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2026年04月28日(火) 注文した料理に髪の毛が入っていたら。

同僚が夫婦で焼肉を食べに行ったときのこと。
男性店員が一度に三枚の大皿を運んでくるのを上手に持つなあと眺めていたら、突然彼が「……へっぶしッ!!」。豪快なくしゃみをしたのだ。
両腕に絶妙なバランスで皿を載せていたから、彼は口を押さえることはもちろん横を向くこともできなかった。その皿を何事もなかったかのように目の前に並べられ、同僚はうろたえた。今、これの上で思いっきりくしゃみしていたよね……?
しかし店員が離れた後、「交換してもらおうよ」と夫に言ったところ。
「そこまでしなくていいだろ、どうせ焼くんだから」
「だってもろに飛沫かかってるよ。気持ち悪くない?」
「神経質だな、イヤなら俺が食べるよ」
それ以上食い下がる気も失せ、彼女はその後に頼んだビビンバだけで済ませたそうだ。

その状況を想像したら、私もムリ……と思った。
焼いたら殺菌できるとかそういう問題じゃない。他人のくしゃみがかかったという不快感、嫌悪感は火を通したってなくならない。その肉をなんともない肉と一緒に網に載せるのも抵抗がある。
自分は平気でも妻はそうじゃないのだから、取り替えてもらってほしかったなあ。そうしたら、ふたりとも気持ちよく食事ができただろうに。

料理に不備があっても申し出ない人は私のまわりにもけっこういる。
皿の中に髪の毛や虫を見つけたとき、取り除けば続きを食べられる人が「わざわざ言う必要はない」と考えるのはまだわかる。しかし、箸をつける気にならず残す人が黙っているのはどうしてなんだろう。
「すみませんけど、髪の毛が入ってたんで交換していただけますか」
「申し訳ございません。すぐに新しいものをお持ちします」
で済む話なのに。げんなりした気分もこれでリセットできる。
あるとき、友人のビーフシチューにばんそうこうが入っていた。調理中に指から抜けたのが明らかな、輪っかの形をしていた。
「お店の人に言わないの?まだほとんど食べてないのに」
「うん、いいや。それに替えてもらっても同じ鍋で作ったものが出てくるわけだし」
それはそうだけど。でもパンとサラダに二千円か……と私のほうがもやもやしてしまった。

こういう不手際があったら、店はすぐに知らせてほしいだろうな。
もっとも避けたいのは、「こんなん入ってました〜」とSNSで写真を拡散されたり、口コミにひどいことを書かれたりすることだろう。その場で謝罪や誠意ある対応をするチャンスをもらえたら、先日の「しゃぶ葉」の一件みたいな騒ぎにはならないかもしれない。



国民性を揶揄する、こんなジョークがある。お題は「注文したビールにハエが浮いていたら」。
アメリカ人は「不衛生だ、訴えてやる!」と店を飛び出し、イギリス人はウェイターを呼びつけて取り替えさせる。ドイツ人は虫を観察し「アルコールで消毒されているから問題ない」と飲み、中国人は気づかず飲み干す。
では日本人は?
「飲まずに黙ってお金を置いて帰る」
ま、そんなとこだよね〜。

【あとがき】
下のエスニックジョーク(国民性の違いをユーモラスに表現したもの)も有名ですね。
【豪華客船が沈み始めた。船長は乗客を船から脱出させるため、海に飛び込むよう指示しなくてはならなかった。世界各国の乗客にどう声をかけたか】
アメリカ人:「飛び込めばあなたはヒーローになれますよ」
イタリア人:「飛び込めば女性にモテますよ」
フランス人:「決して海には飛び込まないでください」
イギリス人:「こういうときに海に飛び込むのが紳士です」
ドイツ人 :「規則なので飛び込んでください」
日本人  :「みなさん飛び込んでいますよ」
日本人のイメージは勤勉、生真面目、押しが弱い、集団主義、会社人間、といったところでしょうか……。


2026年04月01日(水) 0.000017%の“もしも”

昼の休憩室で、同僚が「お休みありがとうございました」と言いながら、ちんすこうを配り始めた。
「へえ、沖縄行ってきたんだ。飛行機で?」
と誰かが言い、「もちろん。飛行機じゃなくてどうやって行くのよ」と笑い声が起こった。すると、
「私は飛行機だめなんだよねー。沖縄も北海道も一生行けないわ」
と言う。高所恐怖症と閉所恐怖症のため、乗ることを想像しただけで手汗びっしょりになるらしい。

実は私も飛行機は苦手である。
子どもができるまでは海外によく出かけたし、新幹線より早くて安いという理由で東京に行くのも飛行機で、という頃もあった。しかし、当時も好きで乗っていたわけではなく、前日の夜は「明日は胃カメラ」と同じくらいの気の重さがあった。
飛行機事故が起こる確率は車のそれと比べたらはるかに低く、もっとも安全な乗り物だと言われている。が、いかに稀なことであっても、もしものときは一貫の終わりというのが恐ろしいのだ。
フランクフルトからロンドン行きの飛行機にこれから搭乗というとき、隣の人が無邪気に言った。
「これ、昨日アテネで墜落したキプロス機と同じ型の飛行機だよ」
そういうことを言うのは降りてからにしてほしい、と本気でむっとした。事故の後は点検を強化するはずだからかえって安全よ……と自分に言い聞かせるが、身が固くなる。
考えないようにしながらシートベルトをして離陸を待っていると、突然後ろのほうで赤ちゃんが泣きだした。火がついたような泣き声を聞きながら、
「動物が地震を予知するように、大人よりずっと動物に近いところにいる赤ちゃんも本能的なもので不吉なことを察知したのではないか……」
追い打ちをかけるように、向田邦子さんのエッセイで読んだ話がよみがえる。
飛行機のエンジンがかかった途端、ひとりの男性が真っ青になって「急用を思い出した、降ろしてくれ」と言いだした。もう無理ですと止める客室乗務員を殴り倒さん勢いで力ずくで降りて行ったのだが、その飛行機は離陸直後に墜落。その乗客は元パイロットで、エンジン音からその不調を悟ったのだ------という内容で、私は赤ちゃんと一緒に泣きたくなった。
向田さんもその原稿を書いた時点では、未来に自分が飛行機事故で死んでしまうなんて夢にも思っていなかっただろう……などと考えると、さらに動悸がしてくる。

いままでで一番怖い思いをしたのは、ミュンヘンからバルセロナまでルフトハンザ航空の飛行機に乗ったときだ。
乱気流のせいか、離陸後まもなくから機体は揺れに揺れた。機長の指示で客室乗務員もずっと着席したまま。あちこちで悲鳴が上がるほどで、私も「まさか……うそでしょう……?」と手をぎゅっと握りしめた。
しかしこのとき、緊張感Maxの乗客を救ってくれたのは機長の「飛行には問題ありません」のアナウンスでも客室乗務員の(強張った)笑顔でもなく、前方の席に座っていた子どもたちだった。幼稚園児くらいの子が何人か乗っていたのだが、彼らは飛行機がぐらりと揺れるたび、実に楽しそうな歓声を上げるのだ。ビッグサンダーマウンテンにでも乗っているかのようなはしゃぎっぷりだ。
一時間半後、飛行機は大きく傾いたまま片輪ずつ着陸した。ものすごい衝撃だったが、ここでも子どもたちは「キャッホ〜!」。
飛行中、もし彼らが「ママー!」と泣き叫んでいたら、機内はパニックに陥っていたかもしれない。無事駐機場に入ったとき、拍手が沸き起こったが、あれには機長や客室乗務員への感謝、乗客同士の労いだけでなく、「坊やたち、ありがとう!」も込められていたと思う。



国際航空運送協会(IATA)が公表した統計によると、2024年の全世界の商用航空機の事故発生率は88万便に1件、死亡事故となると580万便に1件だ。
海外に行くときは“もしも”に備えて部屋を片づけ、ブラウザの履歴を消したものだが、こんな天文学的確率だったとは。ニュースで見る飛行機事故の映像が衝撃的だから、リスクを過大評価してしまうのだろう。
しかしさすがに、0.000017%は「リスク」ではなく「安心」の材料とするべきである。
宝くじは100万円(0.002%)だって「当たるわけないやん」と思っているのに、矛盾しているよねえ。

【あとがき】
飛行機に乗れない理由に「たばこを吸えないから」を挙げる人がたまにいます。機内禁煙になってから、知人はフライト時間が六時間を超えるところには行っていないそうです(ハワイ大好きなのに)。
三十年くらい前までは座席でたばこを吸えたこと、若い人は知っているかな?