カゼノトオリミチ
もくじ|過去|未来

西日の輝き 見つめている
まるい背中
誰かの重さを ずっと受け止め そこにある
廊下の奥の 古い木の椅子
ぼろぼろの チェックのカバー
お勝手には 底なしの 寂しさがある
話しても 話しても 誰にも 伝わらない
砂のような 寂しさが
油とともに 染み込んだ 壁
腰を下ろす 炊事場の主(あるじ)の
あまりの 軽さに 古い椅子は 小さく きしむ
カップには お茶でなく
いつの間にか ため息で いっぱい
6時の時報が
静かに 今日も 鳴り始めると
冷蔵庫の隅に 隠れていた 夕闇が
部屋に広がる
もう いいのよ 安心して と
優しく背中から 包み込む
natu

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