極彩色、無色
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2005年04月24日(日)
もうそんなに経ちますか。
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『お母さんがいなくても、なんとかなってくもんなんだな』
そう言った父は、それでもどうしようもない部分もあると言外に言っているようだった。
母が亡くなって、3ヶ月が過ぎた。
母がいないことに、もう慣れ始めている。
“生活する上で、物理的なものは”という前置きをつければ、ね。
でも、それでも精神的にだって少しは変わったはずだ。
深く考えないことが、身についた。
深く落ち込まないこと。
深く悔やまないこと。
少しでも気持ちが沈むと、全く関係ないことで凹んでいても、いつの間にか横滑りして母のことを考えている。
だから、気分が沈むようなことはしないこと。
背中を丸めないこと。
深呼吸すること。
あんまり父を怒らないこと。
世間知らずで、頼りない父に、カッとなることも多いし、それ故に母の苦労も大分わかるけど、
怒った後は怒った自分への自己嫌悪に陥っては気が滅入るから精神衛生上良くないとやっと納得した。
納得、実行するまでに1ヶ月かかった。
それで、怒るのはなるべくやめることにした。
代わりに思う存分笑ってやろう。少しくらい恥をかけ。
そしたら、少しは頼りがいのある親父になってくれないだろうか。
その前に私がしっかり者になりそうだけど。
『俺もあと30年もすれば死ぬんだもんな〜』
父は時々そんなことを言う。
早く母の元に行きたいのだろうか。
そう思ってもしかたないけど。
そうはしないことはわかってるけど。
聞いてる身としては、何て返答していいのか困るよ。
『私だってさっさと行きたいさ』なんて答えたら、親父はなんて言うだろうか。
まさか親子心中を誘いはしないだろうが。
私は順調に平均寿命までいけば後60年は残ってるっていうのに。
だから、寿命長過ぎだって。
だそうな。
暇な時間ができたら、取り掛かるそうです。
それまで後何年かかることやら。
そして、こんなことも言っていた。
『お母さんはイカロスみたいなもんだな』
あのロウで羽を作って太陽に向かって飛んでいった人
どこがどう似ているのかわからないけど、父には思うところがあるのでしょう。
警察の司法解剖の結果が出た。
車にひかれるまでは、生きていた
生きていた
あ、そう。としか思わなかった。
今更、それを聞いてもどうしようもない。意味がない。
余計に、虚しい。
悔しい。
もしかしたら、橋から落ちた後、後悔していたかもしれない。
意識があって、痛みで動けなくて。
でも、やっぱり死ぬのはやめよう。
家に帰ろうと、思ったかもしれない。
その思いを、車が引き裂いたのかもしれない。
車の前後輪、2つで、頭を轢かれて。
意識があったかどうかは、実際はわからないのだろう。
でも、想像してしまう。
痛かっただろうね。
どんな思いで、橋の前に立ったのだろう。
どんな思いで、橋に登ったのだろう。
どんな思いで、自殺を決意したのでしょう。
母が死んでから2週間ほどした頃、
父が、母の夢を見たそう。
そこで、短い会話をしたらしい。
『痛くなかった?』
本当に、そうだといい。
今も、笑顔でいてくれるといい。
感情が肥大する。
剥き出しで、威嚇する。
これ以上近寄るなと、警告を。
頭と、身体と、感情は違うものだと、実感する。
全くの別物だ。
あれこれ考えて、理解して、納得してるはずなのに、
その結論に、腹が立つ。
どうしようもなく、感情が高ぶる。
抑えがきかない。
こんな時は、一人で部屋にこもって、誰にも会わずに、
一日を終えたいのだ。
朝の陽射しを浴びてから、夜の帳が下りてなお、布団にくるまっていたいのだ。
それを、許さないと言うなら、私が怒りキレようが、放っておいてくれなくては。
それすら、留めようというのは、虫が良すぎやしないか。
それとも、こんな状況に甘えている私がいけないのか。
こんな、感情を、一人で、どう処理しろというのだ。
押し殺して、我慢して、一人抱えて、声をひそめて……。
止め処なく涙が溢れるのだ。
どうしようもない自分。
打開策はない。
人を攻めることでしか、自分を守れはしないのだ。
攻撃をしかけることでしか、意思を表現できないのだ。
こんな、不自由な感情をどうすればいい。
いつになったら、開放される。
いっそのこと、殺処分をと、願うことは
弱いことの、証であろう。
2005年04月04日(月)
今日だけは、ちょっと……
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今日、教習所で(今、通っているのです)応急救護をやりました。
『事故の時には積極的に協力しましょう』と言われました。
それでも、実際に事故が起こった場合に、本当に助けてくれる人は何人いますか?
道路で、横たわっていた母を轢いた人が、止血をしていてくれたら?
轢いてしまう前に、母がいることに気付いていたら?
もっと早く、現場に救急車が着いていたら?
母は、少なくとも生きていたかもしれない。
障害が残ったかもしれない。
下半身麻痺とか、植物人間とか、一生寝たきりの生活だったかもしれない。
それでも、生きていてくれた方が良かったな。
寝たきりでも、そこに居てくれるわけで。
触ろうと手を伸ばせば、確実に温かい皮膚に触れることができるわけで。
胸が上下して、ちゃんと息をしているとわかるわけで。
ちゃんと生きて、ここにいてくれるって確認できるわけで。
やっぱり、”生きていること”と”死んでいること”の間には大きな大きな溝がある。
死んでしまってからでは、見ることも、喋ることも、触ることも、呼吸音を聞くこともできない。
何も、できない。
いつも家事で荒れてたけど、体温は高くて、冬でも冷え性とは無縁で、ぽかぽかあったかい手だった。
小さい時は出掛ける時はいつも手を繋いでた。兄が羨ましがるくらい、私は母の手を独占してた。
感触だけははっきり覚えてるのに、もう触ることはできない。
名前を呼ばれると、それだけで機嫌の良し悪しがわかった。独特の節をつけて呼ぶ時は、とても機嫌がいい時。
もう1回呼んで欲しいけど、何も聞こえない。
小さい時は、家族で遠出する時はいつも車。父が運転、兄が助手席。私と母で後部に座って、眠くなるといつも母に膝枕をしてもらって眠った。
布団で一人で寝るより寝心地が良くて、私はいつだって車の中では眠ってた。
さすがに最近では膝枕なんてしてもらわなかったけど、隠し撮りされてた小さい時の写真を見ればわかる。
どれだけ安心しきって寝てたか。
どれだけ気持ちよかったか。
なんでこんな写真があるんだ?って最初は思ったけど、今は撮ってくれたことに感謝してます。
私ってこんなに幸せだったんだ。
実感するのは過去の幸せばかりだけど、それでも嬉しい。
何度だって言おう。
何度でも願うよ。
お母さん、帰ってきてよ。
もう会えないなんて。
二度と会えないなんて嘘でしょ?
母親のくせにひどいよ。
こんなに泣かせないでよ。
ごめんね。
お母さんだって辛いよね。
それなのに、今でもお母さんに甘えてるなんて、ダメな娘だ。
わかってるよ。
もっとちゃんとしなきゃね。
もう二十歳なのにね。
お父さんは溜息が増えました。
最近は『疲れるなー』ってのが口癖になってます。
お兄ちゃんはよくお母さんの遺影に話しかけてるんだよ。聞こえてる?
私が作って、お供えしてるご飯はおいしいですか?
まだレパートリーが少ないし、包丁の使い方も下手だし、味付けもお母さんのようにはいかないけど、いつか”お袋の味”になるといいな。
もう四十九日も終わっちゃって、天国にいっちゃった?
この世にいるうちは成仏できてないってことなのはわかってるけど、
もうちょっと、近くで見守ってて下さい。
ダメダメな家族を、笑って見ててやってください。
なんでだろうか。
大丈夫な時は全然大丈夫なのに、ダメな時は本当にダメだ。
何を見ても、何を考えてても、結局はお母さんのことに行き着いてしまうよ。
明日はちゃんと元気で生きなきゃね。
2005年04月03日(日)
かかってこい、閻魔!こんにゃろ!
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兄が行ったのは、埼玉のど田舎だそうです。埼玉県民の方、すいません……
猫と犬とオヤヂをよろしくと、先ほど兄からメールが来ました。 うちにはラヴリーにゃんにゃん4匹、おバカわんわん1匹がおります
やはし、こんな性格の妹とオヤヂだけの生活では彼も心配なようです。
おベンキョに集中していただくためにも、ここは我慢我慢。
あ、そうそう。週末くらいは帰ってこれるようにするからとのことでした。
ビバ兄貴!
えらいゾ兄貴!
薄々気付いているのでしょうか。家庭崩壊の危機……
って、別に夫婦なわけじゃなし。
本気でダメなら出て行きますが。
あ〜、だからって本当に出て行くだけの度胸はなし。 金もなし……
今日はまだオヤヂと会っておりません。 もうこのままオヤヂが帰ってくる前に寝るかっつー勢いです
起きたの11時。やっちまいました…
母がいたら8時には起こされてましたね。
掃除やら洗濯の手伝いもさせられてました。
今日はもう掃除はサボりました……。
やってもホメてくれる人いないしー、部屋がきれいになるって実感もないしー、
何より一人でやるのつまんないんだもーん。 やる気ゼロ
オヤヂの休みの日に一緒にやりますよ。どうせ手抜きなんでしょうが
母さんや。もー、本当にさー、帰ってきてくれません?
土ん中から這い出てきても全然気にしない! むしろ大歓迎!
ゾンビだろうが、銃で撃っても死ななかろうが、無問題!
むしろこれから永遠に私らと一緒にいてくれんだから万々歳!!
ってノリですよ……。
だって、
これでもまだ2ヶ月ちょいしか経ってないって、どーゆーこと?
こんなに疲れるってのに、まだ2ヶ月しか経ってないんだー。
後、この先何年こんな生活続くんだー?
長ぇー。
人生長すぎんぜ神様。
それでも帰って来れるなら、ぜひ!って思いますけど。
ゾンビどころか骸骨でもオールオッケーですけど。
近所からはどう思われるんだろう……。
や、それでもやっぱ帰ってきて!
閻魔、うちの母さん帰せやコラ!
って、アホなこと叫んでしまいそうです。
天国にいるから空に向かってか?
いや、しかしうちの母さんの死に方では天国へは行けんと聞いたが……
あぁぁぁ、うちの母さんがじ、地獄なんて有り得ん!
ここは無理矢理にでも天国へ乗り込んでいると信じよう。
閻魔なんかにうちの母さん負けるわけねェ!
2005年04月02日(土)
限界かもしれないのですが……どうしよう
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あ〜、なんか昨日の日記は一気に人格バレた模様……。
猫っかぶりも終わりでしょうか。猫をかぶってたというか……、丁寧に書いていたのだと思います。
これからはバンバン感情出してくと思うのです。
今日は特に問題もなく、坦々と生活しております。
明日から兄は埼玉に実習に行くそうで。
今日の夕方に東京の下宿へ帰るそうで。
月末まで戻らないかもって……。
う〜わ〜、どうしよう!
親父と2人って、どうしよう。
いや、嫌いなわけではないんです。決して嫌っているわけでは……。 多分
ただ、間がもたない。話がかみ合わない。世話が焼けるの3重苦。
私の苦労を知ってか知らずか、何でも『これどうしたらいい?』
あ〜、そらもうブチ切れますよ。
50過ぎの親父に何でもかんでも相談されるなんて、
我が親父ながら情けなくなってしまう。
私より人生経験豊富だろうよ。それくらい自分で考えてくれ……。
でもねェ、わかる気がしなくもないんですよ。
だって、今まで何だって母に相談してたし、頼ってたし、任せっきりだった。
子育ても、家事も、母の仕事。
父は仕事と、犬の散歩くらいかな。家でやってたのは。
あ、2〜3年前くらいからはゴミ捨てやら掃除機掛けもやってたな。
最近じゃ忙しいって言って、それもやらなくなってるけど。 今こそやってもらいたいんですけどね、本当に
兄がいれば、『ふざけんな!』とか私が親父に怒っても『まぁそう言うなよ』とか、『くだらないことで喧嘩すんな』となだめてくれるんですけどね。
いなくなったら一大事ですよ。
私も父も短気、強情、負けず嫌い。さすが親子! 性格も似てる似てる。
一度喧嘩したら両方引かない。譲らない。
いつまで経っても険悪ムードのまま。
しかも、生活する上で接点も少ないからそれで大した問題ない。
だから仲直りする必要も機会もその気もない。
そんなんで1月過ぎてみたら……。
家ん中荒みますよね〜。しかも疲れる……。
な、なるべく喧嘩は控えます。
でもでも、それって私の努力だけでなんとかなるもんなのか?
私が”大人”になればいいのか?
無理だ……。
ただでさえ感情の躁鬱激しい上、物に当たるより人に当たってしまう上、口が悪い上、うちの親父は口うるさい上、文句が多い。
私がキレないわけがない……。
あ〜、この1月平和で過ごせますように。
兄ちゃん、早く帰って来い!
誰とは言いませんが……。
でも誰にでもある衝動ですよね。
だって、ムカツクもんはムカツクんです。
こっちがセーブしようとしてるところに、更に火に油注ぐようなこと言われたら、
抑え利かなくなりますよ。
それでも私はやりませんけど。
だって、刺した感触とか、ドクドク流れる血とか想像するとキモぃので……。生臭そうだし……
でも、それ想像するとちょっと気持ち落ち着きます。
そして、今死なれては困るのじゃ!と思い直せます。 金を稼いでるのは父! 私はパラサイト!
ダブルで良いことですよ〜。
時々思うのです。
こんだけ父のことムカツクって、生理的にあの性格がダメなのか。
それとも、単に反抗期が終わってないだけ……?
どっちも嫌だぁ。
2005年04月01日(金)
ちょっと愚痴らして……?
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色々色々面倒くさいな。
わかってますよ。家事しなきゃいけないってのは。
親父は仕事、兄は勉強で忙しい。もう大学も始まっちゃうし。今度医学部6年だし。国家試験に向けてがんばれ〜。
って、思うんですよ。頭では理解してるんすよ。
でもね、
でも、気持ちは違うんだ、これが。
もっと家のこと手伝えよ!
掃除くらいしろ!
洗濯もん洗いっぱなしで、干すくらいできんのか!
みそ汁くらい作れよ!
物は使ったら元の場所に戻せ!
って、グチグチグチグチ思っちゃうんだな〜。
しかも、親父に至っては
今の今まで銀行のATMの使い方すらよう知らなかったようです。
よくそれで生活できていたもんだ……。
今になって思うのです。母は偉大だ。
毎日毎日、飽きずに(飽きてたかもしんないけど)ご飯作って、掃除して、洗濯して、アイロンかけて。
今の私は母の半分も家事こなしてない。それでも、こんなに鬱憤溜まってる。
主婦ってすごい!
私には正直、荷が重いです。
誰か代わって……。
イライラする回数が増えた気がする。
家族の愚痴を言う相手がいなくなったからかもしれない。
前は、父のことだろうと兄のことだろうと、母に愚痴っては同じ見解を聞いてスッキリしてた。
くだらない話もちゃんと聞いてくれたし、ドラマも一緒に見たりしてた。
母に対する愚痴だって、ちゃんと言えば聞いてくれた。
それが、今じゃそんな相手も、時間も、言う気もない。
疲れるって……。
父や兄が帰ってくるのは大抵、9時過ぎ。 これからは忙しくて兄は東京の下宿に戻るかもしれない。そしたら父と私だけだ。困ったな〜
家に帰ってすぐに飯、風呂、寝る。
就寝までに2時間かかんないんじゃないかってゆうスピーディーさ。
これじゃあ話なんてしてる暇もない。
それに、彼らはドラマなんて見ないし、映画にも興味ないだろうし、ゴシップなんてもっての他。話のタネもないね。
彼らが、何が楽しくて生きてるのかは知らないけれど、この2ヶ月で私とは違う次元の人だってことだけはよくわかった。
これでよく血が繋がった家族だな。感心してしまう。
うあ〜、今までシリアスで書いてたのに、一気にダラけてしまった……。
でも、今までのは、今までので、本当。
その時も、そう思ってたし、今だって、あの時はそうだったんだって、断言できる。
でも、今は今で、これが事実。
今は、私はとーっても面倒くさいと思っている。
人間らしくていいなとでも思ってください ムリですか!?……そうですか
明日からどうしようかな〜。
もう夕飯の献立とか、考えるの嫌だ。 ちなみに今日はじゃがいもとたまねぎとワカメのみそ汁と、ご飯と、サラダ。以上!みたいな……
車とか走ってるの見るとふらふらっと寄っていっちゃいたくなりません?
電車とか、ホームに入ってくるの見ると、ポンと飛び出しちゃいたくなりません?
ビルの屋上に行ったら、フェンス乗り越えたい衝動に駆られるだろうな〜とか、思いません?
私は今、平素よりそういう衝動に駆られやすくなっている。
そういう状態です。
ま、それでも生きてますけど。しぶといですから。
前回はあんなこと書きましたけど、母みたいには死なないでしょう。多分。
あんな生活能力ない人たち残しては死ねないと思います。
それくらいには、責任感あると思います。
でも、たまにはブチ切れてもいいと言って欲しいです。
それくらいの猶予は残しておいてくれないと、ねェ。
って、これどーよ。
軽すぎますか。そうですか……。
でも、皆でお母さんのところに乗り込もう!みたいなノリだったら、なんか成功しそうです。うちの家族、単純ですから……。
でも、『馬鹿なことは考えないこと!』って、念押しされてるんですよ、兄に。
でも逆に、「本気で真剣に考えたら、許してくれるのか?」って思うのですが。
本気で考えたら何事も”馬鹿なこと”とは言われないですよねェ。
違うかな……?
あ、でも、こんなこと言っても、自殺なんて考えないですよ。ちゃんと生きてますよ。 今は
マンガの新刊気になるし。って、そーゆう理由!?
こんな終わり方……すいません
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