My life as a cat
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2018年02月25日(日) Castanaccio

イタリアで買ってきた栗の粉(Farina di Castagne)でトスカーナの伝統菓子カスタニャッチョ(Castanaccio)を焼いた。分量は微妙に違っても干しブドウ、ローズマリー、松の実が入るのがスタンダードのようだ。砂糖の入るものもあるが入らないのもある。砂糖なしでちゃんと甘いのだろうかと訝りながらも入れないことにする。焼く前に生地を舐めてみたらとっても甘い。すごく自然な優しい甘み。だけどちゃんと甘い。期待に胸を膨らませてオーブンに入れる。20分を過ぎる頃、キッチンにチョコレートのような香りが充満してきた。30分で完成。匂いに釣られて急いで起きてきたリュカと温かいカスタニャッチョを頬張る。ティラミスとかガトー・オ・ショコラみたいな解り易い味のお菓子が大好きなリュカが意外にもかなり気に入ったようだった。もっととぼけた味なのかと思いきやチョコレートプディングのようなけっこうしっかりとした甘みがあって、食感は羊羹みたいだ。オイルはたっぷりだが、砂糖も乳製品も使わないという安心感もいい。ケーキは味が落ち着いてからのほうが美味しいものが多いが、これに限っては焼きたてで温かいほうが美味しいとわたしは思う。まだ粉が残っているので、次回はシルバースプーンに掲載されているレシピで焼いてみよう。こちらは水ではなく牛乳で粉を解き、砂糖も少しだけ入る。しかしオリーブオイルは控え目。

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カスタニャッチョのレシピ Φ23

●栗の粉 250g
●水 350
●オリーブオイル 大さじ6
●干しブドウ 60g
●松の実 40g
●ローズマリー 適量

1、栗の粉、水、干しブドウ(しばらく水に浸すとより良い)、オリーブオイル大さじ1を混ぜる

2、型にオリーブオイル大さじ3を塗り、1を流しいれ、松の実、ローズマリーを乗せて、オリーブオイル大さじ2を上からかける

3、200℃のオーブンで30分焼く
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2018年02月21日(水) マルシェに漂う春のかおり

コートダジュールはバレンタインを過ぎると徐々に春めいてくる、と地元の人々は言う。まだまだ寒いが、マルシェの野菜や木々の蕾に季節の変化を見ることが出来る。近所のマダムはすでに山にアスパラガスを採りに出かけたのだと話していた。まだ早すぎて収穫できなかったようだが。フランス人がアスパラガスに夢中になる気持ちは全く理解できなかった。昨年同僚から農園で育てたものをもらうまでは。ひょろりと細長くて頼りないのに茹でてオリーブオイルと塩で食べるととろけそうに甘かった。それまで南半球から輸入されてくる太くてゴワゴワしていて薄味のしか知らなかったのだから、驚いた。来月になったらわたしも野生のアスパラガスを採りにでかけよう。最近その美味さを初めて知ったのは年末からちらほら見かけるようになったアーティショー(イタリア語ではアーティチョークでこのほうが一般的によく使われてるのを見る)。イタリアからフランスへ戻る電車の中で、袋一杯のアーティショーを果物ナイフでさばいておやつのごとく黙々食べてるマダムを見たことがある。たった15分くらいの間に大きな袋一杯分食べてしまったが、それでもお腹にたまるのか、というくらい真ん中の小さな小さなところしか食べられない不思議な野菜。缶詰やピッツァの上に乗ったのしか知らず、あまり食指が動かなかった。毎週イタリアからやってくるマルシェのおじさんはフランス語が不自由なので寡黙に立ってお金のやりとりだけをしている。しかし、同じくフランス語が不自由なわたしには親近感でも感じるのか、とっても良くしてくれる。そして良い野菜が手に入ると、それを指さして″ボーノ、ボーノ″と教えてくれるのだ。せっかくなので素直に買って帰る。そうして買ってきたアーティショー。さてどうやって食べれば″ボーノ、ボーノ″なのか。細川亜衣さんの野菜の本に載っていた通り紫玉ネギと塩とオリーブオイルで丸ごと茹でてみる。これが大正解だった。ひとひらずつ剥いていくと中心に向かうにつれてガクの根本がやわらかくなるのでこれを少し齧る。そして最後に缶詰なんかにされてる中心の部分に塩とオリーブオイルを振ってガブリと食べる。このもったいぶったひとくちの美味いことよ。味と食感は筍とアスパラガスのあいの子とでもいった感じ。添えもののような紫玉ネギもまたとろりとよく煮えていて美味しい。

町へ降りるのにバスに乗っていたら、山の斜面に建つ家々の庭先にミモザの黄色い花が鮮やかに咲き誇っていた。春はすぐそこ。


2018年02月10日(土) 20年後の肖像

二夜連続レイプが主題の映画を観てしまった。昨夜は″Hounds of Love"というオーストラリア映画。わたしが″第二の故郷″と呼んでいる西オーストラリア、パースで実際に起きたDavid and Catherine Birnieの事件をベースにした話。WIKIで読む限り8割型は実話に忠実に描かれていて、何より現地で酒やらドラッグで脳みそを破壊された人なんて見慣れているし、昼間の光溢れる風景とはうって変わった夜の静けさや暗さ、隣人との距離感、気軽なリフトのオファーなど、この空気感が体で理解できてしまうから、″自分も被害者になり得た″という恐怖でひたすら鳥肌が立った。オーストラリアではメインの入り口や通りに面した窓は格子戸とその内側のガラスや木のドアと2重になっている家が多い。映画の中で少女達が監禁された家も典型的なオーストラリアの家で、入口から逃げるにはロックを二つ外さなければならなかった。今わたしが住んでいる家は雨戸と窓ガラスのみ。隣近所もこんな感じだ。オーストラリアの治安が極めて悪いとはひとくちには言えないが、やはり本能的に感じる危険度はあちらのほうがよほど高かったと思う(わたしは家で寝ている時に5人の大男の強盗に窓ガラスを全部割られて押し入られたという恐ろしい経験もある。幸い怪我はなかったが、精神的にやられてしまい、しばらく夜が来るのが恐くてたまらなかった。。。しかも、この話をオーストラリア人にしても誰もさほど驚かなかった。自分もそんな経験をした、なんていう人が半分もいた)。

今夜は″ELLE″というフランス映画。イザベル・ユペールが自宅に押し入ってきた男にレイプされるところから始まるミステリー。どきどき、はらはら、のめりこんで鑑賞できたのは前半のみで、後半からストーリーは到底凡人には理解できないヘンテコな展開となっていき、最後は目が点になって終わった。しかし、わたしにとってこの映画の見どころはイザベル・ユペールである。レイプされて胸を露わにしたり、性的にも自由奔放で色んな男から誘いの電話を受けたり、無邪気な感じで他人の家庭を片っ端から壊していく女の役なんて普通の64歳では出来ないでしょう。くたびれたとか縮んだとか、また無理に若作りしてるとか、そんな雰囲気は微塵もない。こんな役どころでもなおエレガントな雰囲気を保ち続けられるのもこの人のすごいところ。VOGUE Japanにインタビューが載っていた。この箇所を読んでニヤリとした。

(以下抜粋)
ーーーところで、20代の頃から全く体型が変わっておられません。エクササイズや何か特別なことをなさっているのですか?

何もしてないわ。歩くくらいかしら。本当はスポーツをした方がいいようだけれど、トレーニングが好きじゃないの。私にとって唯一のスポーツは舞台に立つこと。もしくは日本女性のように、食事のボリュームを意識することかしら?
(抜粋終わり)

だって、まさにわたしのダイエットと同じ。スポーツやトレーニングは嫌いだ。寿命が縮むような気がして息をはぁはぁさせて走ろうとか無理に筋肉を傷めつけようとか絶対に思わない。たっぷり歩いたり泳いだりした後の心地良い疲れが好きだ。そして多くの欧米人がする″日本食は体に良い″という勘違いをしていないところが気に入った。確かにハンバーガー、フリット、ステーキなんかと比べれば″スシ″は体にやさしいかもしれないが、たっぷり砂糖の入った酢飯や今どきダイオキシンで汚染された生魚だって沢山食べてしまえば太るし体に毒も貯まる。それに日本人がみんな梅干しごはんとひじき煮と豆腐と味噌汁で生活しているわけではない。Cook.PADなんかで人気のあるレシピなんかやたらマヨネーズとチーズのオンパレードだ。それでも太った人を見かけないのはやっぱり食事のボリュームだろう。

映画を観終わっていつまで持つかわからない決心をする。イザベルのような64歳を目指す、と。


2018年02月04日(日) Gazpacho manchego

夕飯時の会話。

「ちゃんと熟してないのを使ったせいだろうけど、一度作ったトマトのガスパチョが不味くて、それ以来ちょっと苦手になってしまったわ」

「あぁ、アンダルシアのやつね。僕もあれはちょっと苦手だな。ラ・マンチャのほうのは食べたことある?ガスパチョ・マンチェゴっていってすごい美味しいんだよ。肉、野菜、ハーブを煮て、そこにトルタっていうクラッカーみたいのを入れて更に煮るの。アンダルシアのは夏に食べる冷たいトマトやらパプリカやらキュウリなどのだけど、ラ・マンチャのは冬に食べる熱々のやつなんだ」

いつか本で読んだイタリア、サルディーニャ島の羊飼いの料理カラザウ(pane carasau)を空想する。カリカリに焼いたカラザウは日持ちがするので羊飼いが移動しながら食べるのにはちょうどよかったとか。これをそのまま割って食べるもよし、トマトソースに浸して食べるのもよし・・・。

ほら、とリュカがYOUTUBEでガスパチョ・マンチェゴの作り方を見せてくれる。直火にかけた鍋にまずはウサギの肉、続いて、鶏肉、そして豚肉・・・と肉のオンパレード。続いて野菜やポテトと鍋に入っていく。そして最後に四角くて市販のクラッカーより更にこんがり焼けたような見た目のトルタを入れる。トルタが水分をすっかり吸収してしまうまで煮たら出来上がり、というもの。更にヴェーガン・バージョンのも探して見せてくれた。あぁ、ヴェーガンのものでも十分美味しそう。

「来週友人がスペインに帰るからトルタ買ってきてくれるように頼んどくよ」

リュカはそう言ってくれたが、わたしはあんなものは作れそうだ、と踏んでこっそりトルタの材料を調べた。なんてことはない、小麦粉と水と塩だけなのだった。イタリアの家庭でパスタを練ったりしないように、フランスの家庭でバゲットを焼いたりしないように、スペインの家庭でトルタを焼いたりしない、それだけのことだ。明日の夕飯にこれを出して驚かせようと企んだ。

小麦粉と水と塩をざっと混ぜたら、練らずに伸ばして四角く切ってフライパンで焼く。鍋にオリーブオイル、玉ねぎ、にんにく、ポテト、パプリカ、セロリと順に入れていく。トマト・ピューレ、ローリエ、オレガノ(本当はタイムだがなかった)、野菜スープ(ポロ葱の青い部分を煮だした物を使った)、そして塩をしたら蓋をして10分ほど煮込む。トルタを投入して更に10分。これで完成。

しらりと夕飯時にテーブルに出す。思惑通りリュカが声をあげた。やったー、大成功。

「どうしたの、トルタ?」

「スペインに行って買ってきたの」

「まさか!お店に売ってた?え!・・・まさか作ったの!?」

日本でいう煎餅汁とかほうとうだね、これ。見た目の田舎くささからは想像できない美味さ。肉なしのを食べたことがなかったリュカも

「野菜だけでも十分美味しい」

と、とても喜んでくれた。


2018年02月02日(金) リュカの誕生日パーティー

知り合ってすぐにマノスクに引っ越してしまったアナと旦那さんのジャン=クラウドがこちらにやってきてランチを共にした。アナは新生活にあまり馴染めていないようで、新しく得た仕事も人間関係のトラブルで辞めてしまったという。妙にこちらに頻繁に帰ってくるなぁ、と思っていたら乳癌治療の経験があって主治医のところに検査に通っているというではないか。アナはいつ会っても生き生きとしていて楽しそうだった。豪快に食べては愉快に踊って底抜けに明るい。そして他人に対しての思いやりや慈悲深さが人一倍あった。わたしの経験ではこういう突き抜けた明るさを持つ人は必ず人生の中で一度苦しみ抜いたようなことのある人だった。一度死に直面した人間だからこそ笑って生きる以外にないと知っているのかもしれない。ジャン=クラウドはこの辺りのフランス人には珍しく無口な人だが、黙っていても心の温かさが体中から染み出てるような人だ。山道の路肩で用を足している人の背中にクラクションを鳴らして脅かしたりする茶目っ気もある。二番目の奥さんを病気でなくしたというからアナのこともさぞかし心配だろうと想像した。わたしは彼らが大好きだ。アナの検査結果が良好であることを祈るばかりだ。

冗談めいた話の流れでリュカの誕生日パーティーをしようということになった。しかもリュカがみんなを招待しわたしが和食を振る舞うというもの。まぁ″いつか和食を振る舞います″なんて口約束だけで果たせてなかったから良い機会だと重い腰を上げた。メニューは主役のリクエストでお好み焼きとお寿司と大学芋に決定。さて、材料は代替品を駆使して作る以外にない。まずは紅ショウガ作り。千切りにしたしょうがを赤梅酢に漬ける。オタフクソースはブルドックソース、醤油、ケチャップにハチミツを混ぜる。寿司酢は米酢がないのでリンゴ酢で代用。これはとても美味しく出来る。ごはんはストウブのような圧鍋を使えば硬水でも問題なく美味しく炊ける(引っ越しの荷物が届かず、その辺にあった薄い鍋で炊いたごはんの味はもう思い出したくもないというくらい違う)。ネタはスモークサーモンとアヴォカドとクリームチーズ。手毬寿司にした。小葱を振りたかったがなかったのでディルで代用。こちらのサツマイモは中がオレンジで水っぽい。それでもなんとか味だけはちゃんと大学芋となり、お寿司とお好み焼きは思ったよりずっと美味しく出来た。みんな気に入ってくれて、あちこちから手が伸びてお皿がすぐに空になったのは嬉しいことだった。食後のデザートはリュカが作った″丸暗記ティラミス″。デザートはティラミス一筋で絶対浮気しないというくらい大好物なのだ。一度作り方を教えたらレシピを丸暗記してしまった。″マスカルポーネを250gに砂糖を40g混ぜてね・・・″という説明を聞きながら食べた。

食後は通例通りみんなガタガタ動き出す。なんでこうも食後じっとしていない人ばかりなのか。みんなよく食べるのにスリムな理由が理解できる。本日は卓球大会であった。わたしはお腹を満たしてしまったらしばらくは踊ったり走ったりするのは無理だ。一体この人たちの体はどうなっているのだろう。


2018年02月01日(木) ナタラジの味

「自然派インド料理ナタラジレシピブック」よりトマトとポテトのカレーを作った。スパイスはクミン・シードのみ。これだけで?と疑ってかかったが、そうこれだけでたちまちカレー味になる。レストランへは一度しか足を運んだことがないのだが、この本はとても重宝している。まずもって全てヴェーガン・レシピなのでどれでも好きなのを選んで作れること。そして一度スパイスを揃えてしまえばあとは繰り返し使えること。ナタラジ特有なのか、それともインド料理スタンダードなのか解らないが黒砂糖を多用する。あれこれ作ったがどれもコクがあってとっても美味しい。

カレーを食べながらアジアの湿気を想う。むせかえるような熱気としつこくまとわりついてくる物売り。青々と生い茂る南国の木々、ぼやけた煙たい空。3日もいれば嫌になるのに、コート・ダジュールのような乾いたところにいると甘い記憶のように思い出す。この辺りの人々が冬は湿気が・・・などと言うのだが、わたしに言わせればこんなのは湿気ではない。冬になって秋まで干上がっていた川に水のせせらぎが戻った。大地が乾ききった喉を潤わせて悦びに歌ってるみたい。なんて良い音色なのだろう。


Michelina |MAIL