Title / Place of peacefulness(安らぎの場所)
◆Thanks◆
 music by Are you
picture by LOSTPIA



思い出の貝殻をお気に入りの小瓶に詰めたら・・・
耳に近づけてそっと・・振ってみてください
懐かしい音が聴こえて来ませんか!?



行かないで・・・

 
わたしの中のあなたが
いま音を立てながら崩れ
輪郭も残さずに
黙って立ち去ろうとする

哀しい幻想が
わたしを捉え 氷となって染みてくる
わたしは怯え 泣きながら
なぜか夢中で星屑を拾いはじめる

あなたのすべてを知りたくて
ポケットいっぱい詰め込んだ
大切な心の欠片たち

いま
そのポケットは空っぽで
悲しい骸のように憐れ

どうしてなんだろう
あんなに一生懸命に拾い集め
ひとつずつ大切にしまったはずの
あなたの心が
いまどこを探しても見つからない

ひとつまたひとつ消えていく
あなたの姿 あなたのかたち

月の影に  山の頂に  清流の音に
すべての場所で
あなたの姿探し 彷徨い

暗闇に戸惑う眼差しは
永久(とわ)にあの光に逢うこともなく

暗闇に溺れる手は
永久にその幻影さへ掴むことなく

いまこうして
泣きながら 
あなたの名前を
声にして呼んでみても

いっぱいの星屑は
暗い闇を染めて
この涙の上に
虚しく降り続けるだけ

行かないで
どうぞ 行かないで 



098      
 


珈琲の楽しみ方・・・私の場合

 

珈琲豆を挽く
がりがりって音が好き
慌しく過ぎた朝の時間を
こげ茶色のリズムで包みこむように
ひと時の静を破る音

珈琲を沸かす
ぼこぼこって音が好き
あの人に逢うための服を選びながら
待つ豊かな時間

珈琲を淹れるのは
ほろ苦さと甘さの架け橋を
渡る手前の躊躇いの水

深い珈琲に
微かに(かすかに)秘密まぜて
香り味わう
ひと時がとても好き
待つ時間を珈琲で埋める
そんな時間が好き



097


六月の月は・・・今におぼろ

 
六月の月を護るように
ふんわり優しげな雲がかかり
まだ危うげな光が
自信なげに顔を出すころ
あの時の旋律が鮮やかな音符で
夜空をはしる

わたしは酔いの中で
あなたに戯れながら
体をあずけて歩く
さっきの店で聴いたジャズピアノ
余韻は続きのページを捲らないままに
甘く響きを残し
あなたの優しさだけが
薄い月明かりに浮き上がる

あのままずっと時間が止まっていれば
月は変わらないまま
今もそこにあったのだろうか
あのときもっと優しさに甘えていれば
月はわたしを許しただろうか

いいえ
六月の月は妖しい光
溺れてはいけないおぼろな光
誰にも戻れない時があるように
誰しも忘れない月があるけれど
六月の月を愛してはいけないと

今宵の月が
わたしをひそかに照らし
凛とした顔で諭すのです



096


紫陽花のころ・・

 
優しげに
風に揺れる命の焔
甘く芳しく佇む

眼差しあげれば
恥じらいのまなこ
俯きながら綻ぶ口元

少女の姿
遠い面影
紫陽花の小道
学生たちの朝

遠い記憶の彼方
万華鏡が
次から次の色を見せ
古い絵を描く



095


潮騒に・・・紫のおもいで

 

風の中で
ふとあなたの声に
呼び止められた気がして
あの優しい空間まで
時を戻してしまいました

かわいらしい貝殻が
いくつも いくつも
あなたの両てのひらに乗せられて
ひとつひとつが
眩しい煌きを放つ

時は止められたまま
風の音が耳に揺れ
遠い島影に
記憶のモニュメントを運ぶ

かなたに見える幼子が
白く長い砂浜を
走りながら近づいてきます

あれは 遠い日の私
あれは 遠い日の紫色のおもいで
祖母と遊んだ海を眺めて
夏のはじめの潮騒に耳を傾けて・・



094


いつか・・・涙は虹に

 
雨がいっぱい降ったなら
蒼い涙はいつか
虹へと変わっていくでしょう

悲しみはいつか溶けて
空の雲となり
優しい木陰を作るでしょう

悲しみはいつか溶けて
雨上がりの虹となり
キミのいる場所まで
橋を架けてくれるでしょう

悲しみはいつか溶けて
キミの笑顔で
父の心をいっぱいにするでしょう

悲しみは永遠じゃない
いつか溶けて
思い出に変えることができるでしょう

涙はいつか溶けて
慈愛の虹を架けるでしょう

そのときまで
わたしたちは
信じて祈りを捧げましょう




093




***

痛ましい事件・・・

”娘にあてた手紙”を読んで




キミに逢いたい

 
まばゆい光線のかなた
瞬時にキミの姿見つけた
いつものように
少しだけの白い笑顔と
少しだけの横向きの影

いつかキミの恋話黙って聞いた
いつかキミの詩涙で読んだ
いつか・・・・

キミの来なくなったこの部屋は
渇いた思い出だけが無機質に彷徨い
ドアは空しく開けられたまま

この光溢れる空の下
私の声は届かない
キミの声も聴こえない

まばゆい光線のかなた
瞬時のキミは
幻の空に消えた

もう
探すことはしないけど
願いだけは届くかな

もう一度・・・

キミに逢いたい



092

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