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如月の頃


大好きな句に。
西行法師の有名な句がある。



願わくば花のもとにて春死なんその如月の望月の頃



娘は当時としてはまだまだ珍しい、登校不登校児だった。
兆候は保育園児の頃からあり、小学校では保健室登校。
中三を一日だけ行って、後はもう一歩も歩けなくなった。
私は学校は行けないのなら、それでいいと思っていて。
担任との話し合いでも、本人が行けないというなら、それを尊重すると言った。


不思議と不安はなかった。この先どうなるかとか、全く案じることはなかった。
「死にたい」と娘が言う。
生きてさえいれば、この先まだまだ捨てたもんじゃないよ、と言う私。
けれど最後にはどうしても娘が死にたいのなら、一緒に死んでやろうと思っていた。
浮き沈みを繰り返し、大人になっていった娘。
よいときも悪いときも、背中をなでる私。
そんなかんだで十数年が流れ。
今ではプロの漫画家として、毎日忙しく、締め切りに追われている。
死にたい、とは言わなくなった。
それよりは、健康が欲しいと言う。
私の方が幼児化していて。
もうどちらが親なのかわからなくなっている。



私も死ぬときは花の頃がいい。
さくらが潔く散っていくように、最後は綺麗に逝きたいものだ。


2022年02月01日(火)




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