ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2008年08月28日(木) 風よ伝えて

雨のち曇り。その灰色の雲の隙間から沈む太陽を垣間見た。


そうしてぼんやりとむかえる夜。
なんだか。あたまとかこころとかするりっとさらりっとしていて。
はりつめていたものが。ぽろりっところげおちてしまったようだ。


ひとは少なからずみな。自問自答を繰り返しながら生きるのだと思う。
そこには試練のように。理不尽なことだって待ち構えていたりしては。

悔しかったり情けなくなったり。憤りや怒りだって付き纏うものなのだろう。

そうして闘う。だってそれが行く手を阻むのだから。そうするしかない。


たとえばとても大切に思っているものが。そこでないがしろにされていれば。
なんとかして救ってあげたいと思う。生かせてあげたいと心からそう願う。



でも。現実は厳しいね。思い通りにいかないってほんとに苦しいことだね。



みとめたくてもみとめられない。

ゆるしたくてもゆるせない。

守りたくてもまもってやれない。



いいさ。それで。それがありのままのじぶんだもの。






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※はちがつにじゅうくにち くもりのちあめ

 三週間ぶりにバドをした。すかっと楽しかった。


※はちがつさんじゅうにち あめのちくもりのちこさめ

 小雨決行で夜空に花火がいっぱいあがった。
 泣き虫の空を。励ますようなその光が眩しかった。
 ありがとう夏。またきっとあおうね夏。

※はちがつさんじゅういちにち くもりのちはれたらいいな

 どうかひとひらの希望を どうか見つけられますように。 



2008年08月27日(水) どこまでも流れていこう

今にも雨になりそうな曇り日。とても涼しい風が吹く。

国道沿いのお寺の庭に夏水仙の花を見つける。
それは鮮やかなピンク色で。彼岸花の姿に似ている。

もう花の盛りは過ぎているのかもしれなかった。
今まで気づかずにいてごめんねと遠くから声をかける。

最近いけないな。草花と語り合うことを疎かにしているようだ。
植物はほんとうにさりげなく在り。求めることをしないもの。
だからこそ気づいてあげないといけないなとあらためて思う。

そうしてやっと我にかえったような。新鮮さを感じることが出来た。
穏やかに生きよう。何も思い煩うことなく心をひろくして生きよう。


時というものはありがたいものだ。流れているから身を任せられる。
逆らえば苦しい。もがけば溺れる。求めれば渦に呑み込まれるだけだ。

さあ心機一転。きもちよく流れていこう。すいっとすいっといこう。




そうそう昨夜とても素敵で不思議な夢を見たのだった。
時が流れてしまったら忘れてしまいそうなので。書き記しておきたい。

暗い夜道を一緒に歩いているひとがいて。暗いね・・って片寄せあって。
そうしたら突然夜空に花火が上がったのだ。それは真っ白な花火だった。
どうしてだか音は聴こえず。でもその白い花火のなんと綺麗だったこと。
いくつもいくつも上がって。ぱあっと花開いたかと思えば一瞬にして零れる。
その滴のようなものが。まるで雪のように空から舞い降りてくるのだった。

そのひとは子供みたいにはしゃいでいた。その横顔をはっきりとこの目で見た。

そこでフラッシュ。今度は川沿いの夜道をてくてくとふたり黙って歩いていた。
そうしたら突然そのひとが大きな声をあげて「逃げろ!はやく」と背中を押した。
私は何がなんだかわからないまま駆け出してしまう。私だけが行かねばならない。

何処へ行けばいいのだろう。気がつけば無我夢中で暗い夜道を走っていた。

やっと振り向いた時。そこはただ静寂と闇ばかり。そのひとはもういなかった・・・。



まあそんな時もある。そのようにして季節は流れていくものなのだろう。

今度そのひとに会えたら話してあげよう。きっと大笑いしてくれるだろうな。









2008年08月26日(火) 大波小波どんとこい

あたりはもうすっかり夜になりにけり。

あぶらぜみ生きていたのかもっと鳴け。

いま窓のそとはとても素晴らしく夏だった。



サチコと一緒に市民病院へ行く。
半日がかりでいろんな検査をしたが。
これといった異常が見つからずに終わる。
でも大丈夫でしょうとは言ってもらえず。
また日を代えて他の検査をするのだそうだ。

いまはすっかり元気になっているものだから。
正直なところ母娘は。もう良いかな・・の気持ち。
でもとことん調べましょうって言ってもらえるのは。
ありがたいことだと思う。来週また行くことにしよう。

ふたりすっかり気疲れしてしまい。おまけに空腹だった。
病院の近くにオムライスの美味しいお店があるから行こうと。
サチコに連れて行ってもらった。母さんの大好物であります。
5百円なのにすごいおっきなオムライスだった。感激でした。
付け合せの野菜サラダも残さす食べて。お腹が一杯になった。
美味しいものを食べると。とても幸せな気持ちになれるものだ。


帰宅して。ばたんきゅうとだらしなく茶の間で横になる。
少し眠ろうと思うのだけれど。思うようにはいかなくて。
また例のごとくでいろんなことをあれこれと考えてしまう。

たくさん波が押し寄せて来ている。大波小波どんとこいと。

勇気を出して漕ぎ出してみたい。それが無理なら魚になってみせよう。





2008年08月25日(月) だってそれは生きている。

いちにちじゅうおなじことばかり。

ぐるぐるしながらかんがえていた。

こたえがみつかったとたんしぼむ。

それをひっしでふくらまそうとして。

しっぱいをする。あきらめないで。

またにているかたちをさがしては。

なんとかきれいにきちんとしよう。

そればかりにやっきになっていた。


どうして完璧でなくてはいけないのだろう。

しぼんでいたっていびつだって間違っていたって。

そのかたちそのものが愛しければそれでいいではないか。

こころをこめてこれからも大切にしてあげられるなら。

それはきっと育ってくれる。だってそれは生きている。



ゆるしてあげよう。みとめてあげよう。守ってあげよう。



2008年08月24日(日) 過去からの手紙

昨夜眠りにつくまえにふっと開いてみた本から
はらりっと白い紙きれが舞うように落ちてきた。

ノートを千切り四つに折りたたんだその手紙に。
またいっぱい話そうねって走り書きの懐かしい文字。

たぶん10年。ずっとこの本のなかで眠っていたのか。
それがやっと私の手のひらに届いた瞬間でもあった。


あの頃の彼女はとても悩みながら日々苦しんでいたっけ。
うなずきながら慰めながらかといって何の力にもなれず。
ずっと見守り続けていた日からこうしてはるか歩んで来た。

いまはたくましいお母さん。この夏再会した日の笑顔が。
とても嬉しかった。もうだいじょうぶ。きっとだいじょうぶ。

手紙をそっとまた折りたたみ。その本に願いをこめて預けた。




わたしはひとが愛しくてならない。


そのひとの未来に会いにいきたくてならない。




2008年08月23日(土) だいじょうぶ。なにもなくしてなんかいない。

処暑。またこの日がやってきたと思うのはよそう。

どんなに退こうと。それはまた巡り来るものだから。

だいじょうぶ。なにもなくしてなんかいないよって。

空に声をかけてあげよう。そうして風のように流れよう。



うん。これだ。このリズムが私は好きだ。
浮上しているのかな。そうだといいなあ。




昨日の今日で不安になりサチコを職場まで送っていく。
心配ないよと言いながら甘えてくれたのが嬉しかった。

まだ開店前のショッピングセンターって意外と楽しい。
「おはよう」の声がいっぱい聴こえる。忙しそうだけど。
なんだか。さあやるぞ!って活気がいっぱい溢れている。

そんな活気の中にサチコが駆けていくのを。ほっとして見ていた。
母もここで働いてみたいなあってちょっと思う。掃除婦さんかな。
お惣菜作るおばちゃんがいいかな。なんでもいいやここ好きだもん。

入り口の自動ドアのところには。お年寄りが多くみんなのんびりと。
そのドアが開くのを待っている。のどかな朝の空気が心地よく感じた。

母も一緒に行く。10番目くらいにその空気の一部になり溶けていく。
そうして真っ先にサチコが居るお店に行った。お客さんですよの顔して。

笑顔で働いている姿を見るとすごく安心する。無理してないかな・・って。
やはりちょっとは心配もするけど。だいじょうぶだよの姿が嬉しかった。




はぁ・・よかった。今日嬉しかったことちゃんと書けたみたい。

落ちるなよブレーカー。しっかり灯りともしておくんだよ。がんばれ!



2008年08月22日(金) それがただの感だとしても・・・。

晴れのち曇り。湿気を含んだ風が強く吹き夕方から小雨が降り始める。
真夏日が49日も続いていたそうだ。なんだか一気に熱が冷めたように感じる。


サチコがお休みの日だったので。ふたり台所で晩御飯の支度をしていた。
そしたら。なんか急に気分が悪くなったと言い出し。そのままどーんと。
真後ろにぶっ倒れてしまう。ほんとに一瞬の事で何が起こったのか解らなかった。

「おとーさん!」大声で彼を呼ぶ。サチコの顔は血の気が引いて冷たくなっている。
息もしていないように見えた。目は開いたまま白目になっていて。ああどうしよう。

大変な事になった。サチコ死ぬな!死んだら駄目だよ!母の心臓も張り裂けそうになる。

すぐに駆けつけて来てくれた父親が。サチコのほっぺたをバシバシ叩いた。
名を呼びながら「こりゃ!しっかりせい!」って怒鳴るように呼びかけていた。

ああ・・よかった。サチコの意識がそうして戻る。ほんとにほんとにほっとした。

そうしてしばらく安静にしているうちに。お腹が空いたと言い出して晩御飯を食べる。
お風呂も入りたいと言い出し。なんと髪まで洗って。いつもと変わらないサチコになった。


母はとても安堵しているはずなのだけれど。悪い癖みたいに心臓がばくばくしている。
とにかく気を静めようとこれを書き始めてしまった。ああ・・だいぶいい感じになった。


今夜はほんとうは二週間ぶりのバドの日だったけれど。
朝からずっと気が重くてしょうがなかった。
行きたいような行きたくないようなとても複雑な気分に苛まれていた。

いま思うと。これが虫の知らせっていうものなのかもしれない。


ここ数日。いろいろ思い悩むことが多く。なかなか思うように浮上できない。

だけど。いま信じていること。それがただの感だとしても。それを信念だと思って。

これからを歩んでいきたいと強く思っている。

明日のことはわからず。未来だってわからない。

だけど祈ることは出来る。それが私の精一杯の『ちから』だ。








2008年08月21日(木) わたしも好きなように鳴こう

部屋中に西陽が降り注ぎ。はっとするほどの紅に満ちていた。
西向きの窓辺からその姿を見る。そこはいつもと違う場所で。
どんなにか私が無関心であったかを。知らせるように眩しかった。

ぐんぐんと落ちていく。成すすべもなく落ちるものが愛しくてならない。


そうしてやすらぐ。やっと戻ってこられた。ここで安堵しよう。
そうなのだ。やはりどうしても時が必要だったと今更ながら思う。

一気になんて戻れない。誰にだってそんなもどかしさがあるのだろう。
気づいたってどうしようもなくて。見つけたって上手く掴まえられない。

とことん落ちてしまえばいい。そうすればきっと太陽のありかがわかる。




ああいま。川辺の道を甥っ子と姪っ子達が散歩しながら横切っていった。
ちいさな犬も一緒に。なんて名前だっけ?そういえばまだ訊いていなかった。
雄なのか雌なのかも知らない。すぐ近所だというのにおばちゃんいけないね。

こんどは夕暮れせみの声。なんだか命そのものに聴こえる。とても必死だった。
その声を追うように秋らしい虫の声が聴こえる。おっとりと静かにか細くそれが響く。



わたしも好きなように鳴こう。口笛を吹くように鳴こう。

そうしてたしかめていたいことがある。それが私の意志なのかもしれない。






2008年08月20日(水) 諦めるなよ私。負けるなよ私。

気持ちよく流れていきたいのだけれど。気がつけばひどく澱んでいる。
その澱みのことをもっと知りたいとつよく思うようになってきたのだった。

何かが引っ掛かっている。それは何だろう?それをこの手で掴みたい。
そうしてそれを処分する。そう思っただけで不思議な勇気がわいてくる。

もう少しでそれがわかる。あと少し。諦めるなよ私。いま諦めたら台無しじゃないか。


それでも嬉しい日がちゃんとあって。ほっとする日もちゃんとある日々のありがたさ。

ほんとうに感謝しているのか?こころからそう思っているのか?答えなさい!

自問自答を繰り返していると。おろおろと泣き出しそうな弱い自分が見えてくる。

嘘じゃないもん!ほんとうに嬉しいもん。ほんとうにほっとしてるもん!


うん・・わかった。それはとても素直でよろしい。信じてあげようではないか。
じゃあなにかい?それなのにどうしてそれをもっとぎゅっとしないのかねきみは。

ああ・・それね。たぶんそれなのに違いない。何かがそれを壊そうとしている気がする。
それが何だかわかれば。とてもすっきりするはずなんだ。ああ・・もう少し。

ぼんやりだけどその輪郭が見えてきたような気がする。もやもやしていて。
今はまだ掴めそうにないけれど。たしかにそこにそれが漂っているのがわかる。


ははは・・ごめん笑って。だってこんなきみにあうの久しぶりだから懐かしくってさ。


もう・・ひとのことだと思って。笑っている場合じゃないでしょ!助けてよ・・。


いやだね。きみのこころのモンダイじゃないか。俺には関係ないことだもんね。

俺って・・あなたいつから男になったのよ?身勝手にもほどがあるわね。ぷんぷん。


おいおい。いまはそんなことで揉めてる場合じゃないだろ?ちゃんと見ろや!
もう少しじゃないか。ほらそのもやもやしているのしっかり見てみろ。今しかないぞ。


わかった・・そうする。もう助けてなんて二度といわない。でも・・そこにいて。

そこでそっとわたしを見ていて。どこにもいかないでずっとそばにいてよね。


そうして今夜も。わたしÅと。わたしBの夜が刻々と更けていくのであった・・・。


諦めるなよわたし。負けるなよわたし。いくら飲んでもいいから頑張れよ!






2008年08月19日(火) もっともっと守ってあげたい

だいじょうぶ。まだ夏。そう太陽がおしえてくれたいちにち。


窓辺にいて。ぽかんぽかんとしながら今暮れていく空をみている。
今日の夕陽は少し遠くて。そこには茜雲がひとつふたつたしかに。

置き忘れてあったのだけれど。刻々としたものがすいっと流れてしまって。
もう見失ってしまいそうだった。こんな夜には何も思い煩ってはいけない。



昼間。事務所にアマガエルさんが忍び込んでいるのをオババが見つける。
それは保護色というのだろうか。半分緑で半分茶色がかった姿だった。

メダカの水槽に浮かべてある水草の葉に居て。とても眠そうな顔をしていた。
それを見つけたオババが大声を出したのだけれど。びくっともせず平然としている。

「食べたわね?犯人はあんたに違いないわ」とオババが誘導尋問をしている。
でもそこはさすがにカエル。ケロっとした顔をして逃げようともしないのだった。

そうして会話にもならないやりとりがしばらく続く。お説教をしているような。
そのうち飽きれたような笑い声に変わり。終いにはメダカの水槽を抱え外に出て行く。

仕事の手を止めそんな一部始終を眺めていると。なんだかここは何処だろう?って。
一瞬思ってしまった。遠い昔に記憶していた母に再会したような気持ちになった。


私は大切なことを忘れてしまっている。このところそれが波のように押し寄せてくる。

後戻りが出来ないからこそ。それを思い出してあげなければいけないのだろう・・。


思い煩うのではなく。思い遣っていこう。大切なものをもっともっと守ってあげたい。













2008年08月18日(月) だからずっと言ってなさい!

身構えないで。気を楽にして。そう言い聞かしてみる月曜日の朝。
なんだかとても苦手なことに挑戦を強いられているような気の重さ。

かるくなっちゃえ。ふわりっといっちゃえ。そうそうそのちょうし。


山里はやはり恋しくも思える。稲刈りを終えた田んぼから匂う芳しい香り。
その匂いがあたり一面に漂っている。くんくんとまるで犬のようにその匂いを嗅ぐ。

すると雀色ばかりだと思っていたその田んぼから。青々と瑞々しい緑が見える。
切り株からもう新芽が出始めているのだった。そのことがやたら嬉しくてならない。

ここはほんとうに私の好きな場所なんだなって。宥めつつもほっとした瞬間だった。

考え事をしていなくて良かった。ちゃんとしっかり見つけられて良かったと思う。



仕事は。休み明けのせいかけっこう忙しく時間が過ぎる。欲を言えばもっと。
ハードなのが私は好きなのだけれど。これくらいがちょうどなのかなとも思った。


それでもやはり早く家に帰りたくなる。今日はサチコの誕生日だったから。
手抜きしないで好きなものを作ってあげたい。ケーキも買って帰ろうと思う。

でも鶏南蛮だったからたいしたことではなかった。ケーキだけは大き目のを奮発。
プレゼントは昨夜のうちに我慢できなくなって先に渡してしまっていた。
だって。「明日誕生日だけど。なーんにも要らないから」って何回も言うし。
押入れに隠してあったのを。とうとう出してしまうはめになったのだった。

そうして今夜はいつも以上にはしゃいでいた。サチコが嬉しいと母も嬉しい。

毎年ショートケーキなのが。今年は大き目のチーズケーキだったのでびっくりしていた。

そこで母はお得意の悲劇を振舞う。「実はママね・・もうながくないのよ」
「ええっ!母死ぬの?それはおめでとう」「そ・・そんなサチコちゃんひどいわ」

母は流し台にすがりつき泣くふりをする。きゃっきゃっと大笑いするサチコ。


あのね。お母さん知ってる? 自分から死ぬ死ぬって言っているほど長生きするんだよ。

だからずっと言ってなさい!そう言ったサチコの顔は一瞬真顔に見えた。


ほんとうにこの娘は。私の夏のような娘だった。

ひまわりみたいに。いつだって太陽みたいに明るくて眩しくて。

わたしは今もなお。この娘に育ててもらっている母という名の雑草だった・・。

   さっちゃん。27年間。ほんとにほんとにありがとうね。



2008年08月17日(日) なんだか無性に人に会いたくなる。

朝のうちに。髪の毛を今以上に短くする。さっぱりと心地よくなった。

そうしたら。なんだか無性に人に会いたくなり。ふっとその顔が浮かぶ。
多忙な人だから留守かもしれないなあって思ったけれど。家に居てくれた。
そうしてひとつ返事でおっけいをもらった。彼女の家の近くで待ち合わす。

お店はお昼過ぎで少し混んでいたけれど。窓際のティールームが空いていた。
ほんとに久しぶりねって言って。最後に会ったのが去年の夏だったことを思い出す。

『季節の紅茶』というのを注文する。ドライな薔薇の花を浮かべて飲む紅茶だった。
なんともいえない良い香りで。飲んでいるうちにうっとりと気分が安らいだ。

そうして語り合いながら。この一年に彼女が撮った写真をいっぱい見せてもらった。
何度か女流展に入選しているだけあって。ほんとうに感動する素晴らしさだった。

私はといえば相変わらずで。細々と書き続けている同人誌をお土産に持って行く。
彼女が目の前でそれを読もうとするので。思わず手を出してそれを制してしまった。

そうして彼女の旅の話を聞かせてもらう。ほんとうによく一人旅をする人で。
今年は春に東京へ行ったのだそうだ。ほらこの写真よって桜の写真を見せてくれる。
「これって、千鳥ヶ淵?」って訊くと。「そうそう、ちょうど満開でね」って。

そこには鳥も飛んでいた。水辺で遊んでいる鳥もいる。なんだかほっとする光景だった。


そうしてずっと話しが尽きない。季節ごとの風景の話しや花達のことなど。
紫陽花の話しになって。化石の紫陽花のことを知っているかと私は訊ねた。
化石?って彼女は不思議そうな顔で耳を傾けてくれる。とても興味深そうに。

散れない事の哀れさ。そのままのカタチで老いることのせつなさ・・など。

せめて人の手で切ってもらえたらどんなに救われるだろうかと私は思う。

知らなかった・・今までずっと目を背けていたように思う。と彼女は言った。

ああでも。決して写真に撮ったりしないでね。と手を合わせてお願いをする。


それが「書く」ってことなのかなって。彼女はふっと呟いた。

そうなのかもしれないと私も思う。ただ美しくて綺麗なだけじゃいけない。

汚れたり腐ったり。傷ついたり痛かったり。そこからいかにして生きるか。

そんな希望のような文章を書きたいものだ。ありのままの姿が命になるような。

ついつい熱っぽく語ってしまって。そうして目頭まで熱くなってしまった・・・。


「次は一年後じゃ駄目だよ」って彼女が言ってくれる。

私もそう思った。明日のこともわからないから。つぎの夏だってわからないもの。

「秋ね!きっと連絡するから」そう言ってくれてとてもほっとした。


駐車場で手を振り合って別れる。ほんとうにありがたい微笑のひと時だった。



帰宅して。その微笑をぎゅっとしながら・・なんだかとてつもなく心細くなる。

生きられるのだろうか。ほんとうに・・・。

いったいわたしはどうしてしまったのだろう・・・。





2008年08月16日(土) 笑ったり 泣いたり おつかれさん

空は笑ったり 泣いたり おつかれさん

風も笑ったり 泣いたり おつかれさん



きのうまでもう書けないと決めつけていた大切な手紙。
きょうはふと書けそうな気がして。いざペンをとると。
それが不思議なくらい。とめどなくとめどなく書けた。

待ってなんかいないのかもしれない。でももしかしたら。
待っていてくれるかもしれない。そう信じないと何も書けない。

五年目の夏。わたしはただの『ひと』になれたのだろうか・・・。

もしそうなれないのなら。わたしは尼寺にだって行きたいと思う。
もっともっと修行をして頭だって丸坊主にして立派な尼さんになりたい。


きょうは・・とても疲れた。



送り火を焚いていたら雨がぽつぽつ降ってきた。

消えちゃいそうではらはらしていたら。

消えてもいいのだよってみんなが言った。


そらいっぱい笑ったらなぜか涙でちゃうもんだね。

そらおつかれさん そらあした無理に笑わなくてもいいよ。



2008年08月15日(金) 元気になる恋をしよう

ただいま センチメンタルな旅から 今日やっと帰って来ました。



そうしていつもの窓辺。きのうと同じではない夕空にほっとしながら。
旅の名残のため息を封じこめようとしているところ。うまくいくかな。

それは書いてみないとわからないけれど・・きっときっとだいじょうぶ。


今夜はお隣の町で花火大会があるのだそうだ。そして山里の例の村でも。
見に行けば良いのに行かなくて。もしかしたらその音が聴こえるかもしれない。
だからちょっとわくわくしながら。あたりがすっかり夜になるのを待っている。

このたったひとつきりの空。どこかはるか遠い町でも花火が夜空を彩ることだろう。



ありがたく昨日から頂いているお盆休み。午前中は自分なりの課題のように思い。
去年の夏にここに綴ったものを『夏の記憶』として残す作業に没頭していた。
夏だからこそ書けるものがある。自己満足に過ぎないけれど、もしかしたら。
たったひとりのひとでいい。誰かの心に残ってくれるかもしれない『私』のこと。

それをし終えてとてもほっとした。思い残すことがないようにのそれがひとつだった。


そうしてすっきり気分でお買い物に行く。お盆のせいでとても混雑していたが。
人ごみを掻き分けるように食料品を買う。そうして久しぶりにTSUTAYAにも寄った。

帰宅して好きな音楽をとことん聴きまくる。これ以上の至福はないくらいだった。


ゆうがた。早目に夕食をしていたら息子くんから電話があった。
お盆休みというのが彼にはなくて。仕事帰りにちらっと寄ってくれるそうだ。
おじいちゃんにお線香あげないとなって言って。ついでに晩飯食べるからって。
ありあわせの残り物しかなかったけれど。飯大盛り!って言って喜んで食べてくれた。

ほんの数日見ない間にとても日焼けをしていた。その元気そうな顔が嬉しかった。


そんな息子くんと同じ年の『雄ちゃん』が私は最近すごーく大好きで。
つい先日は『上地雄輔物語』も買った。そうしていっぱい元気をもらった。
駅のホームでぼんやり電車を待っているその顔がすごーい気に入ったりして。
その見開きのページを思いっきり広げて写真の写真も撮ったりしたのだった。

そうしてその写真を携帯の待ちうけにしたものだから。暇さえあれば携帯を開けている。

せつなくもない哀しくもない。何ひとつ求めることのない元気になる恋をしたい。

そうこころに決めたので。どんまいどんまい泣かないで明日も笑顔で「おりゃ!」



     ほんとにほんとに ありがとう 雄ちゃん




2008年08月14日(木) ずっとずっと忘れないよ

晴れたり曇ったり。晴れているのに雨が降ったりの不安定な空模様だった。
風がうごく。そうして止まる。ふっと息を吹き返したようにまた風が流れる。


午前中。隣の町まで初盆の供養に出掛けた。住所だけを頼りにそのお宅を探す。
彼女は去年の冬にとてもあっけなくこの世を去った。私よりもずっと若く。
いつも笑顔を絶やさないほんとうに明るい友人だった。好きでならなくて。
けれども死んでしまった。どうして?どうして?とずっとそんな気持ちでいた。

でも今日。潮風に吹かれながら彼女に会った。こんなに海のすぐ近くで。
彼女が育ったこと。そうしてここに帰って来て。目の前で微笑んでいること。
そのことがとても嬉しくなってしまった。「ここすごい良いところだね」
思わずそう声をかけてしまう。その時潮風がひゅうっと吹き抜けていった。

とても名残惜しく玄関を出る。そうして心一杯になるくらいの風を感じた。

ほんとうに会えてよかった。忘れないよ。ずっとずっと忘れないよ由美ちゃん。




午後。再読中だった小説を。とうとう読み終えてしまった。
それははじめて読んだときよりも。強くつよく私の心を打った。
そうしてとても愛しくてならない。失うのが怖いとさえ思った。

とても大切なものをそこに置き去りにしてきたようにも思う。
無意識ではなく意識的に。それがいちばんふさわしい場所にそっと置いた。

だからまた私はきっと見つけに行くだろう。会いに行くだろうと思う。



そうして夕方近くから。どうしたわけか心がざわざわと落ち着かなくなった。
夕陽がもっともっと紅ければいいと願いながら。沈む夕陽をながめるばかり。


でも今は大丈夫。きっと誰にだってそんな時があるのだろう・・うんきっと。


そうして昨夜とても嬉しかった事を。まるでついさっきの事のように思い出している。

高校時代の友人達が。昨夜ちょっとした同窓会のようなことをしていて。
遠すぎて来られない私のために。懐かしいその声を聴かせてくれたのだった。

すみちゃんありがとう。哲っちゃんありがとう。みんなみんな大好きだよ。











2008年08月13日(水) ほんとにおまえは困った子だなあ。

迎え火を焚き手を合わす。そうして今年も行けそうにない弟の家に電話する。

私には実家というものがなく。父の供養はすべて弟夫婦に任せっきりだった。
けれども父はずっと我が家にいる。なんとなくそう感じる毎日でもあった。

私の部屋に居るのだ。だから出掛ける時はいつも部屋のドアを開けて行く。
そうしたら父は台所だって茶の間だって行ける。庭に出て犬と戯れることも。

そうして私が部屋にこもる時間には。そっと私の後ろに居てくれるのだ。
そう感じる。決して成仏していないのではなくて、たぶんここが好きなのだ。

おお書いてるな。おおまた飲んでるな。ほんとにおまえは困った子だなあ。

って。いまお父ちゃんが言った。今夜はしっかりと聞こえる。けれども。
昔みたいにそっとしておいて。ずっとはらはらしながら私を見ているのだ。


親不孝な娘だった。いっつも心配ばかりかけて。どんなにか情けない思いを
させてしまったことだろう。それなのに叱りもしないで打つこともしないで。

どうなるんだろうこの子は。なにをしでかすのだろうっていつも気をもんでた。

それが精一杯の愛情だったことにきづいたのは。ずっとずっと後のことだったのだ。



一緒に暮らした歳月よりも離れた歳月のほうが多くなる。そのながい歳月のうち。
父に会ったのはただ一度きりだった。その数日後父はあっけなくこの世を去った。


だから今は一緒に暮らしている。どうしてもそう思いたくてならない私がいる。
お父ちゃんは相変わらずはらはらしながら。ずっとずっと私を見ている気がする。

だってほらいま後ろで笑った。おまえたまにはいいこと書くなあって声が聞こえた。


お父ちゃん。お盆のあいだはもっと堂々としていていいんだよ。

ここお父ちゃんの家だから。いっぱいくつろいで。今夜は一緒に飲もうよね。





2008年08月12日(火) すごいドラマチックな夢なんだから

この夏はじめてツクツクボウシの鳴く声を聴いた。
夕暮れ近い窓辺にいて思わず「おお、そうかそうか」と応えてしまう。

その蝉は少し心細く。なんだかとても何かを求めているように鳴くのだ。
思うようにいかないこと。けれども伝えたいことがあるのかもしれない。




昨夜久しぶりに夢というものを見た。とても懐かしいなおちゃんに会った。
中学の時の生徒会長で。野球部のエースで走るのも一番だったなおちゃん。

スーツ着てネクタイしていた。その姿は多分5年前くらいに再会した時の。
彼によく似ていた。なんか笑っていた。そうして何かを語り合っていた。

けれどもすぐに「帰る」って言うので。急いで後を追いかけて行ったのだ。
その時彼のスーツの背中がとても濡れていて。それがすごく気になってしまう。

大丈夫これくらい平気という顔をして。なおちゃんはどんどん先を急いだ。
そうして列車にとび乗ると「じゃあな!」って手をあげて行ってしまった。

「なおちゃーん、なおちゃーん!」って叫びながら私はホームを駆けている。

列車がとうとう見えなくなって。あーあって思ったところではっと目が覚めた。


心臓がぱくぱくしていた。ほんとうに駆けていたみたいに呼吸が荒かった。
電話しなきゃ絶対にしなきゃってずっと気になって。やっとお昼休みになる。

出てよきっと出てよって祈るまもなく3回目のコールですぐに声が聴こえた。

ああよかったなおちゃん生きてる。そう言うと不思議そうな声で彼が笑う。
すごいすごいほっとした。そうして私は得意げに夢の話を聞かせてあげる。

ぜんぜん心配ないよ。すごいドラマチックな夢なんだから。そう言って話す。

「ありがと、ありがと」って何度も言うので。なんだかとても照れてしまった。

「あさって墓参りに帰るよ」その言葉にほっとして電話を切った。
中学の時。彼は相次いで両親を亡くした。それはあの頃のいちばんの悲しみだった。

いつ頃からだろう。私たちはお互いの生存確認をするようになった。
7月の彼の誕生日に必ず私から電話をする。そう私が勝手に決めたのだけれど。

もし電話が掛からなかったら私がもういなくて。
もし電話が不通になっていたら彼がもういない。

そのことを私が言うと。なおちゃんはそれは愉快そうに笑ってくれたのだった。

つい先月そのことを確かめたばかりだったけれど。今日は「おまけだね」

おまけがあると嬉しいねなおちゃん。また来年の夏に元気な声で会おうね。



2008年08月11日(月) ふっとここでつぶやこう

かたのちからぬいて ふっとここでつぶやこう

とりとめのないこと どうでもいいようなこと

ふっとほっとしながらほらちゃんといるよって

たいせつなことじゃなくていいそんなささいな

そんざいをあいしてあげたいぎゅっとしてあげたい


もしかしたらおなじようにふっとほっとするひとが

いてくれるようなきがする それがわたしのねがい






今朝起きたら頭がとても重くて。なんだかやる気ゼロの感じだった。
自業自得なのだから仕方ないなっていつだって反省をしている。でも。
またすぐに同じあやまちを繰り返す。それが私の愛嬌かもしれなかった。

黒酢ドリンク2杯飲んで仕事に行く。あー今日は何が待っているのだろうと。
ついつい身構える悪い癖も。愛嬌だと呼べないこともなかった。うん愛嬌。

そうしてまた漫才のように仕事を始める。同僚を笑わすのがついに日課になった。
実は二日酔なんだと打ち明けると「またばぶれて飲んだな!」って言ってくれる。

「ばぶれる」って土佐弁かな。拗ねるとかヘソを曲げるって意味らしいけれど。

いったい何に拗ねていたのだろう。私のオヘソは夜になったら曲がるのだろうか。
それよりも「無茶苦茶」が似合うのかもしれない。そう私はたぶんそんな人。


そうして人目を盗んで昨夜の友人に便りを書く。あの頃は子供だったね。
会うことは叶わなくても。ほんとうにたくさんおしゃべりをし合ったね。
彼女は海の見えない町に住み。私はいつだって波の音を聴いていたあの頃。

ちょっと郵便局に行くからと。跳ぶようにして走る。ポストにぽとんと落とす。
メールの返事が来なくて心配しているだろうな。ごめんよね。待っていてね。


お昼休み。洗車場のあたりに心地よく夏風が吹くのを楽しみにクルマにこもる。
再読中の小説はまだ終わらない。終わらせたくないのかもしれないくらいに。
とてもゆっくりと読んでいる。主人公が好きだ。たまらなく好きだなと思う。

恋というのじゃなくてなんて言えばいいのだろう。ただそばにいて欲しい。

こんなひとのそばにいたら。たぶんわたしは今以上に無茶苦茶になるだろう。


滅茶苦茶にだってなりうる。それくらいそのひとが好きでならない。





2008年08月10日(日) ねむくなれ。はやくねむくなれ。

朝は雨になるのかなって思っていたけれど。午後からまた夏空に会えた。
なんだかそんな空を見ているとほっとする。夏が好きになれたのかもしれない。


午前中はお墓参りに行く。枯葉と夏草がいっぱいだった。
小高い山の上の墓地。あちらこちらからひとの声が聴こえる。

「帰っておいでね」って手を合わせて帰る。

蝉時雨がこだまするように響く。お寺の庭にはミニトマトがよく熟れていた。


午後。読みかけの本を少しだけ読み。また寝る。ほんとうによく寝る。
以前はよく怖い夢を見たけれど最近は見なくなった。お昼寝ばんざい。


晩御飯。3日連続でカレーだった。もういいんじゃないのとサチコが言う。
カツカレーにしようと作ったカツがけっこう残った。明日はカツ丼になるかな。


毎週欠かさず見ている『篤姫』今日も泣けた。
やっと微かに心が通じ合ったような二人の一人が死んでしまった・・。



そうして少しも眠くならない。ので例のごとく独り酒をしている。
いいかげんにしないとなあっていつも思う。でもいつも許してしまう。


さっき。小学生の時からの友達から久しぶりにメールが届いた。
友達だけど一度も会ったことがなかった。奈良へ行きたいなあって思う。

その嬉しいメールに。いつもならすぐに返信をするのだけれど。
今日はしないことにした。待っているかもしれないなあって気にしながら。

明日手紙を書こうと思う。だって私達はずっとペンフレンドだったから。

少女の頃がとても懐かしい。泣いたり笑ったり。傷ついたり嬉しかったり。

それはおとなになっても変わらないけれど。どこかがちょっと違うのだ。
それだけいっぱい歩んできたのかなって思う。歩めるって素敵なことだね。


はぁ・・それにしても今夜はちっとも酔わない。

ねむくなれ。はやくねむくなれ。ふぅ・・もういやになっちゃった。



2008年08月09日(土) だいじょうぶ。みんなここにいるよ。

ここ数日不安定だった空が。また微笑んでくれたようないちにち。
南風が吹く。そうして微かに海の匂いがするのを心地よく感じた。


いつもなら日がな一日気だるく過ごしている休日だったけれど。
なんとなく動き出してみたくなり。そう思うと居ても立っても。
いられなくなり。今日しかないような気持ちでクルマを走らす。

お隣の町の『道の駅』の近くに向日葵がたくさん咲いているという。
そういう一面のそういう見渡す限りの風景が。私はとても好きでならない。
わぁっと声をあげて感動する。そうしてたくさんの精気を感じとる一瞬を。


けれどもほんの少し残念だった。おそらく先日の大雨に打たれたのだろう。
大きく咲いた向日葵ほどとても哀しそうな顔をしていた。首をがくんとしては。
なんだか今にも泣き出しそうな顔。その頭には燦々と夏の光が降り注いでいる。

がんばれがんばれって太陽が声をかけているように見えた。
けれども頑張れはしない。地面に根をはりやっと立っているのが精一杯のよう。

その大きな向日葵たちを取り囲むように。まだ若い小さな向日葵たちがいる。
みんな空を見上げて微笑んでいた。まるで誰かを励ましたくてならないように。

だいじょうぶ。みんなここにいるよ。いつかはみんな終わってしまうけれど。
それって今じゃないから大丈夫だよ。そんな声があちらこちらから聴こえる。


そこは向日葵畑。おなじ土のうえ。みんな同じ空のした。ほら海だって近い。
















2008年08月07日(木) 私は微熱を保ち続けていたかった。

もう立秋なのだそうだ。この日を待っていたかのように大粒の雨が降る。
それは熱を冷ますように降ったけれど。私は微熱を保ち続けていたかった。


山里の雨はそぼ降る感じで。それなりに涼しくて過ごし易い一日。
このところ毎日聞いていたセミの声もせずに。どこからともなく。
不思議な声が聴こえる。シャアシャアって響くような音となって。
いったい誰が鳴いているのだろう?その声の主に会ってみたかった。


帰り道。途中からもの凄い雨になった。ワイパーを高速にしていても。
目の前が真っ白になるくらいの大雨で。とうとう臆病風が襲って来てしまう。

情けないことだけれど。ほんとうに駄目なのだ。怖くてハンドルが握れない。
すごい大げさだけれど。私という人はいとも簡単にパニックに陥るのだった。
心臓がパクパクし出して呼吸が苦しくなる。今にも死んでしまいそうになる。

もう限界とみて。しばし路肩にクルマを停め雨が小降りになるのを待っていた。
そこではっと気づけばガソリンがあと少ししかなかった。マジかよと焦る。
仕方なくエンジンを切りラジオも切り。とにかくそこでじっと耐えていた。

ふうふうと息を整えながらなんとか落ち着こうと努力する。ああ馬鹿みたい。
ってちょっとは自分を笑えるようになった。この弱虫、何やってるんだ!

そうしてふっと思い出したのは。10代の終り頃の嵐の夜のことだった。
あの頃は怖いもの知らずで。台風なんかもちょっと好きだなとも思えて。
上陸するかもしれなくても。その一部始終を見たくなり表に出たりしたのだ。

クルマの中で嵐を見ていた。もの凄い雨と風でクルマが横倒しになりそう。
それがスリル満点でなかなか面白かったりしたのだ。ああ若かったなあって。

きょう思い出した。ふふふっと懐かしかった。また会いたいなって思う自分。


そうして心がちょっとだけ旅に出ているあいだに。雨が少し静かになってくれる。

ようし!飛ばしまくってやるって決める。自動車道に入って一気にスピードを上げた。

ほんとにすかっといい気持ち。ついさっきまでの自分が嘘みたいに思えた。








2008年08月06日(水) レースのカーテンの陰に隠れてこっそりと待った。

仕事はやはり今日も暇だった。農家のお客さんが多いせいかなと思う。
オイル交換のお客さんひとり。後はタイヤの空気圧を多目にというお客さん。

軽トラックの荷台に。ずっしりと収穫したお米を積むのだそうだ。
そうして収穫が終わると。今度は空気を抜きにまた顔を見せてくれる。

今年は日照りが続き過ぎてあまり良いお米が出来なかったと言うこと。
やはり雨も必要なのだなと思う。でも台風に襲われなかったのが何よりだった。

そうして午後は。また気だるく流れていった。ふわぁっとそれも心地良く思える。

また忙しい日も来るだろう。いまはきっとこれが良いのかもしれない。
肩の力を抜いてのんびりとしながら。ゆったりとあれこれを想っていられる。

そういう時のわたしは。とてつもない妄想で満ちている。それも良しとしよう。


そんなひと時に。息子君からメールが届いた。
職場の近くの漁師さんから。牡蠣を買ったのだそうだ。
だから「今日は帰る 泊まる」って。なんだか愛人みたいで可笑しかった。


そうして帰宅。晩御飯の時間を遅らせて彼の帰りを待っていた。
窓から路地を覗いている。レースのカーテンの陰に隠れてこっそりと待った。

そうしたら堤防の方から足音が聴こえる。とても急いでいる駆け足が路地に響く。

「牡蠣が帰ったよ〜」って思わず声を上げるお茶目な母であった。

牡蠣はかつて見たこともないくらい巨大な牡蠣だった。
一個300円だったから4個買ったのだと得意げに彼は話してくれる。

焼くこともままならず。家でいちばん大きなお鍋で蒸し焼きにしてみた。
殻がなかなか開かなくて。男ふたりが台所で奮闘してくれてやっと食べられる。

記念写真を撮っておけと若い方の彼が言うので撮ってみた。
手づかみで食べているところを。顔は写すなよって言われたままに


  




味は。ミルキー過ぎて美味しいといえば美味しい。私にはちょっと濃い牡蠣だった。

男たちは「うまい!うまい!」と言いつつビールを美味しそうに飲んでいた。




2008年08月05日(火) そこにはたしかに 風が吹いている。

午後から少し曇ってきて。いくぶん涼しさを感じた。そこには。
たしかに風が吹いている。それを確かめるように表に出てみる。

同僚が工場の周りの草刈をしていた。いつのまにこんなにと思うほどの夏草。
手伝いもしないで軽口をたたいているのはわたし。なんて怠け者なのだろうか。

時に投げやり。時に不貞腐れて。ちっとも真面目ではなかった。
やる時はちゃんとやるのだけれど。やらなくなるととことんやらない。
そうしていつも時計ばかり見ている。一刻も早く家に帰りたいと思っている。

どうして誰も私を責めないのだろうと思う。だから自分で責めるしかない。

明日は忙しかったら良いな。私は目が回るほど忙しいのがとても好きなのだ。



帰宅すると。台所の流しが綺麗に片付けてあった。ああサチコ休みだったなって。
昨夜そう聞いていたのを思い出す。晩御飯手作り餃子にすれば良かったなあ。

晩御飯なのに焼きそば。ああほんとにこのところずっと手を抜き過ぎている。
それもサチコがやってくれたので。母はとても楽をさせてもらったのだった。

鰹のタタキは盛り付けるだけでそれも簡単。小夏の皮をみじん切りにして。
彩りにしてみる。ニンニクもだよってサチコが言うのでそれも付け加える。

三人でビールを飲みながら。たわいもないことをあれこれしゃべってみたり。
それもすぐに打ち止めになりお開き。さっさと後片付けをしてしまうのだった。

鰹がふた切れ残ったので。火を通して飼い犬のドックフードに混ぜてあげる。
だけど今夜も食べてくれなかった。「ほらほら鰹だよ!」って言っていたら。

「もうほうっておけ!」と彼が茶の間から叫んでいた。のでもう何も言えない。

昨夜は食べてくれたから大丈夫だろうと思う。母さんほんとに心配性だもんね。



そうしていちにちの家事を終えると。またすっかり脱力してしまうのだった。

疲れているとかそういう類のものではなくて。なんていうか腑抜けてしまって。

ふらふらっとゆらゆらっと。どこかわけのわからない所に行ってしまいそうになる。



2008年08月04日(月) もちろん上手くは飛べないけれど。

今朝のこと。トンボの大群に出会った。それはそれはたくさんいてびっくり。

赤とんぼみたいで。夏だからナツアカネって呼ぶのかもしれないけれど。
そういうのには詳しくなくて。とにかくそれはたくさんの赤いとんぼだった。

クルマのフロントガラスにぶつかって来そうではらはらしたけれど。
それがとても上手に身をかわすのだ。すいっとひゅいっとどんなもんだって。
とても得意気に見える。かっこいいなあって思わず惚れ惚れとしてしまった。

そうしてほっとしながらクルマを走らせて行った。なんだかすかっと気分良くなる。

月曜日なんだ。ああそうだけどまあいいかって思う。身構えていたけれど。
ぶつかりたくはないのだし。気を楽にしてすいっとひゅいっとしてみようかな。

もちろん上手くは飛べない。だってわたしはトンボではない。ただの人だから。


仕事はとても暇だった。良いのか悪いのかわからないけれど気が抜けてしまう。
同僚がメダカの水槽の中に『蛭』がいると大騒ぎし始めて。割り箸で捕まえた。

「どうしてヒルが?朝なのにどうして?」って何回も私がふざけて言うので。
「もう座布団没収や!」って同僚が呆れ顔で笑ってくれた。とても愉快だった。

もう20年一緒に働いている。最悪の労働条件だと言うのに彼は黙々と良く働く。
どんなにか我慢してどんなにか辛抱しているのかと思うと心苦しくなってしまう。

そのことを少し冗談ぽくほんとうは心からそう思って。彼に告げてみたところ。
「そう言ってくれるのは お姉ちゃんだけやよ」って照れくさそうに笑ってくれた。

20代だった彼がいつのまにか40代になった。ずっとずっと弟みたいに思って来た。

おとうとよ。明日もともに頑張ろうではないか。

暇だったら。また事務所で漫才でもやりましょうかね。





2008年08月03日(日) そうしたらいっぱいお話し出来るよね。きっと。

なんだかジリジリと何かが焦げているような暑さ。だって夏だもんな。

我が家の飼い犬もすっかり夏バテをしている様子。かと思えば拗ねている。
犬と会話が出来る人間になりたいとつくづく思った。夕暮れ時の庭にいて。

今朝は少し水遊びをしてすごくご機嫌だったから。よけいに不可解でならない。

もっと遊んでやれば良かったのだろうか・・。
一日中そばにいて相手をしてあげたら良かったのだろうか・・。

わんともすんとも言わないのじゃ。母さんだってもう知らない!って言うよ。

晩御飯を持って行った時には。ちょっと嬉しそうに犬小屋から出て来たけれど。
その匂いを少し嗅いだだけで。ふん何さ!って顔をしてそっぽを向いたのだ。

そうしてまた犬小屋の中にもぐりこむと。完全無視を決め付けたようだった。
声をかけても知らんぷり。その横顔ったらまるで喧嘩を売っているような顔。

そういうのはいかんよ。そういうのはちょっと悲しくなるじゃないか・・。


母さんは喧嘩する気ないからね。怒ってもいないし。ただただ心配なだけだよ。

そういうのって伝わらないのかな・・って思うと。すごい情けなくなっちゃった。


はぁ・・母さんも犬になりたい。そうしたらいっぱいお話し出来るよね。きっと。



2008年08月02日(土) どんな日の空も 私は好きだ。

空は真っ青にはなれなくて。いちにちじゅう不機嫌そうに熱気を吐いていた。
そうして。ほんの少しだけ涙のように雨をこぼす。それはほんとうに束の間の。
意思表示のようでもあり。観念でもあるのかもしれない頷ける行動でもあった。


どんな日の空も私は好きだ。もっともっと自由でいて欲しいと願う時もある。



ほんの少し朝寝坊をしたつもりだったけれど。朝食を終えるといつもと変わらない。
なんだか時間がゆったりと流れているように思えた。洗濯をする掃除をする。
コーヒーを飲みながら窓辺でぼんやりと過ごす。好きな音楽を聴くことも出来た。

9時半になって買物に行く。やはり開店したばかりの時間がお気に入りだった。
駐車場もまだ空いているし。店員さんがおはよございますって言ってくれるのも。

帰宅して読みかけの本を読む。再読というのを試みている。それなのに新鮮だった。

お昼は明星鉄板焼きそば。彼が要らないという青海苔を二人分かけて食べた。

そうしてまた本を読む。一時間くらい。それから三時間もお昼寝をしてしまった。

夏場だからこそいただける時間だと思うと。ほんとにありがたくてならない。
その恩返しのように冬場は一日も休まず頑張ることが出来るのかなって思った。

寝起きに冷たいのをきゅっと飲む。さあほろ酔ったところで夕食を作ろう。
今夜は野菜炒め。あとは何も作らない。卵豆腐と白菜キムチで充分だった。

食後。庭に打ち水をしようと玄関を出る時。ポストに手紙が届いているのに気づく。
つい先日。暑中見舞いの葉書を出したばかりの友人からだったのですごく嬉しい。

消印を見ると8月1日。昨日出してくれたのがもう届いたのかとびっくりした。
どきどきしながら読む。何度も(笑)という文字があり微笑んでいるのがわかる。
それが何よりも嬉しかった。一度も会ったことはないけれど笑顔に会えたのだ。

秋になったらまた手紙を書こう。もしかしたら明日書いてしまうかもしれないけど(笑)



不機嫌だと思い込んでいた空が。ほんの少し紅く染まるのをほっとしながら見ていた。

むしょに何かを書きたくてならなくて。なんだか中毒みたいに落ち着かなくて。
去年の今日って何を書いていたんだろうって。一年前の日記を何となく読んでみた。

『救われるっていうことは。夢ではないかとふと疑ってしまうくらい夢に似ている。』

このひと誰?って思っちゃいました。過去の自分ってけっこう懐かしいものだな(笑)


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