ことばとこたまてばこ
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2006年10月31日(火) 誘拐されし少年はふと

あのとき・・・ぼくは
緑の犬と目を交わしたのだった・・・

高く生い茂る草むらに隠れてぼくは
黒いコートに黒いサングラスのおじさんに
触られるがままになっていたのだった

誘拐されたぼくは
ざんぎり頭に刈られて
無意味に糞尿の排泄を強要されて
愛の一文字を何千何万も書かされて
残った時間は外で夜から空が白けるまで立たされる
誘拐された日々はそんな感じ だいたいそんな感じ

疲れた日には洋式便器に顔つっこんで大の方へコックをひねり
盛大に流れくる水の渦に喉がつまったりしないかなと希望してた

そのとき・・・ぼくは
緑の犬と目を交わしたことを思いだしたのだった・・・


2006年10月30日(月) 思い思いの思い

翼をふるわせて
身体を揺らせて
しづかな街を飛んで越えようと
企んでるフリークスのわたし


2006年10月29日(日) ど頭にくる夜

偉そうなごたくを流すおめえはずいぶんと立派だな!
まったくど頭にきやがる。凍った湖に身投げしちまえよ。
このグラスを見ろ。もうこんだけしか残ってやしない。
これを呑み干せばすっかり俺はーへべれけさー!


2006年10月26日(木) いやらしい声

マッシロケになったあるほどおめぇとセックスに狂った
太鼓のやうな心臓ドッドッドッド
けだもののごとく息も荒くハッハッハッハッ
もう酒はいらない ドラッグもいらない
おめぇと共同でこんなにも白い世界を観れるのだからな

苦しいか
はい苦しいです
ノイズかな ノイズだろうさ ノイズだろ?
なにが?

おれの声 セックスのとき漏れてるおれの声
ちっちゃな頃から言われてきた
「あんたの声は変な声! 失礼な声! たたきつける野蛮な声!」
ノイズかな ノイズだろうさ ノイズだろ?


なにをいまさら!
音無子のあんた あんたに訊くよ
あんたの言うノイズってなにさ 雑音ってなにさ
聞こえないあんたがノイズだろと気に病むことが
そもそもおかしいのよさ
教えてあげる
教えてあげるわ
あんたの声はまるで
鈍い錆び色でとげとげのつくざらざらした手触りの球体!
あんたが声を発するたびに
あんたの声があたしの皮膚を転げまわっているの
わたしはあんたの声でいつも濡れてる
あんたの声がもう前戯なの
あんたの思ってたノイズ、あたしには
いやらしい いやらしい いやらしい
とってもとってもとってもとってもとっても!
性的で卑猥な、いやらしい声よ!


2006年10月25日(水) 露わになった無力

逃げて逃げて逃げて逃げて
どこへ逃げるんだ、いったいどこへ
いいのいいからさあ早く逃げて逃げて逃げて逃げて!


逃げて!


ああ、もう、遅い 雨が 降ってしまった
雨が ざぴゅるざぴゅるざぴゅる と降ってる


気づかないの?
気づいてないわね


降りしきる雨粒ひとつひとつを浴びるたびに
あなたの無防備な裸の無力さが露わになっているのよ

それは灰色なのよ 白くもなく黒くもないの
あけっぴろげにそんな無力な色をひろげだしたまま
気づかず平然とよろめくなんて なんて なんて みっともない!

ひとたびそうなってしまったあなたにわたしができることは
つるっとした視線を流して残酷な事実を言うしかないんだわ
でもだいじょうぶ 誰もあなたを撃ちはしない だから死にはしない
ただし木の棒で灰色の無力をつっつかれると
血が流れ激痛をともなう だけれど それでも死にはしないわ
ひたすらに狂おしく痛いだけなの 死にはしないけれど

誰か一緒に踊ってあげて!びしょびしょに濡れるまで一緒に踊ってあげて!
わたしじゃない誰か!どうか彼と一緒に踊ってあげて!


夜はまだ始まったばかりなのよ!


2006年10月24日(火) 冷たく輝く青色に染まってる憎たらしいあんた

セックスすれば至上の愛に近づけると思い、
あたしはあんたに抱かれていたけれど
煙草を吸うあんたは何故あたしを抱くのか
いまだにわかりゃしないわ

あんたが強く腕をつかんでひっぱるから
あたしのコーヒーこぼれた

あんたが煙草を吸っているスーッハーッツーッパーッ
電話が鳴っているリンリンリン
血が流れているヂュッヂュッヂュッ
心臓が鼓動してるドタンッドタンッドタンッドタンッ

あたしの腫瘍に名前をつける
煙草を吸うあんたの名を借りるわ


天上の青に染まるのはあたし
あんたに色なんてありはしない
ヘヴン・ブルーの色こそがあたしよ
あたしの色こそがあの天上の青であるべきなのに
冷たく輝く青色に染まってる憎たらしいあんた!


2006年10月21日(土) おれはとてもさびしい!

あの学校がなくなる

あほで奇妙な君と出会えたあの場所が
あの学校がなくなってしまう



あの懐かしい貴方がたと出会うための場所が
これから永遠になくなっちまいます

生き方がてんで違う貴方がたと私、
あの素晴らしい学校なくして貴方とおれは


どうやって偶然を装いつつ、
毎年

毎年



毎年








会えるというのでしょう!


2006年10月20日(金) 俺の手

これが俺の手だ
よく見ろ

これが俺の手だ
よく見ろ


これが俺の言葉だ

見えるんだ


ガラスの破片にギラギラ反射する言葉


この手を離せ

俺の言葉をそんな汚い手で触るんじゃねえ!


2006年10月19日(木) 走るひとつの肉の塊

君は濡れている
チョコレートを食べるかい

君は日が暮れて家に帰りたがっている
まっくらになってもこわくないように手をつなごう

君は寒がっている
毎日手紙を書くよ

君は泥の中にうずくまっている
僕の服を全部あげるよ

君には素晴らしい名前がある
僕のカメラに君の名前をつけたよ

君は見上げている
空へ行こうか

君はとっても頭が良い
母さんの料理、もっと食べなよ

君は泣いている
森の中を走りに行こう

君がいない
何日かかっても探すよ

君は僕にはわからないむつかしいことを話してる
甘いもの、そうだね、チョコレート食べるかい

君は誰かの悪口を言っている
僕はプールに行ってくるよ

君は誰かに殴られた
僕は君を守る恋人になりたい

君がいる
永遠かな? 永遠に?

君は天国があるのかなと聞いた
わからないけれど君の行くところならきっとね

君の音がある
ずっと胸の底で響いてる


2006年10月18日(水) 幻人

あの沼地の奥まった所の、そうだ、
ここにかつて存在していたのだった

ちきちきりと硬い風が吹いて
くちくちんと硬い光が刺して
いまやとうになにも残りはしない、
かつて存在していた、この地。

そろそろ雪が降る。


2006年10月17日(火) 東海林さだおはおもしろいよ

急に誰かがドアを叩いた。
慌てた単身赴任で家にただひとり裸でくつろいでいたお父さん、あっひゃっはーい、とかなんか奇妙な返事をして立ち上がったら、うどんを茹でていた鍋をひっくりかえしてあっつい茹が汁を男として大事な竿にぶっかかって、どっひゃっひゃーん、絶叫。
発狂しそうな熱さに悶えながら水道の水をちゃぷちゃぷひっかけるがらちがあかない、あああ、まだ誰かがドアをどんどん叩いてるし、あっひゃっはーはーはーい、息も絶え絶えな二度目の奇妙な返事をしながら頭の中で、そうだ昨日風呂入ろうとして水を入れっぱなしにしてて忘れてたんだ、おおさうだ、水に、水を、下半身に水を!
風呂場に直行、湯船に直行、きぃんと冷たい水にざぶりと浸かる。ふるふるふると下半身へ向けて手で水をかき混ぜる。ああ、ああ、冷たいやら気色いいやら痛いやら!
すぐさま上がりびしょびしょのままバスタオルをざっと巻いて玄関へ直行。どっどんもごっめんさい!とドアを開けば誰もいない。家でただひとり裸でくつろいでいたはずのお父さん、ソッと涙ぬぐって。


2006年10月16日(月) おかえりなさいと誰かがおれにささやいた

おかえりなさいと誰かが道を歩くおれにささやいた

あたりを見回してみて、ああ、あいつだなと思った

呼吸を静かに整えている、あの静かな者らがささやいたにちがいない

呼吸を懸命に行っている、あの姦しい者らがささやいたにちがいない

ふしぎに節度を知っている声だったなと思った

ただいま、とその者らへと応えるおれはにきにきと笑ってて


2006年10月14日(土) 太鼓の音はいのちの音だとわたし思ってる!

どこかで太鼓の音がするな
とあなたは手を耳にあてて眼を細めたね
お祭りかな どんどんどん どどん どんどどっ
いまこんな音があるんだぜ とあなたは教えてくれた
わからないわと眉をひそめたわたしの顔を見て
あなたは孕んだわたしのおなかを太鼓にみたてて 
とんとんとん ととん とんととっ いまこんな音があるんだぜ
やさしくいとしく叩いた あのリズム
わたし どうしてか
いままでずっと 忘れられない
これからもずっと 忘れることはできない

あのとき あなたの教えてくれたリズム

素敵だった

いのちだ と 思った


2006年10月13日(金) ばーか


あの夜空に浮かぶ情を愛だと信じられぬようでは
もはやとうていおまえという人の末路は見えたものよ


2006年10月12日(木) さよならだったあの瞬間

あの瞬間こそが
おまえとおれの
さよならの瞬間だったのだ


あの瞬間がそうなんだと
もしも事前に知りえていたら
さらさらの魂でおれはおまえの眼を
けして忘れまいと強くみつめたのに


あの瞬間こそが
おまえとおれの
きっぱりとした
さよならだった


2006年10月11日(水) 揺れて光り、ついには漂う

現在、職にも就かず布団の中で鼻くそをほじくって屁をひってアンニャニャニャとあくびをするしか時間を潰せぬという、まったくふぬけた生活を過ごすおれ。その膨大な空き時間にあかせて、毎週水曜日の昼に大体一時間半ほど、家の近くに住んでいる脊髄小脳変性症いう障害を持っている子の食事のお手伝いをしている。

16歳である彼の障害は進行性で徐々に体の運動機能が衰えてくるというもの。

本当に初めのきっかけは小学時の妹と彼が同級生だったこと。その繋がりで彼の父母と我が母との面識があったこと。そして彼の母が彼と同じ障害で亡くなったということ。そして障害が進行しつつある彼の介護を母が申し出たことから始まった。とはいえ母も仕事があるため、基本的に介護をするのは仕事が休みになる水曜日の昼の食事だけ、ということだった。でもその話を初めて聞いたとき、おれは仕事勤めをしており介護のお手伝いに向かう時間がなかった。そして時間に溢れたいま。それがきっかけ。


先ず赤裸裸に告白すると、とりあえずおれは聴覚障害者という立場にあり、そしてずっとその場に甘んじてきていた。にやにやしながらおれ障害者だよ、障害者なの、ははは、といったような雰囲気を知ってか知らずか身にまとい、障害者にうとい世間をずる賢くやり過ごしてきていた、な、と今、つくづく思う。


彼の口がまったく読み取れない。
彼の体の動きがまったく予測つかない。

あくまでもおれの主観ではあるけれど彼の障害の大きな特徴は筋肉が自分の意思と反して勝手に動いたり、思う通りに扱えなかったりすることだと思っている。たとえば食事をするとき、いつもラーメンをつくるのだけれども、麺をフォークでつつき、フォークにからんだ麺を口に運ぼうとするときに腕の筋肉がブルッと動いてしまったりする。結果、麺はほとんどこぼれてしまう。
食事の後はラーメンの丼の周りに麺が散らばってしまっている。

この頃、聞こえる母がおらずおれ一人で食事の手伝いをするようになっている。
それでおれは困ってしまうことがたくさんあった。
彼にもっと気持ちよく食べてもらいたい!
彼ともっと会話を交わしてみたい!
彼の手足にもっと近づきたい!
彼に!彼に!彼に!彼に!彼に!
だけれども彼の口はちっとも読み取れない(母の話では発音は通常と変わりない模様)。筆談は可能なのだけれどもお互い使った労力の割に合わないことが多い。たとえば『タオルをとって』というようなことだけで数分かけてもしょうがない、と思っている。
そこで基本的には携帯のメール文面で会話をかわしている。
おれからのほうは音声で(まだまともな発音だそうです。でもサ行がからむとほとんど通じない)話しかけ、彼からはメールを打つようにして言いたいことを言ってもらうようにしている。

最近ようやくこの方法でお互いまだマシに交流できているんじゃないかな、と思ったりしていた。
とはいえまだマシというだけで、もうチョット気持ちよく過ごしてもらえるんじゃないのかな、と思って。あまつさえ、彼の声が聞けなくて本当に申し訳ない、といったことまで強く思って。

そんなこの頃の、そして今日。
「はるみちさんって介護じょうずですね」と携帯で言われた。
上記の悩みを母に漏らしていたので母が何かを言ったのかしらンと思った。
彼はちょっと言いたいことを言わなさすぎる(ように思っている)ので、なんというか彼一流の世辞くさいわンとも思った。


でも嬉しかった。 嬉しかったんだね!
嬉しいという気持ちが飛び跳ねすぎてて困るくらいだった。
ほんっと困ってしまってついには絶句してしまったんだな。

そんなこと言わないでくれよと思った。でも判ってくれてありがとうとも思ってた。厚かましくも。感情が千々に乱れて「そんあ、ことない。でも ありがとう ほんと ありがとう」とかつまらぬことしか言えなかった。ビックリしたな。たまげたな。まったく。




話は急に逸れるけれども、この一件で逆におれは「手話を覚えてみたい」と言ってくれる人々の気持ちが痛烈に理解できたと思っている。

手話サークル等に参加したり、手話を覚えるためになんらかの努力をしてくれる人には何かえも言われぬ気持ちがたくさんあるのだ。ぎっちり、みっちりと、つまった気持ちがきっとあるのだ。ただ初めて見るものや人ばかりだからその気持ちがどうもうまく回転しなかったりするんだろうね。

そして、善くも悪くもただ単純に相手のため、という気持ちしか持っていない人に対し、当の障害者自身が気づかずにないがしろにしてしまっていることもあるんだね。自分自身を顧みてもつくづく反省することしきり。障害者であるおれが上記の彼という障害者を助けようと悩むことでようやく気づくのだから、さ。いやはやこれは恥ずかしいことこの上ない。

要するに自分が障害者だと思っている奴らはもうちっと暴れたらいいんだ。
これが嫌だと、これが良いんだと、こうやってくれりゃいいんだ、と。
もうちっと言いたい放題になるのだ、というスイッチを入れりゃいいんだ。

だけどそれも相手の気持ちを見つめた上でのことなんだね。人という人のそれぞれの個人に合わせることなく、大雑把に人全体へ向けて暴れたりする様はミットモナイ。



どうにかそのことに気づけたので、いままでなかなか思うように言えなかったおれ、どんなに時間がかかろうとも来週は彼に言ってこます。
「同じ障害者同士、腹を割ってお互い気持ちよくやってける方法についてくっちゃべろうぜ、ベイビー」


2006年10月10日(火) 写真集を読むということ

写真集は少しばかり力を込めた眼でもって
時間をかけながらじっくり読むこと


そしてそれが上等な本であれば
ぐぬゅにゅる 肉が動くような響きが

心に馳せて

いままで一度たりとも感じたことのない
新たなる血の通った情感が羊水にまみれて産まれ落ちるだろう


2006年10月09日(月) くるくるあれよあれよと輪廻する幸福

すこぶるちっぽけな不幸を抱えてるわたし(にやにや)
こっそりふるふると恐怖して震えてるわたし(にやにやと)
かわいそう かわいそう かわいそうね(にやにやとね)
この頃 自分だけになげいてばっかりじゃないかい

照れずに あたしゃ おれ ぼく わたし『幸福』が欲しいんだと
昨日よりは すこぶるちっぽけな幸福が欲しいんだと(頬赤く)
誰よりも強く言ってしまえ 思ってしまいな(頬赤らめながら)

それはたとえば

愛しいあの子と汗ばむくらいにぎりしめて手の熱さを少しでも長く感じるとか
自分の子供がそのちっちゃな手足をけんめいに動かせて遊んでいる様を見るとか
とてもよく晴れた満開の桜が咲きみだれる中で記念写真をぱしゃりこと撮るとか
ばあさまとじいさまとあたたかな日差しの下まどろみながら語り合うとか
心の通う人とうまいものを食べて呑んで、あひゃひゃひゃ、笑い合うこととか
それはたとえてみるとまったく平凡で恥ずかしくあるかもしらんけれど
その気恥ずかしさ越えることでまた 幸福の増長につながるってこと あるんだな

もうちっとあの人の目を見てみるといいんだな
もうちっと水の中に浮かんでた感覚を思いだすといいんだな
もうちっと空へ自分を投げてみるといいんだな
もうちっと自分の痛みを受けとめたらいいんだな
そして 皮膚に太陽の光があたっているとき あー、熱い と感じたらいいんだな
ン もーぅちぃっとばかしね ほんとちっとばかしなんだね なにもかも

そうすりゃあ たぶん きっとだね
くるくるあれよあれよと輪廻する幸福
くるくるあれよあれよと輪廻する幸福
くるくるあれよあれよと輪廻する幸福


2006年10月07日(土) 自由な人 そんな人なんているのかな?

そんな人なんているのかな?
何にも縛られずただ自分の意志に従うまま
自由な人
そんな人なんているのかな?


おれにゃちっとややこしくてわかんないけれど
ざざあぶ ざざあある ざんざあある
って強い雨の降る日 
衣がびしょびしょにぬれるのもいとわず
はだしでおんもへかけだして
まるで天からの恩恵だと いわんばかりに
雨を 雫を 
全身で味わいつくす喜び 快感
それを知っている人が
自由な人ってのに少しは近いんじゃないかな?


自由な人
そんな人なんているのかな?


2006年10月06日(金) 海の底の観覧車

海底に沈んでいる観覧車に乗ろうと
海の底へ沈みゆくわたし
頭上を仰ぎ
遠ざかる太陽の塊をゆらゆらゆらりと眺める
エイの尻尾がわたしの頬に突き刺さった
色々な魚がわたしの肉をついばむ
つくつくつんつんつんつん つん つん

海底の遊園地で一番の目玉 巨大観覧車にのりこんだ
水をかき混ぜるようにしてぐらんぐらあん回転がはじまる
ずっずっず ずっずっず ずっずっず ずっずっず
ご覧よ 遥か遠方の海面まで見渡せるわ 潮の流れまで見渡せる
ずっずっず ずっずっず ずっずっず ずっずっず
あの崖から落っこちると もう もどれない 暗黒よ
ずっずっず ずっずっず ずっずっず ずっずっず
ぎしらぐすく ぎしらぐすく ぎしらぎしらぎしぎしぎしぎしぎぎぎぎぎぎぎ
観覧車のてっぺんに居るわたしは 迫りくる地面を 眺めて
ああ いまにも 倒れそう
 
やがて地響きをたてて 観覧車は 横倒しになった
その地響きは世界のことごとくを浄化せんとばかりの激しい波をひきおこした

あらゆる人種の何億もの死体が海の底へ沈んでいるそうね
海の底ではまたぞろ新しい遊園地を 観覧車を 建設しているそうよ
わたしはあの暗い崖の底へ落ちちゃったから新しい観覧車には乗れないけれど 
噂には聞いてる また とても 大きな 更に大きな 観覧車だってことはね

みんな遊んでいったらいいと思うよ
観覧車に乗ったらいいと思うな


2006年10月05日(木) ただそれだけのこと

ここの何もかもは錆びきり濃厚に赤茶けている
誰かが居た 誰かがここに居た あまたの人々かつてここに居た
幼子を象った人形の首けらけらお笑いになった
切れた電球がパンパンパンパパパンと拍手のようにしてまたたき また暗くなった
二度と動くことのないはずのエレベーターがグワッチャ ゲチャ リ ギリギリ ギリ 気味の悪い音きしませて動いた
上空ではにやけた面構えの黄金色の太陽がぎらぎら輝く
油絵で描かれた誰かの自画像の男が手に握るボーリングのピンをくるくるまわしてた
木彫りの地蔵が雪の結晶を舐めへずって喉をうるおしたい、と呟く
カカン カラリ と転げた地球儀のてっぺんにあった土地はインド大陸
つららの下がっているぶらんこ 錆びた音きしませて奇妙に蠢いて
雪の積もったカーブミラーはかつてここに居た人々の姿に動作を再現していた
腐食に半分崩壊しているドアを誰かがどんどん叩き 誰かが開き 誰かを招き入れ 誰かが閉めた 雪に残っている誰かの足跡

北陸のある地域の廃墟の中で誰も知らずにひっそり起こった ただそれだけのこと


2006年10月04日(水) 歯は母は抜け落ちる

今年退社のおれという人
怠惰な生活を過ごしてる
その部屋のあちこちにて
鈍くぎらりと光るものは
抜け落ちているおれの歯
散らばる歯を拾う母の腕
肩より上へあげることは
もう二度とできなくなる
病院で受ける医者の宣告
それが先週の水曜日の昼
なんだかある一種の儀式
すこぶる不穏な気配をも
もちあわせながら二人で
母とおれは旅行をしたよ
熱海秘宝館愛と神秘の館
目指して新幹線で行った
熱海の貴婦人と浦島太郎
一寸法師にモンローらが
狂おしい性にふけってる
そんな館そんな館の中で
俺幻想の部屋でまどろみ
横の部屋で母は覗いてた
腰をくねらせる性的踊り
丸い覗き穴からこそりと
おれという人が息してる
おれという人が存在する
それはこの母という人が
父という人とセックスを
そして孕みつ出産したと
おれという人を産んだと
ただその歴然たる事実に
おれの歯は抜け落ちゆく
ぼたぼたに抜け落ちてく
歯無しのおれはまるでね
なんにも知ってやしない
赤子のようだったんだね
いやだばかだあほだよね
母という人の庇護の下に
甘んじてるおれという人
感謝の念はけして忘れず
離れてゆかねばならぬよ
感謝の意はけして忘れず
離れてゆかねばならぬな
差し歯をぷすぷす刺して


2006年10月03日(火) どれみふぁそらしドライブ

愛しすぎて愛しすぎて骨の髄から愛しすぎた
とんでもないほどに愛したあなた
ドライブへ行こう
真夜中のライト無しのドライブへ行こう

行こうよとわたし声を張り上げて



ドーはドライブのドー

おや窓の外をごらんなさい
どこかのまぬけな小僧 内臓はみだしてる
車にひかれたようだね ごらんなさいってば

レーはレバーのレー

おや窓の外をごらんなさい
日が暮れてきた 灼熱の塊しづんでる
真実赤いわね ごらんなさいってば

ミーはミートのミー

おや窓の外をごらんなさい
星がとびはねるように 踊ってるわ
またたいてるわね ごらんなさいってば

ファーはファックのファー

おや窓の外をごらんなさい
色とりどりのモノリス そびえてる
まったく狂いそうね ごらんなさいってば

ソーは相思相愛のソー

おや窓の外をごらんなさい
かたっぽうの靴がひとつ 落っこちてる
ごらんなさいってば

ラーはラッキーのラー

おや窓の外をごらんなさい
あの月の大きさときたら まったく絶望的ね
ごらんなさいってば 



シーはシンデレラのシー

さよなら さよなら さよなら さよなら
一度たりともめざめなかったあなた これからもずっとめざめることのないあなた あなたとわたしは愛しあってた 骨の髄まで 世界が白んできている愛してる愛してる愛してる愛してるひとりきりの孤独にたえられないわたしずっとオナニーしてあなたを想って白む世を迎えるわ迎えたいのさよならさよなら愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してたの!


2006年10月02日(月) ズッコケ老人三人組

年を重ねておんしらとともにてんやわんやじゃよ!
あの無垢な素晴らしい過去をもう一度!
なんてくだをまくばかりでなく!
年を重ねておんしらとともにてんやわんやじゃ!
地獄も極楽も駆け抜けたあるんじー!ビェイビー!ビェイビー!

腰も折れ曲がり、眼もかすんでる、
総入れ歯のチビ、デブ、ヤセのじい様たち、
杖を振り回して血管も切れそうなほどに絶叫。

人混み溢れる商店街の中心で。


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