月に舞う桜
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| 2006年05月22日(月) |
脱自、そしてただの名もなき女に。 |
アイデンティティって何なのだろう。与えられたもの? 押し付けられたもの? 自ら選び取るもの? 受け入れるべきもの? 難しくて、結局のところ私は分かっていないのかもしれない。 ブラインド越しに、よく見えもしない外を眺めながら、ただの25歳の女に戻りたいと思った。それ以外の一切の身分も肩書きも立場も剥ぎ取って。名前すらも、今は捨てたって構わないから(名前には、身分や肩書きや立場がついてまわる)。 心のどこかが確実にもやもやしているのに、原因を突き詰めれば自分や他人を否定することになりそうで、あまり深く考えないようにした。 受け入れてないなんてことは、ない。だって、もう25年と11ヶ月も「私」として生きて来たんだもの。でも、受け入れているのに、他人に「その」視点で自分という人間を見られることを拒否しているのは、どうしてなんだろうね。 以前みたいに、怒りやかなしみがあるわけじゃない。そんなものは、まったくなかった。ただ、不思議だったんだ。いつまで経っても、何を手に入れても、こんなに頑なであり続ける自分が。
帰り道、高校生カップルの自転車が私を追い越していった。力いっぱい自転車をこぐ坊主頭の男の子は何だか頼もしく見えたし、犬(たぶんパピヨン)を抱いて座っている彼女はキラキラと楽しそうだった。 二人の後姿を見送りながら、若いなぁと思う。 理由もなく、ただ何となく、でも確かに、今の私が欲しているものの象徴のような気がした。私にとっては、名もなき二人の高校生。 私だって、その気になればいつだって「名もなき者」になれるのだろう。余計なものはすべて脱ぎ捨てて、ただキラキラと笑う25歳の女に。
アイデンティティはとても大事なものだ。でも、ときどき鬱陶しい。そして、邪魔になったときは、簡易的に捨てて置いておいてもいいのかもしれない。
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