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「真面目に生きる努力」を常に怠っている。 この辺で女と真剣に議論してみたほうがいいんじゃないだろうか、と黒い羊が思ったときに限って女は沈黙している。 黒い羊は黒い羊になるずっとずっと前から群れの中で自分だけは違うのだ、と思いつづけてきた。群れの中に黒い羊と同じ言葉で話す羊はいなかったし、黒い羊のようにイタリア製の靴しか履かないような羊もいなかったし、また周りの羊たちも黒い羊は頭がいいから、といつも別格扱いにした。そんな中で黒い羊は流離した貴種を気取り、出自が違うわよ、あんたたちと一緒にしないでよ、と羊たちを見下してきた。 はじまりにおいてそこに差異はあったであろう。確かに黒い羊は高等教育を受けた。だがそれが何も実を結ばず、とっくの昔に有効期限切れになっていることは、誰よりも、黒い羊自身がよく知っている。 黒い羊がかぶった、と自分で思い込んでいる墨汁を周りの羊たちが懸命にぬぐってくれているこの現状を前にして、黒い羊の葛藤は深まるばかりだ。 |