月に舞う桜

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2008年05月15日(木) hide memorial summit(3)XJAPAN編―2

5月4日に開催されたhide memorial summitのレポートの続きです。
出発〜LUNA SEA編
XJAPAN編―1

XJAPANのセットリスト↓
・Amethyst(SE)
・PROLOGUE〜World Anthem(SE)
・Rusty Nail
・SCARS
・Silent Jealousy
・hideの映像集
・YOSHIKI piano solo
・Without You
・紅
・ENDLESS RAIN
・I.V.(guitar:SUGIZO)
・ピンクスパイダー(guitar:YOSHIKI、drums:真矢)
・BELIEVE(XJAPAN&LUNA SEA)
・X(無敵バンド)

紅が終わってメンバーが退場し、「アンコール!」の掛け声が会場に響いた。そして、スタンドの端からウエーブが始まった。
アリーナ席でもウエーブが成功していた。横に流れるのではなく、前から後ろへのウエーブ。
何往復かしたうちの何度かはウエーブの波に乗り損ねてしまったけれど、客席が一体となってやるウエーブは、やっぱり気持ちいい。Xそっちのけで、勝手に楽しんで盛り上がっている感がなくもないけれど。

散々ウエーブを繰り返していると、YOSHIKIがTOSHIを負ぶって登場した。
ステージ中央でくるくる回ってから、TOSHIを下ろす。ステージ上で座り込む二人。

TOSHI「なかなかいいぜー!」
YOSHIKI「(TOSHIに向かって)重くなってない?」

あらら。せっかくTOSHIがかっこよく声を張り上げたのに、YOSHIKIから厳しいお言葉。
がっくりうな垂れるTOSHIくん。
キャンペーンで全国を回って、その土地土地のおいしいものを食べてるんだもん、仕方ないよね。10年の間に、そりゃあ少しは中年太りもするだろうし。あとは、じゃがりこやカレーうどんのせいかしら?

TOSHIが気を取り直して、「なんかYOSHIKIが話があるそうだ」と言ってYOSHIKIにマイクを渡す。

YOSHIKI「こうやって和んでてていいの?」

二人はあぐらをかいていて、リラックスムード。たまには、和むのもいいんじゃない?

YOSHIKI「えーと、そうですね……」

と言いかけてTOSHIに話させようとするも、TOSHIに逃げられる。

YOSHIKI「えーと……なんか俺やだな、こういうの」

リーダーのくせに照れ屋なYOSHIKI。かわいいっす。

YOSHIKI「またコンサートが一発決まっちゃいました」

おぉ、出た! YOSHIKI mobileで予告していた重大発表ですな。

YOSHIKI「でも日本じゃないんだよね……日本でもやります。東京ドームにまたやらせて下さいって頼んでます。……やらせてくれないんじゃないの? いろいろ前例があるんで、僕たち」

あーそうねぇ。開演2時間遅れとかねぇ。

YOSHIKI「出入り禁止?」
TOSHI、苦笑しつつ大きく頷く。うーん、ありえる話だから恐ろしいよ。
YOSHIKI「そりゃあないよね。じゃあ、東京はもういいや。大阪ドーム行く?」

ええー! どうせなら横浜に来てほしいなぁ。日産スタジアムとか、横浜アリーナとか。
ところで、大阪ドームってめちゃくちゃ規制が厳しくなかったっけ?
なんにしても、できれば東京ドームはもう行きたくない……。

YOSHIKIとTOSHI、立ち上がる。やっと本題に入りそうだ。

YOSHIKI「実はですね、Xって一度も海外でやったことないんですけど、台湾に行くことになりました。8月2日?」
TOSHI、曖昧に頷く。
YOSHIKI「知らないんじゃないの?」
TOSHI、やっぱり頷く。

なんか、仲良いなー。仲の良い二人の姿を見るのは本当に嬉しい。それだけで、自然と笑顔になる。
それにしても、7月がパリで8月が台湾、9月にニューヨークですか。そんな毎月海外公演やって、大丈夫なんでしょうかね?

YOSHIKI「東京でもやりたいよね」

一呼吸置いて、客席を見つめながら、

YOSHIKI「HIDEも一緒に連れて行きます」

そう言って、力強く頷いた。
TOSHIにマイクを返し、ピアノの方へ向かうYOSHIKI。

TOSHI「ってことで、これからもバリバリやっていくぜ! 世界中に、愛を届けてくるぜー!!」

そして、「hideー!」と一度呼びかけたあと、「お前たち、悔い残すなよー!」と叫んだ。
YOSHIKIがDAHLIAのフレーズを弾く。

TOSHI「今日はホントにありがとよー! hideも喜んでるぜー!!」

それから、YOSHIKIのピアノが流れる中、TOSHIは夜空に向かって何度も「hideー!!」と呼びかけた。天の一番高いところまで届くような声で、叫んだ。TOSHIの思いのたけが全部詰まった声だった。
TOSHIと一緒にhideの名前を叫びながら、涙が溢れ出した。

hide、ありがとう。
貴方が遺した音楽、遺した言葉、愛情、エネルギー、YOSHIKIとTOSHIを再び繋いでくれたこと、こうして私たちを結び付けてくれたこと。
すべてに、感謝します。

TOSHI「みんなでhideに誓おうぜー! みんなで美しい世界を作ろうぜー! 平和な世界を作ろうぜー! みんなで、純粋に生きていこうぜーっ!!」

正直、これまではTOSHIのこういう趣旨の発言を素直に受け入れられないところがあった。「美しい世界って、純粋さって、一体なんだろう?」って、いつも心のどこかで引っかかりを感じていた。
でも、このときのこの言葉は、自分でも驚くほど、すとんと心に入ってきた。
私にとってXは、ごく個人的なものだった。Xが自分にとってどんな意味があるか、何をもたらすのか。それだけだった。Xが世界に何を発信するのかとか、世界にどんなふうに見られるのかとか、そんなことはどうでも良かった。こんなにも多くの人に熱狂的に愛されているのに、私にとって、Xは一つの閉じた世界だったのだと思う。
けれども、このTOSHIの言葉で、私の中で認識が少し変わった。世界に、大げさに言えば地球全体に対して開かれた存在として、Xを見るようになった。それだけ、TOSHIの言葉が開かれたものとして響いたから。
あぁ、この人たちは、これから海外に出て行って世界中に発信していくんだな、と、初めて信じたように思う。

屋根のあるドームじゃなくて、空が見えるスタジアムだったことも関係しているのかもしれない。
「自分とX」だった枠組みが取り外されて、外界と繋がったような気がした。
例えて言うなら、去年ミスチルのライヴに行って「音楽の力」を感じたときのような、そういう広大な感覚。

アンコールの1曲目、ENDLESS RAIN。
初の「生ENDLESS RAIN」だ。
会場とTOSHIが一体となって歌い、サビはみんなで、それこそENDLESSに合唱。
ドームでできなかったENDLESS RAINの合唱に、感激した。

YOSHIKIがI.V.を弾き始めると、TOSHIが「ギター、SUGIZO!」と紹介した。
「In the rain〜」「Find a way〜」と、延々サビの合唱を求められる。
途中で、

TOSHI「HEATHが歌ってないぜー」
HEATH「◆☆※△?*■○〜」

何言ってるか聞こえない……。
(WOWOWで確認したところ、「歌ってるよー」と言ってました)

TOSHI「PATAが歌ってないぜー」
PATA「◆☆※△?*■○〜」

やっぱり何言ってるか聞こえない……。
(WOWOWで確認しても、聞き取れず……)

TOSHIはSUGIZOにも何やら絡んだあと、「そんな声じゃ、YOSHIKIがドラム叩いてくれないぜー!!」と私たちを煽った。
そして、「これくらい腹から声出せ!」とお手本を示すかのように、「In the rain〜!!」「Find a way〜!!」と空に向かって絶唱。

I.V.のときは、スクリーンに出た映像効果が恰好良かった。泡のような、縦に走る波のような模様が出ていた。
それにしても、やっぱり歌詞がまだ把握しきれない。
I.V.のプロモやドームライヴの映像を観ていていつも思うんだけど、ほんと、この曲にぴったりなHIDEの映像が集められてるんだよね。この曲のために撮り直したみたい。

I.V.のあと、YOSHIKIがピアノでピンクスパイダーを弾き始めた。
おお! ピンクスパイダーか!
hideの曲をやるだろうとは思っていたけど、私の予想はRocket Diveだった。TOSHIが歌うピンクスパイダーって想像がつかないけど、予想を良い方に裏切られたかもしれない。
ピアノにひと区切りついたところで、スタッフがYOSHIKIにギターを渡した。

こ、これは!
hideのイエローハート!!(hide愛用のギターで、黄色地に赤いハートが散りばめられている)
YOSHIKI mobileで「ギターの練習をしている」と言っていたから、ギター弾くのは分かってたけど、YOSHIKIがイエローハートを弾くのかぁ。泣かせるじゃないか。

で、ドラムにはLUNA SEAの真矢が登場。
真矢は見ていて和むよ。何だかほっとする。

YOSHIKIの「ワン、ツー、スリー、フォー!」という合図とTOSHIの「ピンクスパーダー!」で始まった、XJAPAN(とSUGIZO & 真矢)のピンクスパイダー。豪華だ!
会場がさらに盛り上がり、エネルギーがぶつかり合って爆発する。スーパーサイヤ人3倍! ってくらいに。
TOSHIが歌うピンクスパイダーは、もちろん初めて聴いた。歌い慣れていないのと聴き慣れていないのとで、やっぱりhideのボーカルの方がいいかなと思った。でも、Xの曲を歌っているときともまた違う迫力があって、「新生TOSHI」を見た気がした。
ギター弾いてるYOSHIKIを観られたのも貴重だった。考えてみたら、ドラムもピアノも座って演奏するから、立って演奏するYOSHIKIって観られないんだよね。

ピンクスパイダーのあとYOSHIKIが「ちょっとLUNA SEA呼んできて」と(たぶんSUGIZOに)言って、LUNA SEAのRYUICHI、INORAN、Jが登場。
TOSHIが3人を紹介、「RYUICHI、みんなに気合入れてやってくれよ」と促し、RYUICHIが「お前ら、気合入れろー!!」か何か叫んだ。
TOSHIが今度は真矢にマイクを向ける。すると、

真矢「俺でいいんすか?」

その、腰をちょっと折って自分を指差しながら聞く仕草、もはやミュージシャンじゃなくてお笑い芸人ですがな。でも、これだけガーと盛り上がっているところに笑いを提供する姿勢、結構好きです。しかも、そんな三枚目の面を見せた直後に、ちゃんとミュージシャンらしく気合を入れて叫ぶあたり、ギャップがグッジョブです。

RYUICHI「YOSHIKIさん、LUNA SEAを叩いて下さい」
YOSHIKI「もの珍しいぞ!」
TOSHI「YOSHIKIいわく、もの珍しいやつ行くぜー!」

というやりとりがあって、始まったのは、私が知らない曲だった。あとでネットで調べたら、LUNA SEAのBELIEVEという曲らしい。
これはもう、「もの珍しい」なんて生ぬるい言葉じゃ片付けられないよ! XJAPANとLUNA SEAの共演なんて、めったに観られるもんじゃない。LUNA SEAは本当は解散してるはずだから、もしかすると今後永遠に観られないかもしれない。
曲が分からなくても、XJAPANとLUNA SEAの共演という世紀のステージに立ち会えているのだと思うと、それだけで興奮したし、この出会いと運に感謝した。
ドラムはYOSHIKIが叩いたから、あぶれた真矢はギターを持っていた。
ボーカルはRYUICHIがメインだったけど、ときどきTOSHIも歌った。

TOSHI「気持ちいいぜー!!」

そして、ギターとベース、YOSHIKIのドラムがリズムを取る中、この日に出演したほぼ全バンドのメンバーがステージに登場した。それに加えて、なんと、前日のサミット1日目に出演したT.M.Revolutionも出てきた。

TOSHI「ラストナンバー行くぜー!! 無敵バンドだーっ!!!」

伝説の無敵バンド!! すごい、すごすぎる! XとLUNA SEAの共演だけでも感激なのに、無敵バンドまで観られるなんて!!

YOSHIKI、ドラムを離れて再びギターを持つ。今度はイエローハートではなく、自分のギター。

YOSHIKIの「エーックス!!」を合図に……最終曲、"X"。
ドラムは真矢。楽器を持っていない人たちは、「無敵」とでっかく書かれた応援団サイズの旗を掲げて端から端へ歩いて回る。
RYUICHI、たぶんMUCCのボーカル、T.M.Revolution、そしてTOSHIが順番で歌った。
HEATHは、レイザーラモンHGみたいな帽子をかぶっていた。この恰好、やっぱりどこかで見たことがある。どこだっけなぁ。

ライヴ前は、"X”が始まったら周りのパワーに圧倒されて雰囲気に飲まれるんじゃないかと思っていたけれど、全然そんなことはなかった。もう、周りのことなんて気にしていられない。私と無敵バンドの真剣勝負。
ついに念願の、Xジャンプ。
体が跳ねる勢いで、立てそうな気がした。もちろん、実際は立てるわけがないんだけれど、奇跡というものをあまり信じない私が、このときばかりは何が起きても不思議じゃない心持ちだった。

TOSHIとYOSHIKIが「We are!!」と叫ぶ。
右手とペンライトを持った左手で「X」を作り、周りの声にかき消されないよう、空腹も忘れて、全エネルギーを振り絞って「X!!!」と答える。奴らが呼びかける限り、何度だって。

We are X!!!

TOSHI「お前らーっ、空に届かせろー!!!」

無敵バンド全員が、それぞれのやり方で煽る、煽る、煽る。それに全力で答える、答える、答える。
YOSHIKIが、自分のギターを叩き壊した。
そして、各スクリーンには、いろんな時期のHIDE。

HIDE「とべよー、とべよー、とべとべとべとべとべとべとべ、屋根ぶち破っちまえーーーーっ!!!」

生で……とはいかないけれど、HIDEの「とべとべとべとべーーー!!!」を、聴けた。
いや、もしかしたら、あの声の中に生の「とべとべ」も入っていたかもしれないね。

YOSHIKIがドラムへ向かう。ラストスパート。
YOSHIKIの後ろには、金色に光り輝く、どでかいXのロゴが浮かんでいた。その金色の光が後光のようで、YOSHIKIが神々しく見えた。

X!! 飛ぶ。叫ぶ。飛ぶ。叫ぶ。

最高の時間は、あっと言う間に過ぎてしまう。
ギターとベースがYOSHIKIを見ながらタイミングを合わせ、曲が終わった。
TOSHIが何か叫んでいたと思うけど、ちょっとした放心状態だったのでよく覚えていない。実を言うと、"X"のときのことは断片的にしか鮮明に思い出せないのだ。あまりに強烈な時間、あまりに没頭した時間というのは、そういうものなんだなぁと実感した。

YOSHIKIが大量にドラムスティックの入ったバケツを持ってきて、無敵バンドのメンバーに分け与え、ドラムスティックが彼らの手で客席に投げられた。
客席に手を振って歩いたり、メンバー同士で握手したり肩を叩き合ったりしたのち、X以外の人たちは退場。
Xの4人は、ステージ袖からメンバーの人形を持ってきた。結構大きい人形で、腰より上の高さはあったと思う。
人形を並べ(中央はもちろんHIDE)、その後ろにメンバーが並んで、いつもの万歳の代わりに人形の頭を押してお辞儀させた。
10回くらいお辞儀させて、4人が手を振った。PATAが、最後にHIDEの頭をポンと触ったのが印象的だった。PATAのこういう愛情表現が、好きだ。控え目だけど、本当に愛しているんだなと思う。

ステージに人形を寝かせ、4人が退場する。
「ばいばい!」と手を振って、見送った。今回はちゃんと「ばいばい」が言えた。
メインステージの幕が閉まるのを見届けて、会場を出た。

東京ドームのリベンジをした上で何倍もおつりが来るくらい、最高のライヴだった。
TOSHIは、声自体は最高の状態ではなかったかもしれないけれど、終始気迫に満ちていて、想いが溢れた歌を聴かせてくれた。
YOSHIKIもPATAもHREATHもとても楽しそうで、笑顔をたくさん見ることができた。
この日のために、hideのために集まってくれた全バンドの全メンバーに、感謝したい。

帰り道、乗換駅のコンコースを歩いているとき、言葉にできないほどの幸せな感情が溢れ出した。世界が輝いていた。
すべての人が幸せであれ、と思った。世界中が平和であれ、と祈った。すれ違った見ず知らずの人も、はるか遠くにいるどこかの誰かも、どうか幸せでありますように。

感情が高ぶりすぎて、Xファンでもなんでもない親友に電車の中でメールを送った。
生きていて良かったとこんなに思ったことはない、と。
彼女は、私が一番辛いとき、それこそhideのところへ行きかけたときに支えてくれた。
だから、私がこの世に繋ぎ止めてくれてありがとう、と。

ねぇ、hide。
こんな最高のライヴを、ありがとう。


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© 2005 Sakurai Yuzuki