ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2005年10月31日(月) みぃみぃ

しばらくのあいだ。子猫を預かることになった。
いつまでなのかわからない。飼ってくれる人が見つかるまで。


息子くんが。仕事を終えて帰ろうとしたら。
クルマの下の方で。みぃみぃ鳴き声が聞こえて。
ダンボール箱の中にちっちゃな猫が入っていたそうだ。

そのままどこかへ置いとけばいいのにだとか。
俺は猫が大嫌いだとか。父親がすごく怒っているのだけど。

きっとなんとかするからと息子くんが言って。
私もサチコも。なんとかなるよお父さんと言って。

子猫は息子の部屋ですやすやと眠り始めた。
すごくお腹が空いていたのか。晩ご飯をがつがつ食べて。
それから。箱から出して欲しいのか。甘えて鳴いていたけれど。

たくさん話しかけて。あれこれ宥めていると。
私の言っていることに。頷くような仕草をしたのだ。
サチコが「今、うんってしたよね」って喜ぶ。
そうして観念したようにおとなしくなった子猫。


もう手離せないな・・と思っている。
可愛いという理由だけでは。猫は飼えないと知っている。

どうしてそれが息子のクルマの下だったのかと思うと。
他の人のクルマの下ではいけない理由があるのだろうと思う。

それが。動物と人間のあいだにもある『縁』なのではないだろうか。










2005年10月30日(日) 生きる

祖母、愛ちゃんの35日忌の法要のため。
2時間ほど列車に揺られて行った。

ほんとうは家族みんなで行く予定だったのが。
急遽、夫君が行けなくなり。相次いで子供達も行けなくなった。
ので。長距離運転が苦手な私は。ひとり列車に乗ることになったのだ。

駅のホームで列車を待っているあいだ。ふと不安になってしまう。
自分は。もしかしたらどうしても列車に乗らなければいけない理由が。
あるのではないだろうか。だからみんなが行けなくなってしまったのかも。
しれないと。今思えばすごく馬鹿げているけれど。その時はすごく不安だった。

また例の悪いくせ。死んでしまうのかもしれないが・・襲って来たのだ。
空は抜けるように青くて。心地良い風が吹き抜けているホームで。ぽつんと。
在りたいと願う。私はまだ在りたいのだと祈る。いやだいやだ死にたくない。


海の見える側の座席に座り。ずっと窓の外を眺めていた。
朝陽が射した海の。なんときらきらと眩しいことか。
海も生きている。波は海の鼓動。空を映して真っ青な素顔。


私の不安は。生きたいという欲なのだろうと思う。
だから。些細なことでも不安に変えてしまうのだろう。

その不安から解き放たれるためには。
生きたいとは思ってはいけない。生きると決めるべきだと思った。



実母の生まれ故郷。私が子供の頃そこはみかん畑だったところに。
愛ちゃんの遺骨は納められた。桜の木がたくさんあるから春が来れば。
お花見が出来るよ愛ちゃん。よかったね。ここが愛ちゃんのお家だよ。


帰りの列車に乗る時は。なんだかすくっと胸を張ってホームに居た。

生きるために。私は生きると。もう決めていた。



2005年10月29日(土) せいたかあわだち草

せいたかあわだち草とすすきとコスモスと。絵のように咲く道をいく。
うす紫の野菊も咲き始めた。それは控えめでありながらも可憐な姿で。

ブタクサとも言われて。今の季節ちょっと嫌われ者のせいたかのっぽさん。
一生懸命繁殖し続けてきたというのに。嫌われてしまったことについて。
彼女は何のコメントも出来ないでいるのだが。どうか許してあげて欲しい。

野にあって。それぞれの精霊が。肩を寄せ合って生きているのだがら。
どの花がとか。この花はとか。ひとにそう言う権利があるのだろうか。

と思いつつも。こんなことを言ったら。我が家のハクション大魔王が怒るだけ。



きれい事って。自分ではそんなんじゃないって思っていても。
どれだけまっすぐに。自分の信念みたいなものが相手に伝わるのか。
わからなくて。時々すごく不安になったり。自己嫌悪したりする時がある。

相手のためにはならなかった。むしろ迷惑だったかもしれないと。
すごく悲しい気持ちになりそうで。必死になって否定しようとする自分。

よしよしだいじょうぶ。もういいよ。もう考えるのはお終いにしようね。

そう言ってくれるのも自分だから。寸前のところでいつも救われている。


たとえば私が。せいたかあわだち草だとしてみよう。

嫌われる原因が自分にあるのだから。それは仕方ない。
それでも生き続けるのが。私の命というものではないか。

ススキと並んで絵のようだねって。ほめてくれる人がいた。

               わたしはとても幸せだよ。



2005年10月28日(金) ちりんちりん

出勤前に急いで洗濯物を干すのが日課。
きりりっとした朝の空気。ぴんとしてくるこころ。
私も靴下になって。一日中風に吹かれていたいなと思う。

どこからか鈴の音が聞こえて。仕舞い忘れた風鈴かなと思った。
でも。夏の間だって聞こえたことがなかったのになあって不思議。

その時だ。見上げた堤防の道を。颯爽と歩いているお遍路さんが。
鈴の音が高鳴ってきて。あっと見とれている間に。すぐ遠くなる。
りんりんが。じんじんと胸に響いては。風のように去って行った。

いい朝だなあって思う。清々しくて。とても新鮮な気持ちになった。


そしてすぐに私は追いついた。ちょうど大橋の真ん中あたりで。
また鈴の音を聞くことができたのだ。その時のなんとも言えない気持ち。
追いついて追い越すことが。なんだかいけないことのように思えた。
どうしてそんなふうに感じたのか。よくわからないのだけど・・・。

もしかしたら。私も歩きたいのかもしれない。
鈴の音を追って。ずっと後を追って行きたいのかもしれなかった。


きっとよくあること。だけどなんだか。今日は特別な朝なのかなと思った。



2005年10月27日(木)

いつもの峠道を登りつめると。そこは霧の山里だった。
粒子のかけらが一面に漂っている道を。貫くように走った。
見慣れた風景が神秘的な世界のように。見える犬も老婆も。
まるで天の生き物のように。ふわふわと歩いているのだった。


霧が晴れると真っ青な世界。光が燦々と降り注ぎ始める。
なぜか仕事が手に付かずに。庭に出てねむの木を仰いでいた。
手というか。手と私は呼びたいのだが。その枝が好きだった。
生きているのがすごくよくわかる木。空に向かってなにかを。
叫ぶのではなく。ただ空を信じて手を伸ばしているように思う。

わたしはいつも。この木から精気を授かっている。ありがたい木。
冬枯れの時が来ても。空に手を伸ばし続ける。健気で心強く在る。



あのひとに見せてあげたいと。いつも思う・・・木だった。



2005年10月26日(水) 正体

ひさかたの雨のにおい。ひたひたと忍び寄る水の気配を。
ぽつねんと佇みながら。ただ受け止めている雨の夜更け。

わたしのなかのまっすぐなものが。少しだけ揺らめいて。
ぽたぽたと雫になってこぼれそうになるのを感じながら。

きりりっとくちびるを噛み締めては。待ちなさいと言う。
その正体をわたしは知っているから。取り乱しはしない。



      猫が。こんな雨の夜更けに。

           赤子のように鳴くのが聞こえる。



2005年10月25日(火) あかい実

ピラカンサスの実が。日に日に色づく。
橙色から真紅へとだ。それは秋の濃くなった真っ青な空に。
炎のように映っては。鮮やかな存在感を見せてくれる実だ。

あかいとりことり。なぜなぜあかい。あかい実をたべた。

自転車でいく路地で。ふと思い出しては口ずさむ歌がある。
ほのぼのと嬉しい気持ちで。風を切りながら走る心地良さ。



わたしの名前には。実という字があって。
子供の頃。どうして美ではなくて実にしたの?って。
両親に訊いたことがあったように思う。

あの時。母はなんて応えたのだろう。
父も何か言っていたのに。どうしても思い出せなかった。


さいきん。とくに今日。わたしは確信してみたのだが。
わたしは。美よりも。実が似合うひとなのではないかと思う。

木の実の実。真実の実。きっとそうなんだと思うことにした。

だから自信をもって。咲く時はきっと咲く。
そして。たとえ一粒でも。真実の実をつける木になりたいと思う。





2005年10月23日(日) あんず

ゆうがた。愛犬あんずに困り果ててしまった。
散歩中に。首輪の金具のところが外れてしまったのだ。

そして彼女は自由になったものだから。
怒れば逃げようとするし。好物のお菓子で誘っても。
すぐ近くまで来ては。すばやくお菓子を取ってまた逃げる。

そこへお向かいの彼氏。りゅう君っていう紀州犬なのだけど。
とりあえず好きなので。そばへ寄ってキスみたいなことして。
そのすきに捕まえようとしたけど。またすばやく逃げてしまった。

5メートルくらいのところで。じっと様子を窺っている。
その目がなんともいじらしい。いやだもんねの目をしている。
そしてどこか甘えている。ほらほらここだよ。こっちだよって。
悪戯っ子が。かまって欲しくてそうしているような感じなのだ。


もう陽が沈み始めて。仕方なく。彼女を川辺に残して帰る。
もう知らない。勝手にすればいい。何処へでも行けばいい。
と。彼女に聞こえるように言って。そっぽを向いて帰った。


すっかりあたりが暗くなった頃。そっと犬小屋のあたりを見てみる。
ふふふ。やっぱりね。ちゃんと帰って来ているではないか。
それも。ごめんなさいのポーズで。お座りをして待っている。

かちゃん。また鎖に繋がれてしまった。


自由って。身勝手をすることではないよと。

晩ご飯抜きにしたお母さんを。どうか許してね。あんず。





2005年10月22日(土) 時雨

風が強く吹く。空が呼んでしまったのか濃い灰色の雲が。
あっちのおやまにぶつかったのか。ちょっと痛くなって。
泣いてしまうのが雨。時雨は秋の。もうすぐ冬が来る頃。


夕陽には会えずにいたが。虹に会えたのだ。
肩を落として家路についていたかもしれない誰かにも。
空を仰ぐ一瞬の時を。与えてあげたのかもしれなかった。


あたしは元気。土曜日の夜がいちばん元気。
解放されているのは。いこーる満たされていること。

あれこれを思っては。折りたたんでしまいこんでは。
気が向けば破り捨てようとさえ思うことが出来るのだから。

あたしは私を。まもっているよ。とことんまもっているよ。

はらはらと落ちはしない。私は時雨のあとの虹になったよ。







2005年10月20日(木) きゅんきゅん

バックミラーに映る夕陽に。きゅんきゅんしてしまう夕暮。
太陽が燃え尽きてしまいそう。心が後を追ってしまいそう。

イナズマ戦隊の歌が流れると。声を張り上げて唄ってしまう。
きーみを忘れないよ。おーとなになっても。ずっとずっとだ。

だから。なんとなく。まだもっとおとなになれそうな気がする。
とても。アンバランスな部分で。私の青春が続いているらしい。


嫌わないこと。さげすまないこと。ありのままでいること。

そして。自分を信じてあげること。

もくひょうと。きぼうと。ゆめと。ゆうき。

それはきれい事じゃなくて。わたしの決心。



2005年10月19日(水) かやの花

いま。茅がきれい。秋桜よりきれい。
朝の川辺では。すすきが。きらきらと眩しい。
こんなに光が似合う花が。他にあるだろうか。

雑草だと言われて。触れば指を切ってしまうかも。
しれなくて。それでも。こんなに優しい花になる。

風になびく。ゆらゆらとなびく。時には強く揺さぶられては。
野にあり続ける。たいせつな命。根をはり胸を張って生きる。


いま。茅がきれい。わたしはあなたがとても好き。



2005年10月17日(月) シルエット

少し肌寒さを感じる朝だった。空気がきりりっと。
日常が空になる。平凡が風になる。心が陽射しに。
なった。



太陽がとても紅くて。水辺を染めながら落ちるのを見た。
河川敷におっきな木がぽつんとあって。その枝のその葉。
シルエットがロマンスみたいに。せつなくて好きだった。

彼が犬と歩いている。のんびりと。なんだか優しいすがた。
日常が夕陽になる。平凡が影になる。心が水の流れに。なった。



夜は。また酔った。

9時から新しいドラマが始まったので。さっきまで見ていた。
伊藤美咲のイメージが。このように変ることがとても新鮮で。
僕的にかなり惚れてしまったようだ。小雪より。石原さとみより。
これからは伊藤美咲に決めた。むぎゅっとしたくなるほど可愛い。

芋焼酎を。宮崎のを。今すぐ飲んでみたいなあ・・。





2005年10月16日(日) いちにち

雲ひとつない空と降り注ぐ光と爽やかな風。

私はせっせと洗濯物を干しながら。空に声をかけた。
もしかしなくても。届くような気がしたのだ。声が。
大阪も。きっと青空。窓を開けて深呼吸をしていて。


さつまいものシチューが。昨夜も今朝も美味しくて。
お昼にも食べて。夕食にも食べた。かなり満足なり。



『義経』に泣いた。
血というもの。情というものを。絶つということは。
ただただ悲しいことだ。そして流れる血。あまりにも。
儚い命。惨さを思い知ることが。情ではあるまいか・・。



夜更けて来た。このながき夜をありがたく受け止め。

麦から米に替えてみた。焼酎のお湯割がただただ美味し。



2005年10月15日(土) 感動

雨あがり。どんよりとした空のしたを今日も行く。
山々がみな雫のなか。ぽとぽととせつない音がする。

収獲の終った田んぼには。まるで春のような青い草。
そこには。白鷺の群れが。絵のように美しくあって。
こころが。真っ白く澄むような。新鮮な風景だった。

峠道を行けば。山肌に可憐な黄色の花を見つける。
つわ蕗の花が。ちいさな向日葵みたいに咲き始めた。
秋だったのか。ふと去年を思い出してみては。去年が。
不思議と。そう遠くない昨日のように思えるのだった。




開店休業。仕事はそのようで。
午後からテレビを見てしまったのだが。

坂本九、没後20年のドラマ『上を向いて歩こう』
見始めたら。とうとう最後まで見てしまった。

お母さんが。九ちゃんに心から伝えた言葉。

「寂しい時は。自分よりもっと寂しい人のために尽くしなさい」
「悲しい時は。自分よりもっと悲しい人のために尽くしなさい」


とても感動した。そして。自分もそうでありたいと思った。


突然の死。いつその日が来ても悔いのないように。

               生きたいと思う。



2005年10月13日(木) 本音

時々いたずらに雨が降る。
重く灰色の空。ふと哀しみを思い出しては。
また悪い癖ねと微笑んでみる。

降る時には降ればいい。私が受け止めてあげる。



まだ午後9時前だと言うのに。ひどく酔っている。
思考が。ぐるぐるまわり始めているのを。愉しんでみるのもいい。

そうかそうだったのか。それが本音なのかって。
自分をぎゅっとしてあげる。すべてを許してあげるのだ。


携帯に43件のボイスデーターがあるのを。
ひとつひとつ聞きながら。わたしは雨になりそうだった。

尼崎のJRの事故のときの。
「僕は大丈夫だよ。バイクで通ってるから大丈夫だよ」って。

それが42件目の声だった・・。




2005年10月12日(水) 前略わたしの神様へ。

白い鳥の群れと。灰色の鳥の群れが。
背中あわせでいて。真っ二つなんだけど。
一枚の絵のように。干潟で佇んでいるのを見た。

夕暮れが迫る。さらさらと水が紅くなり始める。
わたしは。こころの瞳で。シャッターを押した。



今日もまた手紙。お昼休みにふたりへ書いた。
ふたりは一緒に。ぽとんとポストに落ちていった。
ひとりは明日に。ひとりは明後日に。きっと届く。
一瞬で届いてしまうメールよりも。旅をする言葉。
これからも大切にしたいなあって思うのだった。


それから2時間くらい経った頃。携帯が鳴って。
それはバド仲間のTさんからだった。
「お久しぶり」ほんとうに最近ちっともクラブで会えない。
そしたら。仕事ですぐ近くまで来ているって言うからびっくり。
職場の裏側の県道へと跳びはねるようにして行った。
どこどこ?って言っているまに。彼の会社のクルマが見えた。

風に吹かれながら。少しだけ会った。
バドの話しとか。仲間の事とか。そしてなぜか私のHPのことまで。
唯一のひと。理由は自分でもよくわからないけれど。
私は彼だけにはHPのことを教えたのだった。

波長が。なんとなくぴったり。彼はそんな感じのひと。
だからなのか。話しているとすごくほっとするひとだった。
友達なのかな。また言いたいけど。きっと縁のあるひとね。

声をかけてくれてありがとう。会いに来てくれてすごく嬉しかったよ。


嬉しいことが。ここ数日のうちに。なんだか不思議なくらいいっぱい。
みんなみんな思いがけない事ばかりで。心がすごく感動しているのだ。

あっ・・って思う。もしかしたら。わたしもうすぐ死んじゃうの?
だってこんなにもたくさん。もう胸がすごくいっぱいになったよ。


帰り道。対向車が飛び込んで来そうですごく怖くなる。
わたしをころさないで。かみさまころさないでといのった。


生きていると。時々は。贈り物がたくさん届く時があるのかな。
ほんとにほんとにありがたいことだよ。

今夜は。かみさまに。手紙を書きたくなった。





2005年10月11日(火) 再会

雨になれない空と。鳥になれないあたしと。

ちょっとした気だるさも。苦にはならずに。

またどこかわからないところへと歩みだす。


夜はとても急いでやってくるけれど。
夜はとてものんびりやさんらしいのだ。
まくしたてるようなこともしないで。
あれこれ干渉するでもなく。そこらへんで。
寝そべっている。それが何よりありがたい。




帰宅して。ポストに見覚えのある字の封筒。
J君は。二年前の夏に。ひらひらっと舞いながら。
落ちてきた。そうして。私の手のひらにすとんと。
それは。どんな言葉でも言い表せないくらい。
とても。懐かしいひとに再会したように思った。
いったいどこから飛んで来てくれたのか。
空から私を見つけてくれたのかもしれなかった。

手紙は。彼女さんと交互に書いてくれていて。
ほのぼのと。ああふたりが並んでるって。嬉しかった。
プリクラの写真もちゃんと。きらきらと眩しいふたり。
逢えたんだ。また逢えたんだ。ほんとうに良かったね。


ネットって。きっかけはそれしかなかったけど。
それがあったから出会う事が出来たふたりだけど。

今の私には。そんなネット空間にこだわらない。
とてもしっかりとした何かが。ここにちゃんとある。

縁というものに距離はない。
つい先日そう確信したばかりだった。

これが縁でなくてなんだろうと思う。

私は再会している。間違いなく。このふたりのことを憶えていた。










2005年10月10日(月) にこにこ

曇り日にくもらないでいられること。

たとえにわかに雨が落ちても。

おちないでいられること。

へいわなこころは。とても愛しいものだ。



午後。少しうとうとしていたら携帯が鳴って。
知らない電話番号だったけど。「もしもし」って言った。

聞き覚えのある声。ぼんやりとした頭ですぐには分からなくて。
いっしゅん他の人と間違えてしまった。なんか話しが通じなくて。
あれあれって混乱していたら。ああM君ねって。やっとわかった。

3月までうちのバドクラブで一緒に練習していたのだった。
専門学校へ行くようになって。少し遠い所へ行ってしまった。

彼は。右手右足が不自由だったけど。向上心が強くて。
すごく負けず嫌いで。とにかく出来なくてもやるって頑張り屋さんだった。
でも。どうしてもみんなと一緒にはなれない。すごく悔しそうな顔をして。
くちびるを噛み締めていることがよくあった。でも泣き顔だけは見せない。

私はクラブを任されていることもあって。特に彼と関わることになったのだが。
ある日。限界が来た。ものすごく重荷を感じるようになってしまった。
にこにこと笑顔で。いつも真っ先に彼は来ていて。私の名を呼んでくれたけど。
私の心の中は。どうしよう。どうしてあげたらいいのだろうと。
このままではいけないという思いが。すごく込みあげてくるばかりだった。

私は。それから。急に彼に厳しく当たるようになった。
もう。ちやほやしないと決めたのだ。決して甘やかさないと。
駄目な事はダメと言った。そしたら彼は。「わかってる・・」って呟く。

こころが鬼になっている。そんな自分を痛いほど感じていた。
可哀相でならない。だけど。こうするしかないと。自分を宥めた。

彼はよく転んだ。左手にラケットを持っているから。
体をくねらせるようにして。彼は起き上がるのだった。
そして。きっとした顔で対戦相手を睨む。
私は。私のこころはいつも感動していた。えらいよ、がんばれって。
だけど。声は。「また転んだ、駄目やねえ」って言ったのだ。


最後の日を終えて。私の痛みは最高に達し。
彼が転居してしまう前に。彼に会いに行くことにした。
スポーツ店で。バド用のTシャツを買って持って行った。

にこにこ。彼はどうしてこんなに微笑んでいるのだろう。
ご両親まで。深々と頭を下げてくれて。ほんとうに申し訳なく思う。

「いじめてごめんね」って言った。どうしても言わなければいけなかった。

出来ることを精一杯がんばって。いちばん伝えたかったことを。
やっと告げることが出来た。涙が出そうなくらい。心が楽になった。

私があげたTシャツを左手でぎゅっと抱くようにして。
彼が見送ってくれた時は。もう私の涙はとまらなくなっていたのだ。



「なんか、久しぶりに声ききたいなあって思って」

携帯を新しくして番号が変ったのを。私に知らせたかったのだそうだ。

ありがとう。ほんとにほんとにありがとう。


にこにこ。きみはにこにこ。

わたしもね。にこにこしてるの。ちゃんと見えたかな。






2005年10月09日(日) あなた

夜風が。15センチの窓の隙間から。
わたしになにか告げたいことでもあるのか。
わたしのそばでただ揺れていたいだけなのか。
とどまることもせずにひたひたと流れてくる。



こんな秋の夜長には。N君がいい。
N君は。いまどこにいるのだろう。
待って。いまここに連れて来てあげる。


高校一年の秋だった。あの日は文化祭。
文芸部は色紙にそれぞれの詩を書いて展示していた。
私は『安沢裕美』という名前だった。
安沢は小学校の時のいちばん仲良しだった子の苗字。
裕美は。郷ひろみの本名からいただいてしまった名前。

N君は知らないひとだった。中学も違うクラスも違う。
でも。朝のバスのなかで見かけたことはあったと思う。

「この詩、もしかして君?」って突然訊かれてびっくりしたっけ。
照れくささと。見つけられた喜びで。私の胸はどきどきしていた。

それから何かを話した。何かいっぱい話したけど。思い出せない。
最後に約束をした。お互いの詩を交換しようとN君が言ったのだ。

その夜から私は。どこかに火がついたようになってひたすら書いた。
『あなた』と書き始めたら。それまですごく好きだったひとが。
忽然と『あなた』でなくなり。たった二日目でそれがN君になった。

チャイムが鳴っている。今はだめ。もう少ししてみんなが帰ったら。
4ホームへ行こう。4ホームは近いのに。なんて遠いんだろうと思う。

あっ・・っていう顔をいつもした。
一人じゃない時は。すごく困ったような顔をして。N君は。
私の詩を受け取り。私は彼の詩を。隠すようにして受け取る。

そこには『きみ』がいた。
わたしはとてもきになった。そのきみが誰なのか知りたくてたまらない。

それがある日『きみの詩って不思議』って詩をもらったのだ。
私はどんどん熱くなる。ついに私が『きみ』になれたのだと思い込んだ。


バス停で肩を並べてバスを待つ。
おっきなひとだなあって思う。まともに見上げることも出来ず。
心臓がばくばくしてたまらない。何も話せない。沈黙と動悸と。空と風。

N君は。私より五つ手前の停留所でバスを降りた。
窓から彼を見つめていたら。彼が目だけで何かを言ったのだ。
その時の。なんともいえないせつなさは。波の音と海の蒼さ。


それから。どれくらい経ったのだろう。
季節はいつで。何月何日だったのか。とても思い出すことは出来ない。

N君には。ずっと付き合っている彼女がいることを知った。
由紀子さんっていう3ホームのひとだった。

私は。もう4ホームへ行けなくなった。
もうN君に渡す詩が書けなくなったから。


わたしは。涙を少しだけ流し。

またすぐにあたらしい『あなた』を見つけた。












2005年10月08日(土) 成長

朝方。どしゃぶりの雨が降る。
空にぶたれているみたいな。なんか悪いことしたかなって。
思うほど。それは容赦なく。痛みを感じるほど大粒のあめ。

夕暮れて。湿っぽいけれど。心地良い風が吹く。
何かが終って。何かが始まるみたいな。生き生きとした風。

わたしはよこたわってみたくなる。
すべてをなげだしてすべてをわすれて。
じぶんだけをおぼえていたいなとおもう。



忘れられないこと。それは思い出。

あの頃。教室の机のなかに。そっと日記ノートを置いて帰った。
確かに誰かが読んでいる。支離滅裂でどうしようもなかった。
わたしのことを知ってしまったひとがいた。

紙切れに丁寧な字で「自分を大切に」と書いてあった。
誰なのかわからない。定時制で勉強している誰かであるらしい。

胸が熱くてたまらなくて。
明くる日もまたノートを残して帰る。
期待していた。すがりつくような思いだったかもしれない。

でも。それっきりだった。
だけど。その時いただいた言葉が。なんてありがたかったことか。

誰なのかわからないひと。ほんとうに顔も知らない誰かに。
わたしは頬を打たれたのかもしれなかった。
痛みよりも。もっとあたたかな何かが。そこにあったように思う。


そしておとなになる。いまもまだせいちょうしている。
すくっとしている日もあれば。うなだれている日もある。

わたしは書きながら発信している。
きっと誰かの胸に。この信号が届くことを信じて。

頬を打つことはしない。かわりに。ぎゅっと抱きしめてあげたい。







2005年10月07日(金) 縁というもの

毎日が単調で。それでいてどことなく光っていて。
清々しいというか。とても心地良く日々を過ごしている。

早朝。とても嬉しいメールが届いていた。
結婚の報せ。遠く北海道からの。親愛なる友から。
ネットを通じて知り合ったのは。四年前の秋だったが。
難病と闘いながらも。すごい勇気でいつも立ち向かって。
どんな苦しさもしっかりと受け止めて。まるで戦士のごとく。
彼はいつも輝いていた。生きることは。歩みだすことだと。
私に教えてくれたのだった。とてもありがたい縁だと思っている。

お昼休みに手紙を書いた。
ほんとうはすぐにでも飛行機に飛び乗って。今頃は酒盛り。
それほど私は嬉しくて。その気持ちを素直に伝えたかったのだ。

手紙を書きながら思った。距離って。どんなに遠くても。
こんなに近く感じられる。会える会えないじゃないんだ。

縁というものに。距離なんてない。



2005年10月05日(水) むすめ

雨のにおいが。なんだか懐かしく。心地良く感じる今宵。

サチコの帰りを待っている。飼い主を待っている飼い犬のごとく。
路地を曲がってくるクルマのエンジン音を聞き分けようとしては。
くぅんくぅんと。ワタシガソウナラ。甘えた声で鳴いているだろう。


おひさまのにおいのするこだった。
泣いている顔をときどき思い出すこともあるが。
それはまだとても幼くてあどけない頃だった。

泣かないわけではなかった。辛い日がないはずもなかった。
なのにどうしていつも。あのこは明るく振舞ってばかりいるのだろう。


待っていると。ふとそんなことが気掛かりになり。

帰って来たら。うんと優しくしてあげたいと思う。




2005年10月04日(火) 咲く

桜紅葉の頃も近いだろうというのに。
その葉の一部が新緑に変り。なんと桜の花が咲いているのだ。

いつもの峠道に差し掛かるまでに。ながいトンネルがあるのだけど。
そのトンネルを抜けるとすぐに。その桜の木がある。
きのう見つけた。今日も咲いていた。明日も咲いているのだろうな。

戸惑ってみたり。だけどどうしてこうなったかとか思い悩むこともせず。
あるがままの姿なのかもしれない。咲くということは。きっとそう。



秋桜と名付けられた薄紅色の花は。先月の台風でかなり弱っていたが。
健気にも愛らしく咲き始めている。ほっとする。私の大好きな花だった。
倒れて地面にへばりついてしまっても。咲く。微笑む姿がいじらしいほど。


芙蓉は。夏の花。もう枯芙蓉だとあきらめてはいけない。
一時はそうなる運命だったのだが。まだ蕾があったのだ。
だから咲く。薄紅色のはまるで南国のハイビスカスのようで。
白い芙蓉は。今日のような薄曇の空に溶けるように花を開く。


ひとは。わたしは。ときどき自信を失いそうになる。
わたしは。ときどきなにもかも投げ捨てたくなる。

すくっと。存在するということは。試練にほかならない。
だからこそ。咲くという意志を持ち続けたいものだ。


自転車で。郵便局へ行く。

ああこのにおい。心がたくさん息をしたがる。

金木犀の花が。もう咲いていたのか。



2005年10月02日(日) 至福

そらがとてもあおくって。
おひさまが燃え尽きるのじゃないかと思うほど。
あついあつい日曜日だった。

サーフビーチへ行ってみようかなと思いながら。
行かない。波乗りさんが目に浮かんでは。消えていく。
きらきらと眩しくて。目を閉じてしまったような感じ。


買い物に行けば。秋物とかいっぱいあって。
あれこれ手にとってみては。もとにもどす。
ひとびとがうごめいている。なんだかあつくるしい。


午後はねる。ねるのがいちばんいい。
とてもとてもひらべったい気持ちで。
すやすやとねるのが。幸せだと思う。


なにもかんがえない一日だった。

至福の一日と記しておいて。またねよう。おやすみなさい。




2005年10月01日(土) ぽかんと

週末はぽかんとがにあう。
みんなみんなぽかんとしちゃえ。

微笑みすぎたのだ。なんだかひつよういじょうに。
このひとだれ?って思うくらい。微笑んだじぶん。

苛立ちとか。どこへいったのかわからない。
思うに。たぶんそのひつようがなくなった。
それはとても良い方向ではなかろうかと思う。

まあいいのだ。すべてまるくて。つるつるしてる。
いいかえれば。それはつかみどころのないしろもの。
つかもうとすればころがろうとするから。つかまない。

だるだるっとして。すこしへろへろしながら。
こんな風に。とりとめもなくここにいることを。
許しているのは。ほかでもないじぶんじしんで。
あるから。これでいいのだ。だいじょうぶよあたし。


今日は『日本酒の日』らしくて。

かなり効いています。おかげで素敵な夜だこと。


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