プラチナブルー ///目次前話続話

トッティからのプレゼント
April,8 2045

20:30 トッティの店

「そう云えば、ヴァレン。5日がバースデーだったわね」
「あら、トッティ。覚えててくれたんだ。嬉しいわ」

トッティが後ろの棚を開け、カウンターの上で宝石ケースを開けた。
中には、一対のピアスが蒼白く輝いていた。

「うわ〜綺麗な色のピアスね〜」
「でしょ? なんでも東洋の島ジパングでしか産出されない鉱石らしいわ」

「へ〜そうなんだ。初めて見る輝きだわ」
「ボスに貰ったんだけどね。アタシはピアスをしないから、ヴァレンにあげるわ」

「本当?いいの?とても高価そうよ」
「何言ってんのよ、アタシたちの仲じゃない」

「うんうん。ありがとう」

ヴァレンはピアスを手に取り、両耳に付けてから、白銀の髪をかきあげるようなポーズで、
左に右にそれぞれ振り返った。

アンジェラはカウンターに伏している。
続いて右にいるブラッドへ振り向くと、ブラッドは銀の皿を裏返し、手鏡がわりにヴァレンを映し出した。

「どう?似合う?」
「ええ、ヴァレンティーネ様。その蒼白い輝きよりも、ヴァレンティーネ様のほうが輝いてますけど」

「あはは、お上手ね」
「とても似合ってるわ、ヴァレン」

トッティは、満足そうにそう云うと、宝石ケースの蓋を閉じ、ヴァレンの前にそっと置いた。

「ただね、ヴァレン」
「ん?」

『オリエンタルブルーに輝くプラチナ製のピアスは、その手を離れた時に災いをもたらすといわれてるの。
だから、一度手を離れると禍(わざわい)に変わるから決して追っては駄目よ。』

トッティはいつになく真顔で語りかけた。

「わかったわ、不思議だけど、魅力的な話だわ」
「あ、そうだ、ブラッドにもアタシたちの出逢いを記念して、これを差し上げましょう」

どうやら、トッティはブラッドが気に入ったらしい。
いつもと同じテンションで、先ほどの棚から、今度はチェーン付のコインを取り出した。

ブラッドの目の前で、2,3回、左右に揺らした。
ヴァレンのピアスと同じ色の蒼白い光を放っている。

「いいよ、トッティ。オレの誕生日はまだだし」
「あら、ブラッドったら、つれないのね・・・」

トッティは、コインを揺らすのを止め、カウンターに左肘をついて語り始めた。

「このコインはね、特殊な仕掛けがあってね・・・」

そういうと、トッティはコインを左手で掴むと、一度握り締め、そして、ブラッドの目の前で手を開いた。
すると、先ほどまでのコインがコンパクトのように開き、中には小さな液晶画面のようなものが現れた。

「ほら、中に何が見える?」
「地図・・・?」

興味深そうに身を乗り出したブラッドが、トッティの左手を見た後、トッティの顔を見上げた。

「そう、もう一度注意深く見て御覧なさい」

そう促されて、再びブラッドは開いたコインを見つめた。
隣のヴァレンも不思議そうに覗き込んだ。

「あ、この点滅は・・・ この店の位置?」
「・・・なんだか、ナビゲーションみたいね」

「そうよ、だけど、その点滅は、この店の位置を示してるわけじゃなくて、
ヴァレンが身に付けているピアスの位置なの・・・」

「・・・ってことは、ヴァレンティーネ様がどこにいても見つけられるんだ。すげ〜」
「うふふ、欲しくなったでしょう、ブラッド」
「うんうん、物凄く欲しい。」
「アタシを袖にして、ヴァレンを追いかけてる貴方に渡すのは、少し癪な気もするけど・・・」
「あはは、そんなこと云わずにお願いします。この通り」

ブラッドが両手を合わせてトッティに祈りを捧げた。

「いいわよ、最初から貴方にあげるつもりだったんだから」
「さんきゅ〜トッティ」

「良かったわね〜ブラッド」
「うんうん」

ブラッドは子供のようにはしゃいだ。

「じゃあ、首にかけてあげるわ」

チェーンを広げたトッティの前に、ブラッドは自分の頭を差し出した。
トッティは、鎖をかけ、ブラッドが顔をあげようとしたタイミングで自分の方へ引き寄せ唇を重ねた。

数秒後、目をぱちくりとさせているブラッドの横で、トッティは、ヴァレンに小さな小瓶を手渡した。

「これはアンジェラの分ね、使い方はそのうち説明するわ」

そう言い残すと、カウンターの奥に姿を消した。

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