言の葉孝

2013年04月30日(火) ニコニコ超会議が超えるもの

 一昔前は歌い手はライブをするものと相場が決まっていたし、文章や漫画を書く人は同人誌即売会で作品を発表するのが常道だった。それがインターネットの進化とともに、自己表現の場はネット上に移動するようになった。ニコニコ動画もそうした自己表現の場の一つだ。

 そのニコニコ動画を地上に再現する、というコンセプトで開催されるイベントがニコニコ超会議である。驚くべきはその出展ジャンルの広さだ。
 おなじみの「歌ってみた」「踊ってみた」はもちろん、先日生放送された電王戦の熱気が覚めやらぬ囲碁・将棋も盛り上がっていたようだ。挙句の果てに自衛隊は高機動車を展示し、さらに政界からは各政党がパフォーマンス合戦を繰り広げ、そのために総理大臣まで出向いてきたというのだ。演説を行う安倍首相の前にコスプレイヤーが集うという光景のなんとお祭り的なことか。

 もとよりメディアの中で最も民衆に認知度が高いのはテレビ、つまり動画であるから、このような参加者層の幅もうなずける。ニコニコ動画のファンはもともとノリがよく、元気だ。それらは興味のあるなしを超え、心を一つにする力があるのではないか。ニコニコ超会議はそんな期待が抱けるイベントだった。


2013年04月23日(火) 電脳戦に見る悔しさとは何か

 将棋と言えば駒の動かし方を多少知っているくらいだ。それでも強い悔しさを感じる。まして電王戦を戦ってきた現役のプロ棋士達の忸怩たる気持ちはいかばかりか。
 「途中は指しやすいと思っていたが、どこでミスをしたのか分からなかった」とは、電王戦で最終局を三浦弘行八段の敗戦の談である。これまでのような時間切れや疲労によるミスを突かれた形ではない。ベストを尽くした上での完全な敗北なのだ。

 理論で言っても、プロ棋士は秒に数手先を読むが、コンピューターは秒に億以上の手を読む。あらゆるパターンの将来を網羅し、勝てる道を確実に選べるのだ。コンピューターより人間を有利にしてきた経験や勘を、もはやコンピューターの演算能力は凌駕しようとしている。
 悔しいのはそこだ。超えられたらもう追い越すことは叶わないだろう。コンピューターは演算装置の性能を上げれば上げるほど確実に強くなる。人間はいくら修行しても強くなれるとは限らないのに。

 そしていつかコンピューターは、将棋の最善手を突きつめるのだろう。その先にあるのは絶対的な勝利か、必ず引き分けになる未来だ。
 この電王戦での敗北は、その行き止まりが垣間見えたようで、それがとても悔しい。


2013年04月16日(火) 在宅勤務禁止令

 1か月前、米ヤフーに衝撃が走った。全社員にとある通達が来たためだ。その通達とは6月から全社員にオフィスに出社の上働くように、というもの。言い換えれば在宅勤務の禁止である。ノマドワーカーの生みの親のような国の通達とは思えない。

 基本出社勤務が当たり前の日本人としては悪いことではないと思う方も多いのではないか。特に筆者などは家にいると怠けるのが目に見えているのでオフィスで仕事したいと思っている人間だ。
 実際米ヤフーも仕事を怠ける人物はもちろん、出社しないで別の会社を立ち上げていたというレベルの高い不届き者もいたことが在宅勤務禁止令につながったようだ。
 また、実際に肩を並べ、面と向かって仕事をすることの効率性や想像性を説く意見も多い。米国のオフィスでは一席ずつ衝立等で仕切られた席で仕事をするのが一般的だが、最近は仕切りが低くなり周りの顔が見えるようになっているオフィスもあるのだという。

 一方で、在宅勤務を必要としている人々の「子供の世話がある」「遠すぎる」等の言い分も分かる。これらは正当な理由なので、日本的な考え方では対処してしかるべきだが、そこをあっさりと切り捨てられるところはさすがにアメリカだ。


2013年04月09日(火) 持ち帰りピザのススメ

 少し前のことだが、ネット上で「日本で異様に高いと思うものは?」というアンケートがあり、その輝かしい一位に選ばれたのはデリバリーピザだった。大人一人分、Mサイズで大体2500円だ。2食に分けるには少なく、分けても1食1000円強になるため、一人で食べるにしては割高すぎてなかなか手が出ない。

 それを解決してくれるのが持ち帰り割引サービスである。ドミノピザでは持ち帰りで2枚頼めば1枚無料、実質半額になるのだ。1枚だけ買う人にも持ち帰りでは20%割引してくれる。これだけ割引率がいいのはやはりデリバリーする必要がないからだろう。配達する労力を考えれば半額にしても利益は確かに出そうだ。シカゴピザやピザーラでも持ち帰りによる割引は20〜50%引きと大変気前がいい。
 割高感も1枚が半額以下となると話は別だ。2枚だと3回位には分けて食べても量的には十分なので1食800円強になる。これでもまだ高い気はするが、定食メニューだと思えば我慢のできる価格だ。

 ピザというものはスーパーで売られている冷凍ピザは何か物足りず、贅沢でも店屋物のピザは無性に食べたくなる代物だ。そんな時はデリバリーならぬ持ち帰りピザで楽しみたい。


2013年04月02日(火) 元供血犬の大往生

 我が家で飼っていた元供血犬が御歳15歳の大往生で先日息を引き取った。供血犬というのは病院で飼われ、必要な時に献血をする、盲導犬などと同じく役割を持った犬だ。やんちゃで名高いラブラドールレトリバーだが、おやつ欲しさにせよ、献血時は自ら診察台に乗っていたと聞いている。

 妹がこの病院で働いていた関係で10歳で引退した後は我が家の犬として余生を過ごしていた。病院では少しの散歩と食事が最大の楽しみの生活だったらしいが、両親は愛犬家であり、広いリビングに寝床を得て、一緒に旅行に連れて行ってもらうなど、それまでとは打って変わった生活を楽しんでいた。
 亡くなる前の一年余りは後ろ脚の故障で歩けなくなっていたが、それでも両親は台車に乗せてでも外に連れて行く、大きな体を頻繁に寝返りをうたせる等実に献身的な老犬介護ぶりで、それが証拠に一年以上寝たきり生活をしていた老犬の遺体には床ずれ一つできていなかった。実家の事なので身内自慢になるが、この老犬は本当に余生を過ごすのに最高の家を選べたと思う。

 役割を持つ犬はろくな報酬もなく懸命に働いてくれている。せめて余生は皆、優しい家に引き取られ、幸せな余生を過ごしていてほしい。

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