誰にも話したことはないし、話すほどのこともない、ほんの些細な違いだけれど、高校生のカラダに戻って、驚いたことがふたつほどある。
ひとつは、言葉が通じないこと。 もちろん同じ日本語なのだから、全く意味が通じないということではないし、服部や蘭や園子とは以前と同じように会話できるのだけど。元・同世代――子供たちを相手にした時、あれだけツーカーで小学生をやっていた頃とは違うのだ、と思い知らされることがあった。 ゲーム。テレビ。ドッヂボール。宿題。少年探偵団。 通学路で会う元太や、光彦や、歩美が口々に話しかけてくる言葉は、まるで薄い膜を隔てて届く遠い異国の言葉みたいに聞こえた。 小学生になって、高校生に戻って、気分としては地続きのつもりでも、実際は何かが変わってしまっているのかもしれない。喪失感に打ちひしがれるなんてことはないが、ちょっと寂しい気はするものだ。
もうひとつは、鏡に映る自分の――工藤新一の、顔だった。 鏡の中の自分はどこか晴がましいような、穏やかな表情をする。 オレってこんな顔してたっけか? と首を傾げてしまう。 空白の時間が記憶を歪めているわけでは多分ない。 それはこのカラダに戻れたっていう、安堵によるところも大きいのだろうけれど。 今は遠くなってしまったあいつら、小学校のかりそめの同級生、あいつらが、変な話だけれどオレを成長させてくれたんじゃないかと思うのだ。元に戻ったんじゃなくて、あいつらと過ごした時間の中で、オレも成長した証が、この顔なんじゃないか、と。
照れくさいから、絶対口にはしないけれど。
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