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2005年06月29日(水) Think Hand , Act Brain

映像ディレクター・辻川幸一郎氏。
と再びお会いできたので、制作の話を伺った。

二月のApple Storeイベント以後も、
急速に活躍の場を広げている辻川さん。

前回のイベントの感想は「モノマニア(偏執狂)」と
書いたが、初めてお話しすると、意外にも外に転がっている
さまざまな問題、要求、案件の中で妄想を爆発させるスキマを
しっかり計算して遊んでいる様子が見えてきた。

今この瞬間にも頭の妄想は止まらないし、何が求められても
自分を殺しても、それは最終的には画面に出てしまう。
妄想が仕事になってよかったよー。と仰っていた。


いわゆるCG屋さんやカメラマン、演出家たちは
各々のジャンルの中で特異な才能を発揮し、ビジュアルに置き換える。
辻川さんもそうかもしれないが、現れる映像はジャンルを飛び越えている。

ぐにゃぐにゃの妄想は作家性といわれ、普通はそこから手法や分野が確立される。
だが、手法を限定しない軽やかなスタンスが表現の幅も限定しない。
自然とバリエーションが生まれ、結果的に次の妄想へつながってゆく。

よく、作家たるもの「浅く広く」ではなく「深く狭く」を志向せよと
古いタイプの人には言われがちだが、彼の姿は「深くて広い」。


映像という海でサーフィンの技術を磨く人ではなく、
波を読んでサーフィンもするし、貝があれば素潜りもする人。


2005年06月26日(日) ZOO

高校の同級生、M姉妹と多摩動物園へ。

サイ、マレーバク、ゾウ。
コアラ、キリン、トラ、オランウータン。
ユキヒョウ、ムフロン、シフゾウ、サーバル、エミュー。


檻や施設の拡充で、最初に行った'99年頃とは隔世の感があった。

とくに檻は鉄格子からガラス張りになって、見やすさ抜群。
強化ガラスが進化したおかげで、迫力も開放感も雲泥の差だった。
そのぶん写真にすると剥製のようだけど。


どうして大きい生き物を見ると楽しいんだろ。
宿舎の中で草を食べるサイの姿が美しかった。
そしてM姉妹の動物園マニアぶりに感動。

動物マニアじゃなくて動物園マニアなところが素敵。


2005年06月25日(土) secret gift

先日書いたSくんの話で思い出した。

中学の修学旅行・京都巡りを控えたある日。

体育の時間に幅跳びで巨体をひっかけたSくんは、
足を骨折して、ひとり地元の病院に残ることになった。
タイミングの悪さが彼の持ち味になり始めていた。

Sくん不在のまま金閣寺、竜安寺、清水寺を回った。
仲間のぼくやDくんで彼に京都みやげを買ってあげた。
全国どこの本屋にもありそうな美少女ゲーム雑誌(R指定)。

病室のSくんにニヤニヤしながら渡したら、身動きのとれない彼は
フッと笑った。それが嘲笑なのか苦笑いなのか微笑みなのか、ぼくらは
判別できなかった。とりあえずミスったと思い、その場をあとにした。

後日、退院したSくんに「おみやげどうした?」と訊いてみた。

「みやげ?ああ、あれか。病院のベッドに隠したまんまだ」

そんなもんとっくに看護婦さんに捨てられとるよ!
あぁせっかくのおみやげなのに!バカ!と思ったが、修学旅行の
思い出に浮かれていたぼくらを残し、Sくんはひとり大人の階段を上っていた。

「そんなもん」を送ったぼくらが子供すぎたのだろうか。

今思えば、彼にとっては
無理にでも大人にならざるを得ない一週間だったんだろう。
本当の意味で遠い場所へ行ったのはSくんだった。

(BGM:スタンド・バイ・ミー)


その後、あの「サドル事件」が起こるのだが、
それはまた、別の話。(ナレーション:森本レオ)


2005年06月23日(木) secret diary

小学五年生のころ。
担任が国語の教師だったためか、
ぼくのクラスは毎日、日記を書かされた。

それは毎日必ず出る宿題のひとつだったが、
毎回、定年まぎわでバーコード頭の担任・F先生が
赤ペンで長いコメントをつけてくれるので、まるで
手紙か交換日記のような気がして苦にならなかった。

だけど、毎日書いていると自ずと話題が偏ってくる。
小学五年生の毎日がそんなに起伏を帯びていることもなく、
飼っていた犬の話かテレビの話くらいにパターン化された。

だんだん飽きてきて、もっと頭の中の妄想を噴き出せないかと
考えはじめた。宿題の日記を面白くすることがぼくの命題だった。

そこで、ある企みを思いついた。

コーエーのゲーム『三国志』や『信長の野望』のやりすぎで
歴史にだけ強くて他にはまったくやる気のない友達Sくんの日記を、
毎朝、提出〆切までに男子トイレでこっそり代筆してあげることにした。

はじめはSくんの方から冗談半分で頼んできたのだが、
自分ではないキャラクターで日々の出来事を「創作」することに
狼少年ばりの快感を覚えてしまった。書ける!なんでも書けるー!

というわけで、それからゴーストライターの毎朝を男子トイレで
堪能し、Sくんがデブだったためデブキャラを逆手に愛される存在へと
日記の中で育て上げるべく頑張った。「今日ぼくは餅をつきました」。

そんなある日。
担任のF先生が放課後の「終わりの会」でSくんの日記を紹介した。
なんかちょっといいことを書いたのだろう。緊張が走った。

先生から「みんなに読んであげて下さい」と命じられたSくんは、巨体に
じんわりと汗をにじませながら一生懸命読んだ。ぼくの書いた日記を。

「ハイみなさん拍手〜。スバラシイ」

ってその中身書いたの俺ですから!
そう言えないもどかしさがたまらなく、またSくんも生きた心地が
しなかったようで、ぼくらのゴースト関係はその日を最後に解消した。


あのときの罪悪感は、ゴーストをやって先生やみんなに
嘘をついたことじゃなく、申し訳なさそうなSくんの
正直すぎる態度に心を痛めたのだと、今ならいえる。

それよりも本当は、名前が出ないところで自分の行為が
表沙汰になって結果的にスバラシイと言われていることが
だんぜん面白かったし、その感覚は今も残っていると思う。

Sくんの11歳の数週間をフィクションで塗り固めたことにも
少し罪の意識があるんだけど、当時はお互いに楽しめていた。
今日の俺はどうなるんだよ?と、トイレの前で待ってくれていた。


Sくんとは中学まで親友でいたが、どうにも歴史以外は
さっぱり勉強しなかったので(歴史も勉強していたわけじゃないが)、
彼は農業高校へ進んで、それからは一度も会っていない。


2005年06月19日(日) 何もしない

父の日。

母の日に何もできなかったので、
公平を考えて何もしないことにした。

思えば父の日に何かをしたことがない。
そう気づいたらデパートに足が向かっていた。
が、何を求めればいいのか分からなかった。
デパートにも、父にも。

流行りのクールビズは不要というか無用だし、
何を買っても大事に使ってくれそうにないので
考えるのもバカバカしくなって手ぶらで帰った。

母も使える何か、食器のようなものがいいかもしれない。
そうだ、「父の日」も母を起点に考えれば用意できるかも。

そこまでしなくていいか。


2005年06月18日(土) 鍋から芋

カレーを作ろうと思って野菜や肉を買い込んだら
鍋がテフロン剥がれまくりで全く使い物にならず、
仕方がないので実家から余り物の鍋を早急に送ってもらった。

箱から取り出すとき「意外と重いな」と思ったが
なんと鍋の中に大量のじゃがいもが。玉ねぎも同梱済み。

「あーソレこっちで採れたやつね」by my Mother.

具は東急ストアで買っちゃってるんですけど…。
もてあそんでいるのもアレなので、カレーを食べ終えた昨日、
文字通り消化試合とばかりに今度はシチューを作った。

じゃがいもと玉ねぎを
効率よく料理するレパートリーを
他に知らない。手が玉ねぎくさい。


2005年06月17日(金) 広告塔

布1枚が状況をデザインした話。


先日のオープンキャンパスで、
映像学科RINS工房出身者たちは各々の作品を出展した。

9面スクリーンという新しいフォーマットに映像を起こし、
コアターゲットの高校生に「映像で表現する」という視点を
持ってほしかった。絵画や彫刻などと同じ表現の手段として、
映像を認知してもらうための展覧会である。

ぼくはこの展覧会で、出展用の映像制作と
広報制作のふたつを助教授から依頼された。

初めは忙しいのを理由に広報は断ったが、流れでやることになった。

やるからには落とせないってことで、全員分のポストカードと会場に貼る
ポスターを急ピッチで作った。つくづく自分にはデザインの才能がないと
思い知らされるのだが、何がどこにどれだけ必要かを認識する状況把握は
ぬかりなかったと思う。入り口への導線が足りなければすぐにポスターで
応戦したり、ポストカードの置き場所も、当日によりよい場所へ移設した。

本来なら徹底したリサーチと入念なリハーサルで事前に対応したいところ。
とはいえ日程的には経験上の勘(のようなもの)と現場対応が限界だった。

だが、そんな広報の仕事を一気に飛び越える広告塔が会場に現れた。

暗幕1枚。

展示会場はプロジェクター9台で構成されるため、出入口を遮光したい。
しかし実際には、扉を開け閉めするたびに外光が入ってしまっていた。
当日になってその問題に直面し、助教授がどこかから暗幕を借りてきて
会場入口にガムテープでやや乱暴に接着した。これでとりあえず遮光。

これが何を意味するかっていうと…
遠くからでも、その部屋では何かを上映しているだろうなと思わせられる。
ひらひら揺らぐ暗幕から光と音が漏れて、適度なチラリズムを演出できる。
近づくほどに、中に入ってみたいと思わせることができる。

これでじゅうぶんじゃないか。と思った。
もちろん暗幕だけだと不親切なので、広報で急きょ
「Enter」と書いたポスターを作り、暗幕の隣に貼った。

これが何を意味するかっていうと…
暗幕が広告的要素をはらみ、ポスターは
その補足というかいいわけを担う役割になったということだ。

でもそれが理想的な広告のあり方だとも思った。
負け犬の遠吠えみたいだけど。でもほんと。

暗幕は本来の「遮光する」機能も当然備えているし、
広告的アイコンにもなった。機能性が広告になった。
ポスターやDMはその手助け(フォロー)になればいい。


期待を煽る暗幕、おそるべし。そして助教授の機転、侮りがたし。


すごく単純なからくりに気づけたことだけは嬉しい。


2005年06月15日(水) lust

あらゆる緊張から解かれ、
雨音でベランダのバスタオルを思い出しながらも
放置を決め込んで昼寝を愉しんだ。


前歯が成長しまくる夢を見た。

夜、いばらの生い茂った古城のテラスにいた。
誰もいないが、なんとなく口を閉じて隠していた。

ちーち(友達)がパーティードレスで近づいてきた。
「上でみんな待ってるよー、行こうよ」
中世風の古城にはエレベータがついていた。

ぼくはとっさに口を手で覆ったが、歯の伸びは止まらない。
ちーちには気づかれていないようだ。思い切って話してみようか。
いや、少しでも声を発しようとすると、前歯から唾液が落ちそうだ。

すでに前歯は5センチほど成長し、ぼくは限界を思った。
エレベータが最上階に到着した。手のひらを口から外した。
「実は…」「ん?どうしたの?」

あごまで到達しそうだった前歯は、元に戻っていた。
呼吸が乱れるほど伸びきっていたのに、きれいに、整然と。


明日からまた仕事だ。
友達からもらったRei Harakamiの新譜が気持ちいい。


2005年06月14日(火) investment

忙しさにかまけてカバンの奥に眠らせていたTシャツと
書籍『3万円ではじめるネット株』を大阪の弟に送った。
半月以上も遅れた誕生日プレゼントは今日届くはず。

がっぽり儲けて兄を養ってほしい。
そのための、これは「投資」だ。


2005年06月13日(月) strike a tent

昨日、オーキャン終了。
展示も撤収完了。


自分の映像をこっそり見た感想は
「編集(フェード)が甘い」のひとこと。
全体のプログラムや2分という尺の中で流れる時間軸が
編集段階で把握しきれなかったのが原因です。

ま、厳しめに見てですが。
遊びにきていた彼女の感想はさらに厳しかった。

当初描いていた「圧巻」は会場設計の妙で達成してました。
ありがとうRINS。

ほかの仕事(広報・ポストカード・Web)と
並行して一週間でまとめたことは、今までの経験が
生かされたと実感しています。徹夜にも強くなったし。


「フツーの人の知性は期待できるが
フツーの人の意欲は期待してはいけない」
と、あるコピーライターに教わりましたが、今回は
意欲にまでメッセージを届けられたでしょうか。

高校生の真剣な目が印象的でした。


2005年06月11日(土) Open to Close

本日より二日間、
MAU オープンキャンパス。


展覧会『イメージフェノメナン|映像の新領域』は
初日を迎えた。そして明日はいよいよ最終日。

早っ。

デザイン部の同胞・シムと広報(右)を担当。
そして今回、贅沢にも24人の出展者全員ぶんの
ポストカードをふたりで作り、配布した。

おかげさまで好評のよう。
自分の映像作品よりも優先してやった甲斐があった。


自作の映像については、じつはまだ見ていない。

今のところ20インチTVモニタ1台で動作確認したのみ。
9つの80インチスクリーンでどんな時空間が現れるのか、
明日こっそり見にいこう。計算通りだといいなぁ。


周りを見渡す余裕も寝る間もなくバタバタやっていく内に
あっという間に撤収を迎えてしまうことは分かっているが、
今がものすごく贅沢な時間の使い方をしているんだと、いつの日か
振り返られる日が来るのさ…ってH2Oみたい。

高校生や浪人生にはどう映るんだろう。


2005年06月09日(木) Open Campus Commercial

ムサビのオープンキャンパスに出展する映像を
さっき(AM2:36)完成させました。

ごにょごにょと無駄な編集を続けて、ムダだ!と悟り
思い切って仮編ファイルを捨ててイチから作り直しました。
こいつを9面のスクリーンに映します。

今のところ、頭の中では「圧巻」です。
作品を生かすも殺すも、この先は設営次第。

他の出展者23人の作品も(が)素晴らしいので、
それら目当てにでも、お時間のある方は見に来て下さい。
6/11と12の土日、武蔵野美術大学1号館 104教室です。


2005年06月07日(火) つくりきる

大きな、とても大きな〆切が区切りを迎え、
午前3時、数日ぶりの帰宅を果たしました。


つくる楽しさが、
つくりきる醍醐味に変わっていく
と言ったら抽象的ですが、今そんな感覚。

深夜の作業場で陽水がループしていました。
『帰れない二人』が文字通りぼくらの状況でした。
中身はあんな幻想的ではないけれど。


仮眠を取った一瞬のうちに、南の島で水着の白人たちと
凧揚げをしてバカンスする夢のような夢を見ました。

全員スクール水着で、しかも凧揚げという意味不明さが
このところの過密スケジュールを警告している気がします。


2005年06月05日(日) 耐性ボンベ

〆切が近くなるほどに「今やらなくていいこと」まで
やりたくなる。むしろ優先的にやってしまおうとする。

高校時代の期末テスト週間に奮起する部屋の片づけや
後戻りのできない模様替えは、その典型だろう。

それと同じレベルなんだろうなーと思いながら、
サイトリニューアルを見えない範囲でやってみたり、
原研哉の難解な本に手を出したり、朝4時に写真撮りに出たり。


ファイナルカットプロで動画編集をやると、Macの画面と
テレビ(orプロジェクター)の画面を目で往復することになる。
編集素材がどう実際のモニタ上で動くのか、確認の連続だから。

すると、だんだん目が慣れてきて作品に張りがなくなってくる。
見るものへの慣れが、作ることへの惰性につながりかねない。

この感覚は静止画の写真にはあまりなくて(ぼくの場合)、
映像の持つ間合いやリズムがある種の耐性を生んでしまうのだと思う。
それゆえに定期的に目を新しくする必要がある。

散歩したり、欲しいものも無いのに買い出しにでたり。
外の風景に触れることで、目と頭をリセットしているんだと思う。
それが高じて一駅分も歩き出したら「逃避だな」と気づく。

Act Analogueだもんね。


2005年06月03日(金) asphalt.jpg


2005年06月02日(木) 明るい〆切

今月は〆切のオンパレード。


11日と12日にムサビのオープンキャンパスで
卒制に使った映像素材を展示させてもらう。

素材だが、卒制でのインスタレーションとは違った、
新しいイメージの抽出になるかと考えている。詳細は後日。


中学生の頃、美術の教科書に恐ろしくダイナミックな
日本画が掲載されていて、美術の先生に「これいいなぁ」と
話したら「この校舎ひとつ買えるわよ」と脅されて飛び上がった。

10年後の今、その絵を描いた日本画家のお手伝いをしている。
ご本人に会ってお話が出来るとは、10年前は想像もしなかった。

それ以上に、今月末からの展覧会の準備に関わっている事実。
まだ〆切まで時間はあるが、提案と実験を重ねながら丁寧にやりきりたい。


〆切ごとに相手のことを想像する。
望まれてやっていることではなくコンペに勝つためのものであっても、
受け取る相手が割いてくれる時間を、可能な限り満足させたい。

そのための準備は周到に。今を丁寧に。


2005年06月01日(水) 進化論

最近響いた言葉。


「変化する者が生き残る。
 強い者でも
 賢い者でもない」

by チャールズ・ダーウィン

本当に強く賢い者は変化することを厭わない
という裏返しの言葉でもある、と教えられた。

もういっちょ。


「Think Digital, Act Analogue.」

by スティーブ・ジョブズ

ツールは揃った。あとは、動くだけ。
iPodを生んだ企業の人ならではの言葉。

さらに。


「なんかいいよね禁止」

by 谷山雅計

世の中の物事を「なんかいいよね」で流せる人は受け手。
受け手から作り手に回りたければ「なぜいいんだろう?」と
考えるクセを持っているべき、という意味。だから禁止してみる。

以上3つの言葉が頭を巡る。




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