ことばとこたまてばこ
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2006年03月30日(木) 沼はプリンを食べたかった

泥沼にぷかりと浮かぶプリン。
一面の茶色の中、雄々しいカラメルの黒が覆いかぶさった艶かしい黄色。
深い緑色の苔むす甲羅を背負った老亀が水面に顔を出す、
そのさざ波がプリンをふるふるると震わせる。

願わせる、そのはかなさが。

切望させる、その黄色で。

沼の向こうには陰鬱な木陰をもたやすく払拭するほど目にも鮮やかなる紅い鳥居がそびえたつ。
そのたもとで血走り濁った目付きの男性はしばし呆然と立ち尽くすことを愉しんでいた。



アメンボがするすると行き交う沼は

プリンをやさしく

食し


た。


2006年03月21日(火) 割れなかった茶色い壷

殺戮と悲鳴と輪廻、古代の音。

屈強な青年は大ナタを手に、幼子の腕を根元から切り落とす。

紫の空、金の空、茜の空、灼熱の空。

鮮やかな入れ墨で彩る、おまんこ。

風化した全身、霧散した全身、そして昇華する全身。

笑う満月、一筋の細道に人影は吸い込まれて消えゆく、どこへ、笑う満月。

渇いた土ぼこり吹き荒れる荒野、汗水をしたたらせる、汗にまみれるハチドリ、コンドル、フクロウらは激情に全身をうねらせて。


2006年03月12日(日) たまじゃくし、お。

愛してる
愛してる
愛してる
無頼派派中学3年A 組の教室の片隅に置かれた金魚鉢で
育てられているおたまじゃくし、


今宵、月光に愛でられつつ、
ついに手足がちょんとはえたよ!



愛してる!愛してる!愛してる!


おたまじゃくしは歓喜にうちふるえて
尾っぽと手足をふるわせる。 何の歓喜?


愛してる!


愛してる!


いやあ〜、てんでわからないわ。


愛してる!愛してる!  愛してる!


ただ、ただ、あただだただただた愛してると

足出てると、愛してると、ほんとう、まじ愛が足りてるって

情がどぼどぼとこぼれて、だから、さね、愛してる!

愛してる!


愛してる!

愛してる、愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる   愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる  みんな みんなみんんなみなみんあみんあ 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる           愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる  愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる    愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる  愛してる  愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる
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愛してる!


2006年03月07日(火) 悲しくあの子だけの音  (作成:高校時)

「あっ」

「?」

「…ねぇ、なにか音…しなかった?」

「いや、なにも聞こえなかったけど…」

「ううん。絶対なんか音がした」

「音…?」

「うん。ちょうど後ろから草を踏むような音がした。がさがさ、って」

「どこから…どこから聞こえてくるんだ?」

「ほら、あっち」

「…なにもないよ」

「んっ、また聞こえた!ほらほら、今度は雨の足音が聞こえてくる。しとしとしとぴたぴたぴたんっていつまでも続いて軽やかな感じ。あたしこの音大好きなの」

「…よかったね」

「今日天気予報では晴れだっていってたから、まさか聞けるなんて思わなかったわ」

「…」

「あっ、雲ってきた。そろそろ降るわよ」

「ああ、本当だ。るいの言うことはよく当たるね」

「当たり前だもの。あたし耳聞こえるんだもん。ヒデも聞こえるはずなのに聞こえないなんてヘンなの」

「そうだね。なんで俺だけ聞こえないんだろうね」

「雨の足音もそうだし、他にもいろいろ気持ちのいい音ってたくさんあるのに!」

「ふぅん、そっか…。例えば、どんな音があるんだ?」

「えっと、車のエンジン音?ぶろろって感じでさ。他にはー、そうだねー…、そうそう!星の落ちる音ってあるんだよ!分かる?」

「いや、分からないなぁ」

「なんてゆうのかな。流れ星ってとても速いじゃない?見てる間はぴゅんっ!って矢みたいに素早い音なんだけど、見えなくなってもその音が残ってて、えっと、その余韻はとってもゆるやかで穏やかで…自然に落ち着くような感じなんだ。言ってることおかしいけど、本当にそんな音」

「へぇ、そんな音あるんだ。聞けるなんて羨ましいよ」

「思い出した思い出した。まだまだあるよー。雲の流れる音!雲ってやっぱりさぁ、気まぐれなんだよねー」

「へぇ?」

「だってさぁ、大きさだけじゃなくて聞こえてくる音もばらばらなんだもん」

「ばらばら…?」

「っとねー、大きな雲だったら風に吹かれてる間、っどぉほほ〜…みたいなまぬけな感じの音で、小さな雲だったら、っぱゃああ〜…って慌てたようなせわしない音をたてているのよ。どれも微妙に違ってて耳を澄ませて聞いていると楽しいんだ」

「ふぅん。そうか。そうなんだ…。るいは青空好きだものな。気持ちよく晴れた日にいつも空を見ているのはそういうわけだったんだね。いいね。いいよなぁ。いいよ、うん。俺も、俺も…そんな音をるいと一緒に聞き、たい、よ…」

「やだ、ヒデ、どうしたの。なんで泣くの。」



るいは身体障害程度等級2級の重度ろうあ者だ。

どれほど高性能な補聴器をつけてもまったく聞こえることのない彼女は、聞こえない音を求めて、音を聞けない自分の障害を忌み嫌ってきた。

そしてある日を境に音を聴くようになった。

なんの音も聞こえず、なんの音も発することのできないはずなのに、音が聞こえたと言い、見事な手話を交えてありえないはずの音をつたない発音で懸命に表現しようとする。

雨の足音がすると言う。

星の落ちる音がすると言う。

雲の流れる音がすると言う。

実際にそんな音なんてないのは聞こえる俺が一番よく分かっている。

だけど彼女は聞こえると言う。

楽しげに語る彼女の様子を見ていると、どうやら誇張でもなんでもなく本当に聞こえているらしい。そして本当に気持ちのいい音らしい。

聞こえる俺には聞こえなくて、聞こえない彼女には聞こえるという。

それは聞こえているんじゃないのか。

だが現実にそんな音はない。だが彼女にとってその音は存在している。

ああ、分からなくなってきた。

なにが正しくて、なにが間違っているのか。

いや、そもそもなにも間違っていないし、なにも正しくないのかもしれない。


俺はうらやましい、と切実に思う。


悲しくあの子だけの、ただ独つの、音。


るい。


君の聞いている音はどんな音なんだ。


2006年03月06日(月) ごにんのこども  (作成:高校時)

暗い茜色の空を
凝視する ごにんのこども
10個のめんたま
しかしその中のひとりめは
めくらゆえ 見くるは8個のめんたま


暗い茜色の空へ
耳をとぎすませる ごにんのこども
10個のおみみ
しかしその中のふたりめは
つんぼうゆえ 聴くるは8個のおみみ


暗い茜色の空に
魂を叫ぶ ごにんのこども
5個のおくち
しかしその中のさんにんめは
おしゆえ 叫ぶるは4個のおくち


暗い茜色の空の下で
歩み始める 5人のこども
10本のあんよ
しかしその中のよにんめは
ちんばゆえ 歩くるは8本のあんよ


暗い茜色の空へと
手を差し延べる ごにんのこども 
10本のおてて
けどその中のごにんめは
てぼうゆえ 延ばすは8本のおてて


暗い紺色の空は やはり
暗い紺色の空でしかありえません

5人の子どもは やはり
5人の子どもでしかありえません

暗い紺色の空は

夜明け前
夜更け前

どちらでしょう

どちらでしょう

風が吹き 塵が舞う 

ごにんのこども の 吐息
赤くみなぎる命 の 吐息


2006年03月04日(土) 愛だけを呼び寄せる女がいる

あの女は
望む望まざる

かか
わらず


の介入しない
おそろしく
やさしく
暴力的な ただ
ひと



愛の極みを


2006年03月02日(木) アイコショウ


死に愛の胡椒をふりかける。



ふびわらっくれっしょーン!



ひときわ盛大なくしゃみとともにおびただしい涙と鼻水は空を舞って。



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