フタゴロケット
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2008年10月22日(水) ささくれ

疲れ果てて、やっとベッドにもぐりこんだ所で、
ふと指先のささくれが毛布に引っかかって、
短くキッと痛かったので、
起き上がって電気をつけた。

なんだかすごく大きなささくれだと思ったのに、
見ると、
左の薬指の爪の根っこが少し捲れているだけだった。

すごく小さなささくれなのに、
完全に乾いてしまっていたので引っかかりやすくなっていたのだ。

ベッドで毛布に包まれる、
私の貴重な安らぎを妨害されてしまったような忌々しさを感じて、
ささくれを指から引っぺがしてしまおうとするのだけれど、
私は爪を長くしないので、
どうにも掴めなくて、
指先から剥がすことが出来ない。

ささくれの根元を切り落としてしまわないように、
爪きりで甘く挟んで引っこ抜くことにした。
ただ根元から切ってしまうと、
その切り口が乾いて、
また毛布に引っかかってしまう経験を何度もしたことがあるからだ。


うまい具合にささくれを挟み、
そっと皮膚を傷め過ぎないように、指先の方向に引っ張る。

皮が剥がされている間、
鋭い痛みが指先を支配する。

ピッと剥がれた瞬間、
意外にも深い場所の皮まで剥がしてしまったらしく、
薬指の爪の根元に、
赤く潤んで美しい血の玉が出来た。

ふるふると切なげに震えながら、
その玉は大きさを増してゆく。

ころんと指先を流れ落ちた時、
その様子をずっと静かに見守っていた彼が、
「あぁ」と小さく叫び、素早く私の指先を口に含んだ。


「キレイだったのにもったいなかったね」
彼はそう言って毛布にもぐりこみ、
あっと言う間に寝息を立て始めた。


もう引っかかるところがない。
血でベッドを汚してしまわないように、
少しきつめに絆創膏を巻いて、毛布にもぐりこんだ。

彼が少し、動いた気がした。

もう引っかかるところなんてない。







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