獅々丸の雑記帳
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父から『何かを教わった』記憶があまりない。 思想や生き方の『形にないもの』は沢山参考となる言葉を貰った。 そうじゃなくて、…そうだな例えば『手取り足取りで』みたいな記憶だ。
絵を描いてみせてくれたり。 模型を作ってみせてくれたり。 面白い小説を勧めてくれたり。 知らない音楽を聞かせてくれたり。 そういうことにはかなりマメな父親だったと思う。
しかし、 学歴がある人の割には勉強を見てくれたりは余りなかったし。 スポーツが苦手だったのでキャッチボールをした記憶も余りないし。 自転車さえ乗らない人だったから当然乗り方を教わったこともない。 生き物についても嫌いだったので、一緒に飼育を楽しんだこともない。
多分、父親がいる人なら↑のひとつ位は経験したことあるんじゃないかな? 我が家では、こういうのはみんな母の役目だった。 エモーショナルが父で、フィジカルが母、と言ったところか。(笑)
そんな父から文字通り『手取り』教わったことがある。 それは『ネクタイの結び方』だ。 我が家では『学生のうちは弔事は学生服』が決まりだったので、初めてネクタ イを結んだのは、多分従兄の結婚式かなにかの祝い事だったんじゃないかな。 何歳のことだかは全然覚えてない。
当然、『ネック』『タイ』の語源から始まるのが、セオリー。 伝統的な柄の知識から、ネクタイ幅の選び方、結び易い布生地の話等々。 ひと通りの講釈が終わって、実践に入る。(笑) 父自らシングルノットとダブルノットを結んでみせ、『背が小さいからダブル ノットの方が良いと思うが。』と前置きした上でどちらの結び方を覚えたいか を俺に問う。 俺は当然『ダブルノット』を選んだ。
1本ずつネクタイを持ち、対面で教わり始める。 上手くいかなくて、今度は父が背面に回って教えてくれるが、それでも上手く いかない。 結び方は覚えているのだが、ひとりでやろうとすると上手く結べないのだ。 再び対面に回った父は、俺の手の動きを見て合点がいったようだった。 俺は元々ぎっちょなのだ。左利き。 タイの動きを誘導する手は、どうしても左手先行で動こうとするのだ。 すると父は『私は左利きじゃないから上手くは結べないが……』と言って俺の 横に立ち、ふたり並んで左利きが結び易い仕草でダブルノットの結び方を教え てくれた。 形の良い結び目の作り方、ヘソの作り方など、あのレッスンは中味が濃かった なぁ。
やっと合格点を貰いウキウキしているところに、『もっと綺麗な結び目を作り たい時の結び方も覚えておくといい。』と言って、ウインザーノットを結んで みせた。 確か、父も一度失敗したかな…、結び上がったタイの格好良かったこと。 『面倒だから会社へ行くときはダブルノットでいいと思うが、どうだ?○○に は(記憶なし)この結び方で行ってみるか?』と笑った。
俺は、普段はダブルノットでタイを締めているが、『ここぞ』という時は時間 をかけて丁寧にウインザーノットで結びあげる。 支度する時間には余裕を持って、納得がいくまで何度も何度も結び直す。 なかなかあの日の父のようには上手くは結べんがね。
今夏に亡くなった父の、今日は71回目の誕生日。
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