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2020年01月29日(水) 悔いのない結婚をするために

テレビをつけたら、日本エレキテル連合の中野聡子さん(おじさんメイクの方)が交際0日婚をしたというニュースが流れていた。中野さんが昨年大晦日に突然「そうだ、結婚しよう」と思い立ち、以前から熱烈なアプローチを受けていたものの断りつづけていた同じ事務所のお笑い芸人の男性に提案、一月十八日に入籍したという内容だ。
一緒に仕事をしたことがあって人となりを知っていたとはいえ、恋人として付き合ったことのない人と結婚しよう、したいと思えることに驚く。交際期間が長ければよいというものではないが、さすがに交際0日では互いに知らないことだらけのはず。不安はなかったんだろうか。
VTRに登場した、ノリと直感で交際0日婚をしたという一般人女性が、
「相手をよく知らないまま結婚するから、生活し始めてからいろいろなことがわかってくる。味つけが全然違っていたり」
とコメントしていたけれど、味の好みなんかよりもっとシリアスな問題が発覚したらどうするんだろうと素朴な疑問が湧く。たとえば、性の不一致とか。
どれだけ付き合ってから結婚しようとダメになるときはなる。しかし、そこまで性急に事を進めなければ事前に把握し、回避できるリスクはたくさんあるにちがいない。マンションを購入するとき、いくら部屋を気に入ったからといってその場で手付金を払う人はいない。周辺を歩いたり営業マンに確認したりして、そのエリアの治安や騒音、災害リスク、利便性や通勤時間などをリサーチし、総合的に判断するだろう。それと同じだ。

しかしながら、番組によるとこの「交際0日婚」が昨今のトレンドなのだという。二十代から五十代の女性二百人を対象にしたアンケートでは、51%が「交際0日婚はあり」と回答していた。
この結果を見て、女性にとって「結婚」のハードルが下がっているのだなあと感じた。これは昔ほど離婚を恐れなくなったためだろう。
離婚に対する世間の見方はずいぶん変わった。結婚が「永久就職」と呼ばれていた頃は「離婚=人生の失敗」とみなされ、離婚経験者は「人間性に問題があるのでは」という先入観を持たれることさえあったが、いまそこまでネガティブなイメージを持つ人は少ないだろう。周囲を見渡しても、「我慢しつづける人生はもったいない。ダメならリセットしてやり直せばいい」という考えが主流だ。
結婚が人がより幸せになるためのものであるように、離婚もまた前向きに生きていくための人生の選択だ。「結婚はたしかに人生の一大事だけれど、うまくいかなかったらそのときはそのとき」と思えるようになったことで、親世代の目には無謀と映る結婚にも理解を示す人が増えてきたのかもしれない。

と同時に、平穏な暮らしの中にあっても、女性がいざというときには自立できるすべをキープしておくことはとても大切だとつくづく思う。これはどんな結婚にも言えることだ。
大学時代、「私は母親みたいに経済力がなくて離婚できないっていうのは嫌だから、一生つづけられる仕事に就く」と言っていた友人がいた。宣言通り彼女は公務員になり、いまも共働きをしている。「母親みたいになりたくないから結婚しない」ではなく、「だから仕事をつづける」を選択し、貫いているのが立派だ。
結婚式では「生涯、互いに愛し守り抜くことを……」と誓うけれど、添い遂げることが結婚の目的ではない。離婚に至るリスクを下げようと結婚前に相手との相性を探ることより、今日の安泰にあぐらをかかず、”有事”に対処できる筋力を保持しておくこと------ブランクがあっても再就職できる資格を持つ、コツコツお金を貯める、健康に気をつける、実家や友人との関係を大事にする、など------のほうがよほど、結婚を悔いのないものにしてくれる気がする。

【あとがき】
ところで、私は「交際0日婚」について長いこと勘違いをしていました。これまでも堀北真希さんや小林麻耶さん、篠田麻里子さんらが「交際0日で結婚!」とワイドショーで取り上げられてきましたが、私は文字通り「付き合うことなくいきなり入籍」するのが交際0日婚だと思っていたんですね。「好きです。結婚してください」「ハイ♡」というやりとりが交わされ、その日のうちに婚姻届を提出しに行くなんて、大のオトナがどんなテンションなんだと不思議でしかたがなかったのです。
でも実際には、話題になったどの芸能人カップルも入籍したのはプロポーズから数か月後だったそう。そりゃあそうだ、仕事を持ち、社会的立場のある男女がその日のうちに、なんて物理的にできることではないもの。となると、交際0日婚という言葉に違和感が湧いてくる。プロポーズから入籍までは一般的なカップルと同じに恋愛をするわけで、それなら交際60日婚とか90日婚とか呼ぶべきじゃないの?もしくは、ふつうに「スピード婚」でいいじゃない、とつい言いたくなります。