7月、浅田次郎の 『プリズンホテル全4巻』 を一気に読み、 8月は柳田国男の 『遠野物語』 と井上ひさしの 『新釈 遠野物語』 を重ね読みし、さあ次は時代小説にいこうかと 思っていた矢先、弾みで浅田次郎のエッセイに手を出してし まいました。流暢な文体と、豊富で抱腹なエピソードに掴ま れてすっかりのめっています。
タイトルの 『勇気凛凛ルリの色』 は 団塊の世代の人なら誰もが口ずさめる 少年探偵団のテーマソングの一節です。 昭和中盤以降の生まれの私でもこの歌 の節はわかります。でも、最早これを 知らない世代のほうが多いでしょう。 内容は、エッセイだけに浅田氏の経験談 なのですが、直木賞をとる前の本だけに、 作家として有名になる前の豊富な人生経験が赤裸々に語られ、 時に露悪的に時に真摯な私見を整然と書くその文章は、後の 直木賞作家だけに語彙が多く構文は巧みです。
何といっても自衛隊時代の話は傑作が多く、隊内で洋式便所を 使う話や、『員数(いんずう)』 という自衛隊特有の物品管理の 方法を紹介したエピソードは笑わずには読めません。あとがき にはこんなご本人の説が披露されています。 「人生笑って暮ら せれば言うことはないが、そうもいかない。でも笑ってなけりゃぁ 泣けてくるので、笑うのだと思う。」 曰く、ごもっともです。
泣きながら生まれてしまい、死ぬために生きねばならない一生 ですから、笑って暮らしたいもんですよねえ、この本を読むと そんな生き方ができそうな勇気が湧いてくるのです。 が・・・かなりゲビた話題(クソ・ゲロはあたりまえです)も ありますので、お読みになる方は、重々ご注意願います。
|