* たいよう暦*
日記目次過去日記未来日記


2004年05月06日(木) 右手

「右手貸して」
「え?」
「いいから、右手貸して」
「・・・?はい」

不信気に出した右手を、ぎゅっと、ぎゅっと、握り締めた。

「?!?!なんなん?なんなん?!」
すっごいびっくりしている。
当たり前だ。
会うなり、「ただいま」でも「久しぶり」でもなく、「右手だして」。
そして、道のど真ん中で、ぎゅううううっと右手を握り締めだしたのだから。

「あのね、私ね、右手でほっぺたさわらせてもらってきたんよ。だからね、行かれへんかった二人に会ったらね、一番最初に右手で握手して、伝えようと思っててん」

「・・・・・うん、そっか」

ぎゅうううう。
今度は、むこうから手を握ってきた。
私は、その間、一生懸命さわったほっぺたと、顔と、語りかけたことと、その他たくさんのその時の情景を思い出して、右手にこめた。

一分くらいかなあ。
夜の大通りで、二人、物も言わないで、ただひたすらお互いの右手に意識を集中して、手を握り合って立っていた。

「ありがと。ちゃんと、もらったわ」
手を離してから、大事そうに左手で右手をさわりながら、その人は言った。

まだ、会っていないもう一人には、どちらか早く会った方が、右手で伝えようということになった。
どちらが伝えることになっても、必ずもう一人にも伝わるだろう。
「思い」が「そこ」にこもっている。


たいよう |HomePage