日常のかけら
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◇えっと…おめでと◇

カエデ紅葉の葉が色付く頃から、裏山の中をずっと見て回って。
一番綺麗に色付いた、一番鮮やかに染まった木を探して。
見つけたそれは目の覚めるような色彩に染まって、秋の陽差しに輝いてた。
一番の見頃はもう少し先で、三蔵の誕生日頃だと教えてくれたからお弁当持って一緒に来ようって計画立てたのに…。

朝から雨降ってるし、寒いし…

三蔵は疲れ果ててまだ寝てる。
だから朝ご飯もお昼ご飯も笙玄と二人だった。

つまんなくて、淋しかったけど、いつもいつもたくさんの仕事で忙しい三蔵のたまの休みだから。
それにとても疲れた顔して、不機嫌だったから。

でも…行きたかったな…


  ***


ぺちんと、頭を叩かれて目が覚めた。
寝てたみたい。

「んぁ…?!」

振り返れば三蔵が呆れた顔して立ってた。

「こんな所で器用に寝るな、サル」
「へ?」

身体を起こせばぐらりと傾いで、落ちた。

「…ってぇ…」
「猿も木から…いや、窓枠から落ちる」

ため息混じりに言うから、思わず膨れた。

「ガキ」

って、更に呆れられて、引っ張り起こされた。

「あ…ありがと」

言えば、

「ついでだ」

そう言って、新聞を広げながら長椅子に座った。
さらりと金糸が流れて光る。
新聞を見つめる顔は疲れが取れたのか、すっきりしていて安心した。
だから、カエデ紅葉を見に行かなくてもいいかなって。
疲れてない三蔵は何よりも綺麗だから。

だから…

「さんぞ、おはよ。んで…誕生日おめでと」

言えば、いつもの返事が返ってきた。

(悟空)

2011年11月29日(火)