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2000年07月31日(月) どろんこ祭りー前



高知に昔から伝わる祭りの一つ、泥んこ祭り。
田植えの際に五穀豊穣を願う祭りが、この地域の祭りは少しだけ形が違う。

神事によって浄められ、豊作の願いを込められたたんぼの泥を
女達が掬い取り、男達の顔に塗ってやる。
そうすることで恵みが男達にも伝わるのだと。
100年をこえる昔から伝えられて来たこの祭りの奇妙なならわしは
全国でも例が無く、毎年観光客たちも多く集まる。
地元の住民達はこぞって参加し、特に若い娘たちは祭り装束に身を固める。

白地に文字が染め抜かれた着物の袖を赤いたすきでたくしあげ。
腿までたくしあげた裾から見える白い脚が観客を賑わせる。
毎年くり返されるこの行事に参加するのも、今年で3度目。
代わり映えのない祭りの進行を覚えたヒル魔は他の少女達と共に
公民館に集められる前に森の奥へと逃げ出していた。


「ヒル魔−!どこだーー!」


この地域で子供の数は少なく、祭りの時には全員が参加する事となっている。
特に祭りの主役になれる女の子たちは、
何日も前からこの時を楽しみにしているというのに。
武蔵はため息をついてヒル魔を探した。
出たく無いとは言っていた。一度言い出すと聞かない事もよく知っている。

何と言ってなだめようかと武蔵は首をひねる。
白地に紺字が入った着物はヒル魔にとても似合うと思う。
この時だけは紅を引いて、きっといつもよりもっともっと可愛らしい。

そんな恰好なんて何度も見れる物じゃあないから、本当はヒル魔に参加して欲しいのに。
去年は踊りには参加しなかったが、祭りには顔を出して大騒ぎしていた。
たんぼに入れば白い脚が腿まで泥を跳ね上げて、それを拭いてから家にあげてやるのは武蔵の仕事だった。

今年はそれも、無理なのか……。

ため息をついた武蔵めがけてぱらぱらと木の葉が不自然に降り落ちる。

「ヒル魔!」

顔をあげると木の上から覗く、得意そうな顔。

「祭りになんて、出ないからな!」

するすると木の上から降りて来たヒル魔はそう言い捨てる。
だよ、なあ。
楽しそうなその顔に自分はとても甘い。
祭りに出るため、その腕を引いて行く事などできる訳が無い。


少し考え込むようにうつむく武蔵を盗み見てヒル魔はばれないようにくすりと笑う。
武蔵がどうしてここに来たのか。
武蔵が何を言いに来たのか。
何も言わずとも、その顔を見ればちゃんと分かる。

祭りには出ない、と口にしてもきっと武蔵は困った顔で笑うだけだろう。
だめだ、と強く言えない情けない顔さえ、想像出来る。

あんな女みたいな恰好なんてできるか、とヒル魔は思う。
可愛らしいと誉められる格好をして、紅をひかれ。
そんな恰好は全部ヒル魔に「女」であることを突き付ける。
普段目を反らしている現実。どうしようもない仕方のない事。
どれ程嫌だと言った所で、お前は所詮こうなのだと。
逃げられないものを突き付けられる。

だから、いやだ。

だから、逃げてみた。
だけど、祭りには出たい。
武蔵と一緒に出店をまわって、賑やかなあの中を走りたい。

どうしたもんかなあと首をかしげる武蔵の隣でヒル魔もまた首を捻る。
「真似するな」
「真似じゃねえぞ」
1つ分高い所の武蔵の顔を、首をかしげて見上げてふくれる。
こっちだって真剣なのだ。着物を着ずに、祭りの中で暴れたい。
真面目に策をねりながら武蔵の顔を見上げていると、その顔がにへり、としまりなく弛んだ。
いつも自分を甘やかして、嫌な事は絶対しない、この情けないバカな兄が、好きなのだと思う。

「……ばか顔」

頭の悪さが滲み出てるその顔に見とれたと思われたく無く。
とっさにそんな言葉しか口に出せない。
そらした視線の端に自分は滅多に着せてもらえない色合いのジャージが目に入り、
ヒル魔はそうだ、と思い付いた。

もう一度武蔵の姿を上から下まで眺め回し。

「祭り、行くぞ。」

ぱっ、と武蔵の表情が明るくなる。
そう、子供にとって祭りは楽しい。
毎年楽しみにしていたいままでの祭りのどれよりも今年は楽しくなりそうな
そんな予感にヒル魔も笑ってみせた。



「一緒に、行くんだぞ」



「イイ事」を思い付いた時のその顔が、一番ヒル魔らしいと思う。
見ている武蔵も吊られて笑う、ヒル魔のとびきりの笑顔だった。


2000年07月30日(日) 犬の武蔵と人のヒル魔

武蔵が穴に、「また」落ちた。これで一体何度目だろう。
初めてそれが起きた時と違いヒル魔も周りも慣れたものだ。
ヒル魔の家に駆け込んで来た子供達は、慣れたように玄関から「救出セット」を持って行く。
ばたばたと走り去る子供達の後を、ヒル魔はゆっくり歩いてついていった。

武蔵は、犬だ。
大きくなるぞと自己主張する太い手足。頭の中身はかなり悪い。

白く長い毛は雨を吸い、随分とみすぼらしく見えた。破れた段ボールの間から鳴き声も上げずにこちらをみていたのが武蔵との出会い。
水を吸った毛並みは体にびったりと貼り付き、小さな体を余計に小さく印象付ける。震えているのがはっきりとわかり、諦めたようにくたりと首を段ボールの縁にもたれていた。
生きる事を諦めたようなぼかりと開いた丸い目を、ヒル魔は無視する事が出来なかった。

特徴のある耳と顔つき、長い毛並みは血統書の存在を感じさせた。
大型犬はハスキー以外、たいてい賢いという事を聞く。どうせ飼うならそういう犬の方が良い。
拾って来たその日から、物おじする事なくヒル魔の腕の中で熟睡した態度。肝の座ったその様子と、出された餌を体が反る程にたいらげた様子に、ヒル魔はそいつを飼う事を決めた。


大型犬が賢いというのは立派な迷信だと知るまで。それほど時間はかからなかった。
武蔵、と名付けたの犬は持ち前の人懐っこさであっというまに近所の子供達と仲を深めた。
散歩に出かけた先々で、可愛がられて甘やかされる。見知らぬ通行人にさえ愛想を振りまき、
ちぎれるように尻尾をぶんぶんと振り回している最中に最初の「事件」は起きたのだった。

見るもの全部が珍しいらしい武蔵の視線はいつも非常に落ち着きがない。
その日は遅咲きの桜が花びらを風に散らせていて、武蔵はその小さな欠片を夢中になって追い掛けていた。
人通りがほとんどない道を一杯に使い、武蔵はリードが届く範囲で走り回って。
そうして、「まさかな」と思う方向へどんどん向い、そのまま落ちた。

工事中の札をかけた道路工事の穴の中に。

リードがぴんと張った途端に、ヒル魔の手元から重さが消えた。
まだ顔が小さいために首輪から武蔵の顔が抜けたようだ。
同時に、穴の中から驚きの声が上がった。
急いで駆け寄り、穴の中を覗き込む。
「上から犬が落ちて来たぞ」と工事の男達が穴の中から顔を出した。
うまい具合に転がって怪我も事故もなかったらしい。
当の武蔵はあまり気にもしていないようで。のんきに鼻の頭の花びらを舐めた。
すみません、と頭を下げるヒル魔の事などお構い無しに再度つけられたリードを引く。
たった今、首吊り状態になった事はもう頭には無いらしい。こいつは本格的に頭が悪い。

四つ足で。人間よりも余程地面に近い所を歩いている癖に。
武蔵はその後もよく「落ちた」。


からの排水溝に落ちてもあまり気にはしないらしい。
水や泥が無いときは何もなかったようにそのまま溝の中をまっすぐ走る。
耳の先だけが溝から顔を出す。御丁寧に、片側だけがちょこんと折れ、反対側はピンと立っている。
耳を折る側には草が伸びているためだ。
そんな所には気が回るらしいのに、落ちないようには出来ないらしい。

何度教えても決まった場所で同じようによそ見をし、排水溝にころりと落ちる。
そのうち体が大きくなれば落ちなくなるだろうとヒル魔は教育を諦めた。


道ばたの穴にも、ほんのわずか開いたマンホールの穴の中にも、とにかくコロコロとよく落ちる。
公園の中限定で子供達と遊ばせている最中、砂場の穴の中にさえ突進するように転がり落ちた。
馬鹿と何とかは高い所が好きって言うが、低い所が好きな場合もあるって事か。
早期の訓練が賢い犬を作ると聞いて、一通りの教育は試したものの。
せいぜい覚えたのは「飯」の一言。トイレの場所。「武蔵」という自分の名前だけ。

想像を裏切らない、良いアホぶりだ。



子供達が公園の中のとある場所でしゃがみ込んでいた。
いつもの場所。どういう経緯でそうなったのかわからない微妙な亀裂が地下の空洞と繋がってしまった場所。
そこが最近の武蔵の「落ちる」ポイントだ。

区への文句は済んでいるが、一向に埋め立てられる気配が無い。
犬が落ちる程度の穴なら心配する事はねえってか。一応板で蓋をしてみたが誰かかれかに持っていかれる。
子供が落ちたらさすがに役所も動くだろうとは思ったが子供もそれ程馬鹿じゃあないらしい。
穴に落ちるのは武蔵ばかりだ。
慣れてしまった救出作業を、子供達が取り囲む。

穴の中では武蔵が情けない泣き声を上げている。
だったら最初から落ちるなと人間だったらつっこむ所だ。

初めてそこに落ちた時、助け出す方法がわからなかった。
手は届かない。紐を垂らしてもうまく武蔵はひっかからない。
食べ物が入った籠を下ろしたが食べるだけ食べて籠の中には落ち着かない。
ついにレスキューでも呼ぶしかねえかと諦めかけたとき。ふと悪戯心が沸き上がった。
何度ダメだとしつけても涎まみれぬする武蔵の「好物」。
アレを入れたら食い付いて来るかもしれない。
ほんの洒落のつもりだった。
こんな所に落ちている時、あんなものに興味をひかれるような余裕はさすがに無いと思ったののだ。

履いていた靴を脱ぎ、持ち手にロープを縛り付けた籠の中に放り込む。
ネコにマタタビとはよく言うが武蔵はヒル魔の靴が好きだった。
脱ぎ立てのものを器用に嗅ぎ付け、しゃぶり続けて歯形と涎まみれにしてしまう。
靴の中に頭をつっこみ、そのまま眠っていた事もある。
ものは試しだとその籠を下ろすと、呆気無い程簡単に武蔵は籠の中にくるまった。
地上に戻ると泥だらけの体でヒル魔の顔に突進して来た。
呆れるやら、情けないやら、嬉しいやらほっとしたやら。

二度とこんな所に落ちるな、阿呆犬!!!

力を加減する事も忘れ、小さな頭を何度も叩くが武蔵は気にした様子もない。
それ以来何度もその穴に落ち、その都度ヒル魔の靴が活躍するわけだ。



周りをギャラリーに取り囲まれながら、ヒル魔は釣り上がった奇妙な物体を冷ややかに眺めた。
武蔵の歯形が散々ついて、使い物にならなくなった「元」靴であった物。
それに噛み付いたままぶらさがっている獣が一匹。
顎が随分と丈夫になったこの阿呆犬は、短い時間なら噛み付いたまま持ち上げられる。
無事で良かったと言う拍手。
武蔵、阿呆だーー!とはしゃぐ声。
かわいい、と携帯で写真を撮る者。
ギャラリーの反応は様々だ。
多くの注目を一身に浴びて武蔵は得意そうに尻尾をふる。
地上に戻って来るが早いか武蔵は周囲に愛想を振りまく。
元は白かったはずの毛並みにヒル魔は深くため息をついた。

お前、どっかに売っちまうぞ。






帰宅しても尚興奮気味で暴れ足りなさそうな武蔵を強引に風呂場に放り込み、
徹底的に泥を落とす。暴れる体を押さえ付け、
逃げようとする武蔵の泡を何とか洗い流した時には
両者ともぐったりと力つきていた。
ソファの上で横になっているヒル魔の上で武蔵がくうくうと寝息を立てている。
湿り気を帯びた毛並みを撫でて、寝ている時だけが大人しいなと思った矢先に突然飛び起き1人で室内を走り回る。
わずかな睡眠で疲れが多少回復したらしい。

もう今日は寝てくれるだろうと思っていたため、その辺につい置いてしまったパーカーが早速被害にあう。

「やめろ、馬鹿犬!」

どれだけ言っても懲りない犬は、ひょっとして「馬鹿」という言葉も自分の名前だと思っていrんじゃないだろうか。
あちこちの家具に突進し、様々な物に歯形をつける。叱ろうが叩こうが懲りない犬にヒル魔は今日も罵声を飛ばした。









布団の潜ると今日一日の疲れが全身にのしかかる。
疲れた。たかが犬1匹に、酷く振り回されてばかりの毎日。
子犬のうちは目が離せないというが、どこもこんな阿呆な事で大騒ぎしてるんだろうか。
さすがに散々怒ったせいか、途中で武蔵は大人しくなった。
明かりが消えて暗い家の中、武蔵の気配はどこにも無い。
ドアは細く開いているだけ。武蔵が眠っているはずの居間はここから多少距離がある。

「……………武蔵…」

小さく。囁くように。本当に小さな声でヒル魔は犬の名前を呼んだ。
ほとんど間を置かないうちに聞こえてくるのはフローリングを掻く爪の音。
すぐに顔の上に毛の固まりが飛び乗った。

子犬は日々成長している。
始めの内は自力でたどり着けなかったベッドの上も今じゃあ軽く飛び上がれる。
どれだけ怒っても、どれだけ離れても、名前を呼べばすぐに飛んでくる。

風呂上がりの顔をくまなく武蔵の舌がべろべろと舐める。
叱られた事など何とも思っていないかのように。むしろ覚えていないかのように。
悪びれる事のないその態度に、自分の方が大人気なかったんだとさえ思えて来る。

どれだけ躾ても物を覚えない馬鹿な犬。
どれだけ怒鳴っても懲りずに愛情を返してくる犬。

欲しかったのはよく懐き、言う事を聞く賢い犬。
手の中にいるのはただの馬鹿犬。



てめー、いつかしっかり躾てやるからな。



眠る間際のヒル魔の決心は毎晩繰り返されているもの。
また朝が来て同じような一日が始まる。

怒鳴る声と、甘える鳴き声。
思いもよらないハプニング。余りに馬鹿な事への落胆。
体当たりで押し付けられる強い愛情。
懐かれる事へのほんの少しの誇らしさ。
その繰り返し。その積み重ね。


武蔵が賢くなるより先に、ヒル魔が犬馬鹿になる日の方が近いのかもしれなかった。。








070119


2000年07月29日(土) ファーのヒル魔の固い決心

 

「最近見ねえな」
脈絡もなく武蔵がぽつりとつぶやいた。練習帰りの暗い夜道。
「何が?」
「お前、こないだの抽選会で白い毛のついた服着てただろ」
「あーー。あったな」
「あれどうしたんだ」
尋ねられ、ヒル魔は少し複雑な顔をして見せた。
「なんで?」
「着ねえのかなって思ってな」
返事に困ってヒル魔は黙る。
「最近あんま見ねえよな」
「あーー。あれな」
「汚したか」
小さな汚れさえも目立ちそうな白のダウンジャケット。
あれはヒル魔にとてもよく似合っていた。
「てめーと一緒にすんじゃねえよ」
「明日、映画行く時着てけよ」
「無理だな」
「なんで」
「………お前、素で言ってんのか」
ヒル魔が呆れたように武蔵を見る。そんな言われ方をするような心当たりが武蔵には無い。
「俺、なんかしたか?」
「こないだあれ着て一緒にでかけたろ」
「おう」
「………で、帰りの電車で、俺が寝てただろ」
「そうだな」
その時を思い出し、武蔵は少し頬が弛んだ。
警戒心の固まりのようなヒル魔が武蔵にもたれかかるように眠っていたのだ。
無防備な顔が、電車のに合わせて揺れる様は見ていて飽きない光景だった。
違いに分厚い防寒着を着ていても、密着していれば意外と体温は移るのだな、という発見を思い出す。
あのとき、何かしただろうか。
おかしな事はしていないつもりだ。
「……覚えてねえのか」
「お前寝てただろ」
「…………なんで目が覚めたと思う」
「降りる駅だったから」
ヒル魔の目が呆れたように細くなる。
「もう着ねえよ」
「なんでだ。似合ってたじゃねえか」
「もう着ねえ!」
突然早足になるヒル魔を武蔵は慌てて小走りで追う。
しつこく食い下がる武蔵にヒル魔は固く口をつぐんだ。

あれを着てる所がまた見たい、と照れもせずに武蔵は口にする。
弛みかける頬を意識して引き上げながらヒル魔は1人胸の中で武蔵をなじった。

お前のくしゃみがうるさいんだよ!!!

柔らかな羽と白いジャケット。自分でも気に入っている部類の服だ。
だから先週はそれを着た。楽しみにしていたせっかくの休日。
その間、ずっと武蔵のくしゃみは続いた。
極め付けは電車の中だ。
少しならいいか、と思いながらうとうとと武蔵にもたれかかると。
耳元で盛大なくしゃみが続いた。ファーの羽毛が合わないらしい。
違いの顔が近付く程、派手なくしゃみが邪魔をしていた。

武蔵の体温を耳に、肩に感じながら。
上から降ってくるくしゃみと唾。

「なあ、なんで着ねえんだよ」
「自分の胸に聞いてみろ!」

まったく心当たりが無いらしい武蔵は尚もしつこく食い下がる。
次にジャケットを買う時は、ファーの無い物を選ぼうと心に誓うヒル魔だった。










070117


2000年07月28日(金) ちびムサシとでっかいヒル魔

ちびっこムサシとおっきいヒル魔。冬の日のおでかけ編



楽しくお買い物して楽しく御飯も食べて丁度良くホームに入って来た電車に飛び乗って。
今日はすっごく面白かったな!と御満悦のちびムサシ。
運良く特急に乗れたから家まではそれほど時間はかからない。
小さいながらも体力のあるムサシはこんな時疲れたなどとぐずらないのが良い所だとヒル魔は思う。
少し混んでいる電車の中でムサシはいつもより大人しく、色々とタイミングが良く進んだ今日一日が有終の美で終われそうだ。ぼんやり外の景色を眺めているとムサシがヒル魔の上着を引っ張り始めた。

「どうした」
「ヒル魔ぁ……」

見上げて来る表情も含めてそわそわと落ち着かない。嫌な予感は大抵あたる。

「俺、しっこしてえ……」
「………我慢しろ」
「無理だーー……」

片手がしっかり股間を握っている。楽しすぎるとムサシは時々トイレのタイミングを後回しにする癖があった。ぎりぎりになってから大騒ぎするのもこれで何度目の事だろう。

「なんでもっと早く言わねえんだよ」
「ヒル魔シッコ!」
「早口で言えって意味じゃねえ、馬鹿」

ヒル魔が雑に刈り上げた為、ムラのあるムサシの坊主頭を叩く。適度に混んでいる車内の中を忍び笑いがゆっくりと満ちた。

「しっこ、しっこ!」
「黙って待ってろ!!」
「〜〜〜〜!!」
「飛び跳ねるな!」

漫才のような掛け合いの最中、電車が止まるとムサシは電車から飛び出した。こういう事がしょっちゅうあるため、各駅のトイレの場所を熟知しているのは誉めてやる所なんだろうか。

このまま俺が電車から降りないで帰っちまったらあいつどんな顔すんだろうな。
たまにはこらしめてやるべきだと思いながらヒル魔はしぶしぶ電車から降りた。すっきりとした顔で戻って来るヒル魔の頭を軽く叩く。
次の電車が来るまでの時間を、ムサシとヒル魔は駅のベンチでだらだらと過ごした。喉元を過ぎると熱さを忘れてしまうムサシは、ヒル魔にジュースをねだり、ヒル魔に何度も叩かれた。


家に帰っても部屋の中は寒い。途中下車した駅の中や帰宅する道すがら、色々なものに興味をひかれてムサシは何にでも手を出したがる。手袋もはかずにそんな遊びを繰り返していれば指の先まですぐに冷え、家に帰ると急速に膨らむ。
わかっていながらムサシはお湯の中に手をつっこみ、急いで暖を取ろうとする。

「ヒル魔!ぱんぱんになった!」
「手を洗え」
「ヒル魔!もう破けちまう!!!!」
「うがいしろ」
「した!した!!早くしろ!!」
「………ほんとにしたか?」
「もう俺の指、破れそうだぞ!!」

大急ぎで手荒いうがいを雑に済ませて、ムサシはヒル魔の回りを付きまとう。以前戯れでヒル魔がムサシをからかった事がある。以来、この時期のムサシは必死でヒル魔を呼ぶのだ。

「端けて、指が無くなっちまう!!」

べそをかくほどに慌てたムサシがヒル魔に必死でしがみついた。まだ爪の先に泥がつまっていそうな汚い指先がヒル魔の目の前に差出される。少し眉をしかめながらヒル魔はその手を自分の手のひらではさんだ。
いつも冷たいヒル魔の両手が武蔵の手のひらから熱を吸い取る。

外から帰ってほうっておくと、指が破裂してなくなるぞ。

ただのつまらない冗談をムサシは本気にして泣いた。冷やせば治ると言い聞かせたがムサシは恐怖でパニックに陥った。仕方なくあみ出した方法が、このやり方。
馬鹿は本当に扱いが面倒臭い。

「ヒル魔の手ってどうしていっつも冷たいんだ?」
「お前と中身が違うからだよ」
「ヒル魔の指ってなんでつるつるで長いんだ?」
「お前がずんぐりしすぎなんだろ」
「俺、ヒル魔の指好きだーー」
「おーー、そうかよ」
「ヒル魔は俺の指好きか?」

持ち前のの図々しさと記憶力の薄さのおかげでムサシはこりもせずにこの質問を繰り返す。何度も適当にあしらわれているというのに諦めるという知識は頭に無いらしい。そうだ、と返事をする事はほとんどない。それでもムサシは質問する。

「なあなあ、俺の事好きか?」
「うるせえぞ、阿呆顔」
「……好きなんだろ!」
「どう思う?」
「ヒル魔は、俺の事好きなんだぞ!」
「へぇ、そうなのかよ」
「ちゃんと言えよ!」
「お前が知ってんなら言う必要ねえだろ」
「へんくつ!」
「そういう事はどこで覚えるんだ」

指の腫れがだいぶん収まってヒル魔が手を離した途端、何があったのか忘れたようにムサシは部屋を走り回る。
最近気に入っているプラスチックの刀。それを腰からズボンに差し込み、室内を見立てて冒険を始める。居間と廊下を走り回った後、狭い所へ頭から潜り込む。一ケ所にじっとせず、広くもない室内を絶えまなく走り回っての大騒ぎだ。

暑がりのムサシは冬でも短パンにTシャツで動き回る。
出したりしまったりが忙しい刀のおかげで短パンのゴムは弛んでいた。
子供達が皆そうでさるように、冒険らしき遊びに夢中になるとムサシは回りが見えなくなる。
膝をつき、身をかがめると刀は腿に添って縦に固定される。刀に引っ張られた短パンは、ムサシの腰からずり下がる。

だから、そこから尻が見える。

「見えてんぞ!」
「おう!」
「おう、じゃねえ!そんなもん見せんな!」
「おう!」
「隠せ!!」
「おおぅ!」
「おおぅじゃねえ!」



就寝はムサシが楽しみにしているお話の時間。その場その場で適当な話を派手につなぐヒル魔の話はめちゃくちゃだから面白い。ドラゴン退治に出かけたお姫さまは今日どうなるんだろうとわくわくしていてもヒル魔の話が始まらない。

「ヒル魔?」
「なんか……ねみい」
「話してくれよーー」
「やべーな。風邪か……?」
「具合悪いのか?」
「ちょっと、な」

ベットの中でムサシより先に眠りそうなヒル魔にムサシは少しばかり狼狽える。

「どこ悪いんだ?頭か?腹か?」
「……どういう意味だ」

特に声も出さずにいると、顔に何かが貼り付いた。

「こうしたら治るんだろ」

それは汗ばんだムサシの手のひらだった。

「破裂しそうになったら、押さえていたら治るんだよな」

そりゃどういう病なんだ、と突っ込みかけて納得する。ムサシにとっては指の膨れと同じようなもんなんだろう。いい、と邪険にその手を振り払おうとしたがムサシの顔は真剣だった。

「俺、治るまでこうしててやるからな!」

顔が熱い。多分少し熱が出ている。ムサシにうつったらまずいから隣の部屋で寝るべきだ。汗もかいている。服着替えてえ。
ムサシの手のひらは子供特有にやけに熱くて気持ち悪い。おまけに何か触っていたようで甘臭い匂いがしている。ムサシに押さえられた顔の一部がべたべたしていて最悪だ。

でも、見下ろす顔はとても真面目で降りほどく気にはなれなかった。





数分後。
ますます体調が悪くなったヒル魔の顔を塞ぐようにムサシは熟睡モードに入っていた。揺さぶっても起きない程の眠りの深さだ。ふっくりと柔らかいムサシの腹がヒル魔の顔を圧迫している。洗濯したてのパジャマなのに、ヒル魔の顔にあたる一部はやはり何かでべたべたしていた。

熱い。眠い。気持ちが悪い。

ほんの少しほだされて、ムサシを甘やかしたツケがコレだ。こいつに関わるとロクな事が無い。
わかっていながら手を離せないの自分の態度に腹をたてながら必死にムサシを押し退けた。眠りこんでいるムサシの身体はとても重たく、随分時間と体力を消耗する。
ごろりと布団に転がるムサシは気持ち良さそうな阿呆顔で寝息を立てている。お前のせいで、と弛んだ頬を指で引っ張りかけ、手をとめる。


やっぱり俺はこいつに甘い。


こんな事が知れたらどれだけつけあがるか。
一生隠し通してやると決意しながら、小さな手のひらをそっと握った。顔に手のひらを押し当てられるあの感触。

いやな筈なのに嫌じゃなかった。




明日までには、風邪を治そう。



2000年07月27日(木) 女子高生3

 
ヒル魔という訳のわからな小娘がやって来たその翌日。大抵職場に1番につく武蔵が事務所に鍵を差し込んだとき、ドアの隙間から封筒が落ちた。裏表とも無記入でメモはない。中に入っていたのはキャップのないむき出しのメモリースティックが1本。
本体の脇には「武蔵工務店」と名前の入ったラベルが貼ってある。だから、届けてもらえたんだろうか。本来はUSBの差し込み口はキャップがついており、その先を武蔵はストラップをつけていた。
 
それは間違い無く普段から武蔵が使っているもので、家に置いてあるはずだった。
昨日はなんだか疲れてしまって、結局PCでの作業はしなかった。外に落ちているはずがない。

小さくなくしやすい物だから、管理は気を使っている。絶対に部屋の中にあるはずで、それがここにあるということは。

畜生、と思いドアを蹴りあげた。鉄製のドアは重い音を立てただけで武蔵のつま先に痛みだけが残る。それでむしろ頭の中がはっきりした。ヒル魔というあの小娘はこれを狙っていたわけだ。
スティックの中身はどれもが建築済みの見取り図だった。防犯上の問題から個人情報の漏えいまで。考えられる最悪の可能性は様々で、報告を聞いた武蔵の父は武蔵以上に苦虫を噛み潰した顔を返してくれた。

対処出来る事を出来るだけこなし、電話口で頭を下げる事に疲れた1日。あまりに自分のうかつさを呪いながらいつもより遅い帰宅をする武蔵を待っていたのは諸悪の根源。

「てめえっ……」
「あやまりたくてよ。安心してくれ。あんた達が思うような悪い事は起きねえか…」
「ふざけるなっ」

ヒル魔が寄り掛かっているのは武蔵の家のドア。耳元ぎりぎりを思いきり叩く。悪びれた様子のないヒル魔の身体が少しだけすくんだ。

「あんたに迷惑かかるような事はしねえ。信じてくれよ」
「……警察に突き出してやる」
「いいぜ」

睨み付ける武蔵を下から見上げるヒル魔の顔には恐れている様子は見当たらなかった。

「証拠はねえから別に今捕まっても俺は問題ねえし。それであんたの気がすむなら、な」
「お前の本当の目的はなんだ」
「××の家の、見取り図。表ざたには出来ないもんを非合法で持ってやがるんで。その処分頼まれてな。あんたん所から泥棒入るかもしれねえって連絡入った時、多分一番騒いだんじゃねえ?」

そう。電話口で今日はどれだけ怒鳴られた事か。

「で、近々お邪魔すんだけどよ。多分表ざたにはなんねえはずだけど、その前に謝っておきたいから、来た。これで全部」
「それを俺に信じろってか?」
「信じて欲しいけど、そりゃ虫の良い話だってわかるから無理にとはいわねえ」
「俺が今聞いた話を垂れ込んだらどうするつもりだ」
「証拠不十分て釈放、だな。けどあいつらに警戒されるし俺は目ぇつけられるし。あんたは面目がちょっとは回復するし。あんたに良くて俺にはあんまり良い事ねえな」
「なんで、来た」
「言ったろ。俺、あんたに惚れちゃったの」

深夜を超えた時間。明かりの少ないアパートの玄関口ではヒル魔の表情は薄暗く読み取れない。

「だからあんたがあんまり困る事は避けてえの」
「お前はそれでいいのか」
「んーー。俺の見込みではあんた、俺の事警察に突き出さない、予定」
「随分俺はお前の中で都合がいいな」
「俺が惚れた男だぜ?そんな心狭いヤツだと思わねえ」
「大した御都合だな」
「でも、多分あたってんだろ?」

見つけた時は怒りしか沸いてこなかった胸の内が、今では随分と穏やかになっている。どういう訳だか話している内に毒気は抜かれてしまった。さて、どうするかと武蔵は考える。ヒル魔の言う通り証拠は無い。警察に突き出したとしても武蔵の気がすむだけだ。

「ああ、証拠あるかもな」
「何だ」
「俺があんたにマジ惚れてる証拠」
「そんなもんいるか!」
「一番大事な事じゃねえ?」

人気が無いとはいえ家の前でだらだらとする内容の話じゃあない。かといって二度と部屋の中に入れる気はない。考えるのも面倒くさくてとにかく疲れだけが残る。武蔵の脇でヒル魔がごそごそと動いていたがとやかく言う気にもなれなかった。

「ほい、これ」

ヒル魔が武蔵の上着のポケットに何か柔らかな物を押し込んだ。

「なんだ、ゴミか」
「俺のパンツ」
「っパ!?な、お前何してんだ!」
「嘘じゃねえぜ。あんたがここで俺の事むちゃくちゃにしたって俺怒らねえし」
「するか!」
「むしろしてほしーし」
「しねえ!」
「あ、俺バージンだからお徳だぜ」
「…………もう、いい」
「分ってくれた?」
「お前、わかっててやってるだろ」
「……俺の事、ずるいって思うか?」

しゃがみ込んだ武蔵の隣にヒル魔が同じポーズで視線を合わせて来た。下着を履いていないというのにそういう所は気にしないようだ。ヒル魔の言う事を信じる訳では無いが、なんとなく目がそれた。
言っている事も気持ちもある程度までは本気かもしれない。ただ、武蔵を混乱させて何だかんだで煙に巻こうとしている意思も感じられる。
どうしたもんか……。

「お前が賢いってのはよくわかった」
「……。」
「勘弁してやるから、もう帰れ」
「どうせだから俺の事も好きになってくれよ」
「無理だ」
「なんで?」
「なんでって……」
「俺、割りと本気」
「俺にその気はねえ」
「もう二度とあんたからデータとらねえ。次に欲しいときはちゃんと言う」
「まだやるつもりなのか?」
「もうないといいけどな。あんたんとこ良いスポンサー多いからなあ」
「…………」
「そばに置いといて、様子見るってのが一番じゃねえ?」
「大したやつだな」
「勝算の無い事はしない主義」
「……………お前の、連絡先は」
「パンツに書いてある」

全部、予定の事ってわけかよ。
疲れが心底重く感じた。

「俺、帰るけど絶対連絡してくれよ」

金属の階段をカツンカツンとおりる音が遠ざかって静かになった。
ヒル魔が突っ込んだジャケットのポケットに手を突っ込むとまだ温もりが残っていた。慌てて手を引っ込めて額を押さえかけてまた戸惑う。手の置く場所に散々迷って仕方なくだらりと下げた。


これから当分、飽きないどたばたが続きそうな予感がする。予感というか、予知だろう。
巻き込まれたというか計算づくでその気にされたというべきか。
何となく自分の貞操にも危機を感じながら武蔵は静かに家の中に入った。

当分、平穏とはおさらばだ。


2000年07月26日(水) 女子高生 2

 

小娘は自分の事をヒル魔と名乗った。狭い部屋の中のゴミをひょいひょいと避けながら物珍しそうにあちこちを物色している。

「そのへんのもんに触るな」
「きったねえなあ。カノジョとかいねーの?」
「そろそろ目的をしゃべったらどうだ」
「俺があんたに一目惚れってはダメ?」
「俺の年を知ってるってのはどうやって説明つけるつもりだ?」

片手に携帯を握ったまま武蔵はヒル魔を睨み付けた。録音中のランプだけは指で押さえておく。

「俺、嘘は言ってねえぜ?」
「誰かになんか頼まれてるのか」
「頭悪いわけじゃねえんだ。さすが社会に出てるヤツは違うな」

まともそうに見えて、ストーカーの類いだろうか。

「ぶっちゃけるけどさ」

武蔵が仕事に使っている机にヒル魔が腰を載せた。細い足が見せつけるように組み上がった。直視しずらくなって武蔵は顔を背けた。

「俺、こういうのが仕事なわけ。適当に嘘ついて、男その気にさせて中に入ってイイトコで写真とって、脅迫のネタにさせてもらってんだよな」

武蔵にとっては常識の範疇をこえる言葉がヒル魔の口から告白される。

「今時の子供だって、なんての?ジュンジョーなヤツも多いわけ。なのにおっさんがヤリマンだろーとか手ぇ出してきて、泣き寝入りするヤツも多いわけでさ。俺、そいつらの復讐代行行やってんだよ」
「俺はそんな事される覚えがねえ」
「何日か前、あの路線で遅緩しなかった?」
「するか!」

履き捨てるように武蔵が怒鳴る。いらぬ誤解が発生しているのかと頭をがりがりと掻きむしる。

「人違いか……。逆にあんたが誰かの恨みかってるって線は?」
「なんでお前はそれをぺらぺら俺に話してるんだ」
「言ったろ?一目惚れ。俺、あの路線使って通学してるからあんたの顔だけは前から知ってたの」

だとすると。嘘をついていないというヒル魔の発言は本当らしい。

「だから、最初はがっかりしてよ。何かの間違いだったらいいなーって来たんだけどさ。ほんとに心当たり全然ない?」

武蔵は少しうつむいてここしばらくの事を振り返ってみた。そういった方面で不自由を感じた事は無い。痴漢などしようと思った事は無い。むしろ困っていた女を助けてやった事はあるがそれだって数カ月程前の話だ。心当たりが無いというより移動中の記憶などない。

「良かった」

意外な言葉に武蔵が顔をあげる。

「とりあえずあんたがソーイウコトしないってのがわかってさ。言ったろ?俺、あんたに惚れてんだ」

嘘をつく、つかないというのは大抵雰囲気が出るもんだ。ヒル魔が武蔵の返事を待たずに何かを確信できたように武蔵もまたヒル魔の言葉が嘘ではないのだとなんとなくわかった。

「じゃ、俺帰る」
「いいのか」
「一応、この仕事にプライド持ってるからよ。嘘ついて来たやつにはそれなりに『お返し』する事にしてんだ。急に変な事言って部屋入って悪かったよ」

軽やかに机から降り、ヒル魔はそのまま玄関へ向う。拍子抜けする程の態度の豹変と何も無かった事への安堵から武蔵の気が一気に弛んだ。玄関で靴を履き、出て行くヒル魔をぼんやりと見ている。緊張が解けた後のなんだか虚脱にも似た気分だった。

「あーー、一個だけ」
「あん?」
「ごめんな」
「……?」
「俺、あんたに嘘ついてんだ」
「まだなんかあんのか」

ヒル魔の手が無造作にスカートの裾をつまんでぴらりと捲り揚げた。小さな三角の布に覆われた股間があらわれる。

「パンツ履いてた」
「……っ……!!」

敢然に虚をつかれた。

「じゃ、またな」

ばたりとドアが閉まった後、武蔵は壁にもたれたままずるずると床の上に尻をついた。

「…………………なんだってんだ。一体」






この勝負も、武蔵の負け。






2000年07月25日(火) 女子高生です

 
 
家に帰ってさっさと休みたいのに、目の前に余計な邪魔が突っ立っている。
どこからどう見ても普通の女子高生。見覚えが無いそのガキは武蔵の後を付いて来たという。武蔵が少女に気が付いたのはアパートのドアを開ける直前の事だった。

「俺も入れてくれよ」
「は?何だおまえ」

金髪に赤いリボン。見せるつもりかと思わせるような短いスカート。そもそも中に何かが入っていると思えない程薄い鞄。武蔵の手元にするりと入り、開けようとしていたドアの前に立ちふさがる。意味が分からず片眉が上がる。

「さっきの電車で見て、イイナーと思ってよ」
「……他をあたれ。俺にそういう趣味はねえ」
「なんだよ、インポ野郎」

武蔵は小柄な娘を睨んだ。何のつもりか知らないが、これ以上つまらない事に時間を使いたく無い。

「さっさと帰れ。いい加減にしないと警察呼ぶぞ」
「俺さあ。今、パンツ履いてねえんだよな」
「……なんだと?」
「ここで警察呼ばれたら、あんたの方が不味いんじゃねえの?」

老けている、無駄に不機嫌そうだと言われている顔に力を込めて睨み付ける。小娘は気にした様もなく部屋に入れろと要求を繰り返した。

「あんたの部屋ん中でパンツはかせてくれよ」
「……何のつもりだ」
「別に。やりてえなって思っただけだよ」

強引にドアを開けようとしても案外力は持っているらしい。

「俺が警察呼んでもいいんだぜ?」

目の前に突き付けられる携帯の画面。御丁寧にも110ではない。この近くの派出所の名前が登録されている。

「お前、この近所のヤツか?」
「まあな」

どんどん状況が悪くなる条件が積み上がる。勘弁してくれ。俺が一体何をしたんだ。

「俺の事、いやか?」
「子供に興味がねえんだよ」
「俺とあんた、多分同い年だと思うぜ?」

武蔵の眉両方が大きく上がった。

「俺に興味、沸いただろ?」

戸惑いを隠せない武蔵の首筋に小娘が両手を巻き付けて来た。

「俺の事、中に入れてくれよ」


この勝負、武蔵の負け。










2000年07月24日(月) 指定バトン【武蔵】



★指定にお好みの人を入れてお答えください★
指定:【武蔵】
001:電車待ちの列に【武蔵】を発見!どうしますか?
見間違いの可能性もあるので不自然にならない程度に透視する。
心眼を開いて1ミリ単位で手近な紙という紙に情報を記入する。
手持ちがあればメジャーで全身のサイズを計りたい。
最重要項目はそばにヒル魔がいるかどうか。


002:【武蔵】が隣の席に!どうしますか?
人生におけるすべての幸運を使い切ったのだなあ、と悟って
これからの人生とお友達に心の中で別れを言う。
このまま電車がどっかに激突したら
多分やまだが原因だろうと思うので(幸運に見合う分の反作用)
車内のお客さんに心の中であやまっておく。

笑いながら。


003:【武蔵】が眠ってしまいました。どうしますか?
多分制服なんだろうからネクタイをはずして手首を縛ってはしっこを持つ。
もしも途中で目がさめちゃったら「ひ、ヒル魔がやれって………」と
責任を全部押し付けてみるつもり。
ヒル魔の名前を出して逃げれば取りあえずなんとかなるだろう。

二人の仲を引き裂かない程度に波瀾を起す最初の竜巻きになりたい。


004:爆睡中の【武蔵】。突然あなたに寄り掛かってきました!どうしますか?
出来るだけ自然さを装いながら最大の注意を払いながら
武蔵の上着か懐から生徒手帳と携帯を抜き取る。
あと、ヒル魔らしい着信とかヒル魔からのアドレスとか写メとかを見る。

幸運は使い切ってあとは不幸になるしかないから
犯罪だろうがなんだろうがやれる事は全部やっておきたい。
警察に連れてかれたってムサヒルの生情報見れるのなら惜しく無い。

ムサヒル1犯。

かっこいい経歴じゃないか!いっそウエルカム!



005:もうすぐあなたの降りる駅。まだ【武蔵】は眠っています。どうしますか武蔵
やまだの携帯を武蔵の腹に忍ばせる。
後日会う口実を無理矢理増作るのです。




006:終点駅に到着しても起きない【武蔵】。どうしますか武蔵
ほくそ笑む。執着駅まで落とし主が見つからなかったら
拾い主のもんですよね。




007:やっとお目覚めの【武蔵】。ちょっと寝ぼけている様子。どうしますか武蔵
どうしてもう1本ネクタイ持ってなかったんかなーと悔やむ。
目隠ししたい。




008:平謝りの【武蔵】お詫びに何でもしてくれるって!どうしますか?
やばいことやってるのはやまだの方なのに
謝るなんて武蔵も随分寝ぼけてるわけですね。騙すなら今です。

しかし、しかしです。
やまだの頭はコレという大事なときにフリーズを起こします。
やまだは演技というものもとても下手でキャラを作る事もできません。
女相手の対応が慣れていそうな武蔵さんに何を言っても
「武蔵の印象に残る」ような会話なんてとても無理です。

せめて武蔵の色んな表情が見たい。というわけで
「ヒル魔に脅されているのが辛いから助けてくれ」の橋渡しを頼む。

その後武蔵立ち会いの元、ヒル魔と会える算段をつける。
いや、武蔵抜きでヒル魔と会って「武蔵」に関するある事無い事吹き込むのもいいかな。
不幸を肥料に花開く食虫花のようなヒル魔にとびっきりの不信感を植え付けてやりたい。
ヒル魔を輝かせるためだったら「不幸のサプリメント」として大活躍できる自信がある。

手首をネクタイで縛っている件に関しては
「何の事ですか?」「ばかには見えない素材ですねそれ」と
可能な限りばっくれて不思議ちゃんを装ってみる。
(やまだ、不思議ちゃんの定義を間違えてないか)

もしくは「美大生なんですう、デッサンの男性探してるんでスう」と
嘘を並べ立てて稲葉の家につれて行く。
稲葉の後ろで稲葉が描く武蔵と現実の武蔵を見比べてにへりにへりしたい。
あと、ポーズの指示するふりして腹を撫でる。(どういうポーズだ)




009:もうすぐ【武蔵】とお別れです。最後に【武蔵】に一言。
「逃げられると思うなよ武蔵げっげっげ」という心の笑い声は極力隠し
しかしもう二度と会えないだろうかと思う寂しさに感極まる。
武蔵のインパクトに一生残る女でありたいというどっか壊れた願望が爆発し
股間を蹴り上げて走って逃げると思う。

後日携帯を交換するために再会する事を思い出し
死ぬ程後悔する自分が見えました。



010:次にバトンを回す4人。
スナックさん>ヒル魔
犬山さん>ヒル魔
司さん>ヒル魔
あたりさん>ヒル魔


2000年07月23日(日) ムサヒル中学生

 
 
高校生ムサヒル。

武蔵の家でだらだら休日を過ごしているヒル魔。
金曜日に武蔵宅へ遊びに行って、家に帰る時間がずるずるのびて、
お決まりのようにそのまま泊まる事になった。
いつものこと、と片付けられる程武蔵の家に泊まる事は多い。

そして、土曜。
適当な時間に起きて朝食を食べた後、武蔵の後について離れへと戻る。
そのときから武蔵の様子がおかしかった。
いつもなら偉そうに伸ばしている背筋が曲がり、片手が腹に添えられている。

「腹、おかしいのか」
「なんか変だ……」

部屋に戻ると、まだ少し体温が残る布団の上にごろりと転がる。

「具合わりい……」
「トイレで出して来い」
「出てこねえんだよ……」
「詰まってんのか」
「なんか、なーー」

武蔵の片手が腹を撫でる。こいつの身体は随分と頑丈だ。
体調を崩す事は滅多になく、そのせいなのかたまに訪れるこんな時はとても気弱な面を見せる。
冬の風呂上がりに裸で過ごしても風邪さえひかない頑丈さが取り柄なのだから
正露丸でも飲めばさっさと治りそうだとも思う。
武蔵は落ち着き無く布団の上をごろごろと転がっている。
普段とは違うぐだぐだっぷりにヒル魔は武蔵の頭を叩いた。

「何すんだ」
「治してやってんだよ。つむじ叩けば下痢になるって言うだろ」
「?つむじ叩いたら便秘になるんじゃないのか」
「逆だろ」
「そっちが逆なんじゃねえかよ」

布団に腹這いになって文句を言う武蔵が面白くてヒル魔は本格的に頭をこずいた。
つむじがあると思われる所をだ。

「やめろっつうか、つむじはそこじゃねえよ」
「ん?どこだ?」

寝起きでぼさぼさの髪の毛をかき分けながら、ヒル魔は武蔵のつむじを探す。

「何でてめえ、こんなトコにつむじあんだよ!」
「あんま、頭触るな……」

弱っている武蔵はヒル魔の手を降り解けない。

「ひとつ、ふたつ……4つもあんぞ!」
「触るな……」
「ガキの頃、ゲリボタンて呼ばなかったか?」
「触るなぁ…………」

最後にはヒル魔の詮索から逃れる事を諦めて、武蔵はヒル魔の腰に両手を回した。
普段は横柄とも言える程の態度を取る武蔵。もちろん本人に悪気は無い。
少し腹の具合が悪いだけでこれ程弱気になってヒル魔に近付いてくる武蔵。
もちろん本人に自覚はない。

「てめえにも腹痛、うつしてやる」
「出来るもんならやってみな」

具合が悪い癖に接触するためすり寄ってくる武蔵の頭を、ヒル魔は更に両手で崩した。
やっていることは同じでも、いつもとは少し雰囲気が違う。
ヒル魔が武蔵を甘やかす珍しい関係。武蔵がヒル魔に甘える少ない機会。




いつもとは違う面を見せる武蔵の不調時が、ヒル魔はそれ程嫌いではない。








2000年07月22日(土) はじいち 剃刀のストック

 
「ヒル魔さん、鞄の中で携帯鳴ってますけど」
「あーーん?」
いつも持ち歩くヒル魔の鞄の中につめられた無数の携帯。
その1つが先程から随分長く呼び出し音を鳴らしている。
「ほっとけ」
「でも……」
コール音は一度途切れ、それからまたすぐに鳴り出した。
緊急の用事なのかもしれない。焦るセナとは対照的にヒル魔の反応は冷ややかなままだ。
「そこの電話が鳴る予定はねえんだよ」
ためらいながらセナはヒル魔の制止を振り切り鞄の中から携帯を取り出した。
「はい、もしも……」
『ばーーーか』
「!?」
すぐに切れた携帯を持ち、セナは驚いて立ちすくむ。
「止めとけって言った意味、わかったか?」
着信履歴は非通知になっている。セナがそれを元に戻す前にまた携帯が鳴り始めた。
作業していた手元から顔を上げ、ヒル魔はセナが次にどういう行動に出るかをニヤニヤ笑いながら観察している。
「は、はい……」
『イイ気になってんじゃねえよ』
そんな台詞の後には無機質な通和音が通和音が続く。
どう反応していいのかわからずセナは無言で携帯を握りしめる。
そっと背後を盗み見ると、何があったのか把握したらしいヒル魔の視線に捕まってしまう。
「だから、言ったろ?」
セナは小さくはい、と答えた。そうだった。この人はこういう事に慣れた人だった。

ヒル魔が裏でどんな暗躍をしているのか詳しい事は何も知らないが
弱味を握られている哀れな被害者が時折こんな嫌がらせを仕掛けて来る事がある。

1年以上、ヒル魔さんのそばにいた。
いろいろな事がわかって来た。
手まねの合図は、携帯をよこせという合図。
ヒル魔の手にかかれば、「非通知通話」など意味を持たない。
いくつかのフィルターや小さな機械を接続して、あっというまに発信源を突き止める。

ヒル魔に対して「仕返し」や「逆恨み」、「嫌がらせ」などは逆効果。
むしろそんな反応はヒル魔の闘争心を煽りに煽る。
弱味を握られた被害者が現状を打開しようと必死になって取った行動は
ヒル魔の手痛い締め付けが返される。

「こいつは昨日のヤツと一緒だな」
昨日、というより昨夜の話。
部室の外壁にあるデビルバッツのペイントが墨で塗りつぶされていた。
部員一堂によるバケツリレーで、汚れは簡単に流れて落ちた。
イレギュラーな作業の最中、部員の胸にあった共通の思い。

-------気の毒に。


2日連続で、セナは顔も知らない実行者に対して同情した。
ヒル魔さんの機嫌は嫋々。さぞ、恰好の「報復返し」を思い付いているんだろう。
「今回のヤツは、中々腰が座ってやがる」
泥門チームに届けられた小包や郵便物を選り分けていたヒル魔が
1つの封筒を摘まみ上げた。
「細かい所まで、よく気が回る」
嫌な予感がして、セナは注意深く封筒の中を覗き込んだ。
今どき古典的とも思える薄い刃物が数枚むき出しで封入されている。
「ヒ、ヒル魔さん……」
「問題ねえよ。おい、糞ジジィ」
部室の隅から無言で事の次第を見ていた武蔵がヒル魔の声にのっそりと動く。
その表情は苦虫を噛み潰したように重苦しい。ヒル魔が何かを遂行するために
他人の弱味を突くやり方を、武蔵は非常に嫌っているからだ。

「そういうやり方は賛成できねえ」
「俺のやり方に文句つける気か?」

不機嫌を隠さない武蔵の声をヒル魔は無視する。
鼻歌を歌いながら携帯の履歴を確認し、楽し気にそれらのデータを手帳に書き留めていた。

「良かったな。鬚剃りのストックが増えたぞ」
「………お前、なあ…。」
「これが俺のやり方なんだよ」
「だからって、お前はちょっとやり過ぎてねえか」


普段から年老いて見える武蔵の表情が一層渋る。
無ぅたりの会話はその後も続き、締めくくるためだけにヒル魔が
「少しは気をつける」と返事をする。


-------誰もヒル魔さんを止められないんだ。
その事実を諦めて受け入れるセナの中に正反対の感情がある。
-------武蔵さんでも、無理なんだ。
それが矛盾する気持ちだと理解しながらセナは息を吐く。

今はこんな具合のまま。
ここにセナが口を挟んでも、何の影響力も持たない。
でも、それは「今」の問題だ。

もっと自分達が強くなって、もっと自分に実力がついて。
ヒル魔さんがそんな事をしなくても何とかなるような力をつければ。
時間がかかるし別のやり方にはなるけれど少しはやり方が変わるかもしれない。

僕は、僕のやり方で。

色々と複雑な思いを胸に抱きながらセナは二人のやり取りを眺めた。
いつか、僕だって。
その後に続ける言葉はまだ秘めておく。



いつか。
僕だって。











2000年07月21日(金) あいうえお

 
帰宅して以来PCの画面ばかり見ているヒル魔が突然小さく「あっ」と叫んだ。
首を伸ばして画面を覗き込むがエクスプローラーの画面だったのであまり気にしない。
そんなに大した事じゃねえだろう。
食事の時間も画面から目を離さずに熱中するヒル魔は武蔵を見ようともしない。
あまりに無視されている事への不満とそろそろ休めという気持ちも含めて口を開く。

「いうえお」

ヒル魔の不機嫌極まりない顔がこちらを睨む。
何か文句あるのかと正面から視線を受け止めるとヒル魔が忌々しそうに画面を畳んだ。
何があったのかは聞いてもわからないから質問はしない。

「お前、ほんとに中身まで古臭いな。昭和のギャグか」

そっちだって昭和の生まれじゃねえか。
色々と言い返す事はあったもののこれ以上ヒル魔の機嫌を損ねたく無い。

「あ、って来たらそれ以外あるか」

同じ姿勢を強いられていたヒル魔の上半身が大きく伸び上がる。
椅子の背もたれがギイ、と不満そうな音を立てた。
両手が上につき上がり、大きな呼吸でヒル魔はそこからストレッチを始める。

「だからてめえは爺くせぇって言われるんだよ」
「じゃあ何がある?」
「何もねえよ」

会話にはあまり意味は無い。
意味があるのはヒル魔がPCから武蔵へと相手を変えたという所にある。
またPCに興味を持っていかれないように、武蔵は当たり障りない会話を続ける。
中央から脇へとソファに座る位置をずらすと空いた場所にヒル魔が座った。
足を広げ、ふんぞり返り、足はテーブルの上に乗る。
それを非難した所で言う事を聞くようなヒル魔ではない。
武蔵は大人しく新聞を閉じた。読もうと広げていただけで、目は誌面を滑るばかりだった。
机上のスペースをヒル魔に譲り、よりかかかって来る体重を大人しく受け止める。

「あー、の次、か?」

武蔵がきっかけのどうでもいい話をヒル魔が繰り返すときは疲れているか、眠い事が多い。
放っておけばソファでうたた寝のまま朝を迎えがちなヒル魔をベットに運ぶのは武蔵の役目だ。
肩によりかかるヒル魔の目は眠そうに伏せられている。

「い、だろ?」

寝るか?と聞く前にヒル魔の顔がこちらを向いた。
何かを思い付いたような機嫌の良さそうな笑みが浮かんでいた。

「し」

短いたった1文字の言葉。
ヒル魔の両手が武蔵の首筋に巻き付いた。
顔が近付くが、キスとも違う。武蔵の顔を伺う表情。
特定の「反応」を狙っている時の顔だ。
返答を間違えれば逆キレされるのも珍しくはない。
必死で頭を巡らせてヒル魔の意図を武蔵は探る。

「………………て?」
「る」

笑う唇が武蔵に強く押し付けられる。
幸い、「正解」を言い当てたらしい。
全体重を預けるようにヒル魔が武蔵に抱きついた。
そのままではすぐにずり落ちそうなヒル魔の体を武蔵が支える。
武蔵に支えられたままヒル魔は尚も体勢を変えた。
支えの武蔵の両手が弛めばヒル魔の身体は仰向けに落ちかねない。
テーブルの角の上などはそれなりに凶器でもある。
もちろんそんな事が無いように武蔵は両手に力を込めるがその中でヒル魔は無防備に動く。
武蔵が手を離すなど、微塵にも思っていないような態度だった。
武蔵の両腕の中にすっぽりと収まってから、ヒル魔は満足そうに動きを止めた。
収まったというよりも、横抱きせざるを得ない体勢に持ち込んでいる。

「寝るぞ」

それは寝室に連れていけの意味。
甘やかしてるなあ、と思いつつも武蔵は腹と手に力を込めてヒル魔をそのまま持ち上げた。

今日一日。
帰宅してからこの時間まで武蔵を長時間放っておいた、埋め合わせのつもりなんだろうか。
だったら可愛いと武蔵は思う。

いつもの気紛れだとしても。ヒル魔に甘えられて悪い気はしない。

どちらにしても、できる限りはヒル魔に従う。
それが武蔵の日常だった。









2000年07月20日(木) ジャンプ年末の感想


 
ジャンプを持ってくれば良かったなあ。
でもモニタとMacとペンタブと外付け持って歩くとそれだけで
総重量が10キロぐらいになってしまって…………。
実家用にMacをそろえようかなと考え中です。
ジャンクMacが欲しいのですよね。蛍光グリーンのあの薄く丸いやつ。
1万円以下だったら買おうと思っているのですが
すぐに売り切れる……。まあでもあれだとネットは出来ても
チャットとか絵茶が出来ない恐れがありますが。

そういう訳で思い出しジャンプ。
インパクト強かったやつをちらほらと。
ちなみにアイシに関しましては「高見さんが黒かった」としか覚えてません。
そりゃあ黒かった。素晴らしく黒かった。大好き。


テニス
合併号も素敵だったんですがインパクトと言う意味では
色んな意味で今のこの漫画をこえる物は少ないと思います。


つうか無いだろ。


インパクトとか強烈さでは、
江田島平八さんとか範馬祐次郎さんとかクラスだと思います。
壱百八式って数字も凄いですしなんかテニスじゃ無いのも凄いですよね。

どこの感想サイト様も「壱拾参でこれなら壱百八ならどうなるの」トークで
108全部打ったら石田のレベルが上がるとか
108全部を受け止めたらタカさんの勝ちとか
世界のどこかがランダムに破壊されるとか様々な予測が立てられていますが
きっと全ての予測の斜め右を行くんでしょう。もう誰にも止められない許斐先生ワールドです。

やまだは108全部を打つためにあの会場は観客席が低いと思います。
専用会場が必要ですよね。石田さんの声が届かない客席のためにも
対戦者が108式まで叩き付けられるランク表示入り壁が必要です。

あと普通にあのラケットは何で出来ているんでしょう。
死ぬ気弾?衝撃を一時的に圧縮して吸収してますか?
途中に血とラケットだけが残されて人がいなかったコートを見て
何が起きているのかわからんかったです。
コナンとか金田一とかがここに登場したら間違いなく「犯人」を探す条件が揃っている。

石田さんがこの技をあみ出したんだろうって思う中で
漫才テニスの存在が大きかったんじゃ無いかなと。
あんな対戦相手を馬鹿にしているのかテニスしているのかわからん対応をされてしまったら
全力でつっこみ入れたくなるのも1度や2度じゃないでしょう。
同じチームで練習試合するごとに、理不尽というか不愉快というか
込み上げる憤りが込められて完成した波動球。
そう思うと石田さんには同情さえも感じます。

タカさんは血を吐いて倒れるしお父さんはふとしたミスで手元がくるうし
普通の漫画だったら立派な死亡フラグにも繋がるんですが
ここで「タカさんが負ける」とは思えないから不思議なんです。
どうなるんだろう、この勝敗。
まさかとは思いますが漫画始まって以来の死者が出るんでしょうか。
今後の展開から相変わらず目が離せません。



ナルト
作戦はなるほど、と思うんですけれどあと心臓は3つぐらいあるんですよね。
先は長い。


もて王
服装のセンスににこにこしました。
やまだの中学時代、リアルタイムでパラダイス銀河が大流行。
学校祭ではベストテン形式でとんねるずとか少年隊(君だけに)とか
中山美穂(マーメイド)などの歌披露をやりました。
やまだは内海のポジションで歌って踊りました。痛いな。
ローラースケートでターンとスピンとバックが出来ます。でも側転は無理でした。

漫画に漂う空気がほんと懐かしい……。
ローラースケートにバンダナにタンパン。
ケミカルウォッシュて今となっては痛いファッションの象徴て言い過ぎですか。
(貴方の職場にはいませんか。未だにケミカル履いている痛い人)
(やまだは現在の職場を含め多くの同業者達からケミカル野郎の噂を聞きます)

矢射子のノーパンはフランキーを思い出しました。
同じノーパンでも人によって対応は様々なのですね。
ヒル魔がノーパンになったらどんなリアクションしてくれるのかしら!
真っ赤になって顔を覆うぐらいの反応をぜひしていただきたい。
ジャンプ正統派ヒロイン(小悪魔風)はヒル魔だよ。
そうだよ、あのツンデレ野郎さ!



ネウロ
春川が誰かに似てるなあと思っていたんですが
やまだ的には「OZ」の1019に似てるなと思いました。

最近かなり大好きなネウロなんですが
最近この作品の最終的なオチを想像します。
多分ネウロが言う所の最大の謎ってのはああいうのかな、とか
ヤコは最終的にフォアグラのようなものになるのかなとか
謎を目の前に飢えて倒れるのか。
本当にわくわくしたり鳥肌がたつ漫画ですよね。


ワンピース
深い……。
タイトルの「3人目と7人目」というのが「ちゃんと仲間になった」て意味なら
ウソップが登場した時からこのエピソードは想定されていたって事で。
この漫画はどこまで先の話が考えられているんでしょうね。凄い!






2000年07月16日(日) メリークリスマス!

 
妹ヒル魔はサンタクロースを信じていない。
あれは大抵その家の「父親」がやっているもの。
長距離トラックで留守がちなうちは、両親が「ぶっきょうと」だそうで
クリスマスらしい事は何も無い。せいぜい小さなツリーに飾りを乗せて
テレビの上に乗せる程度だ。
それでも翌朝、枕元にプレゼントはある。
サンタが来たな、と雲水は言う。
だけど本当は知ってるんだ。

これは武蔵がくれたんだ。



毎年プレゼントは来る。
だから一応リクエストをツリーに飾っておいたりする。
雲水や阿含がサンタをするなら、ちゃんとそれを買ってくれるはず。
「パソコン」とか「携帯電話」とか「マシンガン」とか書いておくけど
実際に来るのはつまらない人形や手ごろなおもちゃ。
でも、去年わかった。枕元に置かれていた、だ円の茶色い新しいボール。
これを用意しているのは武蔵だ。
ヒル魔はそんな事を信じている。





今年は、何をくれるんだろう。
寝床に潜っても布団は冷えている。
ストーブの前で暖めた体もシーツの冷たさに手足が縮まる。
眠気が覚めて、だからあれこれと考える。

武蔵は今年、何をくれるつもりなんだろう。

あんまり高価な物は期待出来ない。
だから今年のツリーには少し違うモノをお願いした。
武蔵じゃなくちゃ、くれない物。
武蔵がくれなきゃ、意味が無いもの。

武蔵はそれを見て笑った。
ヒル魔の書いた名前の隣に、武蔵も一緒に名前を書いてくれた。

だけど、それとは別にプレゼントが欲しい。
ベットの脇に下げた靴下はヒル魔のものだからとても小さい。
その中に入るようなもので構わないから、武蔵から何か欲しかった。
去年もらったアメフトのボールは、近所の子供達とも一緒に使ってあっというまにぼろぼろになった。
今度はヒル魔だけが使うものが欲しい。

武蔵は何をくれるつもりだろう。

何度目かの寝返りの後、ヒル魔はふと寝息を聞いた。
二段ベットの下の段。武蔵がいるはずの場所からそれは規則良く聞こえて来る。
上の段から覗き込んでもよくわからない。
ヒル魔が眠るまで油断させるつもりなんだろうか。
それにしては随分「はくしんのえんぎ」だと思う。

足音を忍ばせてそっとベットのはしごを降りた。
プラスチックで出来たはしごは一足ごとに体温を奪う。
なんとか下に降りた時、ヒル魔のつま先はすっかり冷たくなっていた。

「ムサシ」

小さく小さく名前を呼んでみる。
寝たふりなんて通用しないぞ、と。
今ここで俺にプレゼントを渡してもいいぞ、と。
小さく囁いても武蔵の形の影は動かない。
下の段に頭をつっこみ、武蔵の顔を覗き込むと。

気持ち良さそうに眠る武蔵。

「起きろぉ!」

思わず口から飛び出す言葉。
なんで寝てるんだ。なんでこっちが寝るのを待ってないんだ。
サンタだろ!俺にプレゼントくれるはずだろ!!!
武蔵はそんなに俺の事が大事じゃないのかと、 びっくりしたのと、悔しかったのと。
いくつも気持ちが混ざりあって、ぼろぼろ涙が溢れてきた。
クリスマスの約束だsって、こいつはすぐに忘れちまうんだ。
「アレ」が叶うのはずっとずっと先の事で、こいつはすっごく馬鹿だから
明日になったらもう何にも覚えて無いって顔すんだ。

一気に頭に血が登り、何がなんだかわからなくなる。
パジャマの裾で何度か顔を拭っているとベットの中で武蔵が起き上がった。

「どうした、ヒル魔?」
「うるさい馬鹿!」
「恐い夢でも見たのか?」
「全部武蔵が馬鹿なせいだ!」

自分でも訳がわからず、手の付けられなくなってしまったヒル魔。
対して武蔵は冷静だった。むしろ、寝ぼけていると言った方が正しい。

「寒いんだろ。ここで寝るか?」

言われてみれば確かに寒い。なんだかとてもむしゃくしゃする。
武蔵がそうやって誘ってくれても素直にうんとは言えなかった。

「ほら。寒いんだからすぐに来い」

寝ぼけた武蔵はヒル魔を強引にベットに引き込んだ。
布団の中に招かれて、体が冷えきっていた事がわかる。
武蔵の体温はいつも高い。布団の中は暖かかった。
すぐに眠りに落ちそうな武蔵の規則正しい穏やかな息の音は
ヒル魔をすぐに眠りへと誘った。

「武蔵、クリスマス……」
「んーー」

ほとんど眠りについている武蔵の言葉ははっきりしない。
眠くなっているヒル魔の言葉も呂律が回らなくなっている。

「クリスマスプレゼント……」
「連れてって……やるぞ」
「な、に……?」
「クリスマス……ル、俺が連れてって……やるか……ら」
「………うん」
「もう、寝ろ……」

ほとんど意識もしていないのだろう。
武蔵は同じ言葉を何度か繰り返す。
ヒル魔は毛布ではなく、武蔵の体にすり寄った。
ヒル魔より暖かく、ヒル魔より大きい体。
まだまだ子供でとても馬鹿だけれど、信頼出来る頼もしい兄。

ぬくぬくとした体温に包まれてうとうとと目蓋が落ちるなか、
ヒル魔は必死で武蔵の枕元に手を伸ばした。
武蔵は、ここにおいていたはず。

今年は武蔵で我慢してやる。

額にかかる武蔵の寝息。
もう叫んでも起きないようなその武蔵の頭の上に、見つけたものをそっと乗せた。
ちゃんと連れて行ってくれるまで。
ちゃんと約束を果たしてくれる迄。

ずっと、お前で我慢してやる。





翌朝、武蔵が目を覚ますとヒル魔はとうに起きた後で。
寝ぼける武蔵は夕べの事を何1つ覚えていなかった。



ただ。
夕べ見た夢。

サンタが出て来た。とても大きな包みをくれた。
腕の中にずっしりと重いとても大きなプレゼント。

包みは派手で、ごとごとと動いていて、
中を開くと「それ」は暴れ出しそうだったし
トラブルばっかり運んで来そうで、面倒ばっかりかけそうで。
だけど近寄ると良い匂いがした。

箱の中で寂しいのだと思い、急いで包みをあける所までは覚えている。
中身が何だったのかは覚えていない。
あれは一体なんだっんだろう。



階下でヒル魔が呼んでいる。
とても機嫌が良さそうな声だ。
体を起こすとぼとりと枕元に落ちたのは武蔵が用意していた靴下。

「?」

なんでこんな所にこんなものが。
考えるより先にヒル魔の声がまた武蔵を呼ぶ。
武蔵にとっては何より大事な妹の声。



理由なんてよくわからない。
ただ、ただ、大事に思う妹の声。

武蔵は大きく返事をしてから、急いでベットを飛び出した。




ただただ、大切な。
大切な妹の声。




2000年07月15日(土) 飲み会

以下、色々と本当に色々とお話して途中から話のテーマが「各々」になり
やまだも色々と貴重な意見をたくさんもらえました。




あんたの受けた苦労は所詮温室の中の苦労だ




このへんから始まって「人を判断する時にまず否定する所から入るな」となり
例)
や:道に煙草の吸い殻を火がついたまま捨てたり排水溝に落としたり
  ゴミを道ばたに捨てたり地下鉄の中に置き去りにしたりする人間はゴミ
友:そういう人だって別の見方をすれば凄い才能持ってるかもしれないんだから
  簡単にゴミって言うあんたの方が痛いよ


もっと余裕を持てとか丸くなれとかぎすぎすしているとか
人として柔らかみが足りなくてとげとげしているとか偏見が強いとか
あと忘れたけど色々な事を言われました。(全員非オタ)
なんでそんなに人に見下されまいと必死なんだとか
絶対に負けないって肩ひじ張った所が鼻につくとか
様々な御忠告をもらってみました。

おまえら、人の事よく見やがって…………。
ともかく偏見が強いとか態度がとげとげしいとか余裕ないとかは
非常に最近気になっていた部分なので直して行きたいというか
余裕持ってやっていけるようになりたいですなあ……。

忙しいて言葉を理由にさぼるなとか手を抜くなとかもっと勉強しろとか
相変わらずストレートなパンチどかんどかんくれたんですが
それぞれがいちいち的を射ているんだから反論も出来ず
ああ、知っていますよ知っていますとも!わかっていたけど放置してたから
あたしは手後れみたいになってんのさ!てちょっと反省してみました。
(それは反省している態度なのか)

言ってくれたってくれたって事はそういうのがさぞ目障りなんだろうし
人として本当にぎすぎすした所はみっともないので直していきたいし
何にせよ人を一面から批判しないで多面的に判断出来るように
心に余裕を持ちたいです。



今年の目標です。(お前今年あと何日あるよ)
あと今回の幹事は3時間謡放題飲み放題で4000円とかいうあり得ない数字だして
ちょっとおかしいんじゃないかと思いました。<お前今年の目標はどうした。

最終的に5時間6000円だなんて言われたんですが
それで素直に財布を開くみんなが凄いよ。
アンビリーバブルなカラオケショップですよ。ほんとにもう。
しばらくカラオケなんて入ってなかったけどこんなもん?

こういう所でも心の余裕とかが伺い知れるので
余裕って金だなと思いました。余裕の不足を金で補いたい。
来年の抱負です。


それにしても、さすがに疲れた…………。





やまだはどうすれば良いのかって相談してくれた皆の出した方法
「どうしようもない恋愛でやまだがぼろぼろになってみる」
人として成長するそうです。ほっほう。


2000年07月14日(金) 病院

 
なにやらあちこちで風邪にやられている方々が多いようですね。
秋の終わり頃に派手な風邪をひいたやまだは現在予防関連に手を抜きません。
もうあんな風邪はひきたくないよう……。
そういう訳でかなり必死に手荒いうがいと保湿、保温に気をつけていますが
(そして今週に入ってからコタツでばっかり寝ておりますが<ダメじゃん)
もしも現在風邪でぐったりされている方。

民間療法やいろいろありますが信頼出来る場所に行って
なんらかのお薬貰うのが一番ですよ。

栄養剤、ビタミン剤、抗生物質と胃薬しかくれない病院はやまだ大嫌いですが
(そういうもので取りあえず的な処置しか出来ない妙な症状を出す自分の体が原因です)
実際病院でくれるモノは専門的でよく効きます。
ビタミン剤と言っても市販されている十把一からげ的なモノと違い
濃度も高く効果的で患部に届くものをくれますし
胃薬だって弱った体が消化で体力を使わないように支えてくれます。

民間療法、あったかくして寝るというのは確かに万能薬ですが
それは同時に体力を消耗する治療のしかたです。
あったかくすること、体温を適度に保って汗をかくこと、循環を回す事、
それらはすべて体力をガソリンに行います。体に負担がかかるって事ですね。

そういうわけで大抵の病院はそういった栄養剤的なものもくれる(はず)で
治癒のために体が払うエネルギー、体力分を軽減してくれる措置を
してもらえる(はず)ですので何より病院をおすすめします。

ちなみにやまだは薬よりもエネルギー源が欲しかったので
今回漢方に頼ってみましたが実感した所はやっぱ風邪って体力使うな!て
所でした。人によるのかもしれませんが大量に汗かいた後の疲労感は
食べるしかない、という所におちつきました。

風邪は食べる!そしてあったかくする!!!
とにかくあったかく!カイロ抱いてポカリが口から逆流するほど飲む!そして食べる!!
胃腸が弱い方にはおすすめしませんがにんにくかじりとかニラネギ食べとか
そういう形で風邪と対峙する人の発言ではないですが
あったかくする、寝る、は当然の事としてどうぞ病院へ!!


2000年07月13日(木) やくざ

十文字は火をつけて間も無い煙草をイライラと投げ捨てた。
言い付け通り当たり一帯を調べたらしい若いヤツらが戻って来たからだ。
「すみません、やっぱりどこにも……」
「この近くにはいると思うんですが……」
年に数回しか顔を会わせない『お偉い』方々との会合に、よりにもよってうちの若頭が土壇場で姿を消した。
不意に姿を消すのはいつもの事だが、これだけ大きな予定を控えて突然消える事は過去になかった。
「見つかるまで捜せって言ってんだろ!くだらねえ事報告してる閑あったらその辺這いずり回って捜せ!」
走り出す部下達の尻を蹴り上げたくなるのを必死で堪える。

わかっている。こいつらに落ち度はねえ。

繁華街から一歩奥に入った路地裏。
脇にある細いビルとビルの隙間は、右に折れて袋小路になっている。
苦虫を噛み潰した顔で立つ十文字は、苛立ちつつもその場から動かない。
違う。
動く事が出来なかった。

人通りの無いその場所の静けさの中、聞こえて来そうな物音から必死で意識を背けようとする。
若頭と、その一番の部下。
部下という枠には収まらない態度の部下と揃って姿を消す時は
大抵「ソウイウ」関係になっていると知っている者はとても少ない。
つまらない偶然から知ってしまった十文字は、以来都合良くこき使われている。
足裏で踏みつぶす煙草の本数がふた桁を超えた頃、通り抜けが出来ない路地から
のそり、と男が顔を出した。

「すまんな、終わった」

悪びれた風などまったく見せずに、渦中の1人は現れた。
どういう状態であるのか十分に分った上で、悠長に武蔵は身支度を整える。
上着の肩の汚れを払い、全開になったシャツを止めていく。

「……若頭は」
「も、来んだろ」

言葉と同時に背後からまた1人男が現れる。
細身の身体をきっちりとスーツで固め、一見堅気に見える程
整ったスタイルだったはずだ。少なくとも、この路地裏に入る前までは。
余韻に浸る惚けた頬と、薄く汗が残る額。
回りがぴりぴりしている中でよくそんな気分になれるもんだ。
呆れ半分で十文字は身支度を整える二人を眺める。

間近で何年も見て来て分かる。
人を束ね、組織を動かし、それらを発展させる力。
この年でその地位にのし上がっただけの確かな能力を持っている。
その蛭魔の持つ、数少ない欠点に含まれるんじゃあないだろうか。

「ネクタイと、襟」

何も言わない武蔵に代わり、十文字が乱れを指摘する。
普段よりも数段仕種が遅くなったヒル魔はゆっくりと胸を反らした。
無言で絞めろ、と合図されている。
だるそうに壁にもたれて立つヒル魔の喉元に十文字は手を伸ばした。
ゆるんだネクタイを一度引き抜き、襟を立たせてネクタイを通す。
距離が近くなった十文字を、小馬鹿にするような笑みが浮かんだ蛭魔の視線が
背後に流れていくのがわかった。

言葉は無い。
目線だけでどんなやりとりがなされているのか。
二人のやりとりは十文字にははかりきれない。

おおかた、でかい会合を前にして逆の意味でヤル気にでもなったんだろう。
『そこで、人払いしてろ。』
言葉と共に路地に消える蛭魔。
『30分ぐらいで戻る』
武蔵の言葉に、路地の中から打ち消しの言葉。
『20分だ!』

ネクタイを絞めるとヒル魔がふらりと十文字にもたれかかった。

「行くか」

急激、という言葉が似合う程に蛭魔は頭角を表した。当然中にも外にも敵は多い。
そんな無防備にしてていいのかよ、あんた。
このネタを持ってどこかにタレこめばそれでお終いなんじゃねえのか。


そんな事をけしてしないと見極めた相手にのみ蛭魔はこうして気を許す。
この類い稀に賢い人の手の中で踊らされていると自覚はあったが。
この距離間が心地よいと思ってしまう自分がいる。

「時間ねえんじゃねえのか」

どんな神経がそうさせているのかゆっくりと煙草をくゆらせながら武蔵が時計を見てそう呟いた。

「あんたが言うか」

肩にあるヒル魔の頭が笑いを漏らした。
近付いてくる足音に蛭魔は十文字から数歩離れた。
髪を撫で上げ、襟を直し、外していた眼鏡をかける。
それだけで、情事の跡は消えてなくなる。

「行くか」

十文字や武蔵との距離感は、単なる若頭と部下だけの冷えた物にすり代わった。
何ごともなかったように。

このギャップの激しさを、悪く無いと思う時点で俺はこの人に惚れているのだ。
引き締まる気持ちと同時に、十文字は顔から表情を消す。


この人のためなら。


そう思える相手がいるのはこの稼業の中で幸運な事だ、と。
十文字は思っている。














2000年07月12日(水) お肉の話

 
先日、母からの電話によると久々に弟が食事に関して癇癪を起こしたらしい。


俺は牛が喰いたいんだ!!!(魂の叫び)


まあ、気持ちはわかる。でもあんたアトピーだから油分多い食事
医者に止められてるじゃんかよ、というつっこみは置いておいても
やまだの家は肉が無い家です。

油分が少ない献立と肉なしの献立はイコールではありませんから
弟君の叫びも間違ってはいないわけです。

台所仕切る母が肉嫌いだからホントに肉が出てこない。
何より母は牛肉が大嫌い。おかげでやまだは子供の頃から
「牛なんて貧乏人が食べるんだね!うちはお金持ちだから豚肉なんだもんね!」と
思っていた。根拠なく思考が暴走するのは生まれつきのようです。
あと、偏見と断定で想像がスキップするのも三つ子の魂いつまでって具合です。

で、弟はしばしば肉!と叫ぶ人で叫ぶだけの人だったので
結果としていわしハンバーグとかとうふハンバーグとか
しゃぶしゃぶサラダとかしいたけの鳥挽肉詰めとか
油分の少ない食生活に変化が起きない、てのが今までのいきさつ。

叫んだり怒鳴ったりするだけじゃ現状は何も変わらないという事をいい加減悟ったのか。
今回ヤツは頭を使いました。



そう、牛肉を実際に買ってきた。
(考えたね!えらい、えらいぞ!)



確かに「もったいない」が信条の母だから目の前にあったらどうにかします。
どうにかはするんですが。


「牛肉をどうやって調理すべきか」がわからなかったらしいです。


正確に言うと牛肉を使う料理が頭の中に入っていない。
結果的にホットプレート出して自分で焼かせたらしいんですが。
そう電話で言われてやまだも一瞬言葉に詰まりました。
やまだも「牛肉を使ったメニュー」が「牛丼」しか浮かばなかったからです。
(そして牛丼は吉牛で食べるのが一番美味しい)

親子丼は鶏肉。豚丼は豚肉。牛丼は吉牛。
(ところで吉牛もやまだ成人近くなるまで店を実際に見た事がなく)
(キン肉マンのアニメを非常に不思議に感じておりました)
(まさか「牛丼(当時見た事もない)」だけを売っている店があるとも思えず)
(ずっとアニメの中だけのフィクション的存在だと思っていた幼少期。)
(みよしのってのは見たことがあったんですが「餃子」だけを売っていると聞いて)
(『変な店だな!』と思っていた幼少期。ラーメン屋はラーメンしか置いてないし)
(寿司屋は寿司しか出してないのになんで餃子専門店とか牛丼専門店は理解不能だったんだろう)

ハンバーグは豆腐豚のみ。しゃぶしゃぶも豚。たまに鶏(鴨)。
肉じゃがは豚肉(他の肉なんて考えられない)。
すきやきは肉。たまに鶏。
ザンギは鶏。焼き鶏も鶏か豚。

牛肉使った料理って何だろう‥‥。
とりあえず母と落ち着いたメニューは焼きそばでした。
(細切れにして濃い味で炒めるという判断から思いつきましたが)
(牛肉入った焼きそばってどうなんでしょう。やまだは自炊で作ろうとは思いません)

ホットプレートで肉祭りは父も参加し、家にあった肉が総動員され
ラム、鶏、牛が大量に消費されたそうです。
あまりの2人の肉喰いぶりに今までちょっと肉量が少なかったかしらと
母が反省し、1ヶ月に1度はホットプレート(または外で焼き肉)ご飯の日を設定。
(用意する肉はすべて自腹)


まあ、やまだの家は極端な例ですが北海道は日本で1番の豚肉消費する土地です。
地元が日本一肉牛作ってるのにね。ちなみに肉牛で最高と言われている(らしい)
黒毛和牛じゃないくて北海道の牛肉はほとんどがホルスタイン。
元々酪農が盛んだった土地での肉牛シフトなんだなあ、と思いました。
でもどうせならもっと豚作ってくれ……。
牛の名産地は美幌とか白老とかあるんですけれど
豚ってニセコ豚ぐらいしか知らないなあ…………。
ふかふかの豚肉が好物です。


多分北海道は肉じゃが=豚肉って普通なんじゃないかな‥‥。

あ、やまだ焼き肉で牛は好きです。
外食で牛はがつがつ食べます。
自腹で購入して料理するまで好きじゃないだけです。



で、これを書いていて気がつきましたが
ここんとこアメリカ産肉を解禁してるはずなのに
スーパーで売られている所見た事ないなあって思ってましたら。
アメリカ産なのは牛肉でやまだが普段買いに行くのは豚肉なんですね。
そりゃあ売り場が違うもん、目にしなくて当然です。



2000年07月11日(火) 寒いのよ。

さささ、寒い!寒いよ!!

北海道新聞さんの本日の記事より






しばれる道内 各地で厳しい冷え込み 新冠で-12.7℃  2006/12/01 14:30
 一日の道内は、上空に一月中旬の真冬並みの寒気が入り込んだ影響で日高管内新冠町新和で-12.7℃を記録するなど各地で厳しい冷え込みとなった。日本気象協会道支社によると、道内で-10℃を下回ったのは今季初めて。空知管内では前日から10cm以上の降雪を記録した。
 札幌管区気象台によると、この日朝の最低気温は釧路管内弟子屈町川湯と十勝管内陸別町陸別で-11.9℃、北見市留辺蘂町で-11.6℃。札幌でも、-4.4℃にまで下がった。札幌での日中の最高気温の予想は-1℃で、今季初の真冬日となる見込み。
 また、三十日夜から一日朝にかけての降雪量は滝川市で16cm、空知管内幌加内町朱鞠内で14cm、美唄市で13cmを観測。この寒気が居座るため、道内は二日以降も強い寒さが続く見通し。


果たして道外の方でこの記事を正確に「音読」出来る方は
どれだけいるんでしょうか‥‥。一番下にフリガナ回答あります。


もう耳にタコかもしれませんが。
昨夜から急激にとんでもねえ寒さです。
明日土曜日は1日家から一歩も出たくない‥‥。
本日から来週の月曜まで最高気温は0度。
日中でも-2度前後ぐらいになるそうで
水道落とさないとやばいなあ。
昨日ストーブ出しておいてよかったなーと胸をなで下ろしていますが
それにしても昨今の灯油急騰は一体なんだ。

やまだが子供の頃なんて灯油1リットル20円台だったんですよ。
今なんて100円ぐらいしそうなんですよね。
道民が年間に使う灯油の量は平均して他県の3倍使うと言われていますが
ほんと大打撃ですよこの値上がりぶりは‥‥。
北国では灯油での暖房が多く、あまりに灯油をがっぽり使うので
お家の外に灯油タンクってのが設置してあります。(内容量400リットル)
南から来た方々は火がついて爆発すんじゃねえのかって言いますが
そういう事件は聞いた事がないなあ‥‥‥‥‥。

やまだは1ヶ月で15リットルぐらいしか使いませんが(かなり少量です)
佐木さんは月平均40リットルとか。月の暖房費なんてたかが知れていると
思われるかもしれませんが10月から5月ぐらいまではストーブつけるのが
当たり前の年もありますので(昔飼っていたハムスターはGWに冬眠しました)
灯油高くなるのは厳しいです‥‥。

ちなみにやまだの実家はロードヒーティングから小型の除雪機、
室内の床暖房、風呂を全て灯油でまかなっております。
一ヶ月で使用する灯油が大体平均200〜300リットル。
ちょっとした企業や公務員さんは10月に「燃料手当」が支払われるのも
うなずける話です。つうか社長、暖房費下さい‥‥。お願いします。

冬はねえ!移動手段が地下鉄になるし
御飯食べるのに遠出出来ないしお弁当作って外でランチも出来ないし
風呂やらコタツやらで光熱費がんがん上がるし
暖房のおかげで乾燥してお肌は白く粉ふくので服の内側は真っ白になるし
冬だけでもお給料上げて欲しいなあ‥‥。

そんな事言っていますがやまだは冬という季節が大好きです。
寒いの大歓迎!それでこそ室内でより快適に過ごすために
様々な知恵を絞りがいがあるというもの!!!
ちなみに小さい頃から好きだった洞くつごっこ。
押し入れの隅に秘密基地建設。
大人になったいま、冬の室内はそんな具合に改造してます。
冬って大好き!一番嫌いな季節は夏です。いらないよ……。


ちなみにそんなどでかい灯油タンクにどうやって灯油入れるのかって事ですが
灯油屋さんに家まで来てもらいます。灯油なくなったら
死活問題なので実家では毎月呼ぶのですが

雪が降る>積もる>灯油タンクまで道が無い>灯油屋さんが到達できない

て事があるので雪はねもかかせません。
やまだの家は特に奥まった所にタンク設置しちゃったので
お兄さんが腰まで雪に溺れながらホース持ってえっちらおっちらしております。
たくさんの灯油屋さんに敬礼!!


地名のフリガナ。
日高管内 新冠町(にいかっぷちょう)新和
釧路管内 弟子屈町(てしかがちょう)川湯
北見市 留辺蘂町(るべしべちょう)
空知管内 幌加内町朱鞠内(ほろかないちょうしゅまりない)








印象派の絵画と写真
産業革命の真っ最中に写真技術が確立した当時
写真を元に作品を描いた(色々な技法を実験的に模索していたと聞きました)
と聞いていましたが実際にこうやって比べて見たのは初めてです。
セザンヌ、ゴーギャン、ロートレック、ゴッホさんたち。


2000年07月10日(月)  あなたバトン

 

あなたバトン
※一度受け取った人は受け取らなくてもいい

01.好きな歌手BEST5
ぽっと考えて……。特にあげられないぐらい
音楽はごった煮で聞いております。

リップスライム
ASA-chan
スカパラ
クレイジーケンバンド
コナン

最後のコナンはもうジャンルですらない。

02.好きな漫画BEST5
多すぎるのでとりあえず今はまっているもの

テレプシコーラ(名作。褒め言葉も必要ない)

ムーンライトマイル(リアルな宇宙開拓物語)
(プロパガンダや民族問題、デブリ、テロなどの問題が緻密です)

ぶっせん(前の表紙の方が好きです。北極警備隊を探しています)

Under the Rose (世界観と人間関係と偽善つうかとりつくろいと必死さ)

カルバニア物語(健康であったか)


03.好きなキャラBEST5
取りあえず今のところ
ガオ
キッドさん
ムサヒル(2人ペアで好きなのです)
篠原六花
猿渡吾郎
正助


04.今までに習ったことを教えてちょ
エレクトーン
水泳
書道
打楽器
合唱
自動車の運転のしかた

大事なものが抜けているような気がして
すごく考えて出て来たのが最後です。
それはちょっと違うんじゃないか


05.自慢できることは?

やまだが今迄出会って来たたくさんのお友達。
人を笑わせたり驚かせたりするネタの数。


06.ストレス発散はどこでする?

しゃべって食べる。
去年から絵チャとかチャットとかも含まれます。


07.願いが叶うなら?

遺伝子の治し方教えて下さい


08.まわそうぜ5人!

サッポロ仲間な鈴井さま
K区仲間ちゃこさま
みつかりましたかカンナさん
冬コミ頑張って下さいませ犬山さん
生きてねあたりさん




2000年07月09日(日) カラーバトン

阿呆なやまだはカラーバトンをサイコさんに頂いた際、
コピーしてとっておくのを忘れました。
検索したら2つ出て来たのでとりあえず。
回していただいたのは2つ目のやつです。

態度悪くてごめんなさい………。


【自分を色に例えると?】

マーブル。
どっちかっていうと迷彩色が混じってるやつで。


【自分を動物に例えると?】

あり。
踏みつぶされるといいです。


【自分を好きなキャラクターに例えると?】

ワンピースのバギー。
無駄に大騒ぎするところ。
自分の失敗を認めようとしないところ。似てます。


【自分を食べ物に例えると?】

碁石。塩をつけて舐めるといい。


【次に回す5人を色に例えると??】

もうもらっていると思うのでイメージであげているだけです。
黄色>穴(ほわんほわーーんって感じ)
青>稲葉(情熱的な青)
茶>あたりさん(地面、ってイメージ)
薄いグリーン>ちゃこさん(爽やかな所)
オレンジ>サイコさん(ぬっくぬく)






●好きな色は?
汚い色。もといくすんだ、というか鮮やかでは無い色。
緑とか赤とか青にそれぞれおKを30ずつ混ぜてみたり。
良く言えば伝統的な和風の色合い。悪く言えば混ぜ過ぎた絵の具。
煮物なんかの色も好きです。

●嫌いな色は?
鮮やかな色。発色が良い色は見ていてかまいませんが
あまり好みでそばに置いておきたいとは思いません。
液晶画面での映像やWebの画像は裏から光で照らしていますよね。
美しすぎると思います。


●携帯の色は何色?
薄いグレー。シルバーとか言われた気がしますが
てかりとかそういうのが使ってるうちに削れてしまいました。
むしろ塗装の禿げた所の方が白っぽくて綺麗。


●貴方の心の色は何色?
不吉な国防色。どろっと濁ってます。
底が浅いのにそんな色なのはよほど濃いのでしょう。淀みとかが。
呪われた沼色とかムナサワギの悪魔色とか。
飲むと力持ちになれますよ。

●回してくれた人の心の色は?
あったかい暖色系

●次の6つに合う人を選んでバトンを回してください。
青・・・稲葉(力強くラテンな青。抜けるような空のような感じ)
赤・・・あたりさん/スナックさん(昭和風赤。絵の具の赤。健康な赤)
オレンジ・・・サイコさん(あったかいんですこの方)
ピンク・・・ヤンヤンさん(もう、そのまんま)
白・・・シーヤさん(どこに混じっても違和感がなさそうな物腰)
黒・・・荻堂さん(ご本のイメージがこんな感じです)





よければよろしくお願いします〜♪


2000年07月08日(土) やまだの生態


でもって。正式に右耳が難聴だと診察されました。
先日の検査は風邪のせいかなとか思って適当に聞き流していたんですが
今回ずいずいとカルテ引っ張ってみせてもらって(迷惑)
看護婦さんにも「その音だけ聞かせて!」とかお願いしたんですが
まあ恐ろしい程に「1000Hz」だけがほとんど聞こえておらず、
一種の難聴だって言われてみました。ほおおおおーーー。
(先日までの言っていた数字は適当で仮の数字です)
(詳しい人なら桁が違うわ!と思うような仮数字だしてました)

すごく珍しいぐらいその他の音を綺麗に拾っているから
日常生活には支障がないこと、こういうのは治らない事を伝えられまして
まあ治療も投薬もしてはおりません。

それにしてもまた来た、この中途半端病状……。
右耳の1000Hzだけが中程度の難聴。なんだそりゃ。
今迄気が付かなかったぐらいなわけで(言われた今でもびっくりですが)
鼓膜は綺麗に可動しているそうです。

なんともないのに病気だって言われて、
お医者さんに珍しいねって言われるとなんだかお徳な気分に浸れますね。
いえ、それはさておき。

今迄やまだは電話番もかねており今迄ものすごーーく
聞き間違いが多かった訳で、ああ、これが原因なのかって思ったのですが
いつも電話受けるのは左耳で問題あるのは右耳なので
言い訳にはならんていう事です。ちっ……。
そんなわけで問題はありませんがが難聴でした。



帰りにお金払った後も待ち合い室に置いてあった赤ちゃんと僕の
最終巻を読んでむせび泣いているぐらいですので
なんかあんまどうでもいいみたいです。やまだ的に。とりあえず御報告。





で、もっとどうでもいいことだらりだらり。





やまださんは右利きですが、産まれた当初は左利きだったそうで
両親が気合いを入れて頑固な娘を矯正してくれたのだそうです。


が。


どんな頑固だったのかどんな矯正だったかわかりませんが
右と左の握力が10キロぐらい違います。
左手は11キロぐらいしか無いはずです。
そのため。何か作業をするとなると力仕事はすべて右手で行う癖あり。
つまりはウエイトレスすりゃお盆は右だしモノを持つのも必ず右だし
その分左手で文字を書いたり(これは今でも親に発見されると同時にぶったたたかれます)
細かい作業をするのが得意なわけです。

自動改札口に切符入れるのは左手の役割、とかいう具合です。
細かい所でどうも「あれ、左利き?」て思われる事が多いようです。
さすがに箸は左手では持てませんが。

さて、そういうやまだは今考えると左で受話器を取るんですよね。
今迄の傾向から考えるとたぶん右で取るはずです。
(何かの反射で手を出すのはたいてい右手)

左手で受話器を取り、左耳で聞くようになっているのは
ひょっとしてかなり小さい頃から右のへんてこは始まっていたのかなあ。
なんて事を本日病院帰りに思ってみました。


やまだは利き目、利き足、すべて左が出る人です。
手も左利きのままで育ちたかったなあ……。
親いわく、左利きだと結婚できませんって言ってた頃もありました。
じゃあ右利きになった今でも結婚出来ないのはどうしてだ。
お父さんあんた左利きなのになんだその態度は!!

とにもかくにも自分が成し遂げなかった左利き。
様々な方々の器用な左手を見つめる都度、いいなあ、かっこいいなあ、
あれもあたしやりたいなあと思う現在でございます。




さて、謎な部分は持つものの、難聴持ちになったわけで
今回の風邪は途中から耳鳴りがかなり強くなり
もともとめまい、貧血はかなり強く出る事もあり
年令もいい具合になってきているわけでメニエールな病状が
そろそろカード揃って来ました。
まあ、それならそれでもいんだけど。

それにしてもほんとに聞こえていないってのは
随分とびっくりする出来事でした。ほえええ。




PN6:37


2000年07月07日(金) ええと……。ガオヒルつゆだくで。

 

鏡が欲しい、とヒル魔は思う。
この男と一つになっている姿を。
まるで獣に襲われるようなこの有り様を、見て確かめたいといつも思う。
峨王とのセックスはとても濃厚で何もかもが必死になって、自分を観察する余裕もない。

体格差が大きいと顔も満足に見れないもんだと妙な所で感心する。
頭1つ分上にある峨王の顔が今どこを見ているのか。
どんな顔を向けているのか。
身体を散々に突き動かされ、そんな事さえわからなくなる。







「あっ……、くぅっ…………」
 力を抜かなければ峨王を身体で受け止められない。背や肩を支える事さえほうり出してヒル魔は峨王の腕の中でもたれかかった。自分と比べるとあまりに大きく力のある手のひらは芯が抜けたように揺らぐヒル魔をがっしりと固定して離さない。反射で起きる震えや痙攣等すらもその手のひらは吸収する。
 びくともしない両腕は、無造作にヒル魔の全身を揺すり続ける。ヒル魔が動く必要は無い。もっとも、動けるような体力もとうに搾り取られてはいたが。重さのない人形を扱うように峨王はヒル魔を動かし続けた。
「ふぁっ…、ぁんっ…………」
 荒く乱れた呼吸の為に胸は大きく上下する。ろっ骨の上から身体を鷲掴まれているため、呼吸は常に苦しいままだ。ヒル魔は苦痛に顔を歪ませ、歪ませながら切れ切れに喘ぐ。峨王の動きはシンプルで、握力に物を言わせた両手がヒル魔を縦に揺するだけ。ぐいと持ち上げ、頂点から落とす。
 何度もそれが繰り返されて柔らかくなったヒル魔の後孔は峨王の巨大な雄の芯を根元まで飲み込む。ヒル魔の体重を一点で支えるその接点は過度の刺激に悦び続ける。
 「……っ、んっ……」
 身体が沈むとヒル魔の内側は峨王のモノで圧迫される。膝と腕の中にすっぽりとヒル魔が収まる程、峨王の体格は巨大だった。奥へ奥へと押し入って来るその欲望もまた並を超える強さだった。侵入してくるそれを受け入れ、ヒル魔の内部は押し広げられる。一杯に広がった内側はただ上下に動くだけで弱いすべてを擦り上げられる。
 逃げ場など無い強い圧迫感。
 身動きがとれない程の密着さ。
 苦痛にも近い巨大な熱の侵食はヒル魔を内から喰い破りそうな勢いがある。受け止める筋肉は射精の毎に引きつり強ばり、締め付ける程にヒル魔がのけぞる。そこに力をこめるだけで引き付けのようにヒル魔は喘いだ。腹の中が峨王で満ち、注がれた精液は熱と共に最奥を濡らす。
 「あっ…、ぅあっ…………」
 峨王に抱かれている時は身体全部が性器になって、喉まで貫かれる錯覚が起こる。中に潜り込まれているのか、ソレにしがみついているのか、段々わからなくなってくる。大きすぎる峨王のモノはヒル魔を内側から喰らいつくした。
 ふとした刺激や反射で痙攣し、咥えた部分を締め付ける程に呻いてしまうのはヒル魔の方。
 ただでさえ狭い隙間が閉じて動く余裕がなくなるからだ。力を抜かなければ、喘げもしない。峨王が満足する時まで、ヒル魔ができるのは無抵抗で揺すられる事のみ。
 イイと思う所が強く圧迫され、脱力しているヒル魔の上体は愉悦に弱く何度もくねる。ゆるく腹を捻るだけで快感は膨れ、意識が白む。背後から突く峨王のものはヒル魔の腹筋を内側から愛撫し続ける。上下の動きにあわせるように、ソレはヒル魔の腹の形を変える。はたから見れば異様なのだろう、その腹の膨らみを思いヒル魔はまた薄く笑う。
 腹に波打つ不規則な肉の揺れ。感じるばかりで目では追えない。身体の細かいコントロールはとうに出来なくなっている。一度挿入されてしまえば身体は峨王に固定される。この体位では、ヒル魔は前に屈めもしない。峨王の侵入はそれほどに辛い。圧倒的な峨王の力は、ヒル魔に自由を与えてくれない。
 
鏡が、欲しい。せめてそう思う。

 最奥まで峨王が入り込み、ヒル魔の中を楽しむ間も無く今度は身体が持ち上げられる。引き伸ばされるように開いた内部に、一斉に逆の負荷が襲いかかった。
 「ひゃッ…、……んっ……」
 押し込まれる事に悲鳴を上げていたヒル魔の内側は、巻き付くように密着している。狭い場所から峨王が引き出ていくと共に、からみついた内壁も巻き込まれる。腹の中が外に引きずり出されるような感覚は何度経験しても慣れる事が無い。
 「ぃやッ……、やッ…」
 峨王が中に吐き出した精液は動きをなめらかにするはずなのに、外に漏れる隙間すら無い。それ程迄に、峨王の雄へヒル魔の内壁は貼り付いている。吸い付くようなその感覚に、背後で峨王の目が細くなる。
 スムーズに動かないヒル魔の身体を、峨王はねじながら持ち上げた。
 「ひッ、あぁ―――ッ」
 「一度、抜くぞ」
 何でもないように峨王が言い、軽々とヒル魔の身体が持ち上げられた。ずるり、と抜ける感覚と同時に中に残った体液が少し遅れて垂れ落ちた。
 「……ま、まだッ……」
 満足の前に訪れた突然の喪失感。ずる、と抜け落ちる瞬間の快感がすぐに不安に上書きされる。峨王の手はヒル魔の身体をぶらぶらと揺すった。中からまた精液が内股を伝って流れているのがわかる。今迄無理に広がっていた場所は急な変化にすぐにむずがる。
 何度もしている。何度もイっている。なのに峨王が身体から抜けるとたまらない程の空虚さがうまれる。身体が自由に動くなら、自分から腰を押し付けたかった。
 猫の子のように持ち上げられたヒル魔は峨王が動くのを待つしか出来ない。
 「が……、ぉう……」
 「ん」
 ねだるようなヒル魔の声にまた峨王が無造作に動く。
 「―――あああぁッ」
 行為に慣れ、弛んでひくつくヒル魔の中が一気に奥まで突き上げられた。
 「動くぞ」
 ぼそりと呟く短い単語。対比するようにヒル魔を襲った刺激の強さ。根元まで飲み込んだ場所は今迄よりもスムーズな動きを悦びながら受け入れる。沈み込む都度、突かれる都度に、ぐぶりとそこはイヤらしい音を立てた。

峨王を受けいてているその場所は、どんなに濡れて汚れているのか。
狭いはずの入り口はどうやって峨王を受け入れているんだろう。

 「やッ、ぃやッ、あッ、――ッ、――――ッ!!」
 縦に大きく揺らされるヒル魔の雄がほとんど残っていない残滓を吐いた。勢いもなく垂れるそれは峨王の動きでシーツに散った。今日何度目かの絶頂を迎え、意識を手放しかけるヒル魔は峨王の動きに泣き声を上げた。止まらない刺激の連続。達したばかりのヒル魔にとっては痛いだけの動きが続く。
 「や、だッ、ぁあッ、――ッ、ぃやッ」
 首をふっての拒絶も出来ない程、全身は疲労と快感に支配されてしまっている。荒れる呼吸に激しく動く胸は峨王に掴まれたまま。疲れる事を知らない峨王の両手が一層激しく上下に動いた。固くなった胸の突起は撫でられる事なく手の下で潰されていた。痛みと痛みだけではない刺激に常に胸が甘くを痺れる。

 「ひぃッ、ム…りッ、アッ、ぁんッ、あぁ…ッ」
 肩から先はだらりと崩れ、音を立てて峨王を受け止める腰は沸き上がる射精感を止められなくなる。
 射精の為に力をこめれば、摩擦と音が一層高まる。
 きつい。
 辛い。
 おかしくなる。

 それが全部たまらなく、イイ。

 

 峨王はどんな顔をしているんだろう。
 暴力的に自分の力を開放する時、この男はたまらなくイイ顔で顔を歪ませる。獣のように咆哮して、獣のように力で動く。手加減という枷を外され、破壊の許可を与えられた時、愉悦にも似た笑いを浮かべる峨王の顔が好きだった。
 顔が見たい。コレを楽しんでいるだろう、峨王の顔を見てイきたい。
 
 ぐちゅぐちゅと絶えまなく続く下肢の音は内側から響いている。自由に動く事が出来ないヒル魔はそこがどうなっているのかがわからない。だらりと力の抜けた身体を蛾王に揺すられるこの体勢がどんなものなのかわからない。
 溢れる体液で濡れて汚れ、尚も峨王に揺すられる姿。
 それはどんなものなんだろう。

 峨王の顔が楽しそうに歪みながら自分を犯している姿を見たい。
 峨王に揺すられるまま、力の抜けた自分を見てみたい。
 脳裏にそれを浮かべるだけで腰に甘い痺れが走る。
 まだまだ続きそうな行為のさなかでヒル魔の目は空ろに動く。



 薄れる意識の中、でかい身体に犯されて、喘ぐ自分に目眩を覚えた。

 

 

 







タイトルっていうかテーマつゆだく。
ヒル魔が露出ぎみなのはなんでだろう……。
峨王とヒル魔ってエッチしながらちゅうできるのかのう……。
こう、ぎゅーーっときて、ぐっとなってうちゅーーーって感じ!てのをしたかったんですが
おいらの力では書ききれんかったのでバックです。
ああ、3Pもかきたいかきたーーい!

ちなみにこのお話、元ネタは「アームズ」のジャバウォック。

もともとやまだは1人で二次創作が出来ないヤツです。
人様の素敵作品を見ない事には何も思い付かない人です。
白秋のように全く新しいキャラだったりすると
どこから手をつけていいのかわからなくて既存のキャラの
似たような所を感覚で繋いで張り合わせてしまうので見事に迷走してしまいます。

書いている最中に「ああ、力が欲しいかのシーンまんまじゃないか!」と
思ったのですがやまだにとって涼は攻めなのでナイトと隼人でもいいかなーとか
危うく封印した扉が開きかけます。

で、何の話でしたっけ。そうそう、支離滅裂になっちゃった!て事です。


2000年07月06日(木) がおまるひる!!!

ガオとマルコとヒル魔は一緒に暮らしています。
参考までに米痴態さんちの白秋部屋をどうぞ。
見ているだけで頭が弛むたまらない設定が盛り沢山です。
あたしはあの3人イラストだけで一昼夜瞳孔ひらいたまま
余迷い事を語れる自信あります。
ひょっとして米痴態さん、あんたやまだを滅ぼしに来たテロリストですか。
悔しい程にその策略にくるくる踊らされておりますが
いつかこの3人生活ネタで殺されるんじゃないかと思います。
以下に語られているのは頭のネジが全部ゆるんだ
ガオヒル絵チャからの抜粋です。


で、そこの上から2枚目。
なんだあの余裕ある奥のイケメンお兄さんと
一時たりとも離れたくない、まだまだ俺はやるぜって筋肉は!
服着てる最中までちゅうちゅうしちゃって、お前可愛いんだよ!
それにおつき合いしてるヒル魔もほんとにお前可愛いだよ!!!
そう、マルヒルガオの基本コンセプトはヒル魔かわいい!
ヒル魔甘えてる!ヒル魔懐いてる!ヒル魔さみしんぼになってる!
ヒル魔優しく微笑んでる!ヒル魔素直に好きって言っちゃう!
ヒル魔が恥じらいなくちゅうを自分からせがみにいっちゃう!!!!
そこが肝です。テストに出ます。必修ですから毎晩寝る前に唱えて下さい。

そういうわけでヒル魔はガオとマルコが超大好きです。
マルコもガオもヒル魔が大好きです。
常にそのなめらかな身体に触っていたいなと思っています。
テニスで言う所のホモなダブルスです。
いや、アメフトで言ってもホモなんですけど。

ヒル魔はガオの事でっかい家具か何かだと思ってて
のっかったり腰かけたり座ったりよりかかったり
そういうのが当たり前に自然にしちゃうぐらいいちゃいちゃしますよ!
ガオの筋肉触るの大好きですよ!
あとマルコはアイシールど21という作品の中での最大原則
「くぉーたーばっくの指は長くて綺麗で輝いてる」に基づき
端正でテクニシャンな指先の持ち主。顎とか耳後ろとかうなじとか
いやらしく触るのが得意です。

そいでですね。
マルコとガオは二人幼馴染みだったりしまして、
物心ついた時からすごく一緒なんですね。二人はマフィアです。
で、ヒル魔はガオに拾われてみたわけです。
マルコは「何でも拾って来るなっちゅーの」と言いながらも
ヒル魔が気に入って一緒に暮らす事になったわけです。

ヒル魔は二人が大好きです。
マルコは「ガオとやってるヒル魔」を見たりちょっかい出すのが好きで
ガオは「マルコとやってる時」がヒル魔は一番気持ち良さそうだなと思ってます。
二人の攻めは常に相手の事を考えていて
ヒル魔をひとりじめしたいけど、ヒル魔はアイツの事が好きなんだろうなと
考えております。嫉妬はしません。
なぜなら「アイツ」には俺だって惚れるもんなあと思ってるからでございます。

ヒル魔は、マルコとガオの二人が好きです。
でも、二人とは育って来た環境が違います。
二人の世界に時々入り込めなくなります。
それはとても悔しいなあと思っていたりしております。
二人はヒル魔という一般人を、ドンパチの世界に引きずりこんで
悪い事したなあとも思ってる訳ですがヒル魔はもっと巻き込め!と。
もっとお前らの中に入れろ!って時々感じる疎外感に涙しつつ
もっと俺を大事にしやがれ!とかむちゃくちゃな甘え方します。
ガオとマルコとヒル魔の3人は布団で寝ます。
本来はガオが真ん中だとベストなんですが
川の字で寝る時はヒル魔が真ん中に潜り込みます。寂しがりやです。
3人一緒がいいんです。

一緒に暮らすようになってからすぐに身体の関係になります。
でもガオはあのお体の通り、何でもどこでもでっかいので
マルコとはすぐにできるようになってもガオとエッチは困難です。
とりあえず指だけで四苦八苦してるんですが
ヒル魔はガオともエッチしたいんです。
おあずけしてるのも嫌だし、気づかわれているのも不満です。
マルコは何かを超越した素晴らしいテクニックを持っているし
ガオも優しくていつも満足させてもらっていますが
ガオのも身体で受け止めたいヒル魔は思いきった決断をします。

通販ででっかい玩具を取り寄せちゃいます!

二人が居ない昼の風呂とかでそれをちゃんと入れられるように
毎日練習してたりするんです。でも突然二人が帰って来たりして
焦ったりなんだりでちょっと自分で傷つけちゃうんですね。
マルコは薄々気がついてますがヒル魔には直接何も言いません。
ただ、いつも以上に優しく優しく長くほぐして、
ヒル魔が辛く無いようにします。

ガオはマルコが絶対にヒル魔に辛い事しないと知っていますから
どうしてそこに血が滲んでいるのかわからなくって悩んだりします。
辿り着いた結論が、「ヒル魔の浮気」だったりしてみて
ちょっとショック。けっこう嫉妬。
留守の間に他の男とやってるのか……!と勘違いのまま思い込み
ヒル魔に少し辛くあたります。

マルコっていうすごくイイヤツとエッチしてるのに
どうして浮気なんかすんだ……。そこんところが理解不能。
わからないまま割りとムッとしてエッチの時に御無体な事を命令します。

「俺が良いって言うまでくわえてろ」

ヒル魔は薄々ガオが怒ってる事に気がついていますが
それは「いつまでたっても俺のサイズに慣れないヒル魔」を怒っていると
そういう風に受け止める訳ですね。
頑張ります。というか、自分だってふがいないんです。
悔しいんです。痛いなんて思いたくないんです。
ガオのはでっかいけど、エッチしたいなと思っています。
顎が疲れるけど、せめて口だけでもキモチヨクさせてあげたいのです。

マルコはヒル魔がガオのために努力しているの薄々気がついていますから
ヒル魔の怪我した所を優しくケアするようにエッチします。
それんなマルコの様子を見て、ガオは「こいつはほんとに器がでかいな」と。
俺はまだそこまで達観できねえ……とかって思う訳です。

マルコがあんまりヒル魔に優しくしているから、
自分もちょっと反省してもういいぞってヒル魔を引き剥がします。
ヒル魔がガオの舐めていると後ろでマルコが動けないからです。
でも、ヒル魔はまだ納得いってなくて。
口だけでもガオをイかせてあげたいと思ってて。
ガオにひょい、て持ち上げられてもイヤイヤするように顔をつっこみます。
引き離されかけても舌とか指とかでむりに縋って
あれあれ、あらら、でお顔にべちゃ、です。

どろーんてした物を顔にへばりつかせながら、
ガオがイったて事を嬉しく思うヒル魔。
もっとキモチヨクさせてやりたいと
しつこくガオを舐めようとして、そこを後ろからマルコに揺すられて
ガオに上体を引っ張り上げられていやいやするように泣いちゃいます。

後ろからマルコに色々とされて、すごく気持ち良くなってる顔を
ガオに見せながらガオともこんな風にエッチしたい……て
ぽやーんて思っております。ヒル魔はガオとエッチしたいんです。
ガオはヒル魔の汚れた顔を見て、ちょっと反省してたりします。


そんな。気持ちのすれ違い3Pとか。
(このすれ違い3Pも絵チャの最中はほんの20行ぐらい)
'(二人で数百行語っていますからどんだけネタがぼこぼこしてるんだって話だっちゅーの)



これがさあ、もしも後で誤解とけたらどんだけガオが感激するっていうか
マルコも二人の結ばれる瞬間(恥ずかしい言い方)のために
すごく努力してくれると思うんです。
ようやくエッチできるようになったらヒル魔は感動で泣いちゃいますね。
あのでか太い首にしがみついて、嬉しい、とかガオが好きとか
もっとしてとかおねだり一杯してしまいますよ!

ガオは何と言ってもあの体格ですからでかい手ですから
どんな体位だって思いのままでむしろそのまま何だって有りで
片手で支えたり持ち上げたり固定したりがアリアリですよ!!
体位に関しましてはとりあえず伏せさせていただきますが
ガオはちょっと力入れるだけでヒル魔の肩とか脱きゅうさせそうなので
ヒル魔もエッチ命がけです!身体から力抜けてへちゃってなってしまいそうなのに
(最近のやまだは上半身崩れ萌え)
しがみついてないとおっこちそうでぎゅーーってしてるヒル魔が見たいでしゅ!

あとですねーー
すごく良い感じにエッチとかできるようになって
ガオはヒル魔がマルコとエッチして気持ち良くなってる顔も見るの好きで
マルコもヒル魔がガオとやってる顔見るの好きで
(そしてそういう顔のヒル魔とちゅーするのが好きだと思います)
ヒル魔は見られるおがすごく好きだと思うんですね!

ここでポイントはガオかマルコのどっちかがいない時です!
どっちかが出張とか(注:3人とも高校生だっちゅーの)で外泊で
それで夜は2人で過ごすの!どえらくすんげえたまりません。

ガオとヒル魔がエッチしてるとガオは必ずマルコに電話するんですよ。
で、電話でヒル魔に会話させるの。
「ぃ…ま、ガオとヤ……、てる……」
「んっ……気持ち、い…………」
そいでトロンとしてはいるもののマルコが居ないから寂しいって言います。
「マル、にっ……も、シて、ほしっ…………」
言うとだんだん居ないのが寂しくてマルコとエッチな電話に突入。
マルコがいなくてどこが寂しいのか。何をして欲しいのか。
ガオはどんだけ気持ちいいのか。でもマルコいないから早く帰って来てとか。

あんまり俺の名前呼んだらガオに悪いよとたしなめるマルコ。
マルコはガオが喜ぶような会話をあえてヒル魔にさせますよ。
どこをどうされてるの。
何をされたら一番気持ちいいの。
ガオの事、すき?

途中でヒル魔は馬鹿みたいに喘いじゃって会話が全然出来なくなるので
マルコはにっこり笑って電話を切ります。
ヒル魔はマルコとやりたくて泣いてんだろうなーって思うガオは
今日は俺と二人分しような、つって濃厚にめためたエッチな夜を過ごします。

逆に。
マルコがいるけどガオがいない夜。
ガオは夜の電話に出ません。
たまには二人でエッチすりゃいいだろって思ってます。
エッチ時間の前に軽く電話してもう寝るからって電源を切る男です。

マルコはすげえテクニシャンなのでヒル魔は翻弄されますが、
あのどんな体勢でしがみついてもがっしりとしたガオがいなくて
なんだかちょっと頼り無い感じ。
どんなに乱れてもぎゅってしてもらえる安心感がとっても欲しくて
いつもより自由になる手足を伸ばしてシーツつかみます。

マルコはガオがいないとヒル魔も寂しいんだろうなーって思って
今はとうに使わなくなった3人生活初期の頃のあのヒル魔が通販した
でっかい玩具を引っぱりだして来て、ガオの代わりはこれでしような、つて。
ヒル魔がもう駄目って言うぐらいしつこくこってりエッチします。


マルコが外泊から帰ってくるのも嬉しくてハグハグするだろうけど、
ガオが帰って来たらヒル魔はすごくぎゅってされてにへって笑いそう。
あの筋肉で息が詰まるぐらいぎゅってされたらヒル魔すげえ嬉しそう。

ガオはヒル魔の事を抱き締めたり持ち上げたりその辺のそばに起きすぎです。
テレビのリモコンが欲しい時は、リモコンを持ってるヒル魔を
膝の上にひょいしますよ!
髪の毛撫でたり臭い嗅いだりそういう事して落ち着く訳ですよ!
マルコもガオもヒル魔の髪の毛わしゃわしゃするの大好きだと思います!

3人ともおでこ出しルックだから朝とか洗面台前大変ですよ!
大忙しです!ガオは手ぐしで鏡なんか見ないのでしょうか。
しかしガオはスタイルも顔もかっこ良くてほんとに惚れる……。

途中呼吸困難になりそうだったんですが
が、ガオって絶対和服が似合うと思います……ばたり!
お正月とか、マルコとヒル魔が見立てた和服で
かっこ良く正装しちゃえばいい!マルコはスーツで決めればいい!
和服のガオが珍しくてすごくかっこよかったりして
もちろんマルコもびしっとしていて二人をぽやーんて見ていればいいです。
ガオの腹んとこのおリボンとかちょいちょいいじったりするといい!

そしてニューイヤーとか言うわけで挨拶回りに大忙しですよ!
部下が来たり、ドンのとこいったり!
ヒル魔はいつもお正月独りでぽつんと過ごしてきたから
礼服の用意なんてしてなくて、すごくびっくりしたりします。

来年はヒル魔、俺たちが服用意するからなってマルコがにっこり
してくれるんですがヒル魔はマルコ程胸板ないから
きっとスーツなんて似合わないし和風はもっとへんてこだし
いいよいいよって思っちゃいますよ。

それかスーツ着たら案外似合って、嬉しくてちょっとにへってすんですが
まあ一緒にいるのがガオとマルコですぐに脱がしたりされるわけで
皺とかよらないように急いですぽんすぽん脱いでみたり
脱ぎきるまえに悪戯されたら汚さないようにぐっと我慢してみますね!
かわいい!なんて可愛いんだヒル魔ったら!!!

3人で初詣でいったらチンピラとかにからまれて、
先帰ってろ、すぐに追い付くからってガオが二人を離れさせるんですが
ヒル魔とマルコは弱いもの扱いするなーって怒ります。
そしたらにこってガオが笑って羽織りをヒル魔にふわーーってかけて
「じゃあ、よごさないように持っていてくれ」って。って!ガオかこいい!!!
ガオがにこにこと暴れる姿をマルコと一緒に眺めながら
ガオのだぼっだぼな上着にくるまって少しあったかかったり
ガオの臭いしたりガオにぎゅってされてるみたいだったり
マルコに和服のヒル魔っちゅうのもいいねえって言われたり
お正月たまらん!姫はじめ最高だ!!!

ヒル魔が主張してとりこんだおこたでさーー。
蜜柑食べながら座椅子がわりにガオによっかかってさーー!
お屠蘇飲んでちょっとほろ酔いで、コタツの下でいちゃいちゃしちゃって、
マルコは足だけのばしてヒル魔の股間をうりゃうりゃすんのよ!
ガオはパンツまで脱がして後ろからうりゃうりゃすんだよ!

お正月って言ったら日本古来からの素敵なエロゲームたくさんありますが
ガオとマルコは帰国子女だから知らない遊びも一杯あって
ふくわらいとかヒル魔が教えてあげるんですけど
床に手と膝つきながら目隠ししてるだけで卑猥ですよ。
まともに遊びなんて出来ませんよ。
こんなの目隠しでできんのか?って質問に
なんとかなるもんなんだよってヒル魔が突っぱねるから

じゃあこれは

って楽しい3Pの始まりですよ!!
胸のとこ、どっちが右をいじってると思う?とか
これ、何指だ?とか口に指をずぼっとしたり
ちゅうしてるのどっちだーとか、
ここはどっちに触られてたい?とか
段々問題がエスカレートしてきたら、
ヒル魔も挑発すればいいですよ!

「上ばっかりじゃ、わかんねーよ」

中指と人さし指。動いているのはどっちの指なんて
そんな高度な遊びを楽しめ!もちろん使うのは下のお口だ!!
お正月ばんざい!日本に産まれてまじで良かった!!!

まあお正月はヒル魔何きてもこんな具合にすぐ裸だから
和服だったらガオとおそろい、スーツだったらマルコとお揃い、とか
そんな事で頭悩ませなくても平気だ!
みんなでエッチしてりゃあいいんだよ!


ガオマルヒル宅では宅配ピザ率とか高いと思われますが
タバスコがんがんかけるのはヒル魔ばっかりで他の二人は割りとシンプル。
エッチした後ベットルームでつまんだりしそうですが
ヒル魔はガオとかマルコに食べさせてもらえばいいです!
一人で2人分(以上)とおつき合いしているんだから
そりゃあお腹も減るってもんです。しっかり食べないと痩せちゃうぞう!
サラダだけでいい、食欲ねえ……て思ってるヒル魔さんの
お口に二人が一口ずつ持っていってあげて
茸嫌いだからエリンギのピザやだ、等と思っている顔に
好き嫌いはよくないぞ、と指までずぼっていれればいいです。
ヒル魔さんはすごく嫌な顔しながら無理に咀嚼して飲み込んだ後、
ソースに濡れた指までしゃぶってしまうように躾られてます!

普段の御飯食べてる時から、マルコにあーんってされてます。

箸使ってるヒル魔の隣で器用にフォークを使う二人。
ガオがもりもり食べてるのをよく喰うなあって思ってるヒル。
御飯食べ終わらないと片づかねえ、ってガオにつきあって
ほおづえ突いてるとマルコがあーーんって。
更には下の方でもあーーん、って。
しちゃえばいい!やっちゃえばいい!!

適当にじゃれあって、でもヒル魔は平常心を保とうとして
ガオにばれないように何でもない顔とかしていますよ。
もちろんバレバレなんですけどね!
ヒル魔のファズナーとか下ろしてから散々そこをいじった後、
恥ずかしい所で放置してマルコは仕事に出ていくといい!
後はガオがにやって笑ってどうした、マルコになんかされたかって
アフターケアを引き受ければいい!!!

ちなみに普段はスパッツとかなんですが
ムラムラもんもんエッチしたい時はヒル魔、ジーパンはいていると良いです。
わかりやすい意思表示ですよ!!!

ああ、なんか語り足りて無いっていうか
絵チャで発言した内容を1つ1つ辿っていったら
いくら書いてももの足りません!
お風呂とかさあ!雨の日の傘の位置とかさあ!
そういえば絵チャの最中にやまだはペットボトルに
けっつまずいてあたりを水微だしにしたんですが
床拭いて一段落さいた後に二人で同時に
けっつまずきネタとか語っていましたね。
どんだけネタに飢えてるんだっての。

ガオはヒル魔がよろめいたりつまづいたりしたらさっと抱きかかえて
ふわっとマルコにパスする習慣があったりしますね。
大事なもんとか壊れやすいもんとか何か良い物は
全部一度マルコに見せるって習慣があってほしいです!

マルコとガオはヒル魔のお誕生日に裸エプロンとか
メイドさん服でヒル魔をご主人様と見立てて一日中ご奉仕するとか
お風呂に入る順番とかガオは正座出来ないんじゃないかとか
靴はガオどんなサイズの履いているんだろとか

マルコが抗争相手に捕まっちゃってリンチされたのを
二人が救出するんですよ。無理しやがってとかガオに怒られて
ヒル魔が素性を調べあげて報復の準備とかするんですけれど
また目を離した隙にマルコ1人で報復しにいって
傷口広げて帰って来て今度はヒル魔にも怒られちゃいますよ!
ごめんってマルコは謝りながら、ヒル魔に抱きついて
いやらしく何度も耳元でご免て繰り返しちゃうんですよ!
ヒル魔はマルコのエッチな感じにタッチされるのがくすぐったくて
なし崩しに許すと思います!

マルコとヒル魔が喧嘩してもマルコは平気です。
「ヒル魔がすごく怒ってるけど、ほんとは俺の顔割りと好きだろ」
ガオとヒル魔が喧嘩してもガオはあんまりおたおたしません。
「お前、俺の事嫌いでも俺の身体は結構好きだろ?」
しれっとして言われてヒル魔は否定出来なくなってしまえ!
すげえ可愛く赤くなってしまえ!!!!


3人の家の中にあるトレーニング室で筋トレしてるうちに
むらむらしてきたガオさんが両手でダンベルダンベルしながら
ヒル魔を呼びつけてなさっちゃうとか
股間も同時に鍛えちゃうとか
ちゃんとダンベルの動きに合わせろとか
あと7セットあるからまだへばるなって命令するとか
両手使わないでエッチって事はヒル魔が全部準備したのかとか
そんな妄想が空から降って参ります。タスケテ!
1日24時間の他に、ガオマルヒル考えてる時間はノーカウントっていう
システムを早く取り入れて欲しいもんですね!










2000年07月05日(水) ローライズ

「疲れたんだろ、朝からお前立ちっぱなしじゃねえか」

廊下の真ん中で立ち止まったヒル魔を気づかうように武蔵が声をかけた。その見なくてもわかるにやけツラを思い、ヒル魔は聞こえなかったふりをした。
本当は座りたい。両足を締め付ける布の貼りはまるで一種の拘束具だ。

女ってのはまじでこんなもん履いてんのか。

細く見えるために強調されるデザインは窮屈だ。
立っていられるのがやっとで、膝を折り畳む事さえ痛みが走る。
固い布が肉を挟むのだ。
おかげで満足に動けもしない。

何より信じられないのがこの股上の浅さ。

ヒル魔が無理にはかされている女性もののジーンズは、下肢の茂みや尻の膨らみのほとんどを外に露出してくれている。上着を武蔵にとられている今、それらを隠そうにも手段が無い。あの鬚じじいを喜ばせないためにせいぜい気にしないふりをしているが実際尻は丸出しと言うに等しい。
手持ちのベルトはどれもはまらず、ボタンをしめているだけなので余計にタチが悪かった。

腰のあたりで布が張っているのでそう簡単には下がらないだろうがその上はやけに布地が余る。
ウエスト回りが若干ゆるく、その分後ろがばっくりを口を開けている。
要は、尻の半分をみせつけているようなものだ。

こんなもん履く女は馬鹿だな。

何度引っ張っても意味が無いとわかっていながら、武蔵の視線を遮るようにヒル魔はジーンズの後ろを上へと引っ張った。
当然、前を覆う布地がひかれるわけで、ヒル魔の股間に痛みが走る。
股間の居心地はこの上なく最悪だ。
ヒル魔の肌に密着するジッパー。トイレで用をたす事さえままならないほどそこは皮膚に近すぎた。

ぴったりと下半身を覆ってしまう布地のおかげで、ヒル魔のモノは逃げ場が無い。
露出しないよう足の間になんとか押し込めば、浅い股上が余計に浅くなる。
歩くだけで布地がそこを締め付ける。落ち着かない事はなはだしい。

こんなみっともない姿が、もう半日程も続いている。
朝起きて、今日は何をするつもりだと聞かれて適当に予定を口にした後、少し前の約束をちらつかされた。何でも言う事聞くって言ったよなあ。やけにからんでくる口ぶりと挑発的なその態度に受け流すのが面倒になった。何させたいんだと聞いた時、面倒がらずに逆切れりゃ良かったなとため息をつくがもう遅い。

あと、半日。
履くだけでいいと。
手を出さないと。
何もしないから普段通り日課をこなせと。
そう言われてその通りになった。

普段通り。
恥を強調して反応すれば負けるのはこっちだ。
武蔵の視線がどこを見ているのか。痛い程に感じながらヒル魔はいつもどおりの家事を片付けた。




台所での洗いもの。簡単な片付け。
背側と腹側。どちらも見られれば気持ちが波立つ。
ほとんど丸出しになっている下肢。濃い方ではない毛の部分は性器の近くにこそはえている。そこを外に出すのは異様な感覚だ。女性用のジーンズにはあり得ない股間のライン。武蔵が何を考えているのかわかるようで目眩がする。

後ろは尻の割れ目のほとんどが曝け出されている。頭の足りない色気狂いがこんな恰好で尻を振っている映像を頭のどこかが思い出した。FUCK MEという落書きが腹と背中に矢印つきだった。
まさに今の状況がそれにあてはまるわけだ。

湿った洗濯物をかかえ、ベランダにそれらを干す。
武蔵が驚いたようにこちらを見ているが気にはしない。
何度ベランダでヤったと思ってる。周りの建物に比べてここは十分高さがある。
余程の事でもない限り、外から見られる心配は無い。わかっていながら腰が引けた。
心持ち、腰を落としてのろのろと作業する。

足が重い。つま先が冷たい。
少し体勢を変え、いい加減椅子にも座りたい。
けれど、こんなジーンズでまともに座れる訳が無い。

関節部分が曲がるだけで、布が肉を挟んで締め付ける。
最も負荷を少なく座れる場所は武蔵が朝から陣取っているソファかベッド。
そうして、身体は自然に辛く無い体勢を取るだろう。

椅子に座っても一番関節を曲げなくてすむポーズ。
自然に両足は大きく開く。膝は極力曲がらないようにのびる。
武蔵の目線が届く所で、そんな格好をできる訳がねえ。

少ない洗濯物をのろのろと乾かし、次の予定は何だったと思い返す。
このジーンズじゃあ、掃除が出来ない。身体を屈ませる事が無理だからだ。

居間のソファでどっかりと腰を下ろす武蔵に背を向けているのに、その視線が背中に伝わってくる。
背中から腰へ、そして露出しているその部分へ。
ちりちりと皮膚が灼けるような嫌な感覚。たまらずヒル魔はまた後ろの布地を上へ引いた。
同時に前がきつくなる。籠の中も空になり、ヒル魔はそれ以上そこで時間をつぶせなくなった。
ため息をついてゆっくりと振り返る。

足の間は痛みを訴える。
少しでも布に余裕を持たせるために尻の筋肉に力を込めた。
歩く時なら不自然じゃねえ。不自然じゃ、ねえ、はずだ。
自分を騙すように言い聞かせた。
筋肉を緊張させればほんのわずか布が弛む。その弛みを前に引っ張って股間に余裕を作ってやる。
当然、力を緩めれば布も張る。意味の無い繰り返しだとはわかっていてもどうにもならない。

指は何度も後ろを引き上げ、その都度前は狭いと訴えるから。
武蔵がいる、その目の前で尻を何度も引き締めた。
嫌でもそこに熱を感じる。武蔵の視線が肌に刺さる。

あの馬鹿が、こんな些細な仕種に気がつかないと確信は出来る。


なのに。



自然を装おう息が荒れる。
服を着ない上半身は、一向に外の寒さを感じない。

肌が、こげる。
後ろを引き上げた訳じゃあないのに股間がだんだんときつくなる。
そしらぬ顔で歩く事さえ段々難しくなってくる。

何でもないようなつまらない会話を武蔵に振られて、適当に返す。
返しながらそっと盗み見る。
武蔵の目線は新聞を追っている。
肌はじりじり熱さを訴えているというのに武蔵はこちらを見てもいない。



じゃあ、この感覚は一体何だ?
今自分は何を受け止めている?



肌が熱い。腰も、胸も、露出している部分全部が。
過剰な程に何もかもを意識してしまう。
そこのリモコン取ってくれ、と言われて軽くしゃがむ時にさえ。
凝視されている、そんな気がした。

実際に武蔵はそれほどこちらを気にしていない。
ちらりちらりと顔をあげるが、常に見ているという訳じゃあない。




じゃあ、この感覚は一体何だ?





約束は夜まで。
今は昼。
どうせ馬鹿なてめえの事だ。
「いちゃいちゃすんのも日課の内だ」とかぬかしてやらかすつもりなんだろう。

いつからそんなに物わかりが良くなった?

丸見えなんだぜ?
丸出しなんだぜ?

いつもみてえにさっさと脱がして、昼でも居間でもおかまいなしに
俺にのっかりゃ良い話だろ?
何だってこんなまだるっこしい事をしてるんだ?

てめえは、俺とやりたいんじゃねえか?

いつも、なら。
そう思ってヒル魔は息を吐いた。
布地がきつい訳でもないのに、自然に腰に力が入った。

丸見えの腰。その、下の筋肉を。
何度も力を入れて抜く。
まるで、情事の最中のように。
何もされていないのが不思議な程に。

フロアの真ん中で立ち止まったヒル魔に武蔵がどうしたと尋ねて来た。
何でもねえ、とそっけなく返し、言葉通りに歩き出しだした。



また少し、ヒル魔の歩幅が狭くなった。








2000年07月04日(火) マスクでハッスル!

 


こいつらが現在マスク越しに愛をささやいたりマスクごしに唇はむはむしたり
髭の感触がわかるまで押し当てたりマスクの繊維をヒル乳にこすりつけたり
そんな特訓してるんでしょうか。ムサヒル2人のマスクだけ
異様に消耗激しかったりするんじゃあないでしょうか。
あんまり激しい事しすぎちゃってマスクに破れちゃったら。
そこから武蔵が指入れてしばらく外気に触れてないヒル魔の頬をくすぐったり
裂け目が広がってじゃあ今度はお前が舌出して舐めてみろと言いだしたり
使い物にならなくなったマスクをヒル魔が放り出したら
それを武蔵が拾い上げて

「こっちのスタミナもつけてみるか?」

いけない特訓は続くのですか。上でも下でも濡れマスク?
声が出ないどころか息も辛くて、普通に突き上げられてるだけで
息苦しくて意識薄れて、その上武蔵がマスクでちんこを縛っちゃいますか?

「お前、いっつも早すぎるんだよ」

口元の表情が見えない分、目元の色気ばっかりが強調されて。
白いマスクと赤い目尻。開いた口が息を吸い込むと、ぺた、と
吸い込まれるのが面白くて何度も何度も突き上げてやった。

ヒル魔の目線が朦朧と緩む。
ヒル魔の目尻が涙をこぼす。

苦しいと訴える反面、いつもよりよがるヒル魔。
それがはっきりとわかる目の回りのとろけた表情。
体の奥を突いている武蔵を必死に受け止めて、それを味わっている顔だ。
唐突にマスクを引きちぎりたくなった。
隠れている、と安心してヒル魔はさぞ口元を緩ませているんだろう。

「こういうのほんとに好きだよなあ」

俺がお前に酷い事してるんじゃねえ。
お前が、俺にねだってるんだよ。
わかってんだろ?
満足なんだろ?

お前は、こういのが好きなんだろ?

ひときわ大きくのけぞって、ヒル魔が体をふるわせた。
緩く縛っただけの先端から、どろりと溢れる物が目につく。
何度か中をこすってやるだけで、まただらりと垂れ落ちる。
なんでここまでエロい体してやがるんだ、てめえはよ。

まだ満足には遠かった武蔵はヒル魔に合わせず腰を振った。
これで終われるなんて甘いんじゃねえか?

試合が始まるまであと数日。
当然こういう遊びが許されるのは今日と明日。その後はおあずけ。

忘れられないぐらい、たっぷりしてやる。
一向に息が整わないヒル魔の腰を持ち上げて、武蔵は力強く腰を使った。









てめえ、マスクの下で、笑ってんだろ?
こういう時のてめえの顔は、ほんとにイイ面になる。

目尻以外が覆われているから目の表情だけが強調される。

もっと見せろよ。
もっとヤれよ。

そんなてめぇに惚れてんだ。











2000年07月03日(月) 南の島

 

高い気温と乾いた空気。暑苦しいだけの東京と全く違う過ごしやすさに
冷房などは似合わない。一杯にまで窓を開けて、そこから車内に風を招く。
海の青さ。海岸のまばらさ。そこに寝そべる人の肌の色。
改めて目で感じる異国の風景。

その異国の道路を堂々と無免許で走る後ろめたさは最初の内だけ。
もともと無許可は日本と同じだ、といつものように腹をくくった。


ホテルからこの海岸まで、文字どおり過密すぎる人数を乗せて悲鳴を
上げていた車内だったが最寄りの海岸でおおかたが降りた。
武蔵の隣で、栗田がゆったりと足を下ろした。
ついさっきまで、大吉という1年がそこに縮こまっていた。
カーブを曲がる都度、あちこちで痛い痛いと悲鳴が溢れ、
屋根からは歓声にもにた叫びが聞こえていた。

運転席のボンネットをがん、と叩いて合図を送る。
もう降りて来い。そういう意味。
少しおいて帰って来る屋根からの連打に、ヤツがそこを気に入っている事がわかる。
日ざしも強い。なんと言っても車は鉄だ。
やけどしない内に降りるべきだと武蔵は思ったが言って聞くような男でもない。
せいぜい振り落とさないようにゆっくり車を運転させた。


左車線の運転は恐い。ともすれば交差点等でうっかり逆へ侵入しかける。
とっさに車線を迷った時や、栗田の不馴れなナビにもたつくとき、
屋根の上からがんがんと叩かれる。
窓枠を叩かれれば右へ行け。
栗田の側から音がすれば左折しろ。
シンプルな指示だが確実だった。
最後には二人とも地図を後部座席に放り出し、
ヒル魔の音だけを頼りに走った。



「で、今向ってるのはどこだ?飯屋か?」
「僕ねえ、アウトレットで服見たいんだ」
「ふくぅ?」



海外の旅行と聞いても今一つピンと来なかった泥門のメンバーが
この国についたのは今朝。日本で言えば何時なのだろうか。
頭の奥が眠さを訴えるが時間は真昼。
事前に何の下調べもしなかった武蔵とは違い、
屋根上のアイツは御丁寧に偽造した国際ライセンスまで用意していた。
ここまでは、ほとんど引きずられてきたようなものだ。
栗田も状況は似たようなんもだろうと思っていた武蔵は意外な言葉に度胆を抜かれた。


目的地は、巨大な服屋。
天井近くまでみっしりと並ぶ普段着のサイズを見て、武蔵はなるほどと納得した。
どれもこれもがLサイズ。栗田がわざわざ来たがる訳だ。

「こないだ、デスマーチでアメリカに行った時ね、ヒル魔がこういうお店教えてくれたんだ」

籠の中につかんだ衣服を積み上げる。いくら安くても大丈夫か、と思ったが
一緒にいるヒル魔がうまいこと値切るだろうと考えてそっとしておく。
デスマーチではね、と栗田が気を使ったのか忙しくしゃべりはじめる。
何度も何度も繰り替えされた、栗田の視点からのアメリカ合宿。
ヒル魔からは特に何も聞かされていない。
あいつから見ればまた違った話が聞けるんだろう。

出発の前にヒル魔が顔を出した事だけははっきりと覚えている。
あの頃、何をしていただろう。思い出しついでにヒル魔を探した。
店の外にでも出たんだろうか、と奥まで歩いてようやくみつけた。

「そんなとこで何してんだ。」
「服見てんだよ」
「………それ、服なのかよ」

店の奥に店員の趣味が集まった様なコーナーがあった。
悪趣味というか個性というか、日本ではまずお目にかかれないような
奇抜な色や形や柄。それらをヒル魔が手にとって眺めている。

「……買うのか」
「サイズがねえんだ。1点ものだからな」
「そりゃ、残念だったな」

珍しく欲しそうにしているヒル魔には可哀想だが、
サイズが合わなくて何よりと思う。
普段からこいつの趣味はどこかおかしいとは思っていた。
否定すれば喧嘩になるから、黙って見守るのが平和のこつだ。
名残惜しそうに数枚の服を眺めているヒル魔に向け、
『それだけはやめておけ』と胸の内から念を送る。
 
「てめえは何も買わねえのか?」
「サイズとか、わかんねえしな」

武蔵自身、服に対しての興味は無い。
こういった店には付き合いで足を運ぶ程度に過ぎない。
することがなく、閑を持て余しているのが顔に出ていたのだろう。
何かを思い付いたらしく、ヒル魔の視線が忙しく動いた。

「よし、爺。これとコレだ」

放り投げるようにヒル魔がジャケットやシャツを選んで武蔵に放る。
ちょうど栗田がそこにあらわれ、武蔵が手にした服を見た。

「わあ、武蔵タキシード着るの?」

ヒル魔が見立てた品々は、いわゆる「礼服」一式だった。
後ろで栗田が嬉しそうに声を高める。

「蝶ネクタイって柄じゃねえよな。クロスタイの方がまだましか」
「着てみてよ武蔵!僕達デスマーチで正装したんだよ!」
「案外てめえは腹出てるから似合いそうだな」

ヒル魔を見上げ、栗田を見上げる。
手にした服を着るように期待する目線が2つ。

「……………着方、わかんねえぞ」
「手伝ってやる」

自分がその気になった時には、現金な程面倒見が良いヒル魔が逃げ腰な武蔵の退路を断つ。
ため息をつきながら渋る武蔵がヒル魔の足で狭い試着室に押し込まれた。












「その髪型でその服は笑えるな。よし、買え」
「着ねえもん買ったってしょうがねえだろ!」
「うわあ、武蔵かっこいいよ!」

三者三様の声を上げながら店の奥で盛り上がる。
ヒル魔の見立てにどんなものを着せられるかと内心びくびくしていたが、
シンプルで飾り気が無いフォーマルジャケット。
織り方で表面に光沢と模様があしらわれている。

武蔵が試着室で悪戦苦闘をしている中、どこから持ち出したのか
カフスだなんて小物までそろえられていた。
そで口を止められ、タイを締められ、カマーバンドさえも巻かれる。

「よく洋物のサイズがわかるな」
「武蔵ぴったりだね。そういうのも似合うんだねえ」
「てめえが洋物っつうと卑猥だな」
「ヒル魔はねえ、皮とエナメルのスーツだったんだよ」
「日本とサイズの書き方、違うだろ」
「数字覚えりゃ簡単だろ」
「僕はスーツだったんだけどね」
「………何で俺のサイズ知ってんだよ」
「誰チームがてめえのユニ発注してると思ってんだ」

噛み合っているようで噛み合っていないいつもの会話。それがどこかひっかかった。
いつものように会話は流れ、栗田の「お腹すいてきたね」との定番の発言。
どこで喰うか、などと二人が中心に会話を進めるが武蔵はそこに混じらなかった。
『誰がユニ買ってると思ってるんだ』
確か今は、姉崎が雑務をこなしているはずだ。

中途入学のため、学年頭の身体検査は当然ながら受けていない。
武蔵の今の身体のサイズは、どぶろくにさえも計られていない。
トレーナーとして、計って当たり前のはずなのに。

計ったようにサイズの合う服。それをそろえられるヒル魔。
ヒル魔にもサイズを計られた事は無い。


じゃあ、何でてめえは俺のサイズを知ってるんだ。


中華か、肉かと栗田と話を進める横顔を眺めると照れたようにふいと顔が逃げた。
こんな時、昔は耳まで顔を真っ赤にしたり
逆にキレて怒鳴ったりしていた。

中学の時とは随分違う。

ヒル魔はだいぶんふてぶてしくなり、それでも相変わらず変わらない。
栗田も相変わらずの天然だが、それでも随分と強気にもなった。



栗田の持つ籠の上に置かれた巨大な帽子を手に取る。
にやにやと笑い始めた顔を隠すようにそれをかぶった。
こんな顔をヒル魔に見られれば、さぞ機嫌を悪くするんだろう。
さっさと顔を隠したつもりだったが臑をヒル魔に蹴りあげられた。

「何にやけてやがる、エロ爺!」
「武蔵、どうせだからそれ着て帰る?」
「買わねえならとっとと脱げ!」

ヒル魔の罵声の合間を縫って栗田の声が場をなごませる。
中学の時のような。中学の時とは違う3人。
時折弱さも見せるけれど、前へ進む事を恐れなくなった栗田。
相変わらずこちらばかりを見ているものの、
それはてめえも一緒だろうが、と可愛げにふてぶてしさが混じるヒル魔。



二人が仲間を連れてアメリカに渡ると聞いた時、
そこに参加出来ない自分が酷く惨めな気持ちになった。
ついて行く事ができる訳が無い。
新しいキッカーやメンバーを探すのが本来の流れだ。
置いて行かれたからと言って文句を言える立場じゃない。

なのに感じた疎外感。
女々しい自分への嫌悪感。

結局、頭のどこかでヒル魔と栗田はいつまでも自分を待っていると思っていた。
ポジションを開けてくれている事に甘えていた。
それが二人にとってどれだけ重い「空席」だったのか。
わかっていながらわからないふりをした。

今思えば、やっぱり自分はこいつらに甘えていたんだと思う。
いつもこっちを見ている視線に気が付かないふりをしていたあの頃。



「飯喰うんだから、さっさと脱げ!」
「武蔵、それ僕のだよう!」


ちょうど1年前のあの頃。
また3人で笑えればいいと思って過ごしていた。
望めば手に入るような簡単なもんじゃない。
無責任な約束もできない。
必ず戻れるという根拠もない。

けれどもう一度、3人でこんな空気で笑いあいたかった。






多分あれから丁度1年。
薄氷を踏むような具合で事象が良い方へと転がった1年。



今、こうして。
下らない事で笑って下らない事で騒げる、こんな時に突然思う。
本当に、こいつらで良かった。


帽子をかぶって顔を隠した一番の理由は、こんな時にどきどき急に気付いてしまうからだ。





俺は本当に愛されてる。





ヒル魔が聞けば蹴り上げられるだろうし
栗田に言えば骨が折れるまで抱き締められるだろう。

中々口には出せないけれど、この2人には本当に感謝している。
本当に、こいつらで良かった。

試着室の中で急かされるままに服を脱ぎながら、
込み上げて来て収まらないものでにやける顔を引き締めた。



2年前より、1年前。去年より今。来年は何をしているんだろう。
柄にもない事を考えているのは多分ここが日本じゃないからなんだろう。

らしくもねえ。

大きく息を吸って、気持ちを落ち着けてからカーテンを引く。
武蔵を待っているヒル魔に向い、笑いかけると眉を潜められた。
栗田が籠ごとこちらに手を振る。







願わくば。
こんな、当たり前の光景が。
まだ長く続くように。

らしくないと分っていながら、武蔵はそれを強く願った。
一度は無くしたものだからこそ。
もう、失いたくないと思う。



ささと来い、と苛立つ声と急がなくても大丈夫だよと笑う声。


もう、失いたくないと強く思った。















06.1101


2000年07月02日(日) やまのかみさま

 

山の中で子供を拾った。足が動かないらしく、口減らしに捨てられたらしい。
どうしたものか考えてから、とりあえず小屋に連れて寝かせてみた。

自分で建てた粗末な小屋に、「誰か」がやって来たのははじめての事だ。
一人だったら気にもしなかった小屋の隙間や薄い布団。全部手作りだと思えばいびつな物さえ誇らしかったのに、今は少し情けない。
もっと丁寧に作ればよかった。隙間には泥を詰めて、しっかり塞ごうと思っていたんだ。とっておきの毛皮をかぶせて、幼い寝顔を見下ろした。

頬に残る泣いた跡。
抱き上げた身体はとても細くて軽かった。
足は冷たくて肉が薄く、まるで棒切れのような色と形だった。

何もないけれど、せめてお湯でも。
そう思ってかまどに湯を湧かし、こどもが目を覚ますまで何度も鍋に水を足した。
部屋の中がなんとかあったまったころ、寝床の中でぼんやりこちらを見ている目。

「目が、覚めたか」

恐い、と叫ばれるかと思ったが一度話し掛ければ止まらなかった。
もう随分長い事、誰かと話さえしていない。

「寒くないか」


こちらを見上げたまま動かない顔。見開いた顔の表情よりも、向けられる視線がどうしようもなく嬉しかった。
痩けた頬を撫でてやる。端の欠けた湯飲みを差出し、起き上がろうとするのを手伝った。
小さな手に湯飲みを握らせ、細い肩を両手で持ってやる。
口元からこぼれるお湯がたった1つの夜具を濡らすが、湯のみが空になった、たったそれだけが嬉しかった。


「まだ飲むか。まだあるぞ」


うなずいた子供から湯飲みを受け取り、中身を満たしてまた渡してやる。
注いだばかりの湯のみは熱いから、息をかけて冷ましてやる。
気がつくと、子供は泣いていた。
顔中を涙で濡らしながら、何度にも分けて湯を飲んでくれた。






子供の名前はヒル魔と言った。






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元気に、なるもんだなあ。
子供と思ったのに15だった。ガキだと思ったら娘だった。
足に良いと思って連れて行った温泉ではヒル魔は熱いと驚いて暴れた。
何を勘違いしたのだろうか、もがき暴れて湯に落ちてしまい、
ずぶ濡れのまま抱きついてきた。

薄い、薄い、薄い胸。

気がつかなかったふりをしてお互いぐしょぐしょだと笑ってやった。
ヒル魔が聞かされた「じごく」という所は、罪人を湯で煮るのだそうだ。
何でも無いとわからせるために、ヒル魔を抱いたまま湯の中に入った。
薄い布が水に透けて、暖まった肌の色に染まる。
気がつかなかったふりをして、怖がるヒル魔に教えてやった。

これは、温泉。
足が良くなる、あったかい風呂。

濡れた服をしっかりしぼるとびり、と情けない音がした。
後ろでヒル魔があまりに笑うので、ぼろにも近くなった着物を広げ、わざと情けない顔をした。
火を炊いて、服が乾くまで長い時間を湯に漬かっていた。
食べる物を持って来ておらず、少しひもじさも感じていたが
二人で湯の中で遊んで過ごした。指の先が気持ち悪くなったぞ、と笑うヒル魔が愛しかった。




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互いの服は1枚きり。
布団にしている布も粗末で、着るものに初めは困った。
毛皮は捕れても服には足りない。大きな動物を捕まえるのは危険が大きい。
以前は猪や鹿等に、ちょくちょく向っていったものだ。
ちょっとした罠をしかけて、手負いのヤツらを捕らえていた。

一人の時はそれが平気だった。今はそれが少し恐い。
もしも、ここで死んじまったら。動けないヒル魔はひとりぼっちだ。

それを考えるとこんな命でも惜しくなる。

こんな仕掛けで捕まえるんだ、とヒル魔に教えてやった所、
すぐに仕組みを理解してもっと良い物を考えてくれた。
ヒル魔が考えて、俺が作る。
家の中はあっという間にいろんな道具が出来上がった。
失敗する事は多くても、それを見下ろして考えているヒル魔を見ていると嬉しかった。





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ヒル魔がやってきて、どれだけたっただろう。
この間な気もするし随分長い事だと思う。
会ったその日のうちから毎日がとても楽しかった。
だから、恐い事も増えた。

もしも、ヒル魔が山を下りたら。

山奥の生活はとても辛い。
人がいないから退屈が多い。
雨が降れば外には出られない。
風が強ければ家を補強するのが精一杯で
壊れた部分をまた修繕する。
生活は楽しくても、中々楽にはならなかった。

2人分の食料。

村にいれば少なくとも、野菜や麦が食べられるはずだ。
ヒル魔は何も文句を言わない。けれど、口に出さないだけかもしれない。

本当は帰りたいんじゃないだろうか。

村での生活をヒル魔は何も語らない。
だからこちらも何も聞かない。
思い出して、恋しくなって、ある朝ヒル魔がいなかったら。
そんな夢を何度も見た。隣で眠る確かな体温を確かめるように抱き締めた。

一緒に暮らしてどれだけだろう?
一人で暮らしたのはどれだけだったろう?

何年も、何年も。
俺はこの山に一人だった。
それを辛いと思った事は無い。寂しいと感じた事も無い。

ヒル魔に会って、それが崩れた。
多分、山でこいつを見つけた時から、しまっておいた色んな気持ちがどうしようもなく溢れちまった。
何年もかけて作ったはずの「一人で暮らしていた事」なんて忘れちまった。

もう、戻れねえ。
もう、戻りたくねえ。




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秋も終わりが近付いた頃、里で祭りが始まった。
さすがに笛や鐘の音までは聞こえないものの、太鼓の音が遠くに響く。
紅葉が下りた村はさぞ賑やかなんだろう。
ヒル魔の里恋しさに火がついたらどうしようと思った所でしがみつかれた。
あれはイヤだ、とヒル魔が泣きじゃくる。

どうしたものか、訳がわからない。
片時も離れようとせず、ひたすら里を怖がるヒル魔。
あの音がいやだ、と何度も繰り返すヒル魔は祭りを知らないんだろうか。

慰めようにも理由がわからず、怖がるヒル魔の髪を撫でてやった。
薄く綺麗な色の髪の毛。柔らかなそれを何度も撫でる内に、とある事を思い付いた。

ヒル魔は、この音がなんだか知らない。
教えてやるのは容易い事だ。
正体を知ればヒル魔は落ち着く。
2度と怖がる事はなくなる。

けれど、祭りに興味を持ったら?
人が集まる事が楽しい。それをヒル魔が思い出したら?

撫でる手のひらがいつのまにか止まる。
頭に渦巻く強い気持ち。これは良くない事だという自覚がある。
「あれが何なのか、教えてやろうか?」
顔を胸元に埋めた頭が小さく頷く。

口の中に沸いた唾を飲む。
「今、里は大騒ぎなんだ」

ヒル魔は恐ろしそうに身をすくませている。
「皆が手にたいまつを持って、村の中を走り回っている」

恐いと怯えているヒル魔への語りかけは、いつのまにか低い声になる。
「一度里から出て行った子供達が、戻って来ないか探しているんだ」

腕の中の小さな身体を、優しく抱き締めているつもりだった。
「近くに戻って来ていれば太鼓を叩いて追い出してる」

いつのまにか力が入る。もしもこの小さな身体がある日突然いなくなったら。
「どこかの物陰に隠れていないか、火を振り回して探しているんだ」

ヒル魔が元いた里に帰ってしまったら。
「二度と戻って来るなって」

また、一人の毎日に戻されたら。
「二度と里には帰って来るなって」

腕の中にすがる子供。けれどその小さな身体に俺もまた縋っているのだ。
「見つけたら酷い目にあわせるぞ、ってな」

ヒル魔は涙をぽろぽろとこぼす。
「………お前は、里に帰らないだろ?」


しがみつく腕の力が増した。
それがどちらのものともわからない。

「太鼓の意味はな」

祭りを怖がるヒル魔より、それを慰めるこちらの方が余程の怖がりで意気地が無い。

「戻って来るなって知らせてるんだ」

着物の端を握っている小さな手のひらを上から握る。
口を開く程、嘘がこぼれる。
ヒル魔を怖がらせるばかりか、ここに繋ぐための良くない言葉だ。

「村のヤツらは、お前の事が嫌いなんだ」

俺は、お前を離したくないんだ。
俺は、お前と離れたくないんだ。






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膝の中でヒル魔は泣きつかれて眠ってしまった。
きっとこれからも嘘をつくだろう。
ヒル魔を何度も騙すだろう。

ヒル魔が言っていた「じごく」って言葉が頭をよぎる。

だってもう一人はいやだ。
ヒル魔がいなくなるのが恐い。

痩せた身体を布団に寝かせて、小さな頭をまた撫でてやる。
いつかヒル魔にばれるかもしれない。
嘘つき、と怒鳴られるかもしれない。
里に戻れなかった事でヒル魔は恨みを言うかもしれない。




だけど、ヒル魔を手放したくない。



なんだってしてやる。
山の中ならどこにだって連れてってやる。
食べたい物を食べさせてやる。
毛皮ももっととってやるし、家だってもっと大きくしてやる。

できるだけの事は何だってする。



だから。


だから、ヒル魔。
俺と一緒にここにいてくれ。



胸の奥で何度も何度も、何度もヒル魔に頭を下げながら
合間に同じ言葉を繰り返した。


嘘つきですまねえ。
騙しちまって、本当にすまねえ。


でも、お前にそばにいて欲しいんだ。






-----




一度知った温もりを、手放したく無いと思うだけの
とても 臆病で怖がりで、不器用な所がそっくりな二人。

二人が内に持つ同じ願いが、口に出される事はなかった。














2000年07月01日(土) とりっくおあとりーと

 
お菓子くれなきゃ悪戯するぞ!







1年でヒル魔が一番楽しみにしている行事。
「きぎょーのもくろみ」が溢れているクリスマスより
妙な食べ物ばかりが並ぶ正月より
他力本願な七夕よりも面白くてやりがいのある10月の末日。

今年も武蔵をこきつかって、大掛かりな準備をしていた。
武蔵の肩にヒル魔がまたがり、その上から仮装をかぶる。
誰の仮装より一番目だって一番恐くて、注目されるはずだった。

なのに、あの馬鹿が。
武蔵の馬鹿が風邪をひいた。




馬鹿の取り柄なんて馬鹿だっていうのに。
普段どれだけ薄着をしたって冬でも風邪をひかないくせに。
突然倒れて熱を出して、あっというまにヒル魔は部屋から追い出された。
インフルエンザ。
武蔵の癖に。

武蔵がいなけりゃ、どんな準備も意味が無い。
他のヤツが中身になると名乗り出たが武蔵じゃなけりゃあつまらない。






二人でこもる物置きの中の完成間近だった仮装を片付け、ヒル魔はとぼとぼと外を歩く。
風邪がうつるからと言われて、一緒の部屋にいることも出来ない。
じゃあ、何のためにあんな痛い注射を打ったんだよ。
痛いだけで損ばっかりじゃねえか。

通りを歩く子供達は楽しそうに笑い声を上げる。
あの中で誰より騒ぐつもりだったのに。
悔しいのと寂しいのとが内で混ざって言葉も出ない。
キャアキャアと騒ぐヤツらを見るのが癪で、ヒル魔は自然と大通りから外れて歩いた。
家に帰っても閑なだけだ。楽しそうにチャイムを鳴らしてやってくる近所のヤツらがうるさかった。
しばらくこうやって時間をつぶそう、と思った矢先に首筋をつかまれる。

「ヒル魔ちゃん!」

ヒル魔を怖がりもせず、あつかいずらいと嫌な顔もせず、むしろ積極的に関わって来る女教師。
そんなヤツは1人しかいない。ヒル魔の目の前にしゃがんみこみ、目線をあわせてくるのは姉崎センセイ。

「こんな時間にこんな所で、一人だなんて危ないでしょ?」

返事をするような気分でもなく、黙っていると両手をひきずられた。
おおかた、子供達が羽目を外し過ぎないようにパトロールとやらをしていたんだろう。
こんな簡単に捕まるだなんて、本当に今日はついていない。

「どうしたの?こういう遊び、好きでしょう?」

そばにいた子供達の集団の中に無理矢理押し込まれてしまう。
隙を見て逃げ出しかけたヒル魔の頭を姉崎がつかむ。
離せ、とじたばた騒いでいると、口の中に何かを押し込まれた。

「…………?」

大きなざらざらした丸いものは舌で触るととても甘かった。
すぐに口から吐き出しかけると、すかさず次を押し込まれそうになる。

「ヒル魔ちゃんは好きじゃなくても、お兄ちゃんは甘いの好きでしょ?」

姉崎の言葉はヒル魔の胸にずしりと沈んだ。
そう、武蔵は甘いものが大好きだった。

「その飴が小さくなるまで、大人しく皆と一緒にお家を回りなさい。
お菓子を持って帰ったら、お兄ちゃんきっと喜ぶわよ?」

うまく丸め込まれたような気がしたが、ヒル魔はおとなしく集団の中で家々を回った。
何の準備もしていなかったので、もらった菓子を両手で握りしめる。
もらえるものも大したもんじゃない。駄菓子やクッキー、飴がほとんど。
大きな袋を下げている子供と、もらった菓子を交換してヒル魔は全部を飴に変えた。
喉が痛いと言っていた武蔵。これだけあれば喜ぶだろう。
紙に包まれているのではなく、ザラメが表面を覆った大きな丸い飴を選んで集めた。
手のひらで握るとじんわりと溶けて、それは他の飴とくっついた。

いやいやながら舐めていた飴がようやく小さくなったころ、ヒル魔の両手は満足する程の飴を握りしめていた。武蔵は、どれだけびっくりするだろう。
良い具合に時間も潰れて、ヒル魔はにやにやしながら家へと走った。
武蔵に会うのが楽しみだった。










音を立てないように玄関を通り抜け、静かに静かに2階に忍び込む。
武蔵とヒル魔が普段寝ている子供部屋は、廊下の突き当たり。
ヒル魔は立ち入り禁止を言い渡されている。見つかれば飴を手渡すチャンスが消える。
電気の消えた廊下を歩き、静かに静かにノブを回す。
飴を握りしめた両手では非常に困難な作業だったが額に汗をかきながらヒル魔はそれをやりとげた。

真っ暗な室内。
2段ベットの下を目指す。
足音はじゅうたんが吸い取ってくれると分かっていてもヒル魔は更に足を忍ばせた。
武蔵はどれだけ驚くだろうか。
顔を見るのも久しぶりだ。
想像するだけで顔がゆるんで、口の中から笑いが漏れる。
握りこぶしの両手ではそれを止める事が出来なかった。

「ヒル魔か?」

真っ暗な闇。
寝ている武蔵の顔にはタオル。
なのに、ばれた。声だけでばれた。
ヒル魔がそばにいると、武蔵はわかっている。

それが、嬉しい。

こらえきれずにくすくすと笑いながら最後の数歩をヒル魔は駆けた。

「なんでオレだって分かるだよ!」

押し殺した声は上機嫌に満ちている。
暗闇に慣れたヒル魔は武蔵がこちらを見ているのがわかった。
武蔵の目の周りが少し腫れぼったい。
武蔵はとても寝相が悪い。おまけにかなり落ち着きが無い。
長い時間をベットの中で過ごしたために、、とても退屈だったんだろう。
布団もシーツもぐちゃぐちゃに絡まっている。

「今日、ハロウィンだったんだぞ!」

得意げにヒル魔は武蔵に教えてやる。武蔵は何かをしゃべろうとして、けほけほと咳き込んだ。

「てめえがいないからあの仮装は来年に持ち越しだ!」

申し訳無さそうに武蔵の太い眉が下がった。
武蔵だって楽しみにしていた。だから、来年は今年の分まで派手に楽しもう。

「今年はしょうがねえ。コレでも食べて早く治れ」

武蔵がベットの上で上体を起した。縁に背中をよりかからせて、定まらない視線のまま笑っている。
目の前に両手を突き出してやる。声に出さず、分からないと表すように武蔵がゆっくり首をかしげた。
ヒル魔には強く感じる甘味の臭いも、今の武蔵には届かないようだ。
武蔵にも見えるように顔を寄せると、握ったげんこつの隙間を舐めた。

「うえーーー。甘ぇ……」

わかったか、と言うようにヒル魔は両手をぱっと広げた。




広げる、つもりだった。





小さく柔らかい両手の指は、べたつく砂糖で固まっていた。
どんなに強く両手を振り回しても指ははがれず飴が取りだせない。
せっかく武蔵に持って来たのに。せっかく、お土産を集めたのに。
今日は何一つ上手くいかない。いっそ両手をベットの柵に打ち付けてしまおうかと思った時。
悔しさに顔をゆがめるヒル魔に向って武蔵が片手で手招きをした。

こんなみっともない所を近くで見られるのは恥ずかしい。
けれど武蔵は静かに手招く。こっちにこい、と身ぶりで呼んでいる。
おとなしく近付くと、武蔵の両手がヒル魔を包んだ。


武蔵の両手はとても熱かった。


熱のせいなのか、ヒル魔の指先が冷えているからか、暗闇の中で武蔵が触れてくる部分は、どこもかしこも熱かった。
しばらく握りしめられると、手のひらがじわじわと汗をかく。
飴が、溶ける。指が離れる。武蔵の両手も一緒に離れる。

それは、イヤだ。

ヒル魔は両手を握りしめた。
手の中に滲むのは飴か、汗か。
今さらながら、それはあんまり綺麗じゃないと気がついた。
良い考えだと思ったのに、なんだか見せるのが恥ずかしくもなる。

どうしよう、と思いつつも手を握り続けていると武蔵がダメか、と目で尋ねる。
駄目だ。こんな飴、武蔵に食べさせられる訳がない。
ぶんぶんとヒル魔が首を左右に振ると武蔵の眉がまた下がった。

もう、いい。手を洗えばはがれると言おうとしたヒル魔の喉が凍り付く。
武蔵の顔が、ヒル魔の指先に覆いかぶさっていたからだ。






とても熱くて、柔らかな湿り気が指先から指の付け根までを撫で下りた。
今までの比ではないほど顔が火照っているのが分かる。


熱いものは武蔵の舌、だ。
湿ったものが、武蔵の唾液だ。
たまに当たる、固い部分は武蔵の歯。手の甲をくすぐるのは武蔵の息。



何もかもがとても熱い。




ヒル魔は暗闇の中で身動きも出来ずに立ちすくんだ。
武蔵が、何をしているのか。どうしてそんな事をされているのか。
わからなくて混乱したまま、ただただ、両手を握りしめていた。

指を離せば、終わってしまう。

この熱い感触、柔らかな往復、合間に聞こえる武蔵の息づかい、肌に当たる刺激、溶けた飴を啜る音。
それが、全部終わってしまう。

背中を走るのは何だろう。
どうして足が震えているんだろう。
こんな顔を見られたくなかった。
とうに指は離れているのに、まだ握りしめているのがばれなくて良かった。


ここが暗闇で本当に良かった、とヒル魔は思った。


指と指の間まで鼻を突っ込んでいる武蔵の口から、小さく「甘い」と言葉が漏れた。









暗闇。
空気が隠った息苦しい部屋。
無言の二人。
時折上がる、なめる音。啜る音。それだけの時間。
















とりっく おあ とりーと。

お菓子くれなきゃ、悪戯するぞ。







やまだ