ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2008年03月31日(月) きょうあえてよかった。きょうが桜の日。

桜もいろいろ。真っ白な花も咲く。ソメイヨシノではなく。

なんていう名の桜なんだろう。葉がくっきりと薄緑なのが。

なんだか花を抱くように。花をささえているようで好きだ。

明日はもうあえないのがさびしい。今度会えた日にはもう。

葉というなの桜。きょうあえてよかった。きょうが桜の日。






早朝から川仕事。西風が強く吹く。ざぶんざぶんと船は追い風。

せっせと頑張ったおかげで。午後から久しぶりに山里の職場へ。
月末なのでなんとしても行ってあげたかった。母は大丈夫かな。
会社はどうなるのだろう。あれこれ心配でたまらず車をとばす。

国道から山道へ入ると。いつのまにかもう田植えがしてあった。
久しぶりに通る道が懐かしい。山菜採りをしている人もいたり。
ここもすっかり春なんだなって思う。民家の垣根からは。雪柳。

急いていた気持ちが。ふっとゆるむ。ゆっくりだってかまわない。
母はきっと元気でいるだろう。会社だってまだきっとだいじょうぶ。


よかった。元気だった。少しやつれていたけれど。私の顔を見るなり。
満面の笑顔。「まあ、よう来てくれたねえ ありがとう」少し照れる。

だから私も笑顔。これまで散々ぶつかってきた事なんて。すっかり昔。
それよりも。会社の危機に毎日そばにいてあげられないのが心苦しい。

こちらをたてればあちらがたたない。わたしがふたりいたらいいなあ。

今日のことは今日のことよ。明日のことはまた明日のことよって言って。
今日を終える。月末はいつだって山だ。また谷を越えて行こう。あした。

あしたがくればまたあした。いけるところまでずっとあしたがあるんだ。


すっからかんの金庫だというのに。母がお駄賃をくれるというので。
とっさに突きかえす。でもあちらも負けずに差し出す。とうとう頂く。

五千円が重い。こんなに重いお札は初めてだった。ありがとう母さん。

「じゃあね。倒れない程度にがんばって」後ろ髪をひかれるように帰る。


山里から下る坂道。その道を下りきると。桜並木の道に差し掛かる。
幾春この道を帰ったことだろう。桜は散ってもまた来る春がいつも。

いつだってそこにあった。最後の春かもしれない。その想いをぐっと。
押し殺すようにしながら。咲き誇る桜を見上げた。この道は消えない。


桜という名のひとがいる。ふとそんな気がした。きょうが桜の日だった。



2008年03月29日(土) るりらんゆりらんぴょろんとららら。

堤防の土手に。つくしん坊がいっぱい。にょきにょきすごい。

下の道から見上げていると。小人さんのお祭り広場みたいだ。

わたしは巨人。のっしのっしとゆっくり歩く。スキップな心。

小人さんたちは歌ってる。みんな一斉に首をふりながら歌う。

るりらんゆりらんぴょろんとららら。そよ風の演奏が嬉しい。





お休みのはずのサチコがいない。夕方には帰るだろうって思った。
けれど帰らない。どうやらまた『プチ家出』ちょっと遠い所から。
メールが届く。明日帰りますと言う。サチコのいない夜は寂しい。

晩酌に。また純米大吟醸を呑む。四万十町の地酒『呑みほうばい』
ほうばいは朋輩のこと。すごい仲良しで気が合うというか。むかし。
私にも朋輩がいた。いまは。今はうちの彼だろうか。ちょっと違う。

彼は。なんだかお兄ちゃんみたい。時々はお父ちゃんにも似ている。
そしてある時は教官。厳しい師匠。病気の時だけか弱い息子のよう。

でも。まあそんなことはもういい。とにかく呑み朋輩のありがたさ。


ほんの少ししか呑まなかったのに。また眩暈がする。ぐるぐると変。
真剣に健康管理しないとなって反省しつつ。眠くなるまで寝酒が続く。
いかん。いかん。ほんとうにいかん。誰か私をぶって下さいって思う。

だけどくよくよはもうしたくない。もっとあっけらかんと生きてみたい。


いつもそっとしておいてもらえる。それが何よりもありがたいこの頃。



2008年03月27日(木) ひとり漫才みたいにしている。

朝は。トマトの焼きサンド。この一週間ずっとそう。

スライスしてお塩ちょっとして。チーズとか卵とか。

一緒にはさんでこんがりと焼く。じゅわじゅわっと。

するけどトマトが熱くならないうちに。出来上がり。

はんぶんこの三角を端っこから食べる。とろりんと。

トマトがすべり落ちそうになるのを。しゅるりっと。

すするようにしながら食べる。おいしいのですこれ。






花冷えというのだろうか。少し肌寒さを感じたいちにち。
午後には曇り空になり。ぽつりぽつりと小粒の雨が降る。

そんな雨もすぐに止み。いまは少しだけ星が見えている。
しーんと静かなので。なんだかぼんやりが似合う。ぽけっと。
しながら。とりとめもなくただなんとなくこうしているうち。

今日買ったお刺身を食べ忘れていたことをさっき思い出した。
イカとホタテとサケとマグロの盛り合わせ。半額で嬉しくて。
でも。冷蔵庫に入れたまま。食卓に出すのを忘れてしまった。

サチコの部屋をノックして。そのことを報告しに行ってくる。
「またやったね」ってあきれてくれた。彼にも報告しないとな。

なんか最近。どうでも良いように思えることでも。なんか話して。
家族にウケたくてしょうがない。ウケてもらえないと少しショック。

夜はいっつも。へらへらしている。ひとり漫才みたいにしている。


笑ってもらえたら嬉しい。自分もいっぱい笑えるのが嬉しいのだ。




2008年03月26日(水) さあ。もう暮れてしまおう。

いま。薄ぼんやりと暮れていくところ。川向の山が。

影絵のようにそこにある。もうすぐ一番星が見える。

頃だろう。窓辺にいるとやけにひっそりとしていて。

なんだか時間に取り残された忘れ物みたいなじぶん。

おなじように暮れていく。かんたんなことのようで。

ときどきふっと心細くなる。ちゃんとここにいるよ。

誰かに声をかけたくなる。さあもう暮れてしまおう。






今朝。洗濯物を干してから少し時間があったので。庭いじりをする。
冬のあいだほったらかしにしてあった花の鉢など。草を引いたりして。

紫陽花の芽を見つける。枯れ枝のようでいてちゃんと芽吹いてくれた。
そうそう。この鉢はこの前、飼い犬にひっくり返されていたんだっけ。
あの時はもう駄目かもって思っていたのに。よかった。もう大丈夫だ。

十二単という名の花の鉢。これも飼い犬にほじられてひどいありさま。
だったけれど。拾い集めて植え直しておいたのが。ちゃんとしっかり。
根を張ってくれた。この花はとても好きな花。とても凛々しく咲く花。


あれこれ嬉しくしていると。飼い犬が後ろから擦り寄ってきてお尻を。
くんくんしながら舐め始める。もうやめてよ!って声を荒げたりする。
遊んで欲しいのだろう。甘えているのだろう。わかってはいるけれど。

お母さんはご機嫌が悪くてごめんよ。毎日ほんとに退屈でつまらない。
だから花の鉢をひっくり返したり悪戯をしてしまうのだろうって思う。

彼女は老犬になってから悪戯をおぼえた。怒っても叱っても「ふん!」
の顔をして見せる。ちょっと挑戦的だ。あるいみ私のライバルみたい。

人間だともう80歳くらいだと思う。私だって悪戯をしてみたいものだ。


そうしてまた気忙しさへと動き始める。つかのまの庭いじりだった。

でも。愛犬とふれあえたのかもしれない。いい日だったなって思う。



2008年03月25日(火) なにも変えられないものが。ここにある。

きょうツバメが帰ってきた。我が家を忘れずにいてくれて。

嬉しい。おお帰ってきてくれたかと声をかけたら。ちちち。

ちちちちっと応えてくれる。頭上をすれすれに旋回しては。

ちかくちかく飛び回ってくれる。なんだかとてもいとしい。

あたたかなものが込み上げてきて。ほろりっと目頭が熱い。





くるぶしの痛みもましになり。今日も川仕事に精を出す。
汗ばむほどの陽気。川船で風を切って進むのが心地良い。
潮風のにおい。霞みがかった空。山桜も見えるのどかさ。

ふうふうってしながら帰宅した午後。庭に息子君のクルマ。
ちょうどサチコもお休みで良かった。今夜こそ焼肉に決定。

久しぶりにサチコとふたりで買物に行く。町のお肉屋さん。
マルナカにも寄って明日の分も買出し。なんだかうきうき。
いっつもふたりで買物が出来たらいいなって思う。なんか。
なんだって作れそうな気がする。餃子だって手作りしそう。

家族四人でわいわいビール飲みながら焼肉。やたらしゃべる。
特に息子君は。やはり独り暮らしが寂しいのか口数が多くて。
後から後から色んなことを話してくれる。父も母も妹も。うん。
うんそれで。それからどうしたとか。大いに盛り上がっていた。

なにも変わらない。確かに何かがあったのだけど。この平穏が。

ずっと続くような気がする。父も母も老いていくけれど。なにも。

変えられないものがここにある。おとなになった子供達はずっと。

我が家で暮らした歳月を忘れずにいてくれるだろう。ここにいる。

父も母もここにいる。この古巣をきっとしっかり守り続けてみせよう。



2008年03月24日(月) あいたかったのはわたしのほうだ。

白詰め草の花を見つけた。きのうの雨の露に緑濃くなり。

白いのがぽっかりと咲いた。誇らしげでいてひかえめに。

見つけてほしいのだけど。口には出せなくて。もしやと。

ひとを待っていたかのように。朝の光のなか嬉しそうな。

笑顔。愛おしくなる。あいたかったのはわたしのほうだ。






明け方。夢うつつのままトイレに行ったような。その時。
ドアを閉めようとして。左足をおもいっきりぶっつけた。
ような。あイタ痛って思ったけど。夢だと思ってまた眠る。

夜が明けて。いつものように早起きでお布団から抜け出たけれど。
なんか足が変。思うように歩けない。いったいどうしたことだろう。

くるぶしが腫れていたので湿布をして一日を過ごす。首を傾げながら。
どうしてだろう?って不安にもなったり。なぜか原因が思い出せない。

そのうち。まあいいかって思えるようになって。明日は治るだろうって。
お風呂に入りながらゆったりとしていたら。とつぜんそれを思い出した。

寝惚けていたのかな。ほんとドジだなあって笑う。ほんとしょうもない。


痛いところがあると。ついつい弱気になってしまうからいけないと思う。
治らないはずはないのに。治らなかったらどうしようって思ったりして。

そしてめでたく治ったらケロっとしている。ゲンキンな奴だなわたし。

ああいたかったのはわたしのほうだ。なんてここらでふざけたりして。

今夜も寝酒がすすむくんです。あしたはあしたの気分でいけそうだな。






2008年03月22日(土) じぶんのたまご。大切なたまご。

葉っぱがついてる人参を買った。緑の葉っぱがふさふさっと。

なんだか観葉植物みたいで好きだな。人参は親指と人差し指。

みたいにくっついては一本の人参で。そこが可愛らしい人参。

ぴぴっと根だかヒゲみたいなのも生えてて。皮を剥いてたら。

痛いって声が聞えた気がした。ごめんようって言いつつ切る。

葉っぱは捨てられない。こんな緑に出会ったのってうれしい。

ガラスの花瓶で生きている。ちゃんと生きてるのがうれしい。





なんか調子いい。すかっといい感じで今日も川仕事に精を出す。
精ってどこから生まれて来てくれるのだろうって思う。たまご。
みたいなのがカラダのどこかにあるのかな。あたためていたら。
殻をやぶって出てくるのかもしれない。きっとまるい。きっと。

だとすると。やっぱ諦めてはいけない。あるんだあるんだって。
信じてあげたい。そうしないと可哀相だ。よしよしたまごって。
まいにち声をかけてあげよう。じぶんのたまご。大切なたまご。

精はきっと生まれる。精を出すことも精を尽くすことも出来る。



うっすらと汗ばんだいちにち。夕方きゅきゅっと飲むビールが美味しい。

お風呂も気持ちいい。バブの菜の花がいい匂い。春だなあってうれしい。



2008年03月20日(木) あなたはわらってとてもうれしそうでした

やはり青空が嬉しい。風の強いいちにちだったけれど。

胸をはって吹かれていると。すくっとすくっとしては。

なにかがどこかへ飛んでいく。もやもやちちんぷいの。

おまじない。魔法使いのほうきにのって空を飛べそう。






午前中の川仕事を終え。作業場の隣の『彩市場』へ買物に行ってみる。
肩と肩が触れるくらいひとがいっぱい。ああ今日は祭日なんだと気づく。

清水さばと手作りこんにゃくを買う。お彼岸のせいか切花がいっぱい。
普段は見かけないような綺麗な花を見つけて。買いたくてならなかった。
けれど。この時期、彼の花粉症がひどくて。家の中に花は禁物だった。

でも庭ならだいじょうぶ。忘れな草の芽も随分と伸びてきて嬉しい。
いろんな花を植えて育ててみたい。暇が出来たらきっとそうしよう。


市場の外に人だかりが出来ていて。なんだろうと思って覗いてみると。
路上詩人の『はまじくん』が来ていた。出会ったひとの感じた印象を。
インスピレーションで言葉に綴ってくれる詩人さんだ。音楽を聴きつつ。
それでいて真剣なまなざしで色紙に言葉を書いている。すごいなって。
感動する。『出会う』って素晴らしい事だ。一期一会が言葉になって。

ずっとずっと心に残る。あのひあなたにあいました。あなたはわらって。
とてもうれしそうでした。これがあのひのあなたです。ぼくもうれしい。


後ろ髪をひかれつつその場を離れる。もっとちゃんと会いたくてならず。
家に帰ってからも。もういちどその場所に引き返したくてならなかった。

『ことば』感じたままの素直な言葉が。わたしはとても愛しくてならない。
考えて選び抜かれた言葉が薔薇の花なら。それは野に咲く名もない花のよう。


わたしは。もっともっと野にありたい。花が咲かなくてもいいのだ。

いつか咲こうともおもわず。つよくつよく土とともに生きてありたい。





2008年03月19日(水) そっとしておいてあげなくてはいけない

もう。菜種梅雨の頃になってしまったのかもしれない。

だんぞくてきに雨。春の雨は嫌いではないけれど少し。

憂鬱。ぱあっとしたいのにしぼむ。ぷうっとするのが。

めんどくさい。しちゃえばいいのにって思うのだけど。

まあいいかって。どんなときもある。こんなのもいい。






好きな花。白木蓮がなんともいえずうつくしくいっぱいに咲いた。
青空の日。それは白い小鳥のようで。今にも空に羽ばたきそうで。

雨ふる日。それは白い静寂。雨音に耳を澄ましている真綿の妖精。
そっとしておいてあげなくてはいけない。誰にも触れさせはせず。

やがて椿のように彼女は落ちる。その日を知っていたかのように。
痛がりもせず。苦しみもせず。嘆くこともしないで。落ちていく。

さびしいのはひとばかり。かなしいのもひとばかりかもしれない。




今朝。すこし時間をつくり。むかし通っていた病院へ行ったけれど。
顔なじみだったはずの先生が。にこっともしてくれなくて。なぜか。
とても不機嫌なように感じて。ああ来なければ良かったのかなって。
ちょっとショックだった。診断は「春先のせいだろう」ただそれだけ。

恋の病とかなら感動するけど。ただの春の病だなんて。ああ残念だわ。

ほんの2分くらいの診察で。追い立てられるように診察室を出ていく。
むしゃくしゃとした気持ち。来なければ良かった。ばかだなわたし。

ずっとそのむしゃくしゃが消えない。やっと冷静になって思うところ。
自分は病気でもなんでもない。じゃあ仮病かというとそうでもなくて。

もしかしたら弱音吐きたかったのかもしれない。甘えたこと言ったり。
もっとちゃんと聞いて欲しかったのかもしれない。でも思うようには。
いかなかった。ただそれだけのことだったんだなあって。うんそうだ。

いまは。はははって笑える。どこも痛くも痒くもなくて元気あるじゃん。

ちょっと行ってみたかっただけ。ちょっと確かめてみたかっただけ。

ながく生きていると。道を間違えることだってあるんだ。この道は。

間違ってた。もう二度と行かない。春だもん。春の病は方向音痴だ。




2008年03月17日(月) ああこれが順調でなくて何だろう

うすぐもり。霞がかった空から柔らかな陽射しがこぼれる。

ぼんやりと想う。何かがすごくふくらんでいたようであり。

その何かが。何なのかわからないまま。しぼむ。しょぼん。

ひとの『気』というものは。天と地のあいだにあるのだと。

いつだったか聞いたことがある。だいじょうぶ。いまある。

ちゃんとある。でもそれをどうやって確かめたらいいのか。

わからない。わかるのは天と地がなければひとは立てない。

踏みしめる地。仰ぐ天。ああこれが順調でなくて何だろう。





気を取り直して。今日の覚書。そうそうその調子がいちばん。

今日は。彼のお誕生日。27歳だった彼が56歳になった。
眼鏡好きだったな。でも眼鏡外した時の顔がもっと良かった。
けど。そんなに大好きでもなかった。好きになろうって思ったっけ。

あと一年で「じょうとう」って言う。寿命を勝手に決めないでほしい。
彼の父親が生きた57年が目標なのだと言う。身勝手も程々にしなさい。

そんなことをふと真面目な顔して言っては。冗談だよって笑いとばす。

さあ。そんなことよりもお祝いをしましょう。焼肉がいいかなお寿司かな。
そしたら。子供等の食べたい物にしろやって言う。自分の誕生日なのにな。

サチコは焼肉が良いと言う。お兄ちゃんも来れたらいいねって。メール。
よかった。今夜は夜勤じゃなかった。仕事が終わり次第来てくれる返事。

やっぱ焼肉にしようって決めかけて。彼の胃の調子が悪いのが気になる。
息子くんに電話して相談したら。「おとうの食べたい物にしよう」って。

おとうは。うん・・俺は寿司のほうがええな。でも子供等が焼肉ならって。
だからお寿司に決定。手作りとかじゃなくてごめんよの『小僧寿し』だった。

頂き物の。京都伏見の純米大吟醸で酔う。なんとも口当たりの良いお酒で。
小さなグラスが空になると。すぐさま向かいから彼が注いでくれるので。
誰が主役やらわからないありさま。おかげでめでたくへろへろになったり。

後片付けをしていたら。流し台まで彼が来て。耳元でこっそりささやく。
「あいつ呼んでやってよかったな」って。一緒に飲めたのが嬉しそうだ。

27歳だった彼は。父親になり。息子と酒を酌み交わすのが楽しみとなった。


あといちねんだなんて。もうそんなこと言わせませんから。

あなたはわたしの仏壇に。毎晩焼酎を祀るくらい長生きをしなさい。







2008年03月15日(土) お陽さま。いちにちをありがとう。

うららかないちにち。たくさんの洗濯物を干す。いい気持ち。

素直なタオル。はにかみ顔の靴下。恥ずかしがり屋のパンツ。

わたしは?わたしはなんだろう。ぶらさがってゆらゆらっと。

仲間になれたらいいな。お陽さまの匂いのする緑のTシャツ。





桜桃っていう木なのかな。サクランボがなる桜が満開になった。
ソメイヨシノとは違って。枝が見えないくらい花が重なっている。

なんとなく近寄っては行けない。そっと少し離れた所から眺める。
そのほうがいい。そのほうが落ち着く。ほっと心が和む気がする。


お彼岸が近くなり。姑さんがお墓参りに行けない事を嘆き始めた。
おんぶしてあげたら行けるのだけど。息子である彼が相手にしない。
姑さんも。もう諦めていて。お前達に任せるから頼んだよって言う。

明日行くことになった。畑の隅に植えてあるシキビの枝を切り準備。
お寺の裏山の墓地。とても見晴らしの良いところでなんとなく好きだ。

いつだって思うのは。自分もここに。遅かれ早かれ必ずここで永眠。
俺が先だからなって。口癖のように彼は言うけど。それはわからない。

わからないことをついつい話す。笑いながら話す。そんな年頃になった。


大相撲を見ながら。早目の夕食。絹ごし豆腐がひんやりと美味しい。

春雨の酢の物とか。お素麺とかもいいねって話す。ちゅるちゅるって。

そうして平穏に一日が暮れる。明日もお陽さまをいっぱいあびたいな。




2008年03月13日(木) 木の芽のきもちで生きたいものだ

雨の朝。沁みるような雨がそぼ降る。ふと濡れてみるのもいい。

降り止みに風。沖からの風は潮のにおい。俯いてなどいられず。

向かう。なんだか新しい風のなか。芽になれそうでむくむくと。

向かう。その芽にまた雨が降る。恵まれていることに気づけば。

もう求めてなどいられない。木の芽のきもちで生きたいものだ。






今朝。川仕事までの時間に。茶の間でテレビを見ていたら。誰かが。
庭にクルマを乗り入れた気配。よく吠える飼い犬が静かだったから。

もしやって思ったらやはりそうだった。「おはようさん」って言って。
ずっと待っていた息子くんが。やっと来てくれた。母は満面の笑顔だ。

夜勤明けで疲れているふうなのに。なんか足がこっち向いてしもうた。
そう言って。腹減ったけん朝飯食べさせてやって。がってんだあの母。

いそいそと目玉焼き作る。お味噌汁を温めて。納豆やらしそ昆布やら。
ちょうどサチコも起きて来て。兄と妹が仲良く向かい合って朝ごはん。

食べながら仕事の話。春の人事異動で職種が変わるらしい。その事を。
真っ先に報告したかったのだろう。とても嬉しい報告だった。サチコが。
「お兄ちゃん、悪いことばっかじゃないね。いいこともあったね」って。

うん。ほんとうにそうだと母も思う。最悪を過ぎればきっと光にあえる。
転機がきっとおとずれる。こんなにありがたいことはない。がんばって。
与えられた仕事を。これからも精一杯やり遂げて欲しいと願うばかりだ。

四月からは。もう夜勤もなくなる。日曜日もちゃんとお休み出来るらしい。
介護職から事務職へと変わる。気苦労は同じでも随分と楽になる事だろう。

8年間。ほんとによく頑張ったねって。母はすごいほめてあげたいきもち。


「ごちそうさん」また来るわって言って。あっけなく帰って行ったけれど。

我が家に新しい風が吹いた日。この風のありがたさを母は決して忘れない。



2008年03月11日(火) 気の向くままに空

きのうよりも。もっと春。信じられないのじゃない。

信じたい春だ。陽射しを浴びながら思った。ここに。

いる。きのうじゃないいまのことを。ぎゅっと想う。


水辺の枯れ葦のなかに鷺がいて。じっと身動きもせず。

水を見ている。さらさらと流れる水に陽の光が眩しい。

あしたのことなど知らない。だけど水は流れつづける。

飛ぼうか行こうかどこに向かって。気の向くままに空。


だって空しかない。鷺のこころに。わたしはなりたい。






寿司飯をひとくち大のおにぎりにして。卵焼きのにぎり寿司にする。
サチコは海苔が良いと言って。ふたり台所でおにぎりの奪い合いに。
早いもん勝ちだと母は寿司職人の勢い。サチコも負けずにがんばる。

おっきめの西洋皿に黄色と黒が寄り添う。つまみ食いする男も一名。
ビールも飲まなきゃいけないし母は忙しい。あおさの天ぷらも作る。

でも失敗。『たにぐち』のとも『いなか』のとも違う。居酒屋さん。
天ぷら上手だなあ。どうしたらあんなにカリっと揚がるんだろうか。

でも。それなりに美味しいとサチコのフォローで。今夜もしゃんと。
夕食を終える。母はほろ酔い。へろへろしながら食器を洗い片付ける。

飼い犬に餌を。ドックフードにお味噌汁のお豆腐を入れてあげたら。
思いのほか喜んで食べてくれる。随分と日が長くなったなって空を。

一番星を見つける。太陽があしたに向かいながら。星を浮かばせて。
その星は。ずっとそこに動かずにいるのだけど。きのうではない日。

アタシハホントウニアシタヲシラナイ。それがきっと順調なことだ。


気の向くままにふわりっと飛びたい。あっちとか向こうとかじゃなく。

        ここにいるなって思える『いま』へ。



2008年03月10日(月) まあるいまあるい風が吹いている

雨上がりの青空。ぐんぐんと気温があがり春本番の暖かさになる。

春風に会う。心地良くて胸をはる。すってみるはいてみるふうと。

紙風船みたいなこころ。こんな日はほんの少し誰かの手のひらが。

恋しい。ぽんぽんと跳ねてみたい。ほうらほうらと空のほうへと。

その手のひらのなかで夢を重ねてみたい。誰かいませんか?誰か。





今日は。あおさ海苔の初出荷。それを『お嫁入り』と名付けている。
収穫の苦労も忘れる日。箱詰めにしたのをトラックに積み込んで支度。

その山を見上げると。なんともいえない達成感に満たされてしまう。
頑張ったんだなあって思う。しんどかったけど。この門出が嬉しい。

また弱音吐く日もあるだろう。疲れがたまってくたばる日もあるかも。
でも最後までやり遂げようと思う。あと二ヶ月。あと二回のお嫁入り。


そんな今日の川仕事はひと休みで。朝からまた久しぶりの山里の職場。
峠の遍路道や。もう田起こしを済ませた田圃には水が張ってあり驚く。

のどかな空気がいっぱいに満ちている。手押し車の老女が道端に座り。
会釈をするとにっこりと微笑みが返って来る。まあるいまあるい風が。
吹いている。ここほんとに好きだなって思う。まるで故郷のような里。


仕事は。来るたびに山積み。殆どに専務オババのメモがくっ付いている。
PCでする仕事ばかり。伝票処理済み入力のみとかちゃんと書いてある。
おかげではかどる。毎日来ることが出来なくても。本当になんとかなる。

気がつけば苛立つことも。もうない。言い争うこともぶつかることも。
もうなくなった。お給金も要らない。やっと自分なりの親孝行が出来る。

「ありがとう」って今日も言ってもらえて。すごい嬉しい帰り道だった。

「またね。また忘れた頃に来るから」ってカタチだけのタイムカード。

「今日もすっかり忘れてたよ」って。母が愉しそうに笑ってくれた。


そうして。夕陽。やけに目に沁みるなって。いちにちが暮れていった。



2008年03月08日(土) ほんたらほうけっきょう。きょきょんなほう。

春告鳥。うぐいすが盛んに鳴く。なんだか歓喜の声のよう。

がさごそと藪の中にいて。虫たちを追いかけているのかな。

お腹がいっぱいになったら。またのんびりと寛いで。ほう。

ほう。ほけきょ。ほんたらほうけっきょう。きょきょんな。

ほうって。鳴くのかもしれない。穏やかな風に吹かれては。






ここ数日ちょっと変だった体調が。今日はずいぶんと楽になる。
なんだか憑き物がとれたような感じで。一気に軽くなったようだ。

どんな時もあるけれど。気力と体力が一緒に歩めない時って辛い。
思うようにいかないと悔しくもなるし。情けなくてくよくよする。
病院へ行くのも怖い。風邪ではないなら何だろうって不安になる。

でも。しんどい時って誰にだってあるだろうって思って。だらだら。
ぐたぐたしながら過ごした。頑張らなくてもいいんだって思うと楽。

ふうふうって。出来ることだけ精一杯やる。それがいちばんだと思う。



気分良く。午後から買い物に行って。そうだ今夜はカレー作ろうって。
息子君も呼んであげようって思った。あれから一週間が過ぎた頃だし。
ちゃんと食べてるかなあって心配だった。そろそろ声かけてあげたい。

でも。メールするのなんか照れる。どうしてだか胸がドキドキする。
母さんは変だ。アホみたいだ。ほんとマジあほじゃん。なんでやあ。

送信しました。お返事待ってます。ああもうほんとドキドキするし。

返事来ました。即刻来ました。がっ・・「今日はTの結婚式ぜ☆」

忘れてた。仲良しのT君が今日結婚するって聞いていたのに忘れてた。


カレーは明日もありますって返信出来ず。なんか一気に哀愁の母だった。


夕方。カレー煮込みながら早目にビール。らっきょうをつまみ食いする。
カレーお腹いっぱい食べて。別腹でバームクーヘンとドーナツを食べる。


ほんたらほうけっきょう。きょきょんなほう。と母も鳴いてる夜でした。



2008年03月05日(水) なんだか彼は春みたいになった

啓蟄。冬ごもりしていた虫たちが土の中から出てくる頃とか。

夕方のニュースで。てんとう虫を見た。菜の花畑と子供たち。

ほのぼのと心が和む。むかしサンバを踊るてんとう虫がいた。

そんな歌を思い出す。軽やかでいられなくても心弾まずとも。

てんとう虫がそっと飛んできて。手のひらに留まってくれたら。

いいな。はっと気づくときって。きっとそんなふうなおとづれ。






夜明け前。なんだか足の先がじんじんと痛いようで目が覚める。
お布団の中で。おいちにおいちにっと足を動かしほぐしてみたが。
どうにも治らず。だんだんと全身がしびれて来たようで不安になる。

「熱じゃないか?」って。とうとう彼も起こしてしまい。体温計を。

風邪の症状はまったくなく。宇宙人だからって自慢していたけれど。
ちょっと熱が出ていた。まさかって思う。どうしてなのよって思う。

でも元気。いつも通りに5時に起床。お味噌汁と卵焼きを作った。
食欲もある。納豆も食べてパワー全開。ほんとうに大丈夫なのに。

今日は寝ていなさいと言われる。「お願いだから・・」って言う。
おまけに。今日言う通りにしないと二度と休ませないぞって言う。

だから仕方なくごろごろ寝ていた。でも気分はそわそわ落ち着かない。
大丈夫なのになあってしつこく思う。病み上がりの彼のほうが心配だ。

ほんとに申し訳ないと思う。でも甘えさせてもらったありがたい一日。
じぶんも甘えても良いくらいになったのかな。すこし成長したのかな。


ずっとずっと厳しいひとだったのに。なんだか彼は春みたいになった。


もしかしたら。ずっと土から出ようとしなかったのが私かもしれない。






2008年03月03日(月) やっぱ私は宇宙人だったんだ

黄砂。空は確かに晴れているようでぼんやりと霞む景色。

空ってふしぎ。どこまでもつながっているってほんとう。

だけど。時々ここだけかもって不安になる。ちっぽけな。

じぶんがぽつねんといる。その真上だけの空にも思える。



仙人になりたいと。いつだったかあのひとは言ったのだ。

雲にのってどこまでも流れて行きたいと。もしかしたら。

もう行ってしまったのかもしれない。ふっとそう思った。






金曜日からずっと風邪で寝込んでいた彼が。やっと元気になる。
食欲も出てきてほっとする。「水炊きのようなものが食べたい」
って言うので鶏とお魚のすり身で作る。白菜春菊椎茸豆腐うどん。
「うまい、うまい」と喜んでくれる。子供みたいな顔をしながら。

私は自慢だけどあまり風邪をひかない。家族がひいてもうつらない。
金曜の朝も彼が食べ残した卵かけご飯を食べたのに。大丈夫みたい。

「すごいよねあたし」って得意顔。そしたら「おまえはバ・・」って。
言いかけて「バケモノだ」って言い直して。おまけに「宇宙人だ」って。

そっか。やっぱ私は宇宙人だったんだ。可笑しくて大笑い。楽しい夕食。


宇宙人はふと真面目に考える。流れ星にのって地球に落ちてきた日を。
どうして忘れてしまったのだろうと。どこに落ちてどうやってここに。
辿り着くことが出来たのだろう。このひとが私を見つけてくれたのか。

どうしてこのひとなんだろう。このひとじゃないといけなかったのかな。

決まっていたのかな。そうかもしれない。これはとても正常なことで。

わたしは順調に人間になった。ひとっていいな。ひとになれて嬉しい。





2008年03月01日(土) さあ行かなくちゃ。始まるんだ。もう始まったんだ。

弥生。別れの季節でもあるらしい。けれどきっと生まれる。

木の芽や若草や花や蝶や。陽射しをあびてひとも息をする。

春を待つこころをなくしてはならない。来ないわけはない。

誰にだって。どんな冬にだって。光が届く日がきっとある。






きのう。やっと息子君の引越しを終える。大河のほとりに似た。
こじんまりとした住処に。彼の言う自由空間が出来た。嬉しい。
なんだかはしゃいでいる。さあ始めるんだって意気が伝わって。

あれこれ心配ばかりしていた母も。ずいぶん気が楽になったよう。

新居の女手はサチコに任せ。私は二年間住んでいたアパートの掃除。
暮らしていたあとがとてもせつない。小さな染みや床の傷。髪の毛。
ひとつひとつが『ふたり』だった。でもなるようになったのだから。
もう未練を残してはいけない。お風呂場を磨く。台所の流しを磨く。

カーテンを外す。若草色の。私と彼女は好みが本当によく似ていた。
四年前だったろうか。初めて出会った時も他人には思えないくらい。
彼女は私によく似ていた。姿かたちも。ちゃきちゃきしてる性格も。

似ていた。だからなんだって痛感する。だから離れていったのかも。
しれない。ほんとうの娘のように想っていたことが。もしかしたら。
重くて。心苦しいことがたくさんあったのかもしれない。大好きって。

ほんとうはとてもむつかしい。好きだけでは叶わないことだってある。


最後のさいごに玄関の掃除。がらんどうになってしまった部屋を見る。

もうドアを閉めなくてはいけない。ああどうしてこんなに寂しいのか。

「ありがとう」って言って。重いドアを閉めた。涙がつつつって出る。


さあ行かなくちゃ。新居へ行こう!これから新しい暮しが始まるんだ。


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