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2009年09月02日(水)

高機能自閉症のプレゼン巧者

ここ数日。気持ちが大波に洗われた小船のように揺れまくっていた。

突端は。
とある文庫本だった。
『アスペルガー症候群』=高機能自閉症の妻との暮らしを書いたノンフィクションエッセイ。
(題名は『僕の妻はエイリアン −高機能自閉症との不思議な結婚生活−』)

購入して、読んで、呆然とし、読んで、ほっとし、読んで、気持ちが抜け、読んで、
もう気持ちの整理が混乱しすぎて何を考えているのだかわからなくなってしまった。

私は自分のことを、
"人嫌いで理屈屋、他愛ない世間話が苦手で、
空気が読むのも不得手なので、人といるとそれだけで神経が疲れる人"と思ってはいたが・・・、

自分『アスペルガー症候群』なのか?そうなのか?

空気読めない
非言語的表現がわからない 
というコミュニケーション障害という点以外に当てはまるところが多すぎる。

・聞いた音を言語化し、さらにそれを理解するという回路が弱い。
(学生の頃ほぼ授業を聞いたことがない。聞いても、というより聞いたらわからないから、授業中は話を聞かずに専ら教科書を読んでいた)
・言葉が良く聞き取れないのに加え、いきなり会話モードに入れないため電話が苦手。基本的に出ない。
・痛みに対する鈍感さ(たしかに靴擦れ出来ても平気な顔しているため、ありえないとは言われる)
・癒し専用のタオルケットを持ってる
・幼児期の記憶が鮮明で映像的
・基本、布団を頭までかぶる
・熱があってもわからない
・食べることを忘れる
・人の顔が覚えることが致命的にだめ。(そのくせTVに出る芸能人の顔は覚えられる)
・視線を感じることが出来ない。
・五感過敏。
・視覚情報が多すぎると疲れるのでサングラスで制限。(中学生の頃ほぼ前が見えないほど目深に帽子を被っていた)
・人と視線を合わせられない(日頃は努力しているがかなり苦手)

本の主人公である『アスペルガー症候群』の妻の振る舞いが資質が好みが悉く自分であった。

一応、数字も多少扱えて、複数のこともある程度こなせる(正確には同時でなくシングルタスクを短く切り替えてるだけ)ため、辛うじて社会生活を送ってはいるが、もう半歩踏み出せば立派な障害保有者だったのだなぁ・・、今更気付いてもなぁ・・・。

母。お宅の娘は自閉症の一種だったよ。
脳の作りやはたらきが普通とちと違うそうだよ。そして、それは治るものではないのだとさ。
ま、多く見積もると6%程度の比率ではいるそうだけどから、そう珍しくもないんだけどね。


と、脱力した気持ちで週末を過ごしていた。
週末にはもう一つ気が重くなる要因もあった。

週明けに必須研修があったのだ。それも「プレゼンテーション技法」
人前で話すことが苦手です、という人はいる。
が、それは数人から数十人の前で何かを発表することが苦手という意味だ。
私の場合、文字通りの人前、一対一だろうが仕事の話じゃなかろうが、とにかく人が前にいるだけで苦手。
話をする以前に、すると思うだけで緊張する。

そもそも人とさしでコミュニケーションが取れない人間に「プレゼン」教えてどーすんねん!
それに私『アスペルガー症候群』(高機能自閉症)だしぃ、と思いつつ出ないわけにはいかない。

プレゼン演習。ビデオ録画つき、講評付き。

気が進まないながらも研修に参加し、さらなる大波が気持ちを揺らされることになる。

第一回目のプレゼン講評。
手は震えるし視線は泳ぐ。内容は支離滅裂。デリバリはで早口でぐだぐだ・・・と
どーせそう書いてあるんだろと、他受講者の講評を見て腰を抜かすほど驚いた。

声のトーンが良い。
落ち着いている。

えぇっ!誰それ。


さらに講習は進む。演習を繰り返す。
何だかわからんが、どんどん上手くなっていってしまっているようだ。
周囲のコメントが褒め言葉だらけになっていく。

・アナウンサーのように流麗で、かえって心地よく聞き流されてしまいそう
・笑顔がほっとする
・アイコンタクトで訴えかけてくる力がある(だから人と目を合わせるのだめなんだってば!)
・声が通る(うそ・・・)

そして最後。再びビデオ録画。

研修担当には言われる。
「たまに居るんですよね。プロのアナウンサーレベルの人が。もしくはかつてナレーターをやったことがあるという人。」
その他講評
・素晴らしい
・アイコンタクトがきちっと取れている
・伝わりやすい
・抑揚やジェスチャーが効果的
・最早、指摘点はない

何が起こっているのか事態が把握できない。
魂を抜かれたように呆然として帰宅。

自分。何なんだ?
コミュニケーション力ないんだよね?
自閉症、かつ、プレゼン上手、わけがわからない。
自閉症って考えすぎ?。いや、偶然にしては症状が一致しすぎてる。



数時間考えて、気持ちが落ち着いて、何となく判ってきた。
矛盾はしていない。

多分。
多分なんだけど、ある種の『アスペルガー型』の人はプレゼンが上手くなる可能性は高い。
それも人の数倍の早さで。

発達障害とは、脳の構造が人と異なるために子供時代に無自覚に身につけられる、相手の気持ちを察する、場を読む、場に合わせるなどの社会的能力が身につけられないことであるらしい。
それ故に、後年意識的に一つ一つ身に着けて能力の不備を補っている。
だから、人との何気ない世間話の声の高さ、音質、言葉の早さ、笑顔一つ、間一つ、無意識じゃない。
全て学んだこと。
心理学の本、演出家の書いた表現の本、ロルフィング、周りの人の観察、テレビドラマなどなどから、腕を上げるときはこう、哀しい共感はこの表情でと、全て意識的に理解して実践している。
私の場合、全ての振る舞いが自覚的。いわば演技。

なので、かえってプレゼン講習などで、お手本見せられて「こうです!」と言われると、
すぐ真似られるのだろう。

うん。わかった。
と、何らかの論理展開がオチないと気が治まらないところも『アスペルガー型』の人であるらしい。


alain

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