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だから大学院を出たからといって、「何か」になりたかったわけでは決してなかった。それなのに中途半端だと罵られて、「何か」でなければ認めない、とはねつけられて。あの頃私が望んでいたのはただ、「貴方のために生きること」であったのに。 「何か」というあの一言さえなければ、今頃は、とふと思う。 「何か」になるためにはとにかく家を出てとにかく一人で静かに過ごせる莫大な時間が必要だった。だからとにかく働いて金銭を得なければならなかった。そうして働きはじめた私に貴方は、「従順さが足りない」と言い放った。 ただ本を読むのが好きで、音楽を聴くのが好きで、こうやってちょこちょこと、思ったこと、感じたことを書き留めるのが好きで。料理をするのが好きで、こんな雨の降る夜にはお風呂に長く浸かるのが好きで。 何故それではいけなかったのだろう。 何故私は「何か」にならなければならなかったのだろう。 あれから何年かが経ったけれど、まだ何も分からないまま、また明後日から働きに出る。 |