鮭肉色のカーニヴァル
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考古学に似た行い
2005年07月26日(火) 

 ウラジミール・ナボコフは中毒性の作家だ。あらゆる場面になんらかの仕掛けが施してあって、流し読みをすればいっきに飛ばしてしまい印象に残らないのだけど、丁寧に読んで幸運にもその緻密な隠し絵に気がつくと忘れがたい興奮に包まれるという希有な、ナボコフでしか味わえない深みにはまると他の作家は作家に思えなくなる。これほど考古学にちかい読書はないのではないだろうか。地層をこつこつと叩き、なにかの化石を細かく掘り出していく狂気のような作業。そして精密さだけが優れているのではないのが恐ろしいところで、作品を支配する大胆な構図にも感動があるのだ。まだ今の段階ではぼくにはナボコフのナの字も読めていないことが素直な実感としてあるのに、素敵なことに絶望ではなく将来にとっておく幸せな料理みたいに思える。
 と、このくらい熱っぽい説明をくわえないと三百五十円で四時間もファミレスに居座ったことの正当化ができないわけで。それにしても『ディフェンス』はおもしろかった。




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