綿霧岩
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きっと物語というのは、食べ物とかセックスと同じくらい、人にとって生々しく必要なものなんだと思う。
去年私は常に何かの舞台の本番前で、毎日何かの物語を自分の中に入れていた。 そしてその時はちょっと別の小説を読もうとか、映画を見たいとか、微塵も思わない。 逆に読んであげるとか見せてあげるよと言われても、ちょっとお腹いっぱいなのでいらないです、という気分なのだった。
それが今、舞台の予定が無いとなった途端に、私は連日物語を欲している。 小説を読んだり、DVDを借りてみたり、貪るように物語を楽しむ自分がいる。 誰もがそうなのかどうかはわからないが、私は少なくともそういう人間なのだと知った。 おいしい物語を私は求める。
試しに自分でも自分専用のおいしい物語が作れたらいいなと思って、なんとなく思いを馳せてみた。
私の知らなかった場所があった。 そこにはまだ何もなかったけれどそこは私の行ったことのない場所だった。 それは気持ちが良くて面白い体験だった。 そうか、物語を作る人は、こんな場所を行ったり来たりしているのかと思った。 いや他の人のことはよくわからないけど。 集中が続かなくてそれ以上のことは起こらなかった。 でも面白かった。
2016年01月12日(火) |
いい感じに届けることについて |
去年、宇宙ビールさんの公演「にっぽんのうた」でご一緒したバイオリニスト、福澤里泉さんのリサイタルに行ってきました。 バイオリンとピアノの生演奏、すてきでした。 言葉じゃないのに何かを語っているかのような面白さ。 里泉さんのバイオリンの音は骨太で色っぽくて。 演奏中の、音に集中しておられる表情も興味深くてまじまじと見入ってしまいました。
クラシック(だけじゃないかもしれないけど)音楽の演奏会は、聴いている人が音楽から何をイメージしようと自由で、聴きながら眠ったとしてもそれもありで、そんなの言うまでもないっていう自由さが私は本当に好きです。 客席に座り、演奏が始まった時点で開放される感じ、Im free!という感じ、大好きです。
翻って、言葉を大量使用する演劇のことも考えました。
あれ、なんかシリアスっぽい笑
いや、言葉を客席にいい感じに届けるって並大抵のことじゃないです。 恐ろしくハードルの高いことです。 だからこそ上手くいったときは最高に面白いけれど。 なんで私がそこまで言うのかというと、私にははっきりとセリフの届き方についての理想があるからであります。
2015年12月で、所属していた劇団「突劇金魚」を退団しました。
どうして退団したのか? 自分の中でも隅々まで明文化されてはいませんが、私としても自分の中で起こっていることに興味があり、書いてみます。
とは言え、思いつくのはシンプルなことです。 たぶんですが、私は単純なのだと思います。
あらゆる作品に対して、役者として中立の立場でいたいと思いました。 劇団に所属していると、所属劇団の作品と自分自身との距離がどんどん近くなり、所属劇団以外の作品とは明らかに距離感が異なってくる体感がありました。 それは、劇団に所属する者なら当たり前のことなのかもしれませんが、私にはなぜか違和感がありました。
劇団に入る時、そのことはある程度予測できましたが、それが結局のところ自分にとって譲れないポイントであることには気付いていませんでした。
言わずもがなですが所属していた劇団、突劇金魚の作演出家サリngROCKさんは才能溢れる魅力的な作家であり、彼女をはじめとする劇団での創作はとても楽しいものでした。 今後も一緒に創作できる機会があれば嬉しいことです。 劇団内の様々なイベントも面白く、所属したことに後悔はなく、自分にとって必要な期間だったと思います。
退団に関してはこの通りです。
2016年は未知のままに明けました。 それは怖いことでもありますが、同時に楽しみでもあります。
元来、役者というのは、頭の中で答えを出していようがいまいが、舞台上に立ってしまえばその姿が即答えになってしまう立場にあります。 本人の認識とは関係なく、立った姿がその時の答えです。 思えば人の人生だって皆そうですよね。
何が言いたいのかわからなくなってしまいましたが、要は何も決まっていないだけです。 この先、より自分を裸にしていければ面白いなと思っています。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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