My life as a cat
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2010年08月21日(土) ハナミズキ

映画観てきた。予告を見ただけで想像ついてしまうようなありふれた恋物語だったけれど、人と人との関係が希薄になりがちな忙しい日常に身を置くわたしには眩しく、素直に泣けるものだった。"初めて"の何かはそのクオリティがどおであれ、格別だし、どこでどんな暮らしをしていても遠い故郷で培った記憶は自分の中のどこかで生き続けるものだろう。登場する全ての人が地位や名誉には興味なく、自分の心が欲する物に忠実で、生き残った全ての人にハッピーエンドが待っていたのがよかった。

(しかし、"ハナミズキグッズ"なんてものが売り出されているのは興冷めで台無しな気がする)

夜にまたみんな大好きなインディアンレストランでのお食事会だった。ここは内装がインド色の強くないモダンにライトアップされた普通のレストランなのも好評。大勢で行く醍醐味はあれこれ料理をとって、シェアしながら色んな物を食べられること。が、店が狭い、わたし達は人数が多い、しかも大半は声の通る欧米人である(確かに欧米人の集まる店は騒々しい)。普通に会話をしていてもちょっとうるさく聞こえてしまうのか。。。。 ちょっとした事件があった。
隣席にいた一見普通の日本人のカップル。わたし達が入っていった時には食べ終えたところだった。レジでお金を払い、外へ出て、ガラスのドアを閉めた。
が、次の瞬間男のほうが外からガラスをコンコンとたたき、わたし達がそちらを向くと中指を立てた。オージーガイが"come here"と手招きする。するとドアを開け、顔だけ店内に入れて、
「バカなアメリカ人は死ね!!」
と日本語で言い放ち逃げていった。敗戦直後じゃあるまいし、白人=アメリカ人という発想もないだろうが。しかし中指を立てられたこと以外誰も理解していなかった。後から
「そんなヒドイことを言っていたのか。。。」
と苦笑して終わりであった。

(写真:家のバルコニーから下を見たらこんな風景が。思わずパチリ。)


2010年08月19日(木) Brokeback Mountain

なんとも強烈なインパクトの映画だった。結果的に生涯に渡って心を決して離さず愛し合った二人の男の物語だ。牧場の一夏の季節労働者として雇われ出会ったイニスとジャック。どこから見ても簡潔で男くさいホンモノの男だ。無口な出だしだったが、二人が喋りだしてすぐに字幕をOnにした。喋りもホンモノであった。山篭りしながらの過酷な労働ゆえに、仕事を終えてふと気を緩め、簡素な食事を採り、言葉少ないながらも会話する時が二人の唯一の安楽の時間だった。雄大なワイオミングの自然の中で来る日も来る日も二人きり。いやでも精神的な絆が深まるシチュエーション。そしてある日、二人は一線を超え、肉体的にも結ばれてしまうのだ。ここまでは驚かなかった。"俺は女が好きだ"とお互いに断言していたし、イニスに至っては婚約者がいたのだから、女どころか人っ子一人いないような場所で女の温もり、人間の温もりが恋しくなった、しかし目の前にいるのは男一人だけ、仕方ない、それでもないよりはいい。こんな一時凌ぎだと思っていた。

季節労働が終わり、約束もなく別れた二人は言い知れない胸の痛みを感じながらそれぞれの暮らしを淡々と運命に抗うことなく生きる。時は60年代。まだ同性愛者が大きな罪の意識を持たずには暮らせない時代だ。イニスはワイオミングですぐに結婚し子供もできた。ジャックはテキサスでロデオで生活していた。遠く離れた二人がジャックがイニスに宛てた一枚のポストカードをきっかけに再会する。4年の月日が流れていたが、二人の中ではあの夏のことがあまりにも鮮明に昨日のことのように残っていたのだろう。労働は過酷でも美味しい空気と男の夢に浸っていられた時間が記憶の中で一番輝いていたに違いなかった。激しく抱き合いキスをする二人。それ以来、イニスは妻に嘘をついては年に一、二度の割合で思い出のブロークンマウンテンでジャックとの逢瀬を持つようになる。やがてジャックも家庭を持ち、日に日に家庭を崩壊させていくイニスと裏腹に家庭内での地位を確立していったが、二人の関係の中ではホラれるほうのジャックは完全に女役であった。もっと会いたいと駄々をこね、イニスを困らせ、会えないことにやきもきしてメキシコへ行きゲイを買ってしまったりする。そんな関係を20年も続けた。結局一夏の出会いが二人の人生を生涯に渡って大きく支配してしまったのだった。

雄大で美しいブロークンマウンテンの湖畔でウイスキーを傾ける白髪交じりのイニスとジャックは、ウイスキーのコマーシャルのような渋さだった。生生しいセックスシーンがないのが余計見ているほうの想像を掻き立て混乱させる。どうしてもこの渋い男二人が肌と肌を触れ合わせて。。。などという想像ができない。男の夢と浪漫、そして友情と愛情、全てが散りばめられていて、複雑ながらもしっかり魅せられ、叶わなかった夢や無念な愛情が涙を誘うのだった。


2010年08月13日(金) WowWowWowWaffle!!

いつかフランスでの寒い寒い冬の日、ふとハーゲンダッツのお店の外で熱々焼きたてのワッフルを売っているのを見かけた。寄っていって見てみる。小太りのおじさんが太い指で生地をプレスに乗せて両面焼いて、まだ湯気のたっているワッフルにナッテラ(ヘーゼルナッツとチョコレートのクリーム)を塗って売っていた。涎を垂らさんばかりにひととおり眺めて、一本指を見せて熱々のをもらった。ふうふういいながらほおばる。なんて美味しいのだろう。忘れられない味となった。

ところが、それ以来こんな美味しいワッフルにめぐり合うことがなかった。ある日、よし、それならば自分で作ろうと思い立ち、あれこれサーチし、2000円ほどのシンプルなワッフルメーカーを買った。あまり重くない1個用だ。わたしを原始人だと思っている会社の同僚に自慢すると、炊飯器もレンジも洗濯機もないのに、ワッフルメーカーとパスタマシーンはあるのか、と苦笑された。

レシピが何より大事なのだとまたまた真剣にサーチ。アイスクリームと食べるふわふわワッフルも好きだけれど、やっぱりあの甘過ぎないカリカリのがいい。どのレシピも小麦粉と強力粉を混ぜて使っているのを見て、あれだ、絶対あれだと踏んだ。そうそうバゲット用の粉、リスドォルである。

結果は大成功!! やはりリスドォルで正解だった。外はカリカリ、中はさっくりの美味しいワッフルができた。そのままで美味しい。ナッテラを塗るとワッフル自体の味が味わえないことがわかった。焼きたてをほおばりながら全部焼きあげた。

第一回目でもう満足のいくレシピに行き着いてしまったのである。第二回目は秋の風が吹いたらにしよう。暑いものね。


2010年08月11日(水) 借り暮らしのアリエッティ

観てきた。いつもの宮崎アニメの出だし。鬱蒼とした森に照りつける夏の強い日射しが木々の隙間から差し込んで創りだす光と影のコントラスト。車で森に入り、森を抜け、そしてそこで主人公の新しい暮らしが始まる。

これは人間の住処の床下に住む小人と人間界に住む心臓病を患った少年の物語。小人は人間に姿を見られたら引越しをするという掟があるにもかかわらず、アリエッティはこの病弱な少年に心を開き、姿を見せて会話するようになる。

生きることを諦めかけた少年は絶滅の危機に瀕しても力強く生き延びようとする小人のアリエッティに言う。

「君達は滅び行く種族なんだ。」

子供が世界を諦めたようにそんなことを口走るのが悲しい。

「簡単に絶滅などしない。」

と小人は強く言い返す。
人間も小人も生き物は全て同じだ。頭脳が発達した人間は何かを悟って生きることを諦めてしまうこともるけれど、なんとか行き延びようという本能は全ての生き物に宿っている。やがて少年は小人に夢や勇気をもらい生きる希望を取り戻していく。

他の作品と比べるとストーリーの展開はおとなしいが、自然や森、そしてそこに住む動物から精霊まで、小さな子供の目の高さでなければ見えないものを大人に気付かせてくれる宮崎アニメの魅力がきちんと詰まった作品だった。


2010年08月07日(土) 夏祭り

サマンサに教わったお汁粉を作ってみた。材料はセット売りされていた。あまり馴染みのないものも入っている。

名前:Qing Bu Liang(漢字で"清補涼"とも書いてある)
材料:・Dried lily bulb(百合根) ・Pearl Barley ・Lotus Seed ・Dried Longan Fruit ・Polygonati Odorati ・Dried Fox Nut ・Chinese Yam(中国の山芋、里芋に近いけど)

これに緑豆と杏仁を足してみた。圧力鍋でやわらかく煮たら塩をひとつまみと砂糖を加えるだけ。見た目は良くないが、自然に近いやさしい甘みでほっとする味。暖かくても冷やしてもするりと飲めるので、夏ばてにもよさそうだ。

今日は会社の夏祭りだった。バックヤードに部署ごとにお店を出す。わたしは浴衣を着て酒で喉を潤しながら酒を売った。関連会社やブランチ、同僚の家族などたくさんやってきて、ふだん話に聞いているだけの人々と会うことができて楽しかった。ステージでは歌いたい放題、踊りたい放題、話したい放題、観客は言いたい放題であった。AKB48が元気にステップを踏んでいた時など、
「48って年のことかい。」
と隣でボスが小声でつっこんでいた(笑)。


2010年08月01日(日) Holidayの終わりに

短いホリデーの終わりはJの家でゆっくりと過ごした。ランチを買ってピクニックのように広げて、テレビを見てふつうの会話をした。ふと時計を見ては別れの時間が刻々と迫ってくることを意識したけれど、心が乱れることはなかった。Jが放つ空気は憎しみとか、悲しみなどとは無縁で、ただひたすら大らかで平穏な草原のようだからに違いない。

夕方になりJがふと思いついたようにぽつりと言った。

"Cancel your ticket and stay"

一瞬顔を見合わせたけれど、すぐに同時に肩を落とした。お互いにそんな勢いを持ち合わせていなかった。それにJは今のところはビジネストリップばかりの生活だ。"Right time"というものが存在するのかわからない。けれどいつか一緒にいられる運命ならば、雲間にぐんぐんと光が差し込んで晴れ渡っていくように、自然とわたし達の間にある障害が消える日が来るような気がした。そうでなかったらそれもまた運命なのだ。
4月になれば色んなことが動き出すから、とか、日本にも働き口を探してみてもいいかもしれないね、とJが言ってくれた。わたしは待つことなどしないだろうけれど、彼がそう言ってくれたことを宝物のように大事に胸にしまっておくだろう。

夜に空港へ送ってもらい大きな大きなハグをして別れた。"男らしくないこと"を嫌う硬派なJが、何度も何度も見えなくなるまで手を振ってくれたのがいじらしくほろりとさせた。


Michelina |MAIL