陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2010年09月24日(金)      土鍋考

涼しいを通り越して肌寒い陽気になりました。
今日は朝から室内ずーっと20℃です。極端な気候です。
さて、これからの季節 『土鍋』 が重宝します。土鍋とい
えば三重県の万古焼と伊賀焼がその双璧ですが、万古は
工業的な量産品、伊賀は手作りの工芸品というイメージが
あると思います。町場の四日市と山里の伊賀の地域性が
そういった仕事の違いを生んだものでしょうか。

 画像は我が家で10年以上も使って
 いる伊賀、土楽窯のハンドル鍋八寸
 です。ざんぐりした土味に灰ぐすり
 が粗くかけられ、丸い手が愛嬌たっ
 ぷりの土鍋です。長いこと使ってい
 るので底には放射状にヒビが走り、
いつ底が抜けてもおかしくないのに水や湯が漏れることも
なく、騙し騙し重宝に使っています。この冬も鳥鍋や粥を
炊いて大事に使っていこうと思っています。

土鍋は煮え方が柔らかい感じがして好きです。然しながら、
重くてがさばって、持ち手は熱くなるし決して使い勝手が
良いとは言えません。ご飯が美味しく炊けるという方もい
らっしゃいますが、火の伝わり方がジンワリしているだけ
に羽釜ほどパリッとは炊けないように思います。更に黴も
はえやすく、案外弱点の多い調理器具です。けれどもそれ
こそが実は土鍋の良いところなのだと思います。弱点を補
うべく丁寧に扱ってじっくりと調理すると、熱々の料理を
保温してくれ、多孔質な素地が味に深みを付けてくれます。
電子レンジで何でも調理できる便利な世の中ですが、改め
て土鍋でのお料理を見直してみたいものです。

自作の土鍋は良い土が手に入らず今まであまり作っていま
せんが、最近やっと高温焼成ができる土が見つかりました。
土楽さんの鍋が壊れる前に、自作の土鍋を一つ焼いておき
ましょうか。

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