* たいよう暦*
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12月10日生まれの小さな小さな友人は、やさしい春の日射しがさしこむ部屋の、花柄の小さな棺の中で待っていてくれました。
近々郵送するはずだった彼女へのプレゼントの絵本を友人に渡すと、静かな声で、読んできかせてあげてくれました。 「ほんと、絵本みせるとじっとみよるんよね」 何度も何度も涙をぬぐいながら、小さな小さな友人の話をしつづけてくれた二人。 何度も棺をのぞきこんでいる私に、 「もうすごく冷たくなってるんやけどね。さわったって」 と言ってくれました。 眠っているかのような彼女をびっくりさせないように、そっと手をのばしました。 ほんとうは来月か再来月に頬ずりするはずだったほっぺたに・・・。 肌はつるつるで、ふっくらとしていて、ぷくぷくしていました。 びっくりするぐらい冷たかったけれど、その冷たささえなかったら眠っているとしか思えないぷくぷくしたほっぺただった。
出棺の喪主の挨拶の時、友人は右手のてのひらを、しっかりと小さな小さな友人の乗った車の扉にあてていました。 友人の手のひらから、その中の棺へ、その中の棺から、友人へ、間違いなく何かが流れているのが見えたような気がしました。
「生まれてから139日、精一杯生きてくれました。生きることをあきらめない子でした」 声をふりしぼり語る友人の言葉に、139日という数字の短さに、その時間に私たちに残してくれた思い出の数々に、涙があふれてとまりませんでした。
「大変な時に、たくさんの人が祈ってくれました。あの時助かったのは、医療の力ではなくて、たくさんの祈りの力だと思っています。どうもありがとう」
最後に何度も名前を呼びながら、頬ずりして抱きしめていた友人二人の姿が忘れられません。 こんなにも悲しみと嗚咽にみちているのに、びっくりするほど晴れ渡った春の一日でした。
あたたかい陽射しの中を、ゆっくりと小さな小さな友人を乗せた車は出発していきました。 どうかどうか。 どうかどうか。安らかに・・・。 車が見えなくなるまで、見送りました。
これから、私たちに、なにができるだろう。 これから、私たちは、どうすればいいんだろう。 できることは、少ないけれど、小さな小さな友人のために、そして、二人の友人のために、なにかできることはないだろうか。 春の陽射しの中で、じっと考えていました。 まだ、答えはみつかっていません・・・。
小さな小さな友人。 139日間、どうも、ありがとう。 たくさんのことを、あなたから教えてもらいました。 どうも、ありがとう。 どうか、どうか、安らかに・・・・。
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