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ホリデイをパースでゆったりと過している。ビーチにピクニック、読書、カフェ、、、誰にも何にも縛られない束の間の自由がありがたい。静寂だったわたしの心と暮らしをあらゆる意味でかき回したアレンが去って、ただ元通りになっただけなのに魂を奪われたように脱力している。ふと、無邪気に小さな裏切りを働いては悪びれずに笑うきれいな顔を思い出しては、小憎らしいと思い、自分とは違う世界の人間だったと思い、神様のほんの遊び心で知り合わされたのだと思い、少し恋しいと思う。
夜な夜なひとりのベッドの中で少しずつ成田空港で買った田辺聖子の短編集「孤独の夜のココア」を読んでいる。どこへいても何をしていても、幸せでも不幸でもふと思い出す過去のやわらかであたたかいひとときとその時間をシェアした恋人。どの話も主人公が20代後半の女性ながらも成熟していて堅実に人生を据え、かといって計算高く出世コースに乗った男性を選ぶのではなく、いまいち世渡り上手でない男性の実直な良さを見抜いて包み込んであげる。静かに心に染み入ってほんわりとあたたかくなるような小説だった。
9ヶ月ぶりに再会したJはそれをとても喜んでくれた。サウスパースのジェッティ付近で夕飯を食べて送ってもらい、別れ際、どんなふうにカウントしているのか(笑)、
「1年と1週間ぶりに会えて本当に嬉しい。」
とにっこり笑って、すっとわたしの体を引き寄せて、頬にキスをしてくれた。