朝日新聞社より、週刊『藤沢周平の世界』なる冊子が刊行されます。 朝日ビジュアルシリーズの全30冊は、藤沢ファンには垂涎の読み物 となることでしょう。勿論、ずぶずぶの藤沢ホリックの私は予約を して一括で申し込むつもりです。
しかしこの刊行案内のチラシのキャッチコピー 「乾いた心に、藤沢周平」は、いかがなもので ありましょう?藤沢文学は、どちらかと言えば 暗い影を纏った主人公がきびしい暮らしの中で 懸命に生きる姿を描いたり、微禄の下級武士が 剣術に拠ってひとすじの光明を見出したりする 小説が多いです。長編などは、おおよそ物語の 中盤まではがまんの読書です。後半から終盤に なると光が見え、最後の一行を読むと心が浄化されるという効果は ありますが、乾いた心の人はこの序盤の辛抱ができないのではと、 少々心配になります。まあ、売る側の気持ちを忖度すれば、こんな コピーもあっていいのかなとも思いますが・・・
私などは、じめじめと湿った心の持ち主なので、藤沢文学のこの 暗〜い生活観に同調しているのです。だからこそのめりこんで読 めるのだと解釈しています。人が生きる上で『いかんともしがたい もの』 『動かしようの無いもの』 といった 『不条理』 が、人を不幸 にも幸福にもします。運命に甘んじたり、抗ったりしながらも、 小さな幸せを大事にする生き方を描く藤沢さんは、ご本人も常々 『普通が一番』と仰っていたと聞きます。まさしく、然り!
普通に生きることができれば、人は幸福に他なりません。 ほどほどで、ほどほどで、良いのだと思います。
朝日OPENDOORS http://opendoors.asahi.com/data/detail/7577.shtml
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