ヤマザクラの花も咲きました。 花で覆われるソメイヨシノは 綺麗ですが、山桜の風情とい うのもまた捨てがたい魅力が あります。人工的に交配され てできたソメイヨシノは接木な どでしか増やすことができませんが、野生の山桜は 種を鳥が運んで増えることができます。人が滅んだ らソメイヨシノも寿命を終えた木から順次滅んでいく のでしょう。その儚さがまた良いのかとも思いますが、 人工品種の脆弱さが、いっそ哀れでもあります。
二つの桜を眺めながら、人間はつくづく身勝手な生物 だなあと感じました。愚かな人類はいずれ自分の首を 絞めて滅ぶのでしょうが、あとに残された人工の木や 鉢植えや、更には家畜や家禽や人に管理されて飼育 されている生物達は、ただただ枯れて腐って死んでいく のでしょう。梶井基次郎さんは桜の美しさを、桜の木 の下には屍体が埋まっているとして表現をしましたが、 あながち突飛な発想とは思えなくなるような、昨今の 世の中の状況に、それも人間の行く道ならば行くしか あるまいと、為す術もなく花を見ているだけの無力な 自分に気がつくばかりです。
桜って、不思議な花だとしみじみ思います。
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