* たいよう暦*
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彼が入社して間もない頃の、新入社員歓迎会。 お酒も適度どころか、度をすぎて入った頃、誰が言い出したか 「おまえ、前髪長いぞ〜」 「じゃあ、きってくださいよ」 「よし、切ろう切ろう」 ちょっきんちょっきん。 「おっ、先輩も長いじゃないですか」 「よし、切ろう切ろう」 お酒も入っているので、手元も狂いがち。 それでも、みんな楽しくざくざく切りあってその日の宴会は終わりましたとさ。
さて、翌日。 新入社員くんは、一箇所ざくりと短くなった前髪が気になって仕方ありません。 「ちょっとあまりにひどいので、散髪行ってから出社していいですか」 「おお、そうしろそうしろ」 先輩の許可をとって、理髪店にでかけた彼。 お昼前にはにこにこと元気よく出社しました。
「すっきりしてきました〜〜!!」 「おっ・・・おまえ、それはっ・・・?!?!」
そう、彼は、一部短くなった前髪に全体の髪の長さをそろえたのです。 スーツに丸坊主。 あまりの異常な姿に、びっくりしたあと、全員が笑い転げたそうです。
さて、さて、それから。 「あの新入社員は髪の毛を切られたらしい(まあ、正しいわな)」 「それもざくざくと(いえ、散髪やさんがそれをしたんですが・・・)」 「いじめでやられたらしい」
スーツに丸坊主は思ったよりもずっとみなの想像力をかきたてたらしい。最後はいじめ問題にまで発展して、社内中が大騒ぎ。 あまりの騒ぎに、最後には部課長以下、その場にいたもの達は人事部で事情聴取までされる始末。 とうの新入社員は、けろりとしていました。 しかし、あまりに騒ぎが大きくなったため、普通2週間ですませる得意先での実地研修を「髪がある程度生えそろうまで預かってください」と、一ヶ月半研修に出されました。 もちろん、先方の社長さんはそんな勢いのある新入社員に大受け。 大喜びで預かってくれた上、研修後も大変かわいがってもらったそうです。
入社後すぐにそんな大騒ぎをひきおこした彼も、研修後は「ごく普通」の見た目を取り戻し、ばりばりと仕事に励みました。 時には、勇み足を踏むこともあったけれど、仕事に対しての考え方には、先輩から目を留めてもらい、かわいがられていたように思います。 そんな彼が、来年1月末に退社し、アメリカの大学に留学することになりました。 まだ。これから。 会社で学ぶべきこと、やるべきことが多く残っていたように見える彼。ちょっとやめるのがもったいない気がしましたが、 「いってきます」と力強く話す彼を見ていると、違う方法で違うものを学ぶ世界を広げていこうとすることも、またいいのではないかと思いました。
いってらっしゃい。がんばって。 時には私たちのことも思い出し、まっすぐにその力をのばして帰ってきてください。 あの、新入社員当時の勢いを忘れずに、新しい世界でもがんばってね。 また、大きく成長したあなたに会うのを楽しみにしています。
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