陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2012年04月10日(火)      野生種

 ヤマザクラの花も咲きました。
 花で覆われるソメイヨシノは
 綺麗ですが、山桜の風情とい
 うのもまた捨てがたい魅力が
 あります。人工的に交配され
 てできたソメイヨシノは接木な
どでしか増やすことができませんが、野生の山桜は
種を鳥が運んで増えることができます。人が滅んだ
らソメイヨシノも寿命を終えた木から順次滅んでいく
のでしょう。その儚さがまた良いのかとも思いますが、
人工品種の脆弱さが、いっそ哀れでもあります。

二つの桜を眺めながら、人間はつくづく身勝手な生物
だなあと感じました。愚かな人類はいずれ自分の首を
絞めて滅ぶのでしょうが、あとに残された人工の木や
鉢植えや、更には家畜や家禽や人に管理されて飼育
されている生物達は、ただただ枯れて腐って死んでいく
のでしょう。梶井基次郎さんは桜の美しさを、桜の木
の下には屍体が埋まっているとして表現をしましたが、
あながち突飛な発想とは思えなくなるような、昨今の
世の中の状況に、それも人間の行く道ならば行くしか
あるまいと、為す術もなく花を見ているだけの無力な
自分に気がつくばかりです。

桜って、不思議な花だとしみじみ思います。




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