プラチナブルー ///目次前話続話

命の値段
May,4 2045

5月4日 21:45 辰巳邸 in Los Angeles

『ポン』

3順目に親のGEORGIAが東を鳴いた。


辰巳邸地下2階にあるOn-line Casino Bar
僕と円香以外には誰もいない。

ホール右奥にあるカウンターの中央には1m四方のフォログラムが立ち上がっている。
僕は久しぶりに触れるオンラインゲームを円香に教えてもらいながら興じた。

ゲームでの遊戯そのものより、円香とゆっくりと過ごす休日に、僕は満足していた。

「あ、親がダブ東を鳴いたね、1向聴(イーシャンテン)だ」
「うんうん」

立体フォログラムに映し出される雀卓は、立体映像で、4人の手を、自由に切り替えることもできる。
視点をオートスクロールに設定し、全体の映像を放映側のチャンネルに任せることもできた。


『チー』

東家GEORGIA 4順目



親の仕掛けに、仕掛けた牌のクローズアップ画面。
そして、リアルタイムで全員の手が映し出される。
頬杖をついた僕は、左にいる円香に微笑みかけた。

「あ、聴牌が入った、予想通り、親の2,900点かな〜」
「うん。5-8ピン待ちね」
「7順目の上がりなら僕の予想通りだ」
「253円ね」
「あはは、大本命ってわけだ」



南家ICHIRO 5順目



「あ、南家が掴んだわ、5」
「うん、3ソウか四、七萬引くと、出ちゃうね」
「うん」


南家ICHIRO 7順目



「あ、引いたわよ四萬」
「うんうん、万事休すだ・・・あ」

「・・・ツモ切りしたわ」
「なんでだろう・・・」
「親も仕掛けてから、ツモ切りが続いているからかな」
「うんうん」


次第に、展開されていくゲームに見入る2人。
一打一打に2人が

南家ICHIRO 10順目-12順目







「あら、今度はそれを外すんだ」
「ピンズが場に高くなってきたね・・・もう14順目だ」
「本当だ、北の人はピンズで染まったわ」
「西家の人は降り気味だ」
「南家はタンヤオもついた」

東家GEORGIA 15順目


南家ICHIRO 15順目 


北家KILIMANJARO 15順目



「あ、北家も聴牌した・・・」
「6ピン? 北落とし?」



『リーチ』

画面が一瞬光り、スクロールした。北家のリーチ宣言を演出しているのだろう。
ズームアップされた北家の宣言牌は、6ピン。


『ロン』

「あ」
「あ」

南家のロン宣言で、画面は南家の手牌が倒れるシーンに切り替わった。
ゆっくりと倒される13枚の牌。
僕と円香の声がかき消される程の大きな音がフォログラムから流れだした。


You are win


立体画像の左上から中央に、突然文字がフェードインすると、
勝者をスポットに当て、続いて南家に賭けたデータがスクロールを始めた。

僕と円香はカウンターの前に座ったまま、ハイタッチをして喜びを分かち合った。


『The dividend to you is 5380 times.』

「凄い、円香。100円の5380倍?」
「きゃっほ〜。嬉しい〜」
「うんうん。凄いよ円香 538,000円だよ」

画面には$538,000の文字が点灯した。

「・・・あ、ごめん遼平」
「ん? どうした?」
「アタシ・・・100円じゃなくて、100ドル賭けてたみたい」

「・・・先週、僕が掛けた生命保険の受取金額より多いよ、それ」
「きゃはは」

嬉しさよりも金額への驚きが強く、信じられないという思いで画面を見つめる僕。
深呼吸しながら、無邪気に笑う円香から零れる香水の匂いも一緒に大きく吸い込んだ。

「さあ、次よ、遼平。」

東2局の配牌をチェックする彼女の横顔を、僕は絵画に引き込まれるように見つめていた。

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