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2008年06月03日(火) 天使たちのシーン

悩んで悩んで悩みぬいていた40代も半ばを過ぎた頃、
初めてこの歌を耳にした。
記憶に間違いがなければ、たぶん冬の夜、クルマの中で。

一瞬にして心を撃ち抜かれた。

声と言葉とメロディーとドラムの音が同時に聴こえてきた。
どんな音楽でもそう。こいつだ!って思った時、すべてが
同等の価値をもって頭の中で鳴り響く。
13分31秒、僕は身じろぎもせず、25歳の若造が書いた歌に聴き入った。
何故、彼には今の僕の気持が分かってしまうのだろう?
すべてを見透かされていることの恥ずかしさと安堵感。

不思議な体験を音楽はさせてくれる。
自分では語る言葉を持たなくとも、彼が語ってくれている。
その言葉を、僕は何度も何度も繰り返し聴いた。


   涙流さぬまま 寒い冬を過ごそう
   凍えないようにして 本当の扉を開けよう カモン!


青木達之が小さく微笑み、オザケンが想いをこめたギターを奏でる瞬間に。。。








    「天使たちのシーン」 作詞・作曲 小沢健二



  海岸を歩く人たちが砂に 遠く長く足跡をつけてゆく
  過ぎていく夏を洗い流す雨が 降るまでの短すぎる瞬間

  真珠色の雲が散らばってる空に 誰か放した風船が飛んでゆくよ
  駅に立つ僕や人混みの中何人か 見上げては行方を気にしている

  いつか誰もが花を愛し歌を歌い 返事じゃない言葉を喋りだすのなら
  何千回ものなだらかに過ぎた季節が 僕にとてもいとおしく思えてくる

  愛すべき生まれて育ってくサークル
  君や僕をつないでる緩やかな止まらない法則

  大きな音で降り出した夕立ちの中で 子供たちが約束を交わしてる

  金色の穂をつけた枯れゆく草が 風の中で吹き飛ばされるのを待ってる
  真夜中に流れるラジオからのスティーリー・ダン 遠い町の物語話してる

  枯れ落ちた木の間に空がひらけ 遠く近く星が幾つでも見えるよ
  宛てもない手紙書きつづける彼女を守るように僕はこっそり祈る

  愛すべき生まれて育ってくサークル
  君や僕をつないでる緩やかな止まらない法則

  冷たい夜を過ごす 暖かな火をともそう
  暗い道を歩く 明るい光をつけよう

  毎日のささやかな思いを重ね 本当の言葉をつむいでる僕は
  生命の熱をまっすぐに放つように 雪を払いはね上がる枝を見る

  太陽が次第に近づいて来てる 横向いて喋りまくる僕たちとか
  甲高い声で笑いはじめる彼女の ネッカチーフの鮮やかな朱い色

  愛すべき生まれて育ってくサークル
  気まぐれにその大きな手で触れるよ
  長い夜をつらぬき回ってくサークル
  君や僕をつないでる緩やかな止まらない法則

  涙流さぬまま 寒い冬を過ごそう
  凍えないようにして 本当の扉を開けよう カモン!

  月は今 明けてく空に消える
  君や僕をつないでる緩やかな止まらない法則 ずっと

  神様を信じる強さを僕に 生きることをあきらめてしまわぬように
  にぎやかな場所でかかりつづける音楽に 僕はずっと耳を傾けている


 


アータン三宅 |MAIL

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