歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2007年08月31日(金) 0歳児の指しゃぶり

昨日、何とか治療ができるくらい体調を戻すことができました。まだまだ本調子ではありませんが、何とか少しでも体調を元に戻すよう心がけたいと思います。
さて、昨日いつものようにインターネット上でニュースを見ていると、このようなニュースが流れていました。

山梨県甲府市の某保育園の50代の女性保育士が、指しゃぶりをやめさせようと0歳の男児の指にからしを塗り、山梨県が「不適切」と同園に改善を求める行政指導をしていたそうなのです。同園などによると、保育士は昨年秋ごろ、0歳の男児の家族から「指しゃぶりがひどい」と言われ、独断で行ったようで、「男児は肌が弱く、指しゃぶりをすると荒れるので、矯正しようと思った。昔やったことがあり、効果があると思った」と話しているとのこと。

この女性保育士は良かれと思ってやったことでしょうが、歯医者として言わせてもらえば、0歳における指しゃぶりは何ら問題がありません。
どうして指しゃぶりが起こるかということになると諸説ありますが、概ね自分の精神状態を落ち着けるために行っている行為であることが定説となりつつあります。

僕の手元にある専門書によれば、1歳6ヶ月の子供のうち指しゃぶりの習慣のある子供が占める割合は19.2%、3歳児になると10.0%、3歳半になると7.8%と変化してきます。ということは、大半の子供たちは3歳くらいまでに指しゃぶりの習慣がなくなっているということになります。
今回の報道のように0歳男児で指しゃぶりがあったとしても、そのまま放置していても指しゃぶりが続くようなことは限られているということが言えるでしょう。

このことを知っておけば、0歳の指しゃぶりに対し、気長に構えていればよく、指にからしを塗るようなことをせずに済んだはずですが、女性保育士も子供の親も指しゃぶりのことについて理解していなかったようです。歯医者として残念でなりません。

かつては指しゃぶりを止めさせるために指しゃぶりをする指にからしを塗ることが行われていたものですが、最近の研究では、この行為は帰って精神的な傷を子供に残すだけだということがわかってきました。

指しゃぶりというとどうしても歯並びや顎の発達に悪影響を与えるのではないかと心配するむきもあるかもしれませんが、少なくとも乳歯が全て完全に生えてくる3歳〜4歳までは指しゃぶりの影響は受けないものです。4歳以降、指しゃぶりがある場合は歯並びや顎の発達に悪影響が出てきますから、この場合は指しゃぶりを止めさせる必要があります。

4歳以降も指しゃぶりを続けるような子供に対しては、指しゃぶりをしている時に決して怒らず、“指しゃぶりをしてはいけないよ”と優しく諭すことを繰り返すこと、そして、指しゃぶりを忘れさせるような遊びをさせたり、親が積極的に愛情を持って話しかけることが大切だとされています。決して強引に、無理やり止めさせるのではなく、本人に自覚させながら、精神的な安心感を与えながら、気長に時間をかけて止めさせることが大切なのです。4歳以降の子供であれば、親の言うことは一通り理解できる年齢でもあります。親がこれまで以上に子供に愛情をもって接すること。子育てをする親にとっては負担になるかもしれませんが、根気強く子供に優しく訴え続けることにより指しゃぶりを止めさせることは可能なのです。


 < 前日  表紙  翌日 >







そうさん メールはこちらから 掲示板

My追加