠したとかいって戻ったらあのドクター驚くかな(笑)

ここ数週間、料理をする気もいまひとつ起きなくて、罪悪感を抱きつつもいつもは手作りするものを市販品で済ませた。原材料に自家製では入れないものが足されてるのを見なかったことにして、口に入れて後悔するを数回繰り返した。しかし、わたしのお腹にわたし次第の別の命がいるとなるとやっぱり得体のしれないものを体に入れるのは可哀想だ。そう思い直して、気を奮い立たせて、苺ジャムとトマト・ケチャップを作った。糖分20%の自家製のジャムは砂糖ではなく果物の味がする。トマト・ケチャップだって砂糖ではなくてちゃんとトマトの味がする。あぁ、やっぱりこれだ。


2020年05月12日(火) ガパオライス

少しだけ余ったバジルペーストならぬにんじんの葉ペースト(バジルほど香りたってないが、ペスト・ジェノベーゼみたいに使える)が冷蔵庫にあった。少しだけ余った玉ねぎと赤パプリカも。何とかしようと検索。ガパオライスのレシピに心惹かれる。自家製のナンプラーもウスターソースもあるし、材料は揃ってる。肉はこちらのBIOショップなんかで売られてる"Protéines de soja"というソイミートを使おう。これ乾燥してて、ぬるま湯で15分程度戻してから使うのだが、プリッとした食感があって、醤油とかで濃い味をつけてしまうんならお肉の代わりに使ってもかなりそれっぽい。これをミキサーで砕いて挽き肉風にする。これを使う時のコツはちょっと油を多めにするのとちょっとだけ甘みを足すとより肉っぽさを発揮する。甘さはフライドオニオンで出すことにしようとエシャロットをじわじわフライパンでカリカリに焼いてトッピングすることにした(放置でいいけど弱火で40分くらいかかる)。フライドオニオンはさておき、この料理はたった2、3分でさっと炒めるものらしい。野菜から水が出てくる前に表面を炙って水分をしっかり封じ込めて火が通っていても瑞々しい野菜を味わうという調理法はいかにもタイっぽい(中華料理もそうだけど)。熱々のフライパンで一揆に仕上げる。ジャスミンライスの上に目玉焼きとフライドオニオンを乗っけて完成。本物のガパオライスは食べたことがないんで、本物を知ってる人はどう思うかわからないが、自分ではとても満足。

外出禁止は一応緩和されて自由に外に出られるようになったけど、この田舎町では大して違いを感じない。都心の小さなアパルトマンに2ヶ月の間閉じこもっていた人々の苦痛を考えると、恵まれていたと思う。それにしても、この山間の町では昨年末に鉄道のストライキ、それに加えて、バスのルートは大雨でブロックされて大幅な復旧作業中。そんなこんなんで昨年末から緩い外出禁止状態だった。バスのルートもやっと修復されてきたし、今年はもう鉄道ストライキはやめて欲しいな・・・。


2020年05月08日(金) フランス病

フランス病というのか現代病というのか、周囲はなんらかの不調を抱えた人ばかり。もう少し北の都市へ行けば、健康に対する意識の高い人がジョギングしてて、BIOで買った食材できっちり自炊して良い食事をしてるのかもしれないが、この南仏の田舎ではワインが美味い、ビアが美味い、冬は野ブタ狩りだ、国境越えてイタリアに入ればタバコは半額で買えるぞ、とかそんなんで、大人がそんなんだから、その子供は喉が乾けばオランジーナやらオアシスやらコークを水みたいに飲む。山が多くていちいち遠いから移動は車に限る。たった100m先だって車に乗りたい。そうやってみんな40歳を超える頃にはだらしない体つきになり、肌も髪もボロボロになってしまう。年季の入ったフランス人女性が美しいって?パリとかのちょっといい地区に住んでる日本人作家が書いてたりするけど、少なくともこの辺りでは大した年じゃないのに年季入りすぎみたいな人が大半だ。そして見た目と健康の度合いは大抵比例する。こうして体調をくずしたところで、医療制度は厚い。病院へ行けばすぐに処方箋が貰えて、無料で薬が手に入り、ちょっと不調だっていえばスパやらマッサージだって無料で受けられる。無料だからみんなおおいに利用する。医療が家計を圧迫するものならば、みんな健康に気をつけるのかもしれないが、無料となると"不調"な人は実に多いのだ。ちょっとした不調でも薬が無料で手に入るからとすぐに薬を飲む。そうやって人間が本来持って生まれてくる自然治癒力を殺していく。自然治癒力を失っていくから、もっと薬が必要になる。薬が強すぎてお腹が痛くなるから腹痛の薬も飲もう。薬漬けでそのうち精神がやられてくるからディプレッションの薬も飲んどこう。熱が出たら解熱剤だ。体は体内に入った悪い菌と戦うために熱を出しているのに、そんなの飲んでしまったら、どうなってしまうんだろう。便秘になったら便秘薬。断食して、消化にかかる体のエネルギーを排泄にまわしてあげれば治るのに。そうやってみんな薬漬けで不調で、医療ビジネスは景気がいい。薬を処方する医師のドミニクのお母さんは、息子には絶対薬を飲ませなかったという。そんなもんだ。一度モナコの婦人科へ検診に行った。検診に行っただけなのに、あらゆるサプリだの薬の処方箋を書いて渡されて面食らった。

「あなた日光が足りてないわね。色白過ぎるわ。ヴィタミンD処方するから飲んで」

わたしが日光不足?毎日日光浴したりビーチへ繰り出して泳いでるのに。そんなに黒くないのは美容と皮膚癌予防のために日焼け止め塗ってるからだ。これで日光不足というなら日傘とかさしてる日本人は総勢ヴィタミンD不足ということになるじゃないか。心の中でそう思ったがもう処方箋はサインまで入って出来上がってるので受けとる。

「もし妊娠したらこれ飲んでね。子供が奇形になったり脳に障害もったりしないようにする薬だから」

それって妊娠してからでよくない?それにそんなの飲まなくても子供はちゃんと生まれてくるじゃない。この国の子供はお腹にいる時から薬漬けなのか、やれやれ。この処方箋も既にサイン済み。そうやってごっそり渡された処方箋を持って薬局の前を素通りして帰った。

6歳のドミニクの息子が精神科医に通っている。なぜならチョコレート欲しさにクラスメートをプッシュしたから。ドミニクはイタリア人だが息子の母親はフランス人なのである。

「子供ってそんなもんじゃないの???ナイフ突きつけたとかなら問題だけど素手でプッシュしたなんてそんな大したことなの???」

とわたしとリュカ。だが、学校の先生も母親も真顔で父親にそう要請するのでドミニクと息子は仕方なく土曜の朝に精神科に行く。この話の中で唯一安堵したのは、その精神科医も

「心配いりませんよ。子供ってそんなもんですよ」

と言い、薬を処方されたりすることもなかったことだったのだが。

せっせとちょっとした不調のために化学薬品という毒を体に入れ、自然治癒力を殺し、手っ取り早く症状を緩和させて治った気になってる。でも根本を退治してないからまたぶり返す。どんどん薬も効かなくなってくる。そうやって小さな不調を自力で大きな不調にしていく人々をただ心配することしかできない。人間だって動物だって同じで、大抵の小さな不調はちょっとした疲れやストレスからくるもので、じっとしてよく眠って、体のエネルギーをリチャージすれば治るものなのに。

(写真:カテドラルの裏の風景が好き)


Michelina |MAIL