DiaryINDEX|
past|
will
日本ではすぐそこに春が見えているだろうことに相反して、こちらでは初秋の風が吹き始めた。日中は穏やな秋晴れが続いていて、ひとり暮らしになったら孤独で倒れてしまうかもしれないなどという大袈裟な懸念も単なる蛇足となり、気候に左右されやすいわたしの情緒も穏やかに静謐な暮らしの中を流れている。
午後にリビングから抜け出し、庭の石段に腰掛けて、先日焼いたうんと甘さ控えめの林檎のシブーストとコーヒーも用意して、山田詠美の「せつない話」の続編を読み始めた。一番最初の有島武郎の「一房の葡萄」という短編にいきなり五粒の涙を流してしまったのは、この初秋のあまりにも青い空と透明な風に心がセンチメンタルになっているせいなのだろうか。でもいい話だ。もうそれだけで胸がいっぱいになり本を閉じて、庭で走り回るミケをぼんやり眺めて過ごした。丘の中腹に建てられているこの一帯は、ガレージから階段を上がったところに玄関がありその脇がバルコニーになっている家が殆どで、夏の夕方など人々はぼんやりとガーデンチェアーに寝転んで星空を眺めながらワインを飲んでいる。オーストラリアという国はこの空の下に住むということだけで充分贅沢だ。
夕方にマーティンと電話で話した。あちらの会社のフランス人達がとてもフレンドリーで、一緒にランチを食べに行ったりしているよう。仕事といえども楽しそうで何より。