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昔那智の滝に行ったとき、お土産物センターでかめのおじゃみを二つ買ったことを思い出したので早速手渡してみた。ひとぉつ、ふたぁつ、と鈴のついたかめを放り投げる祖母の背中は本当に小さい。 夜になると「お母さんはよ帰ってけえへんかな」ばかり言う。昨日も、一昨日も、一昨昨日も、その前も、母が早く帰ってきた試しなんかないのに、これじゃあまるで私といるのが苦痛だとでも言わんばかりじゃないかと憤る私を責める資格は誰にもないのだ、あるもんか。 母はまだ帰らない。 祖母はトランジスタラジオを抱きしめて、どこかの誰かの遠い声を枕に眠っている。 私は優しくない。急に変わろうなんて、無理な話だ。 |