歯医者さんの一服
歯医者さんの一服日記

2006年06月17日(土) 学校歯科検診よもやま話 その2

昨日の日記に書いた勝手にむし歯が治るということについてですが、このようなことが起こる理由としては以下のような考えられるます。

まず考えられることは、むし歯かどうか微妙な歯における判定の仕方が歯科検診医によって異なるということです。明らかに歯に穴が開いているようなむし歯を検診で見落とすことはありませんが、歯の表面にある溝が黒かったり、茶色だった場合、これをむし歯と判定するか、そうでないと判定するか判断が分かれるのです。最近の判定ではむし歯が微妙なものについては要観察歯として治療対象とはしないようにするのが普通ですが、それでも歯科検診医によって判定にばらつきが出ています。全国各地の歯科医師会の中には、検診前に検診説明会を開き、検診基準の確認を行っているところもあるのですが、それでもむし歯であるか微妙な歯の判定については難しいところがあります。

僕は前年の歯科検診の結果をみながら、なるべくこのような検診の誤りを無くそうとしているつもりではありますが、それでも検診エラーが出てしまうことは否定しません。

むし歯が勝手に治ったと判定される理由の一つにはむし歯の治療による影響があります。以前であればむし歯の治療は金属の詰め物をを詰めたり、金属の被せ歯をセットされることが多かったのですが、今では白色のレジンと呼ばれるプラスチック材料を詰めることが主流になっています。このレジン、検診歯科医にとってはなかなかの難物です。明らかに歯の色と異なるレジンであればいいのですが、最近のレジン材料の進歩から歯の色と区別できないレジンが詰められている歯が多いのです。これを検診するのに十分な明るさとは言えない体育館や教室で、限られた時間内で検診するわけですから、むし歯の治療痕が健康な歯であると判定してしまう可能性があるわけです。レジンによるむし歯治療は検診歯科医にとっては曲者なのです。

むし歯が治るというよりもむし歯そのものが存在しなくなることもあります。それは乳歯のむし歯です。幼稚園から小学校の時期の生徒は乳歯から永久歯に歯が生え変わる時期でもあります。乳歯にむし歯があった場合、乳歯が抜け落ちるとむし歯そのものが存在しなくなります。いくらむし歯の基準が微妙に異なる歯科検診医でも乳歯が抜け落ちていることを見落とすようなことはありません。ところが、生徒の中には乳歯のむし歯が勝手に治ったと勘違いする生徒もいるのです。むし歯が勝手に治ったのではなく乳歯が抜け落ちることによりむし歯そのものが存在しなくなっただけなのですけどもね。

このような場合、むし歯が無くなって一安心といったところですが、口の中にむし歯が発生しやすい状況というのは変りはありません。生え変わった永久歯が同じようにむし歯になりやすいのです。しかも、生まれたての赤ん坊と同様、永久歯も生えてきた当初は歯質が未熟です。このような時に口の中がむし歯ができやすい環境であればせっかく生えてきた無傷の永久歯がむし歯に侵されてしまう可能性が非常に高いのです。乳歯の時期にむし歯にならないような歯磨きの方法や食習慣、生活習慣を身につけることが大切で、その責任は親御さんにあるのは言うまでもないことなのです。

さて、僕の地元市内の学校では、全生徒の人数分の2倍の検診ミラーが準備されています。そして、検診時にはミラー2本を使い、一人の生徒が終わり次の生徒の検診の際には全く新しいミラー2本で検診をするようにしています。これらミラーは検診前には全て滅菌処理をしています。以前のように限られた数のミラーを消毒液で消毒しながら使いまわすようなことはしていません。このような検診体制ができあがったのは今から10年ぐらい前だったと思います。僕が検診を受けていた頃は、限られた数のミラーを消毒液に浸しながら検診に使用していましたが、検診の合間にミラーを浸していた消毒液は検診の合間に交換していました。僕はその光景を見たことがあるのですが、その消毒液を注意してみてみると消毒液の中は何やらもろもろとした浮遊物がたくさん浮かんでおり、本当に消毒液でミラーが消毒されているのか疑問に感じたものです。どうも僕のような疑問を感じた人が多くいたようで、いくら検診であったとしても使いまわしの器具を使う問題点が指摘されました。そこで、地元の歯科医師会では地元市と粘り強く協議を重ねた結果、市内全生徒の2倍の数のミラーを購入し、検診に際しては全て滅菌済みのミラーを使用することを認めさせたのでした。

このような動きは全国各地で広がっているとは思いますが、自治体の経済状態が逼迫しているため全国全ての市町村の学校で検診ミラー2本体制が整っているとは言えない状況です。そのこと自体は仕方がないことかもしれませんが、将来のある生徒たちの健康のためにミラー2本体制による歯科検診というのは必要不可欠なことであり、最低限の投資といっても過言ではないかと思うのです。どうか全国各地の市町村の教育関係者の方には、歯科検診の際にはミラー2本体制で臨んでもらえるよう、各市町村の全生徒数の2倍のミラー購入をしてもらいたいものです。


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