廃人アナスタシス

立ち並ぶビルの真四角の窓に
曇天の空が閉じ込められている
死への秒読みが始まった受刑者のように
閉じ込められた曇天の空に溶け込んだ
人間は幸せを諦めたような顔で
コピーをとる
コピーのコピーをとる
後ろめたさを修正液で塗りつぶす

立ち並ぶビルの真四角の窓に
曇天の空が閉じ込められている
動かない灰色の羊の群れを切り裂くように
尾羽と風切羽を朱色に染めた
一匹の雲雀が何かを訴える声で
ワルツを踊る
悲しみを背負ったワルツを踊る
電脳中毒の世界に警鐘を鳴らす

真四角の窓は増殖する
累乗的に加速する
閉じ込められるのは曇天の空と
コピーをとる人間と踊り狂う雲雀
累乗的に加速する

真四角の窓は増殖する
累乗的に加速する
活性化したように見える街
白黒写真には廃人アナスタシス
累乗的に加速する

その機械的往復的繰返的しぐさに
可憐さを魅力をエロティシズムを
見つけることばかりうまくなった世界は
気がつけば真四角に変わろうとしている
進化したと見せかけて
安心を押し付けようとしている






ぼくのせかいはひろがっていきます。ひろがればひろがるほど、ことばはふくらんでいきます。