baby poem
DiaryINDEXpastwill


2005年01月25日(火) みかん

中村が会社でみかんを
食べ続け
おいしいっすよー
って言っている
横顔を見て気がついたのだ
そうだ 人間の
皮膚の色に影響を与える食べ物なんて
みかんだけだ

それなら俺は その特性を
応用することを考えよう
俺の顔は たいがい
青い色をしているか
赤い色をしているか
だから

青い色をしているときに
なるべく赤い色になるよう努力しつつ
みかんを食べつづける
みかんの色素が
皮膚の表面に到達して


黄色
三原色が重なり合って

となる

それから俺は
夜の上野に繰り出そう
上野の森の上空は
商業ビルの光をわずかに反射しながら
べッタリと塗ったような

であるので

きっと居心地がよい

という話をしたら
みかんの特性を活かすなら
クエン酸で血液サラサラ、とか
風邪の予防にビタミンC、とか
って中村が言うから

それなら俺は
クエンサン と ビタミンシー
を1モルずつ
180℃で6時間
分解
反応
あらたな分子
クエンサタミン と しーびん
が、できた
ので

クエンサタミンを しーびん に注ぎ込み
黄色くあわ立つ クエンサタミンを
こぼさないよう しーびん 抱えて
帰宅する

下駄箱に しまっておいて
そのまんま

下駄箱は ふだん使わないもので
いっぱいだ


2005年01月24日(月) 鰹節の中に住んでいる

内側から削る
削り節ができる
煮る
においが出る
鼻から吸い込む
頭の裏側にカツーンとくる

内側から削る
削り節ができる
煮る
煮汁をすする
すこしアンモニア臭がする

内側から削る
削り節ができる
そのままほおばる
奥歯にはさまる
舌先でちろちろさわる

内側から削る
削り節ができる
床に散らばる
指先をなめて
指先にくっつけて
くっつけたやつをなめる

天井も削る
削り節だらけになる
襟首に入り込む
襟首がちくちくする

内側から削る
一気に突き刺す
一気に、切り取ろうとする
ちいさいかたまりがすこし
煮る
やわらかく煮る
分解して
すじを一本一本引き抜いて
並べる

内側から削り続ける
内側から削り続ける
息で壁が湿る
汗で床が湿る
ときどき手を切る
ときどき血が出る
削り節が鼻に入る
削り節が傷にまとわりつく
削り節に満たされていく
削り節で息ができない

頭の裏側がカツーンとする


2005年01月10日(月) 風のつよい日

風のつよい日におりていく
記憶をさかのぼりにおりていく

子供のころから慣れ親しんだ
あきらめの場所へ
行きかたを知っている
というか、ただ、おりて行きさえすればいい

あきらめの場所には何があるか知らない
でも、とりあえず、壁がある
いつからあるのか知らない
当たり前のようにあった
意識のめばえのころ、もう壁はそこにあった。

壁に向かって走っていって、そのままぶつかるケース
壁に向かって走っていって、その直前で直角に方向転換するケース
壁に向かってスッと、立って、チョークでもって絵を描くケース
壁に対する対処法がいろいろあることを
本で読んで知った
しかし、この壁は、ほんとにそれらと同じ壁なのか?
私はといえば
壁に対する対処法として
壁の前で眠ることを覚えた
壁を見ると眠くなるのだ
壁の向こうの夢を見る

しかし、この壁は、ほんとにその、壁、なのか?
むしろ僕には、なんらか、ラッキーなことに思えるよ
あきらめの場所から
壁をめぐることによって
きっと心の形さえ、たどることができる
安心を与える
吸収体。
自転車のスピードを落として
その前で止まり
頭を預けて湿り気を感じる
コケの生えた壁。

でもね、風のつよい日には
もう少し、おりていかなければならない
私には入れない、記憶をさかのぼって
おりていかなければならない
壁の生まれたときまでだ
まだ、もう少し、先があるようだ


南関東の冬は、東北生まれの自分にしてみれば
水道も凍らないくらいで
物足りない
でも、1月にはいって今年はとても冷える
建物の間を歩いていて、急に風が、どっと押し寄せて
顔が硬直するのも、さわやかに感じられる
そう、思いながら帰り道
「ファイトが沸いてきた」
と、独り言を言った

ファイトなんて、ついぞ使ったことのなかった概念が
珍しかったし、おもしろかったのだ
胸のすくような気分になったのだ


on baby |MAIL

My追加