* たいよう暦*
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「右手貸して」 「え?」 「いいから、右手貸して」 「・・・?はい」
不信気に出した右手を、ぎゅっと、ぎゅっと、握り締めた。
「?!?!なんなん?なんなん?!」 すっごいびっくりしている。 当たり前だ。 会うなり、「ただいま」でも「久しぶり」でもなく、「右手だして」。 そして、道のど真ん中で、ぎゅううううっと右手を握り締めだしたのだから。
「あのね、私ね、右手でほっぺたさわらせてもらってきたんよ。だからね、行かれへんかった二人に会ったらね、一番最初に右手で握手して、伝えようと思っててん」
「・・・・・うん、そっか」
ぎゅうううう。 今度は、むこうから手を握ってきた。 私は、その間、一生懸命さわったほっぺたと、顔と、語りかけたことと、その他たくさんのその時の情景を思い出して、右手にこめた。
一分くらいかなあ。 夜の大通りで、二人、物も言わないで、ただひたすらお互いの右手に意識を集中して、手を握り合って立っていた。
「ありがと。ちゃんと、もらったわ」 手を離してから、大事そうに左手で右手をさわりながら、その人は言った。
まだ、会っていないもう一人には、どちらか早く会った方が、右手で伝えようということになった。 どちらが伝えることになっても、必ずもう一人にも伝わるだろう。 「思い」が「そこ」にこもっている。
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