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2009年03月04日(水)   

「文学というものは、しばしば死んでいるように見えても、思いがけない起爆力を持って生きかえる、永い時をかけた、人類の習慣なのです。」

引き続き、1991年に東京で行われた大江健三郎の「小説の知恵」と題された講演より。美しく力強い断言である。けれども、しばしばどころかほとんど死んでいるように見える、ほこり臭い文学という習慣は、人類がたくさんの新しい習慣を身につけて、スタイルも在りようも日々めまぐるしく変化していくその過程のなかで、放棄されようとしているように感じる。読むこと/書くことは、視ることや聴くことよりも間接的で退屈で、そうして本質的に孤独な作業だから。

何事にも用だたぬ無益な悪癖、といったら自虐的にすぎるだろうか。


nadja. |mailblog